梅雨入りを間近に控え、カレンダーに目をやりながらふと。
 そうか、あれからもう1年になるのか……と。
 
 そう、6月5日(2008年)は……『大奥記』が発売された日。
 
 違う意味でそこそこ話題になった(ファ〇通で希にみる低評価とか)ので、内容はさておきタイトル名を聞いたことがあるかも知れません。
 まあ、瀕死連合HPの常連さんなら多分目にしたでしょうし、それの検索でここに来た人なら間違いなく……でしょうけど。(笑)
 
 発売前までは対談のネタにしようと思っていたのですが、いろんな意味で期待はずれだったので、対談ネタから外しました。
 そういう意味では正直、それほど思い入れのあるゲームではありません……絶対値の低い、ふつーに面白くないゲームというか。
 でも、実際に買ってプレイしたわけでもない(としか思えない)人間のコメントによって実状以上の不当な評価を受けているゲームをネタにすることで、表現というか言葉の怖さを知ってもらえればと思ったのが主な理由です。
 
 ネット上のコメントなどを否定、もしくは訂正するためにネタばれ豊富な感じですが、このゲーム、中古市場で異様なほど品薄状態(笑)ですし、これからあらためてプレイされる方の存在が貴重だと高任には思われます。
 というわけで、以下は、面白く読んでもらうためにゲームの進行に沿って、ちょっとばかり脚色した(おい)内容のリプレイです。
 最初にプレイしたときの記憶を元に、再びプレイし直した上で細部を表現したリプレイなので、多少プレイヤーである高任の思考に、矛盾が生じる表現が散見できると思いますが、そこは納得していただきたいと思います。
 ……かなり長いです、覚悟はいいですか?
 
 では、はじまりはじまり〜♪ 
 
 グローバルエンターテイメントといえば、時代物バカゲー……いや、高任としての個人的認識はそうなんですけどね。(悪代官とか、江戸ものとか)
 さて、今度のバカゲー(高任主観)は、どんな馬鹿オープニングになるのやら……などと、ウキウキしながらスイッチオン。
 
 ……これは、桜の木か?
 暗い背景に、木が3本……しばらくして、中央に能面を着けた人間が扇を手に現れて舞い始めます。
 
 高任は、能に詳しくないのですが、多分というかとにかく、能の舞。画面に現れては消えてゆく文字は、それっぽいですし、途中で能面が……夜叉?はて、いわゆる増女(能面の種類の1つ)とか、そういうあれか?
 まあ、大奥にあがって復讐云々のゲーム内容らしいから、多分復讐とかそういう内容の能をオープニングに持ってきたんでしょう。
 
 とりあえず、馬鹿オープニングではなさそうなのでパス。(本質的には馬鹿オープニングだけど)
 
 で、新しくゲームを始めると。
 
 卯月……卯の花が咲く頃。
 
 風流なタイトルの下に、『4月を始めます』などと説明書きが。何でしょう、テレビ画面右上の『アナログ』という文字を連想したのは、高任だけでしょうか。
 
 それはさておき、どうやら主人公らしい『時子』という女性が、挨拶するシーンから。今日から大奥にあがり、ご奉公を始めるにあたって責任者っぽい『舞子様』に挨拶という感じ。
 何はともあれ、一番下っ端である『御末(水くみやら道具の運搬等、力仕事全般)』でスタートするようで、『時子』はなんとか将軍に直接お目通りのかなうところまで出世しなければ……と決意を固めます。
 
 場面が変わり、同じ御末仲間である『お陽』と『おさき』に挨拶。
 御末の中ではおそらく『お陽』が最も古株、『おさき』は関西弁の(当時は堺言葉とかそういう表現ですけど)……後の会話で、堺の商人の娘で17歳
 年齢から察するに、結婚前の箔付けのためのご奉公でしょう……大奥で奉公していたというのは、かなり押しが利きます。
 つーか、大奥に奉公に出すと言うことはかなり有力な商人の娘と思って間違いないでしょう……でも、ちょっと砕けすぎというか、江戸っ子の魚屋の娘さん(独断と偏見)みたいな感じです。
 
