まあ、遊びは真剣にやらなきゃ面白くないとか。
 というわけで、お遊び企画……『偽チョコ対談』
 
 
ラオウ:「まあ……色々あったが、とりあえずお疲れ(笑)」
高 任:「うむ、今この場で、しかも本人が言うのはアレですが、やはり色々と書き直したいなあ」
ラオウ:「そうだろうねえ」
吉 井:「いきなりダメだしですか、ラオウさん(笑)」
高 任:「いや、たぶんラオウさんが思っているのとは別の理由ですが」
ラオウ:「ん?麻理絵が、失敗したからとちゃうん?(笑)」
高 任:「というか……元々考えていた麻理絵の設定をね、俺としてはそれほど重い設定でもないよな……と思ってたんですが、どうも知人というか読み手の反応から鑑みるに重すぎるようなんで、急遽ベクトルをねじ曲げたんですよ……」
ラオウ:「うむ、その件に関してはきっちり突っ込んでやるから後にしろ(笑)」
吉 井:「しかし……最終話の、上中下、完結編、しかも1、2……ってなによ(爆笑)」
ラオウ:「あれは……ネタですよね?俺はかなり笑いましたけど(笑)」
吉 井:「え?」
高 任:「まあ、わかる人だけ笑ってくださいってネタですが、さすがにラオウさんはわかりますか(笑)」
ラオウ:「そりゃわかります……ああ、なるほど。最終話は全部で8話かと(笑)」
高 任:「そこまでわかっていただけると、冥利に尽きるの一言ですな(笑)」
吉 井:「いや、何のネタかわからないんですけど?」
ラオウ:「まあ、そんな小ネタわからなくても人生には何の影響もありません(笑)」
吉 井:「人生に影響ないなら、別にいいです(笑)」
高 任:「影響はないかもしれませんが、大抵の人生は、無駄を抱えることによって豊かになっていく事が多いと思います」
ラオウ:「じゃあ、高任さんの人生は豊かなのかね?」
高 任:「うむ、餓死寸前だよ(爆笑)」
ラオウ:「おいおい」
高 任:「まあ、今の世の中だと人生とっくに餓死してる人間がごろごろしてるみたいだから、相対的に言うと、俺の人生は豊かだったなあと、思うわけでありますよ(笑)」
吉 井:「すでに過去形(笑)」
ラオウ:「まあ、高任さんの人生はもうだいぶん前に終わってるから(笑)」
高 任:「気分的には、もう余生ですな」
ラオウ:「……素で、流されても困るんだが」
高 任:「素で流し返したらええやん」
吉 井:「いや、それ読み手が困るから……というか、何があったか知らないけど、やさぐれてるね高任君」
高 任:「まあ、いつものことです……で、話を戻しますが…最初の予定で最終話は4話分だったんですけどね……最終話手前で42話だったでしょ……ああ、残り8話にすれば全50話でキリが良いですな、などと」
吉 井:「なるほど…」
高 任:「個人的には、最終話上中下…で、更新してもらって『終わってないやんけっ!完結編に続くってどういう事よっ!?』と、憤る読み手を期待してたんですが(爆笑)」
吉 井:「まあ、完結編の2まで一気に更新しましたし」
ラオウ:「確か、夏コミ3日目の前夜に更新するところが心憎かったですな」
高 任:「なんか、会場に向かいつつ携帯で読んでました……という人が居たな、確か(笑)」
吉 井:「確か……ってところが」
ラオウ:「そりゃ、もう、1年も前の話ですし」
高 任:「記憶にございません(笑)」
ラオウ:「安寿の台詞ですか?(笑)」
吉 井:「……そもそも『記憶にございません』って、ロッ〇ードでしたっけ?ピーナッツが一袋とか?」
 
