さて、みなさん。
パソゲーソフトメーカーの『クラフトワーク』という名前をご存じでしょうか?
認知度という点でどのような評価を受けているか高任は良く知りませんが、基本的にこの集団が作るゲームは出来がいいです……少なくとも私はそう思っています。
ここの新作、『さよならを教えて』……新作と言ってももう3ヶ月以上すぎてますし、この文章がアップされる頃は、多分学生さんにとっての夏休み頃だと思われます。(笑)
そしてこのゲームの注意書きにこんなモノがあります。
次の様な方はプレイしないでください。
・現実と虚構の区別がつかない方
・生きているのがつらい方
・犯罪行為をする予定のある方
・何かにすがりたい方
・殺人癖のある方
多分、このゲームを手に取った人の1/3は、この注意書きを見てアメリカザリガニのように後ろに引いてしまうでしょう。
そして別の1/3の人は、『これはユーザーを煽って興味を引かせるための戦略だな』と思うでしょう。買う、買わないは分かりませんが。
そしてこの会社のゲームのことを知っている残りの1/3の人は、違う意味で驚愕するはずです。というか、私はしました。(笑)
『なにいいっ、これまで出してきたゲームでさえ洒落にならない内容だっつーに、一体このゲームはどんな内容なんだ!?』
もちろん、即購入です。
ちなみに、私はこのメーカーの追っかけではないので、これまでの製品を全てフォローしているわけではありません。なのでぱっと名前を挙げれば、『エリーゼのために』とか『flowers』とか『地獄SEEK』位しか思いつきません。
ただし、この中で『flowers』に関しては『クラフトワークス・サイドB』と銘うたれた純愛ラブラブゲームです。
ヒロインが実は眼鏡娘だったという、一部の人たちの心をがっちり掴んで他のゲームにまで手を出させた名作だったのですが、みなさん騙されてはいけません。(笑)
『地獄SEEK』はシナリオがえげつないとか、残酷だ、などと話題になったようですが、はっきり言って『エリーゼのために』と比べたら甘チャンです。
その作品でさえここまでの注意書きはありませんでした……注意書き自体はありましたけどね。(笑)
と言うわけで、期待感120%でインストール。
オープニングです。
黒い背景のあちこちに白い文字が浮かび上がっては消え、翼をはやした少女がうねうねとした触手に捕らわれて陵辱されつつある猟奇的な絵がフラッシュと共に激しく点滅しています。
私もある意味このぐらいは慣れっこなので、ぼんやりと『3色ライト点滅なら引きつけを起こしたりするんだろうな。』などと余裕を持って眺めていました。
ただしテキストそのものは、かなりアレです。
多分ここのゲームを初めてプレイする人なんかは、深読みをして『天界と魔界のせめぎ合いの中で主人公がどう行動するか、おそらく主人公はどちらの世界においても重要な人物に違いない。』などと考えたりするのでしょうが、大はずれです。
真実は真実故に真実である、とばかりに次々と軟弱な精神を持つユーザーをふるい落としにかけてきます。
さすが、クラフトワーク!
