鬼爪とかいて、『ヲイツメ』と読むらしいです。
 
 さて、このゲーム2年ほど前(2003年)に発売されたらしく、特に何も調べていないので断言はできませんが……おそらく、世間的な評価はかなり低かったんじゃないかと思われます。
 絵柄はともかくとして、ゲームアビリティが悪いというか、声がすごすぎとか、シナリオがシステムに合ってないとか。
 じゃあ、全然ダメじゃん、なんでわざわざ感想日記書く必要があんのよ……などと言われそうですが、ダメゲーはダメゲーでも、制作者の能力が根本的に足りないおよび感性がアレ故のダメゲーではなくて、ゲームを構成する要素がてんでバラバラではあるけども、要素そのものを単独で評価するならば、これはなかなかにポテンシャルを秘めている……いわゆる、調整能力が欠如したダメゲーではないかと。
 異論はあるでしょうけど、このゲームは『話にならん』で、ばっさりと切り捨てるのは惜しいような。
 
 さて……肝心のゲームはどういった内容かというと。
 
 主人公を含む9人の男女……ある者は帰宅途中、ある者は仕事中に襲われ、眠らされた上で連れてこられたのは、何処とも知れないふるびた廃校舎。
 自分たちのおかれた状況を把握することができずに戸惑う9人に……おそらくはタイマー式だったのだろうが、教卓の上に置かれていたからくり人形が恐るべきメッセージを彼らに投げつける。
 
 ここから生還できるのは一人だけだ……
 
 早い話、ここは無人の島であり……この島のどこかに一人乗りのクルーザー(笑)があり、そのクルーザーを動かすための鍵が校舎のどこかに……云々。
 さらに、この島のどこかには彼らを襲撃する鬼が潜んでいる……ちなみに、主人公というかプレイヤーが鬼です。
 校舎の周りは熱帯雨林を思わせるような密林に囲まれており、毒蛇がうようよしてて、結局彼らの行動範囲は校舎まわりに限定されていたりするのはまあよしとして。
 まあ……ごくふつーの思考能力があれば、その場に連れてこられた9人のうち1人が鬼であることは瞬時に悟ることができるはず。
 というのも……9人を殺すのが目的ならば、こんな面倒な事をする必要がないわけで……だったら、彼らの行動は何らかの手段によって監視されていると考えるのが妥当。
 もちろん、遠隔地から校舎内全てをカバーする監視方法が確立されている可能性もありますが、監視するだけじゃ予想外の出来事に対処できねえというか……ごくふつーにかんがえると、鳩の中の猫というか、鬼かどうかはともかくとして最低でも9人の中に一人の監視役は絶対必要でしょう。
 
 まあ、2年も前のゲームだから設定をばらしても問題はないでしょうし。
 このイベントそのものが何のために行われているかというと、極限状況におけるサバイバルによって、精神的および肉体的に強靱な者を選別するのが目的なわけで。
 なんで選別するかというと……あらゆる客のあらゆる嗜好を受け止める超高級娼婦(?)にはソレが必要らしいです。早い話、やばい組織がこれはと思った女性を調達、および選別するためにこんな手間のかかることをやっているワケで。
 勝ち残れなかった女性も、超高級ではないにしろ娼婦として……らしいですが。
 なんで男性が混じってるの……と言われると、多分、鬼役の存在を目立たせないためか、捕らえられたのが全員女性だと、自分たちがそういう目的のために……という想像が容易になってしまうためだと思われます。
 主人公……と言うか、プレイヤー。
 相思相愛だった姉が行方不明……を追ううちに、組織の存在に気付き……このイベント犠牲者になった姉の保護を条件に、鬼役として組織に協力しているとか。
 
 さて、ここで首を傾げたあなた……正常です。
 生き残るのは一人……早い話、『殺し合え』と半ば宣言しているにもかかわらず、実際に殺し合われたら非常に困るわけです。(笑)
 あくまでも極限状態において、どれだけ理性を保てるかを判断するためのイベントなのですから、全員を血の海に沈めてガッツポーズを決める女性……は、多分組織の求める方向とはちょっと違う人材のはずで。
 
 
 ……と、まあこの状況を前提としてゲームシステム。
 色々と前ふりを経て、女の子達は疑心暗鬼に陥り(?)それぞれが単独行動を開始……さあ、鬼の出番です。
 鬼ができること、襲撃、陵辱、観察の3つ。
 襲撃……は、女の子を傷つけないようにダメージを与える。
 陵辱……は、文字通り陵辱。
 観察……は、女の子が何をしているかじっと観察する。
 