 ちょい脱線。
 
ラオウ:「……さて、内容については後でツッコムとして」
高 任:「お手柔らかに」
ラオウ:「とりあえず、対談する上での順序としてはこの話を書き出す前段階というか、構想レベルの話から聞いた方が、流れとして楽じゃないかなと」
高 任:「わざわざ対談の進行まで考慮に入れてくれてありがとう」
吉 井:「なんというか、ラオウさんの性格がうかがえますね」
高 任:「いや、あの言葉の裏にですね、『そういう流れまできちんと計算して構成してないから偽チョコは……』という皮肉が込められているのです(笑)」
吉 井:「それはうがちすぎでは…」
高 任:「いや、青山の性格モデルの15〜20%ぐらいはラオウさんですから(笑)」
吉 井:「なるほど」
ラオウ:「ふむ、本日のツッコミレベルは、当社比で50%ぐらい増量してみるか(笑)」
高 任:「まあ、ある程度洒落にならないツッコミを入れてもらわないと、笑いはとれませんし……ツッコミ役がラオウさんという時点で、それなりの腹は据えてきたよ(笑)」
吉 井:「……二人ともプロだなあ」
高 任:「対談にプロってあるんですか?」
吉 井:「いや、こう……会話の段取りというか、あうんの呼吸というか」
ラオウ:「と、いうか……あくまでもこの対談はお遊びネタなんだけど、いつもやってるゲームの対談なんかは、結局推測するだけ……の部分が多いじゃないですか」
吉 井:「はあ」
ラオウ:「こう…このシナリオを書いたヤツは一体何を考えていたんだとか、何でもうちょっとまともにできなかったのかとか……そういうもやもやな部分に関する疑問が、これに関しては全て答えが得られますから(笑)」
高 任:「筆が滑ったとか(爆笑)」
ラオウ:「……で、この部分はどう?ああ、それは……とか、いう問答を一々繰り返すのは非効率というか……それだったら、高任さんがどういう準備を経てこの話を書き始めたか……ってのを、最初に俺や吉井さん、もしくは読み手に情報として示す方が絶対に効率的です」
高 任:「はあ、それはまったくもって仰るとおりであります」
ラオウ:「それにね……なんというか、自分で漫画なり小説なりの話を作り上げたことのない人間にとっては、そういう話はちょっと新鮮だろうし、そういう事をやってる人間にとっても、他人の話の作り方ってのはひょっとすると参考になるかも知れないでしょう」
吉 井:「……高任君」
高 任:「はい?」
吉 井:「こう、至極もっともな事を語っているラオウさんの微笑みが、何故か獲物をいたぶる猫の姿に見えて仕方ないんだけど」
高 任:「吉井さん、なかなか真実が見えるようになってきましたね(笑)」
ラオウ:「まあ、高任さんのパロディにおける方法論ってのは俺も多少の興味があるので(笑)」
吉 井:「……それは俺もちょっと興味あります。何をどうやったら、あんな話になるのか…という意味で(笑)」
高 任:「と、言われましても……俺の場合、パロディとオリジナルは色々と順序が逆というか……パロディの場合に俺が最初にやるのは、原作のどこを不可侵とするかってとこですかね?」
吉 井:「不可侵…というと?」
高 任:「原作のここはいじっちゃいけない……という、コアになる部分を設定するんですが」
ラオウ:「ほう」
高 任:「……きちっとした法則があるわけじゃないんですが、大体『俺は原作のこの部分が好きだ』とか、『原作を成立させていると判断できる重要な部分』とか……その時、その時で判断基準は変わります」
吉 井:「ふうん…?」
高 任:「えーとですね、対談で言ったかどうか忘れましたが……『チョコキス』の主人公って、ギャルゲーの主人公には珍しく、やるべきだと定めた事はきちんとやるキャラと思いません?」
吉 井:「何やら、敵を作りそうな発言だけど」
高 任:「きっかけは御子に頼まれたにしてもさ、その後も律儀にフォローに回ってるし、夏樹と結花に関してもそう、安寿にも、麻里絵にも……こう、一旦関わった相手に対して責任を……という程の関わりでもないのにきちんと面倒を見ようとするというか……ひどく優しい視線を持ってますよね」
ラオウ:「……ふむ」
高 任:「悪く言えばお節介で、行動はおよそスマートと呼べるモノじゃないけど……基本的に善意の人で、しかも、考えるだけじゃなくてそれを行動に移せる、行為の人だなあ……と」
ラオウ:「まあ……『チョコキス』の前にやった対談が『メモオフ2nd』と『君望』だけに(一同大爆笑)」
高 任:「いや、そういうヘタレ主人公と比べての話じゃなくて(笑)」
吉 井:「アレと比べたら…」
高 任:「もちろん、『俺ならもっと手際よくやる』とかいう人はいるだろうけど……なんというか、方法論云々の話じゃなくて、多分ほとんどの男ってのはこの主人公のようにありたいと心の底では思ってるんじゃないですかね?できるならば善意の人でありたい、困ってる人がいれば助けてあげたい、その気持ちをかたちにすべく、行動できる人でありたい……はっきりいって、俺はチョコキスの主人公は格好良いと思います」
ラオウ:「……つまり、そこだけは絶対にいじらないと」
高 任:「うむ、主人公は善意の人、そして行為の人……少なくとも、俺が格好良いと思える人間であること……主人公として、このラインは譲れんな、と」
吉 井:「なるほど…」
 