 余談ですが、名前に漢字が入ってると武家出身、ひらがなだけだと町民というか、そういう出身だと思って間違いないです。
 例えば、『おさき』の場合、人別帳(今で言うところの本籍登録)では、おそらく『さき』か『さきこ』と書かれているはずで、これが武家の娘だと漢字一文字の『咲』という名前であることが多い。同時に、多分『お陽』は『陽』というのが本名で、武家娘でしょう。
 時代劇で良くでてくる『おきょう』と『おきよ』は、本質的に同じ名前です。
 前者は、武家娘で『京』、後者はおそらく町人で『きょう』……が、『きよ』になって、『おきよ』。
 つまり、名前の最初の『お』は他人を呼ぶときの敬称の名残というか、町人や農民ならいざ知らず、武家出身の娘さんが自分で自分の名前に『お』をつけるのは絶対に変。
 
 と、いうわけで……高任は、いつものように(笑)心の中のスイッチを『時代物』から『ファンタジー』へと切り替えました。
 ゲームを楽しもうとするとき、知識とかそういうものは時として邪魔になるので。
 
 まあ、何はともあれ挨拶が終了し、御末仲間の『お陽』から1つ仕事を頼まれます。
 御仲居(食事係)の『おみさ』様が用事があると言ってたので、その用事が何か聞いてきて欲しいと。
 何やら文字通り子供の使い(笑)ですが、ゲームの雰囲気や操作になれるという意味での常套手段です。
 左スティックで移動、〇ボタンで会話、部屋への出入り……などと、説明されたりも。
 さてそれほど広くもないマップの中『おみさ』様を探し当てるのは簡単でした。
 
おみさ:『3日前に高野豆腐を切らして、その買い出しを頼んでいたんだけど…?
 
 3日前って。(笑)
 
 で、とんぼ返りして『お陽』の元へ。
 
お 陽:『いっけない。忘れてた。あの時自分も手を離せなかったから、御犬子供(雑用全般…)のやえちゃんに頼んだんだった…』
 
 どこだ、やえちゃん。
 
や え:『あ、買い出しはすませたけど、まだそれを届けてなかった……あ、でも、呉服(そういう役職)の『千鶴様』にお借りした針を返しに行かなければ…』
時 子:『ならば、それは私が返しに行きましょう、挨拶にいかねばなりませんし』
 
 むう、今度は千鶴か。
 
や え:『千鶴様なら、長局(奧女中の部屋)の十にいらっしゃるはずです』
 
 うむ、この子は出世しそうだな。何が必要(誰がどこにいるか)なのかよくわかってる。
 などと、千鶴がいるらしい部屋に……向かったのですが。
 
千 鶴:『針を貸してから何日経ったと思っている?』
時 子:『あ、いえ…私が借りたモノではないので、詳しくは…』
千 鶴:『ここへ来たばっかりでもう言い訳癖か?大体、小娘のやえに貸した針を、何故お前が持っている?
時 子:『ですから、私が代わりに…』
千 鶴:『我ら(呉服)にとって針は大切な道具。ご奉公のために上様から拝領したと言っても過言ではない。その大切な道具を…(以下略)』
 
 この人、話通じない……。
 
千 鶴:『12日に呉服の定例報告がある。そこでやえと時子が結託して、針を返さずに私を困らせたと報告しよう
 
 タチ悪いな、こいつ。
 
 どうしたもんだか……と、一日が終了。
 
 さて、夜が明けて……というか、いきなり15時から開始。
 そりゃそうか、仕事が終わってからとか、一段落がついてからじゃないと自由に動けないよな。ちなみに、20時消灯。
 ふむどうやら『時子』の自室は長局の七か。(この時点でのマップは、長局1〜11と、御用所(トイレ)と御末部屋のみ
 何はともあれ、誤解であることを説明しよう……と千鶴に説明するも。
 
千 鶴:『おぬしの本心なぞに興味はないわ。やえとおぬし2人を追い出してくれる
 
 まあ、こんな感じで……八つ当たりというか、言いがかりというか。(笑)
 何はともあれ、時間を無駄に出来ないので、近くにいた『おきみ』に話しかけてみると…。
 
おきみ:『イジメなんかに負けたらいけません…』
 
 何故知ってる?(笑)
 
 『お陽』曰く『ここは女の園だから、うわさ話は千里を駆ける』らしく。
 何はともあれ、このままだとこのままどころか、千鶴の証言を鵜呑みにして大奥を追放されてしまう。
 そうだ、聞いた話によると、『千鶴』の新人というか女中イジメは有名だとか。ならば、過去にいじめられた女中達の証言を集め、『千鶴』の証言がでたらめであることを証明するしかない。
 
 と、言うわけで……御祐筆(手紙とか、文書作成係)の『お智』に紙と筆を借りて、女中達に証拠として書いてもらおうと、時子は狭いマップの中を歩き、歩き……歩き。
 
 だあっ、このスローモーな歩みがいらいらするっ!
 