 どれを選択しようとも4回で女の子はリタイアします……観察って意味あるのかなとか、襲撃と陵辱って、主人公が鬼ってばれるやん(ゲーム後半ならともかく、前半だと他の連中が主人公排除に団結するんじゃないかなあ)……などの疑問は、気付かない振りをしてあげましょう。
 リタイアさせたはずのキャラが日常イベントでいきなり復活したり二人一緒に行動してはずのキャラが単独行動してたりあれだけ大きな悲鳴あげたら他のキャラに聞こえるだろとか……ツッコミどころは満載ですが、それはそれでバカゲーとして楽しむことは可能です。
 まあ、無人島の廃校舎で……高任は最初笑い転げ回りましたが、わざわざ組織が無人島に校舎を建てたという可能性もありますな。
 
 なんとなく想像がつくかも知れませんが、ゲームの流れとしてはひたすら1晩に4回か5回、鬼は誰を襲撃するか決め(誰も選ばないという事はできない)、夜が明けたらまた次の夜……時折、2回襲撃されたキャラの日常イベントを挟んだりしますが、結局はキャラを選択して襲撃……を繰り返すだけの、作業テイスト全開の単調な内容でしかありません。
 ちなみに、陵辱を繰り返していると『もう、どうでもいいわっ』と、主人公がキャラを全員集めて、ハーレムエンド。(もちろん、組織の人間が来るまでですが)
 最後に勝ち残ったキャラに対して主人公が何もしてない(他のキャラに対してはすべて監察のみ)と、組織がつぶれて姉を救い出すことに成功エンド。
 最後に勝ち残ったキャラに対して主人公は何もしていないが、他のキャラに対して襲撃なり陵辱を行っている場合……精神的に崩壊した姉との再会エンド。
 最後に勝ち残ったキャラに対して主人公が何らかのアクションを起こしているとき、そのキャラの超高級娼婦としての結末エンド。
 
 このゲームではまったく活かされていません(笑)が、このシステムでの妙味は、プレイヤーの意志で女の子の状態をほぼ完全にコントロールできることだと思うんですよね。
 襲撃なり陵辱、観察によって女の子のストレスを数値化して目に見えるようにすれば、かなり戦略性とか増してくると思いますし、極限まで追いつめられた女の子とそうではない女の子……これで、女の子の移動までもある程度コントロールできるシステムだったら、色々とイベントを起こせそうでわくわくしますが、このゲームでできるのは、誰を勝者にするかだけです。
 テキストを読む限りでは、登場キャラ一人一人にそれなりの背景というか設定を考えていた感じですが、おそらくシステムと連動させることができずに諦めたのか……ただ、ひたすらエッチシーンを追うだけのゲームになってしまい、ゲームシステムの可能性の芽を全部つぶしちゃってます。
 
 前半部分において、主人公の心情描写というか……こう、極限状態において争い合うのは当然と思っているのに、女性キャラの醜い行動に対して憎悪に近い感情を抱いている……みたいなテキストがありますが、それは高任のかんがえるところ、鬼役としての経験からくるものではなく、かつて愛する姉がこのイベントでの勝者になっているあたりの影響かなと。
 これについてはゲームで何も語られていませんが、主人公にとって姉は特別な存在で……この状況においても姉は他人を貶めることなくただ勝ち残ってしまった……みたいな幻想を抱いていると言うことにすれば、この状況で他人を貶めようとしないキャラに対して襲撃をためらう……もしくは、そのキャラを貶めようとするキャラを襲撃して助けるみたいなイベントを挟めばぐっとリアリティというか、ドラマ性が生まれるでしょう。
 そのキャラが主人公の幼なじみとかにすれば、姉の存在および、主人公が姉に惚れていた事実も絡めて……『私、あなたのお姉さんみたいになりたいと思ってたから……』と、主人公に対する恋心とセットにすれば、とりあえず高任はもうダメです。(笑)
 まあ、特定のキャラに設定を偏らせると他のキャラのかねあいが難しくなりますが……ちょっと考えるだけでも、主人公と同じように姉の行方を捜しているキャラとか、反対にどんな手段を使っても生き残りたいという理由を抱えているキャラとか……ただ、追いかけてエッチシ−ンを拝むだけじゃなくて、いくらでもキャラの内面に踏み込んだシナリオを書くことはできたと思うのです。
 制作時、何らかの拘束があったのか…良い話ではなくあくまでもエロに徹したかったのか、シナリオをつめる時間が与えられなかったのか……。
 
 正直なところ、このゲームそのものに高い評価は与えられませんし、間違ってもプレイしてみなさいなんて言えません。
 しかし、このゲームのシステムというかテキストからかいま見える設定というか、そういうのをじっくりと練り込んだ上でこのゲームを作り直したとしたら、高任としてはかなり心を惹かれます。
 というか、リメイク希望。

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