高 任:「まあ、早い話が……ヘタレ主人公にちびっこは渡さんっ!(一同大爆笑)」
 
ラオウ:「うむ……すごい説得力だ(笑)」
吉 井:「そのかわり、話の流れはズタズタですが」
高 任:「で……その行為の人という部分を不可侵にする場合、何が必要条件か」
吉 井:「え?」
高 任:「弱きを助け、強きをくじく人間は、強き人間に疎まれ、時によっては助けた弱き人間に裏切られ……まあ早い話、最初に強きをくじくだけの腕力と、強き人間の報復に耐えられるだけの力を持ってないといけないわけで」
吉 井:「……歪んでるなあ」
高 任:「俺は間違っても善意の人じゃなかったですが、それなりに行為の人でしたからね……集団としての人間の醜さとか、言い訳を与えられた人間は大抵のことをやるとか、異物に対する排除衝動とその残酷さなんかは身にしみて分かってます」
ラオウ:「……その答えがあの主人公か(笑)」
高 任:「成績っつーか、頭が悪いと絶対に罠にはめられますし、腕力がないと腕力でつぶされます……それ故に、ああいう主人公を成立させるためには、それなりの腕力と頭脳は必須ですな……まあ、これは俺個人の譲れない価値観というか」
ラオウ:「うん、まあ……高任さんの言いたいことは分かるが、高任さんならそこそこ喧嘩が強い…ぐらいの主人公で、ちゃんと話を作れたと思うし、書けたと思うんだが」
高 任:「ラオウさん、いきなり階段から突き落とされたり、日が落ちて薄暗い校舎裏で金属バットで襲われたり、街を歩いてていきなり後ろから警棒で殴られたりしてみ……大抵のヤツは性格が歪むで(笑)」
ラオウ:「いや、歪んだのは高任さん自身の責任……そういう経験を経ても、歪まないヤツは歪まない」
吉 井:「と、いうか……よく生きてましたね?」
ラオウ:「まあ、人間は死ぬまで生きてるもんですし(笑)」
高 任:「歪んだのは俺の責任としても……腕力も知力もないのに弱きを助け、強きをくじき、のうのうと日常生活を平和に送ってる……なんて隅から隅まで嘘っぱちの話を俺は書きたくないのだよ(笑)」
ラオウ:「まあ、それは個々人の創作活動のベースだからとやかくは言わん」
高 任:「基本的に甘々の話でも、必ず隠し味としてリアリズムを1滴2滴……3滴4滴5滴6滴(爆笑)」
吉 井:「入れすぎ入れすぎ(笑)」
高 任:「というか、相手が悪いからここは見なかったフリをしよう……という主人公では話にならないと言うか、いかなる状況においても、その善意を行動に移してきた……という異常性が読み手に伝わらないと、話が成立しないというか」
ラオウ:「うん、まあ言いたいことは……」
高 任:「と言うわけで、主人公や青山のスーパーぶりが読み手の共感を阻害するんじゃないか……というツッコミを入れたいんだろうが、主人公が善意の人で、行為の人と決めた限り、このぐらいじゃないと俺のアイデンティティが危機に陥るのです」
ラオウ:「……この対談のために用意しておいたような答えをすらすらと(笑)」
高 任:「つーか、原作における主人公と宮坂の会話から察するに、主人公って元々基本的能力は高いと思うんですよ……じゃないと、宮坂に良いようにやられるだけでしょう?主人公が普通だったら、絶対に宮坂の一人勝ちですって」
ラオウ:「わかった……ただ、エンターテイメントとしてそれはどうかとは思うが(笑)」
吉 井:「宮坂と言えば……アレはアレで(笑)」
高 任:「いやあ……原作のキャラ変えすぎとか色々言われましたが、何故か宮坂だけは誰も何も言わない(爆笑)」
吉 井:「それは、何も言わないんじゃなくて、何も言えないだけでは(笑)」
ラオウ:「や、個人的に俺は前半部分の宮坂が気に入ってますよ」
吉 井:「前半限定ですか…」
ラオウ:「それについては、後々ツッコム予定なので(笑)」
高 任:「……で、話を戻しますが。他の不可侵部分というか……俺にとってチョコキスの魅力といえば、やはりキャラの伸びやかさというか勢いで……設定をいじるのはともかくとして、キャラの勢いを助長することはあってもせき止めるのだけはやめようと」
 
吉 井:「……それはつまり、変なキャラはますます変に?(一同大爆笑)」
 
高 任:「そ、そーじゃなくてっ」
吉 井:「いや、あながち間違ってないような気が……特に宮坂とか安寿とか(笑)」
ラオウ:「え、偽チョコの安寿って可愛いじゃないですか(笑)」
高 任:「え?」
ラオウ:「何だよ、『え?』って?高任さんは、安寿に対して愛を持ってないの?眼鏡娘だろ?」
高 任:「あ、いや……ラオウさんには受けの悪いキャラかな…などと勝手に思いこんでいたもので」
吉 井:「(ぼそっと)……大きく分けたら、亜○亜系」
ラオウ:「吉井さん、何か?」
吉 井:「い、いやっ、何でもないですよ〜というか、今はほら、高任君のキャラ構築論を…ほらほら、高任君」
高 任:「はあ、まあ……何て言うのかな、キャラをしっかりとつかむ……つかむんだけど、それはひよこを持つかのように優しく…」
ラオウ:「握りつぶす?(大爆笑)」
高 任:「だまらっしゃい」
 