 などと、頭をかきむしっていたところ『×ボタンを押しながら移動すると、走ることができます』などと教えてもらいました。
 まあ、当時の礼儀作法というか、歩く姿は百合の花というか……頭を上下移動させず、肩を動かさず……というのが基本です。
 このゲームの主人公の歩様はこれに忠実なんですが……走ると、『歩く動作の早回し』になって、滑るような動きになります。(笑)
 まあ、ネット上で『ホバー移動』などと酷評されてた様ですが、実際そこまでひどくはないし、そもそもゲームの中身には関係ないです。
 
 さて、走ることを覚えてから、ゲーム進行は飛躍的にテンポアップしました。
 『お瑠璃』、『おきみ』、『おかな』、『お陽』、『お夕』、『やえ』、『おさき』などから証言を集め(紙に書いてもらい)、これだけでも千鶴がみなに恨まれているのは一目瞭然というか。(笑)
 
 ついでに『千鶴』にはなしかけ、『目的はふたりをここから追い出すことじゃ。実際にやったとかそんなことは関係ない』などと、無実の2人に罪を着せようとしていることを口走らせる事に成功、それは『時子』自身が紙に書き留めました。
 そして最後に、筆と紙を貸してもらった『お智』からも、『昔、千鶴に文書を隠されて一大事になるところだった』などと証言をもらい、情報収集率が100%に。
 
 ちなみに、証拠集めというか、重要な証拠は『札』として手に入り、それがどのぐらい集まったかで、情報収集率が示されます。
 つまり、100%になった時点でもうやることはない、準備万端ということなんでしょう……自動的に、申し開きというか、決戦の日前夜に、時間が飛びます。
 
 さて、申し開きの場。
 呉服頭の『おこち』様を前に、『千鶴』と『時子』の2人。
 
 ……やえは?
 
 『千鶴』の証言を元にして、当事者である『時子』の申し開きの場なわけだから、この場に『時子』と結託したはずの『やえ』がいないのは、おかしくね?
 
 まあ、何はともあれ、『時子』は『千鶴』の証言がでたらめであると言い張り、過去に『千鶴』がいじめた女中達の証言をずらずらと並べることで、『千鶴』の証言そのものの正当性が怪しいことを証明したわけで。
 
千 鶴:『お、おこち様は…部下である私より、時子殿の方を信用なさるのですかっ?』
おこち:『時子殿を信用したわけではありません。証拠を信じただけです
 
 そうして、『時子』を陥れようとした『千鶴』は、反対に謹慎処分を命じられ、『時子』は危機を脱したのでした。
 
 うん、まあ……冷静に考えると、この頃の人間に合理性とか、そういうものを求めても無駄というか、そういう時代だったんだよなあ。
 こんな風にぬれぎぬを着せられても、どうにもならないことの方がほとんどだっただろうし、結局は上に立つ人間の器量次第ってのは怖いことだなあ…などと、しみじみと考えた高任でした。
 
 
 皐月……早苗を植える頃。(五月を始めます)
 
時 子:『そ、それは…本当でございますか?』
 
 そんなシーンから始まったわけですが、先月の働きが認められ、時子はわずか1ヶ月で『御末』から『御三の間(大奥の掃除や火鉢等の片づけ)』にランクアップ。
 はあ、先月の働きですか……何かイチャモンをつけてきた人間を、け落としただけのような気もしますが。
 何はともあれ、先月『ああ、誰かかわいそうに思って、手伝ってくれないかしら』などと泣き言をいってた『おかな』が同僚となりました。
 『新しい着物がよく似合っている』などと誉めてもらって、『あ、やっぱり役職によって着物が違うのか』と思ったのですが……だったら、何故先月は同じ『御末』だった『おさき』だけが1人だけ違う着物を着ていたんだろう……謎だ。
 それはそれとして、『おかな』曰く『もう火鉢の片づけも終わったし、しばらくは掃除だけで楽な仕事よ。建物が割と入り組んでるし、時子殿はしばらく建物の中を見回るのが言いかもね
 