これからやろうとしている人がいないとも限りませんし、ストーリーを追うのは控えめにしておきますが、主人公は教育実習を受けている大学生。
その中で、5人の少女と出会います。
主人公の夢の中で陵辱されていた少女、屋上で出会う少女、主人公の幼なじみ(?)の少女、図書館で出会う眼鏡娘、弓道場で出会う少女の5人。
夢の中で出てきた少女(ただし翼無し)をはじめとし、深読みしようとすればいくらでも深読みの聞く展開ですが、高任の意識は全て図書館の少女に向けられました。
もちろん、眼鏡娘。
でも、眼鏡をかけているとか、一見気が強そうだとか、知識が豊富で台詞1つ1つが格好良いなどという軟弱な理由で注目していたわけじゃあありません。
ただ、その少女が眼鏡をかけていて、一見気が強そうで、知識が豊富で台詞1つ1つが格好良かったから注目しただけ……もとい、なんとなく気になったんです。(笑)
ゲームそのものは、毎日どの少女に会いに行くかでストーリーがちょっとだけ変化するタイプのゲームで、シナリオそのものに意味を求める人にとっては後味は最悪でしょう。
9日目でストーリーは終結しますが、4日目ぐらいになれば大体の人はこのゲームに流れる怪しげな雰囲気をかぎ取るでしょう。
そう、深読みの必要がないことに。
つまるところひねりも何もありませんので、ユーザーは『どっぷりとアレな雰囲気を楽しむことに精力を傾けるのが重要』です。
そうですね、『これだけじゃ、何もわからん!』と言う声が聞こえてきそうなので、ちょっと例を取り上げてみましょう。
ただし、文章をそのまま載せるとやばいので内容はともかく、高任が適当に短縮アレンジしたやつなのでちょっと不細工ですが。
先に断っておきますが、このゲームのテキストはもっと上手です。読者の不安を煽るような計算された言い回しや、台詞の1つ1つが一見の価値ありです。
「その弓ってどのぐらいの威力があるのかな?」
「……もちろん、人を殺せるぐらいですよお。」
「人を…殺せる……」
少女はまるで誇らしげにさらりと言ってのけた。
それもそうだ。元々は戦争にも使われた武器なのだから、殺せなければ意味がない。
そう、殺せなければ……
ふと、目の前に幻影が浮かぶ。
舞い上がった天使を貫く一本の矢と、はらはらと舞い落ちる白い羽……
「先生にはこの弓がいいと思いますよ…」
「射っていいの?」
「本当はだめですけど、内緒で3本だけ……的より少し上を狙うといいですよお。」
僕は担当教諭の顔を思い浮かべ、それに向かって矢を射った。
矢は見事に教諭の身体を突き刺す。
「え?すごーい…」
そして次に思い浮かべたのは保健医の顔。
矢は見事に保健医の身体を貫く。
そして僕は最後の矢を、隣に立つ少女の顔目がけ、それに向かって射った。
「……っ!?」
どずっ。
子供の頃、手製の弓矢で人形を的にしたことを思い出す。人の形をした物に凶器を向けるのは背徳の快楽に満ちている。
弓矢は人を殺せる。
つまり人を殺せない弓矢は弓矢ではない。
今この瞬間、僕の持つ弓矢は弓矢として存在し得たのだ……
……狂ってます。(笑)
とまあ、言ってみれば全編そんな感じでゲームはすすんでいきます。
ちなみに図書館の眼鏡娘を、『物体は全て相似形を含む、つまり人の中には人の相似形がある。』等を呟きながら、頭を掴んで砕けるまでテーブルに叩きつけたりしました。
もちろん、ここまで読めば主人公が重度の(ぴー)で、実際に殺してるかどうかはアレなんですが(第一、次の日には女の子生き返ってるし)、まあ健全な内容からかけ離れていることだけは確かでしょう。
しかし、期待したほどの内容ではなかったです。
確かにテキストは上手ですし、あまり作為的な所も目に付かないので読み応えはあります。ただ、ゲームとしてはどうでしょう?
あまりにシナリオに幅がなさすぎますし、だからといってユーザーをのめり込ますような説得力のある内容とも違います。
……あ、説得力があるとやばいのか。(ぺしっ)
まあ、テキストにいろんな知識が詰め込まれていたので、高任個人としてはなかなか楽しめました。
ゲームの難易度はないと言っていいほど易しく、時間もそんなにかかりません。
ただ楽しんでプレイできるゲームでないことは確かで、シナリオに救いもほとんどなくて、どうも私にはこのメーカーの販売戦略が見えませんでした。(笑)
ゲームとしての体裁を整えるなら、主人公が(ぴー)という現実は1つのエピソード的に抑え、オープニングの『白と黒の対立および、白い闇と黒い光』あたりを交えて展開させるのが常道でしょう。
少なくともこれだけの力量をかいま見せるシナリオさんなら十分可能でしょうし、広い意味で面白くなるとも思います。
でも、敢えて『これ』を選んだからには多分思惑があるのでしょう。次回作あたりがとっても気になるところです。(笑)そろそろ反動でラブラブファイヤーなゲームを出しそうな気がしますし。
最後に、この手のゲームにありがちなスタッフのコメントはありません。
さすがにコメントしたくなかったのでしょうか?(笑)
というわけで、このゲームはあんまりお勧めできないです。私個人としては楽しめましたが。
文責、高任斎。
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