 ちょっと脱線。
 
高 任:「そんなこんなで、結局原作の不可侵部分は……主人公の性格と、原作キャラの勢いを殺さない……後は、これは偽チョコに限りませんが、どうにでも融通の利く部分は、あくまでも原作のどこかから連想できうる設定にとどめる……の3つですかね」
吉 井:「なんか聞いてると……高任君のパロディって、結構制約がきつそうだね」
高 任:「いや、パロディなんだから制約きつくて当然というか……その、制約の中でいかに想像力をはためかせて、違う側面を描き出すのがパロディの醍醐味というか」
ラオウ:「吉井さん、元々漫画だろうが小説だろうが、話を作るってのは、制約がきついモノなんですが…」
吉 井:「……いや、偽チョコからそういう堅苦しい制約をあまり感じないモノで」
高 任:「んー、それはチョコキスそのものが、あまり設定を語ってないからだと……そういう意味ではあまり制約はきつくなくて、反対に手がかりが少なすぎて辛かった部分も(笑)」
吉 井:「え?」
高 任:「いや……冴子とか綺羅とか安寿とか安寿とか安寿とか……おそらく色々と構想が練られていた形跡はありますけど、ゲームとして現実化していた部分だけをみるとかなりアバウトでしょ原作(笑)」
吉 井:「そう……なの?」
ラオウ:「まあ、それはそれとして……まずは原作の不可侵部分を定めた……次は?」
高 任:「話の筋……というか、構想を練る」
吉 井:「え?」
ラオウ:「おい(笑)」
高 任:「だーかーら……オリジナルなら、こういう話が書きたいってなところが出発点だけどさ、パロディの場合は違うでしょ?自分の書きたい話ってのがいくらあったとしても、それが制約にひっかかるなら破棄するしかないんだから」
吉 井:「……」
ラオウ:「……それは、ちょっと新鮮な考えだな」
高 任:「え、そうなん?」
吉 井:「……書きたい話があっても、パロディでは書けない?」
ラオウ:「異様な響きですね……普通、パロディってのは制約を取っ払う方向にベクトルが向いてますし(笑)」
高 任:「それはそうですが、個々人がどこかでラインを引かないと、結局パロディそのものが収集つかないと言うか……えーと、例えになるかどうかわかりませんが、既成の価値観を破壊する事で笑いをとるメタギャグが一時流行りましたよね?でも、破壊しただけで新しい価値観を構築しなかったら、それはそれっきりで終わっちゃうと言うか。パロディもそれと同じとちゃいますの?ただ、原作を破壊するだけの行為にはなにも残らないのでは?」
吉 井:「……なんというか、『ちびっこが俺を狂わせる…』とか『眼鏡娘はかくあるべきだ…』ってな発言をしつつ、こういう事をさらっと言える高任君って…(笑)」
ラオウ:「良く言えば深みのある人格、悪く言えば人格が破綻してるだけ(笑)」
 
高 任:「あ、何も残らないことはないか。同人誌の在庫だけは残りますね(大爆笑)」
 
吉 井:「ここでこういう事をさらっと言える高任君って…(笑)」
ラオウ:「まあ、真面目な話の後は場を和ませるために笑わせる……ごくオーソドックスな会話術ですから」
高 任:「まあ、何て言うんだろ……自分はこの作品のどこが好きか、大事にしたいか……で、不可侵の部分を決めることが多いわけで……その制約にひっかかるような話なら、元々そのパロディは書くべきじゃない……とか思いません?」
吉 井:「……んーいまいちよくわからないのだけど。だったら、青山なんつーオリキャラがでてくるのって、制約にはひっかからないの?」
高 任:「いや、青山は話の展開上必要だから作ったキャラで……話が前後しますが、設定や資料ってのは結局物語に奉仕すべきものと思うんですよ。雰囲気というか、物語としての現実感を得るために設定ってのは必要不可欠ですが、設定は物語のためにあるんであって、物語が設定のためにあるってのはナンセンスですよね。もちろん、最初に設定は緻密に作り込みますけど、物語によって、それは破壊、再構築していくもんじゃないかと」
吉 井:「……はい?」
ラオウ:「吉井さん、結局高任さんの方法論なんだから、あまり深く考えなくても」
吉 井:「それもそうですね」
ラオウ:「まあ、ふつうはまず最初に物語の構想があって、それからそれに沿った必要な設定を構築していくんだがな(笑)」
高 任:「うん、だからオリジナルはそうだけど、パロディはめちゃめちゃ手間かかります」
吉 井:「……このあたりに、高任君のテイストが紛れ込んでいるのかな」
高 任:「というか、オリジナルは最初から自分の価値観なり世界観を基にできますけど、パロディは最初他人の作った価値観や世界観を材料にしますやん。自分とは異なった世界観を理解、吸収した上で新しい世界観を生み出すわけだから、理解、吸収の部分で手間がかかるのは当たり前というか」
ラオウ:「…まあ、高任さんなりに筋は通ってるんだろうが、万人に理解されるとは思わないように」
 