 なるほど、それでは失礼して……と、『御三の間詰所』からでた瞬間。
 
お 紺:『昇進おめでとう、時子殿』
時 子:『ありがとうございます、お紺様』
お 紺:『入ってひと月で昇進とは流石ですね。人をけ落として自らがのし上がるとは、人は見かけによらないものね
時 子:『……』
 
 何も言わないあたり、時子自身も自覚があったか。(笑)
 まあ、そんな嫌みだけですむはずが無く。
 
お 紺:『ですが、先輩方を甘く見てはいけませんね……新参者が出過ぎた真似を。あなたのような者を放置しておくと大奥の秩序が乱れます
時 子:『……あのようなことが秩序なのですか?それなら不要だと存じます
 
 当時、身分が下の者が上の者に口答えをする……それは命がけの行為です。そういう意味で、『時子』が秩序を乱す存在であることは否定できないんだが。
 
お 紺:『……言わせておけばこの田舎者がいいでしょう、あなたの流儀であるやり方で、あなたを処分してやります。女中達に、あなたがある事件を起こした証言させて、大奥総取締役である舞子様に報告します……くくっ、起こしてもいない偽の事件をね…おほほほほっ!
時 子:『な、なんですって…?』
 
 さて、この『お紺』様。
 先月のゲームの進行には直接関係なかったのですが、とりあえず全員に話しかけた方がいいのかと声をかけて回ったところ。
 
お 紺:『あら、ここに来て早々さぼってるの?見た目のいい女にろくなのはいないって言うけど…(以下略)』
 
 などと、嫌みを言った人だったり。
 まあ、好意的に受け取れば『アンタは美人ね、気に入らないわ』と誉められたわけですけど。(笑)
 多分、いつになったらツッコミが入るんだろうと待ってる人もいるでしょうが、『さぼる』は『サボタージュ』を元にした造語であり、当時の人間がこんな言葉使うわけがありません。(笑)
 でも、これはゲームとしてはむしろ当然で……必死に勉強して、当時の世界観はおろか、言葉遣い、文化等を忠実に再現すると、プレイヤーが理解できないだけになります。
 つーか、前に書いた名前の件云々……だけでも、『へえ、そうなんだ』と頷く人間の方が多いと思いますし。
 高任は、ゲームの本質とか、そういうものに致命的な影響を与えない限り、あまり気にしません……まあ、女中の名前が『キャシー』とか『アリステア』とか『キキ』とかでてきたら、さすがにツッコミ入れますけど。(笑)
 
 というか、この場面での正しいツッコミ。
 
 ……お紺様、舞子様のいる部屋の近くで、そんな大声を上げたらばればれですよ。
 
 と、いうか……この会話をいろんな人間が聞いてたのは明らかで、もう次の瞬間には、誰に話しかけても『いやあ、まさに一触即発って感じだったな』とか『前から気に入らなかったのよ、先月みたいにやっつけてしまいな』などと、この話題ばっかり。(笑)
 それはさておき、色々と建物の中を見て回り……別に入り組んでるわけでもなかった(笑)ので、説明書に載ってる地図を見ながら軽く1周すれば覚えられる程度。
 ちなみに、スタートボタンを押すと地図がでて、部屋の中にいれば自分がどこにいるか赤く光って示してくれます。ただし、廊下を歩いていると、現在地は教えてくれません……まあ、それほど広くもないし必要ないけど。
 
 一回りして、『あれ、イベント進まないんだけど』などと首をひねりながら詰所に戻り『おかな』に話しかけると……イベントが進みました。
 なるほど、外を見て回れとか言いながら、そのまま部屋の中に戻るのが正しいルートだったか。(笑)
 『お紺』様は直参旗本の娘で家柄も良く、大奥での奉公期間も長い古株女中で、彼女に圧力をかけられたら女中達は逆らえない云々。先月一番力になってくれた、『お陽』殿に相談してはどうか…。
 などと、『おかな』が積極的に関わり合いになりたくない事をはっきりさせたので、お陽に会いに行くことに……さっき会ってきたんだけどな。
 