 
高 任:「……で、構想ってのは至って簡単で」
ラオウ:「おい(笑)」
高 任:「チョコキスがゲームであるように、偽チョコもゲームのように書いていこうと」
吉 井:「え?」
高 任:「早い話……偽チョコの話ってのは、『偽チョコレートキッス』というゲームを初めてプレイした人間のプレイ日記みたいな……いろんなキャラにちょっかい出して、八方美人のバッドエンドのイメージですか」
ラオウ:「あぁ……なるほど」
高 任:「だから、最初から誰かとのハッピーエンドは想定してなかったし、まんべんなく他のキャラに関わって、情報を小出しにする……みたいな展開で行こうと」
吉 井:「え、最初から?」
高 任:「バッドエンド予定でした。もちろん、誰かとのハッピーに持っていこうとすれば可能でしたけどね……多少設定が歪みますが」
吉 井:「……と言うことは?」
高 任:「たとえば、夏樹およびちびっこを攻略したいなら、みちろーに会いに行ったらダメ……とかいう分岐はちゃんと考えながら書きましたよ。あそこは、一刻も早く夏樹に会わないといけないわけで…(笑)」
吉 井:「うわあ」
高 任:「だから、ちゃんとイベントのための伏線とか方々にちりばめてあります」
ラオウ:「まあ、それに関しては薄々…」
高 任:「1月の下旬に、主人公の父親が出張にいきますやん。で、主人公が、一人だと家事がめんどくさい…とか言ってますけど、あれはちびっことのイベントを想定して設定されたスケジュールで」
吉 井:「え、そうなん?」
高 任:「なんというか…ちびっこは一人暮らしをしてまして。夏樹とちびっこルートに分岐してたら、閉店間際のスーパーで値引き総菜を買うちびっこと主人公が遭遇するんですな(笑)」
吉 井:「うわあ」
ラオウ:「……主人公がちびっこを自分の家に拉致って、飯を作ってやる…みたいな?」
高 任:「うん、まさにそう……で、主人公が飯を作ってると、ちびっこの寝息が聞こえてきたりするわけですよ(笑)」
吉 井:「くうっ、基本は押さえてるよね、高任君」
高 任:「何事も、基本をおろそかにしてはいけません。応用がどうのこうの言うのは、基本を極めてからの話で(笑)」
ラオウ:「まあ、一番の基本は締め切りを守ることだが(笑)」
高 任:「ラオウさんだけには言われたくないです(笑)」
吉 井:「まあまあ、二人ともそのぐらいで」
 
 ちょい脱線。
 
吉 井:「そういや、偽チョコでも姉の存在は抹消されてたね」
高 任:「あ、そーじゃないんですよ……偽チョコで、主人公に姉はいたんです。主人公が生まれる前に病気で死んだ……という裏設定が(笑)」
ラオウ:「……言われてみると、安寿と父親の会話でそれっぽい雰囲気があったな」
高 任:「それを受けて、『腕白でもいい…』という、母親の行き過ぎた教育が炸裂するとかしないとか(笑)」
吉 井:「なるほど」
ラオウ:「すまん、ちょっと話が逸れてる」
高 任:「……と言っても、後は自分が書きたい話に必要な条件と、キャラと世界設定との突き合わせ……整合性をとるため修正して、また突き合わせ…また修正して……という作業を死ぬほど繰り返すという、オーソドックスな手法なんですが」
吉 井:「え、そんな手間かかるの?」
ラオウ:「普通はかかりますよ……つーか、その突き合わせが甘いとシナリオに矛盾が生じたりしますし」
高 任:「もう、話を一歩進める……と、同時にフィードバックの連続ですよ。このキャラがこういう状況を与えられた時、こういう思考をするか?こういう行動をとるのは不自然じゃないか?不自然だとしたら、どういう設定を加えたら不自然じゃなくなるか……その設定を加えたことで他の設定に対する影響は出てくるか…出てくるとしたらどこを修正すればいいか……その修正によって他の設定にまた不都合が出てこないか……などと、延々とループしていきますし」
吉 井:「……早い話、プログラムルーチン?」
ラオウ:「ですかね……高任さんの方法は俺のとは違うみたいですけど」
高 任:「具体例で言うと……家庭科の調理実習で作ったカップケーキなりクッキーを主人公に食べさせたいと思っていそいそと教室に足を運ぶちびっこ……しかし、何故かそこで同じようにやってきた夏樹と遭遇なんてイベントを書きたいと思ったとしよう(笑)」
吉 井:「また、ベタベタな(笑)」
高 任:「書きたかったんですけどね……でも、これって夏樹が高3年、ちびっこが高1だから授業カリキュラム上ありえないんですよ……夏樹とちびっこが同じ授業を受けてないといけませんし」
ラオウ:「だねえ」
高 任:「これをどうしても書きたい……とすると、夏樹が高2、ちびっこが中3とかいう設定に作り直せば、中学と高校のカリキュラム、別校舎だから教室に行くまでお互い顔を会わさない……などの条件がそろうんですが」
吉 井:「……それは」
高 任:「キャラの学年変更って、すっげえ影響でますから……主人公と夏樹を同学年にするのか、それとも主人公を1年にするのか……ってな問題よりも、夏樹が2年って事になると、夏樹自身が抱えてる演劇部の問題そのものが消滅しかねませんし」
吉 井:「え?」
高 任:「いや、自分はこれで卒業するから……後輩のために、とかそういう夏樹のバックボーンが消し飛びますもん。それだと、単に夏樹は自分の望む劇がしたいだけ……みたいに、ちょっとわがままっぽいキャラにならないとお話が矛盾しますやん」
吉 井:「あぁ、なるほど」
高 任:「もちろん、パロディだからそういう書き方もありと思うんですよ……まず原作設定の1つだけを変更してみる……みたいな」
ラオウ:「一つ変更すると、ドミノ倒しになります(笑)」
高 任:「麻里絵が主人公の一つ下……とか変えると面白いでしょうね。まずオープニングで出会うだけならともかく、同じクラスにならない。で、紗智と麻理絵の関係に変更を加えない限り自動的に紗智も一つ下になる……1年の麻里絵が2年の主人公の教室までやってきて学校を案内する……となると、麻里絵の性格にもちょいと変更が必要で……麻里絵と紗智とちびっこと御子が同じ学年で、同じクラスだったりしたら、もう、イベント的にてんやわんやでしょうね(爆笑)」
吉 井:「高任君、めっちゃ楽しそう」
高 任:「いや、基本的にこういう『もしも遊び』は好きなんですよ……まず設定崩壊させて再構築する過程というか」
ラオウ:「綺羅が担任で、夏樹と冴子が3年、安寿と弥生が2年、麻里絵と紗智と御子と結花が1年……何やら違うゲームのようだな(爆笑)」
吉 井:「下〇生ですか(笑)」
高 任:「仲間内でそういう遊びをやると面白いですよ、一人一人にお題を与えて、それぞれがどういう設定を再構築するか…とか」
ラオウ:「そういう話は嫌いじゃないんだが、ちょっと話が横滑り気味(笑)」
高 任:「……と、まあそういう修正を、考えつく全ての状況に絡めて延々とつき合わせていくわけですよ」
吉 井:「なるほど……」
高 任:「だから構想と言っても、誰ともハッピーエンドを迎えず、なおかつ誰とでもハッピーエンドの可能性を示しつつ、各キャラの設定には浅く立ち入り、それでいて深く立ち入らず……とまあ、後はこういうイベント書こうと思ったのを設定とつき合わせて修正していくと、勝手に設定なんてのは出来上がってしまうんですよ」
ラオウ:「……などと、高任さんは簡単そうに言いますが(笑)」
吉 井:「いやになるほど手間がかかるんでしょうね」
ラオウ:「と、いうか……『これを書くのに何が必要条件か』の突き合わせ作業を行うためにはそれなりの能力が必要です……高任さんは多少思いこみの激しいところがあるので、ちゃんとした突き合わせ作業になってない文章がちらほらと(笑)」
高 任:「きたよう、プレッシャー(笑)」
ラオウ:「まあ、それも後でツッコムとして」
吉 井:「むう…」
高 任:「まあ……後は、期間が1ヶ月だから、ある程度各キャラのタイムスケジュールを組んで……組んだスケジュールをまた世界設定とつき合わせて修正して……組んだスケジュールに合わせておおまかな話の流れを想定して……またそれを世界設定とつき合わせて修正して…」
吉 井:「もう、勘弁してください(笑)」
 