 このゲーム、基本的にイベントは順番通りに起こります不連続なイベントに見えても、順番通りに、このイベントを起こしてからでないと、話しかけても何も起きない……というタイプのゲームです。
 
 『お陽』に会うためには、別の建物へと移動しなければいけません。(建物同士は、廊下でつながっており、身分によって行けるところと行けないところがある。そこを見張っているのが、御切手と呼ばれる役職の女中)
 御切手に話しかけると、通せんぼしている彼女らが道をあけてくれるんですが……そこの移動はオートモードなので遅い。
 時間が経過するわけではありませんが、ずっと走り続けている(笑)ので、ちょっとイライラするのは確か。
 余談ですが、人に話しかけるときは近くによって……ですが、この御切手、近くに寄りすぎると反応してくれません。(笑)
 真正面から、最も近づける位置から心持ち後方……そこでしか、反応しないのは、やはり当時の礼儀の1つである人との間合いの重要さを反映したシステムと言えましょう。
 
 さて、『お陽』に話しかけたところ……先月(つーか、昨日)まで同僚ではあった『時子』に大して、とても丁寧な言葉遣いです。
 わずか1ヶ月の新参者ではあっても、役職が上の者をきちんと立てる……当時はというか、今もだけど、これが普通であり、本当は『時子』があれ。
 それはそれとして、どうやらこの『お紺』様も千鶴同様嫌われ者らしく、『お陽』は積極的に『時子』への協力を申し出ます。
 何はともあれ、『お紺』様がどのような偽の事件をでっち上げるかを知らなければ防ぎようがない……というわけで、情報集めのための偵察というか、『聞き耳モード』開始。
 普通では情報を得られないこと……それはもう、密談をこっそりと聞いたり、忍び込んだりするしかありません。
 某家政婦は見ていたの積極版というか……ただし、これは他人に見つかってはいけない行為。
 見回りをしている人間を避け、なんとか目的地にたどり着く……そんな障害を乗り越えなければいけません。
 
 まあ基本的にまだチュートリアルなので、楽勝で『お紺』様の自室である、長局九に辿り着きました。(聞き耳の目的地には、そういうサインがでる)
 
 さて、暗闇の中……『お紺』様は部屋の中央で正座して考え込んでます。
 
お 紺:『さて、あの生意気な『時子』とやらをどうやって陥れてやろうかしら……そうですわね、ボヤ騒ぎなんてどうかしら…物を盗むというのもいいわね…よし、こんな感じにしましょう5月16日夜、ボヤ騒ぎが起こる。犯人は『時子』で、16日に台所で炭を盗み、上様の御座所に火をつけた。火をつけて逃げた後は、井戸で手を洗ってから戻った。台所で炭を盗んだところは……そうですわね、御仲居の『おきみ』が見ていたことにしましょう。火をつけて逃げたところは……そうですわね、『お瑠璃』あたりを火事当番にして、逃走する時子らしい後姿を見たことにしましょう。最後の井戸での手洗いは、私が見てたことにしましょう……よし、これで完璧ですわね。見てなさい、田舎娘(句読点をのぞき、ほぼ原文そのまま)』
 
 ……まあ、ゲームとしては仕方ないのかも知れませんが、いろんな意味で都合良すぎませんか、この独り言。(笑)
 いや、待てよ。これって盗み聞きをしている『時子』をひっかけるために、わざとこんな事を聞こえるように言ったんじゃあ……
 
 高任の心配をよそに、この『お紺』様の誰かに聞かせるためとしか思えない独り言を元にして、『時子』は動きます。
 ここからが、皐月の行動モード(これまでは、各月の事件発生まで……イメージとしては、解決編が、本編でしょうか)になるわけです。
 まずは、昨夜の報告を『お陽』に……話しかけてみると。
 
お 陽:『頑張ってください、時子様』
 
 うわ、こいつ役にたたねえ……いや待てよ。
 
お 陽:『調子はどうですか、順調に情報は集まってますか』
 
 むう、コメントが変化した。もう一度。
 
お 陽:『時子様…少し思いついたのですが…』
 
 よし、イベント開始。
 このゲーム、高任的にはちょっと懐かしい感じなのですが、何度も話しかけてやっとフラグが立つことがあります時間帯によってコメントは変化しますが、基本的に同じコメントが繰り返されるので、変化するコメントはかなり怪しい。
 時間を無駄にしないためにも、基本は、同じ人間に大して3回から4回話しかけてからその場を離れる……ガンシューティングと同じ感覚ですね。(笑)
 