 
高 任:「で……話を考えるイコールキャラの設定も考えることなんですが……やっぱ原作のキャラの勢いを殺さないためには、死ぬほど原作を読み込まなきゃいけないと俺は信じてるんですよ(笑)」
吉 井:「死ぬほどですか」
高 任:「ちょっとこれ矛盾してないか……という部分も含めてですね、キャラに関わる全ての情報を集めて分析して……キャラの人物像を、自分の中で構成するというか」
ラオウ:「なんか、生き生きしてきたな、キミ(笑)」
高 任:「や、俺はラオウさんと違ってキャラというか人物重視の人間ですから……確かに世界設定も大事だけどさ、とにかく人間が大事……人と人がぶつかって初めてそこに話が生まれるというか……つーか、ギャルゲーで、キャラを重視せず何を重視するか(爆笑)」
吉 井:「高任君、ぽろっと本音が(笑)」
高 任:「これは俺の台詞じゃないんですが、『キャラが勝手に動き出すというのは、特殊な事情をのぞけば、作者の怠慢に過ぎない』と」
ラオウ:「また、色々と危険な発言を(笑)」
高 任:「んー、俺もキャラが勝手に動き出すってのを全否定はしませんけど……ただ、それを免罪符として使えるケースはそんなに多くない、というか小説ではやっちゃいけない禁じ手ですよね」
ラオウ:「それに関してはほぼ同感」
吉 井:「何故ですか?」
ラオウ:「たとえば……サッカーとラグビーの日本代表の試合観戦チケットがもらえるとして、高任さんならどっちをもらうと思います?」
吉 井:「ラグビーでは?」
高 任:「確かに」
ラオウ:「じゃあ、高任さんじゃなくて俺だとどう思います?」
吉 井:「う、え……確か、サッカーやってましたよね?それなら、サッカーをもらうのでは?」
ラオウ:「高任さんはどう思う?」
高 任:「よほどの事情がない限り、ラオウさんならどっちも貰わないでしょうね(笑)」
ラオウ:「うむ、正解(笑)」
吉 井:「詐欺だ…」
ラオウ:「で、これが高任さんでも俺でもなくて、通りすがりの人間ならよけいにわからない……まあ、サッカーとラグビーなら、サッカーの方が人気あるからサッカー…みたいな推理はできるでしょうけど」
吉 井:「つまり…何が言いたいんでしょう?」
ラオウ:「ある人間が、ある状況におかれたとき、どういう行動をとるか……ってのは、その人間のことをよく知らないと推理するのは難しいってことです」
吉 井:「…は?」
高 任:「んー、いわゆる『キャラが勝手に動き出す』ってのは、作者にとってやっとそのキャラが親しい友人並の情報を伴った結果と俺は思うんですよ。元々考えていた話の道筋があるんだけど、『あいつならこういう行動はとらないだろう…』みたいな感じで」
吉 井:「ふんふん」
高 任:「と、すると…それまでのそのキャラは、作者にとってただの都合のいい人形に過ぎないってことでは?」
吉 井:「…」
高 任:「それが良いか悪いはさておき、都合の良い人形をいくつか用意して、自分の望む話を進めていって、その結果人形の条件付けがなされていって人格を持ち始める…のは構いませんよ。でも、人格を持ち始めたせいで、当初自分が考えていた物語を進められない……ってのは、作者の構想力に問題が(笑)」
ラオウ:「お前もな(笑)」
高 任:「それは言わない約束でしょう」
吉 井:「え、あれ?なんか騙されてるような…」
ラオウ:「人それぞれでしょうけど、書きたい物語があるなら、それに登場するキャラをその物語に沿う形に設定するのが当たり前だと俺は思います。時間的に許さない、とか読者の人気がないから路線変更とかのケースを除けば、話を進めているうちにキャラが勝手に動き出し、それで話がおもしろくなった…ってのは、どうでしょう?(笑)」
吉 井:「う、うーん…」
ラオウ:「……と、まあさっき高任さんが言った『作者の怠慢…』ってのはそういう意味だと思います。で、小説の場合は、漫画と違って途中で路線変更…なんてケースは普通存在しませんし」
吉 井:「んー?」
高 任:「ま、まあ…そんな堅苦しい話をしたかったんじゃなくて、要するに最初からキャラが勝手に動き出す状況までキャラを把握するために、原作を死ぬほど読み込むんですよ。キャラを生き生きと動かすために、まず、キャラを把握っ」
吉 井:「う、うん…じゃあ、そういうことで(笑)」
高 任:「まあ、全キャラを登場させる上で一番楽そうなのは麻里絵……って事で、まずは麻里絵のバックボーンも含めた仮人格を構成してから世界設定を構築していこうと思ったんですが」
ラオウ:「……が?」
高 任:「いや……さっきも言ったけど、冴子、綺羅、安寿については原作ではほとんどバックボーンの情報がないに等しいんですよね」
吉 井:「うん…そうだね」
高 任:「だから、この3人についてはとりあえず好き勝手にやるとして(笑)」
ラオウ:「やるのか…(笑)」
高 任:「……弥生と御子に関しては原作である程度バックボーンが語られてるからそれはそれで楽……ちびっこと夏樹も、演劇部絡みで語られてるから、そこを基点に生い立ちとか家庭環境を作っていけばオッケーなんですが…」
ラオウ:「前置き長い」
高 任:「結局……紗智と麻里絵って、原作においてちゃんと語られてないっての一因がありますけど、非常に把握しにくいキャラだなあ、と」
ラオウ:「……んー?」