 さて、後は『お紺』様の独り言を信じて、御切手の『おゆみ』に話しかけて16日夜の上様御座所の警護を厳しくしてもらい……え、ダメ?
 きちんと文書の形で、『舞子様』に提出しないと、自分の権限では(以下略)
 ふむ、文書と来れば御祐筆。先月、筆と紙を貸してくれた『お智』様の出番……って、今日はどこにいるのか。
 
 さて、このゲームでは、奇数日と偶数日によって、人のいる場所が違います。
 もちろんずっと同じ場所にいる人もいれば、最悪、奇数日にしか会えない人もいます。何じゃそら……と思う人もいるかも知れませんが、別にこれは当たり前です。
 役職にもよりますが、この時代のいわゆるお城勤めというか、武士の仕事の場合、平均すると、1日働いて1日休むというのはざらです。(1週間働いて1週間休みとか、1ヶ月のうち、仕事は10日間だけとか)
 後になって思ったことですがこれは多分ユーザーのことを考えたシステムです。
 日によって、人のいる場所が違う……うろついているのは仕事の日、休みの日はどこかで休んでる。それはつまり、誰がどこにいるかを探し求めなくても、毎日決まったルートを歩いていれば、一部屋一部屋誰がどこにいるかを確かめなくても、時間はかかるがほぼ全員に会えるからです。
 重要な人物は、毎日同じ場所にいたり、役職を連想させる場所にいたり……裏を返せば、『今月はいつもと違って同じ場所にいる』もしくは、『2日間姿をまったく見ない』人物は、どこかで重要な役割を負っているという風に、ゲームを進める上で重要なヒントになることも多いなど……まあ、本音を言えば制作者はもうちょっと他に考える部分があったんじゃないか、とゲーム全体的には苦笑するしか。(笑)
 
 さて、『お智』様は役職どおりに御祐筆詰所にいて、『舞子』様への警護願いをしたためてくれたので、それを持って『舞子』様の元へ。
 とりあえず、これで警護は強化されることになりました……後は、台所の盗みの現場と、井戸の手洗いの嘘証言を潰すために、あ『お瑠璃』の証言も……
 
 まあ、台所と来れば御仲居の2人なんですが……イベントが進みません。
 あ、そうか……今月もまだチュートリアルっぽい作りだし、多分もう一度『お陽』に相談するってとこか。
 ビンゴでした。
 『お陽』と先月申し開きを聞いてもらった『おこち』様が、ふたりして当日井戸を見張ってくれると約束してくれました。
 さて、誰がどんな話を持ってくるかわからないので、とりあえず出会った人間にはいつも話しかけるようにしていたのですが、ナイスな情報がとび込んできました。
 
おかな:『お瑠璃が長局に行ったまま戻ってこない。油売ってるのか…』
 
 さて、この『お瑠璃』ですが、いわゆる風邪をひいていて、部屋の中で倒れていたというか……慌てて医者の元へ行き、薬を作ってもらって……まあ、当日の報告で嘘の証言はしないという誓約書を書いてもらうことに成功しました。ちなみにこのイベント、後で検証してみたところ、例外的に独立した流れになってます。『おかな』と会話するまでもなく、長局に行き、『お瑠璃』を見つけて何度が話しかけると、倒れてイベントが進みますので。
 
 あれ、先月は15時から行動開始だったのに、今月はちょっと行動開始が早い……なるほど、『仕事が暇だから』なのか。まあ、それはさておき、後は、台所の…以下略。
 さて、情報100%……どこからでもかかってきやがれ『お紺』様……などと、『時子』は自信満々なのですが、プレイヤーである高任は心配で心配でたまりません。
 
 何故か?
 
 『お紺』様が独り言で漏らした計画を阻止するために動いたのですが、もしこの計画が本当に実行されようとしているなら、『時子』の動く先々に『お紺』様の圧力というか、影がちらついていなければいけません。
 例えば、嘘の証言を強いられるはずの御仲居の『おきみ』……『時子』に対しても平然とした様子で、後ろ暗い様子はまったくありません。
 つーか、16日の台所当番は『おさき』だったり。
 こんな事、『こういう証言をしなさい』と圧力をかけた際に気付かないはずがありませんし、圧力をかけられる『おきみ』自身が『自分が当番ではないので、無理です』と告げるはずです。
 なのに、話をする他の女中からは『なんか仕事もせずにこそこそと動き回ってるみたいね』とか『舞子様に会いに行ったり…(以下略)』などと、『お紺』様が、『時子』を陥れるために積極的に行動してる様子が伝わってくるのです。
 だとすると……あの独り言はやはりブラフで、イベントを進める上で自分が騙されたことに気付き、本当の計画を潰すために動くというシナリオの流れがあったのでは……と心配になるのも当たり前というか。
 
 そして、申し開き当日というか、……申し開きの結果、『舞子』様は、『お紺』様に謹慎を命じました。
 
 勝負に勝った爽快感はなく、プレイヤーの心にはただただむなしさだけがあります。もちろん、『戦いはむなしい』とかそういうモノではありません。
 なんと、この『お紺』様……自分の計画に対して、何も根回しをしていなかったのです。
 独り言で述べたとおり、『これこれこういう事件があり、女中達の証言からして犯人は時子です。追放してください』……と『舞子様』に訴えただけ。
 
 まあ、井戸の件は『お紺』様自身だから仕方ないとしても(『お陽』、『おこち』様の証言によって論破)……台所で炭を盗んだ件に関して『16日の台所番はおみさ様でした。おきみ様がそれを見ていたはずがありません』という発言に狼狽え『あ、ああ、間違えました…おみきではなく、おみさがそう証言したのです…』などと弁明を始めたり。
 つまり、自分の頭の中で考えた計画を、そのまま『舞子』様に報告した……という杜撰という言葉もまだ生ぬるいひどさ。
 しかも、上様御座所でボヤ騒ぎはどうするんだろう……と思ってたんですが、なんとこの『お紺』様ときたら、自らそこに忍び込んで柱に炭を塗りつけたというから開いた口がふさがりません。
 
 ボヤじゃなくて、火事になるぞそれ。
 
 みなさんもご存じのように、江戸では火事が恐れられており、火付けは即死罪です。つーか、火事になったら、自分の寝てる場所も燃えちゃうじゃん。死ぬよ、アンタ。
 申し開きどころではなく、大奥は消失し、死人もでて、自分の命も危ないというか……いや、そこまでの騒ぎにして、有無を言わさず『時子』を下手人にしたかったのか?
 好いた人間に会いたいがために町に火をつけた女じゃあるまいし……いや、ひょっとして『ボヤ騒ぎを偽造するために、炭を擦りつけて、焦げたように見せかけようとした』のか?つーか、そもそも台所で炭を盗むって…まあ、いいかどうでも。
 
 ちなみに、深夜上様御座所に忍び込み、柱に炭を塗りつけた場面を、自ら警護にあたっていた『舞子』様に目撃されたとか。
 
 『舞子』様、こんな茶番の申し開きをやるまえに、とっとと『お紺』様に死罪を申しつけたらどうですかっ!?
 っていうか、申し開きも何も、アンタ全部わかってるはずやんっ!
 
 ぜーはーぜーはー。
 
 ちなみに、この申し開きで間違った選択を続けると、時子は大奥から追放されます……全てを知っていながら(台所方から、昨夜は何もなかったなどと報告を受けている)、『時子』が犯人ではないことを百も承知していながら平然と『時子』を追放処分にする『舞子』様……おそろしい娘(こ)。
 などと、テレビ画面を前に固まった高任がいたり。
 
 謹慎処分を下した『お紺』様を下がらせた後、『舞子』様は『時子』に語ります。
 
悲しいことですが、大奥とはこういう場所ですこのようなことはこれからも起こるでしょう……時子、あなたはお紺のように心の中の闇の見込まれたりせず、まっすぐに、正しく…奉公に勤めるのですよ…』
 
 お前が言うな。
 
 いやあ、この時点では絶対このゲームの対談をやろうと思ってました。(笑)
 さすがに制作者もまずいと思ったのかこの後はさすがに多少マシになって……良い意味で多少普通に、悪い意味で味が無くなったというか……しくしく。
 
 
 ……って、最初の2ヶ月で既にこの分量かっ。
 ええい、こうなったら感想日記だというのに、続き物にしてくれるわっ!
 
 感想日記『大奥記』その2へ続く。

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