高 任:「さっきも言いましたが、綺羅と冴子と安寿は理解する以前に背景についてほとんど描写がないから論外……結花と夏樹、御子と弥生の4人は細部はともかく紛れの情報がないから読み手にとってはわかりやすいキャラですよね?」
吉 井:「いや、そう言われても(笑)」
高 任:「個人的には紗智が一番難しいかなと……結局、麻里絵と主人公ををくっつけようとした動機が原作では不明のままなんですよね。友人である麻里絵を宙ぶらりんの状態から助けようとしたのか、自分がみちろーとつきあおうと思ってああしたのか……で、印象はがらりと変わりますから」
ラオウ:「はあ…」
高 任:「で、なおかつ…中学の時、みちろーと麻里絵、どちらと先に出会ったのかってのは重要なファクターなはずなんですけどね……みちろーと親しい人間と仲良くなって……なのか、麻里絵を通じてみちろーと出会ったのか……この部分は、紗智というキャラを構成するコアそのものというか、少なくともそれに近い部分と思うわけで」
吉 井:「……はあ」
高 任:「まあ、原作ではサッカー部のマネージャー……ただ、みちろーが勉強やサッカーに打ち込み始めたのは両親の不和なワケで。俺の解釈としては、紗智がみちろーに惹かれ始めたのは、サッカーと勉強に打ち込み始めた頃ではないかと」
ラオウ:「なるほど」
高 任:「もちろん、紗智というキャラがお気に入りだから俺の願望がちょっと入ってますが……みちろーへの想い、友人である麻里絵に対する遠慮、そしてみちろーが好きなのは麻里絵であることに対する諦め……で、踏ん切りのつかないみちろーの背中を押す事で自分の想いを割り切ることにした……というのが俺の基本解釈で」
吉 井:「……なるほど」
高 任:「もちろん原作では、紗智がみちろーの背中を押したなどの描写は一切ありませんが……麻里絵とみちろーのカップルをみて、仲人女として精を出すってのはおそらく代替行為の一種であることは間違いないだろうと思うんです」
ラオウ:「うん…なるほど」
高 任「ただ、キャラを読むならそれ以外の可能性も考えなきゃいけないわけで……紗智がみちろーに惹かれ始めた時既に二人がつきあっていたというケースの場合、ずっと麻里絵のそばにいて……今になって、主人公と麻里絵をくっつけようとする動機で俺が思いつくのは大まかに3つほどですか。みちろーなり麻里絵なりに幻滅したか、ずっと我慢してた反動が来たか、自分の中で特別だったカップルがおかしくなることで自分の何かが汚されるような気持ちになった……あたりかなあと」
ラオウ:「……」
高 任:「と…他にもいろんなケースがあるんだけど、どのケースにおいても紗智というキャラは『臆病』という性質を色濃く持っていなければ納得がいかないなと……」
ラオウ:「……高任さん」
高 任:「はいよ」
ラオウ:「こう言ったらなんだが……多分、高任さんって日本一『チョコキス』を読み込んだ人間じゃなかろうか?(爆笑)」
高 任:「いや、だからパロディを書くなら、自分なりのキャラ解釈だったり、世界設定解釈ってのは必須でしょ?俺はやるべき事をやっただけの話ですよ?」
吉 井:「そうかなあ、本当にそうかなあ?(笑)」
高 任:「そういや、前の対談で『ちびっこの身長が小6から高1まで……』の設定で笑われましたけど、一応反論しときますよ」
ラオウ:「いや、反論って誰に?(笑)」
吉 井:「というか、誰に笑われたんですか?」
高 任:「幼稚園の頃から周りで一番背が低かった……で、高校生になった人間と、小学校低学年の時はクラスで一番背が高かったけど、高校生になってみたらまわりで一番背が低くなっていた人間を比べると、自分の身長に対する考え方って絶対違ってきますよね」
ラオウ:「……」
高 任:「自分の身長に対する考え方が違えば、姿勢だったり態度なんかに影響をあたえますし……もちろん、それがすべてというわけではありませんが」
ラオウ:「ふむ……それは確かに」
高 任:「夏樹なんか……原作では背が高いことにあれだけコンプレックス感じてるのに、普通に歩いてますよね?あれって、本当ならちょっと背を丸めて歩くんじゃないでしょうか?」
吉 井:「おお…」
高 任:「でも……そこから解釈すると、『夏樹様』というイメージを大切にするために、夏樹は普段から背を丸めずに歩かなければいけないんだなとか読み手としては想像するワケじゃないですか……もちろん、夏樹はお嬢様だから小さい頃からのしつけでという可能性もありますし」
ラオウ:「……で?」
 
高 任:「だから、ちびっこの身長の推移は性格設定として必要不可欠なんです。何もおかしいことはありませんし、マニアだとか、パラノイアだとか、眼鏡娘属性じゃなくてロリ属性が目覚めたんじゃないですかなどと言われる筋合いはありません(一同大爆笑)」
 
吉 井:「無理矢理オチを付けなくても(笑)」
高 任:「というワケですね、俺はおおむねやるべき事をやっているだけなんですよ……それを笑われるのは心外だなあ(笑)」
ラオウ:「そ、そうか…誰に何を言われたか知らんが、よくわかった(笑)」
吉 井:「……」
高 任:「身長に対するコンプレックスってのは、ちびっこだけじゃなく夏樹も同様で……まあ、夏樹の場合は急に背が伸びたという訳じゃなく、わりと昔から背が大きかったんでしょうね……主人公との会話で、かわいいぬいぐるみが似合わない……ってな話がありましたし」
ラオウ:「まあ、そこまでは覚えてないが」
高 任:「ただ、昔から背が高い…とすると、主人公との最初の出会いで見せた強烈なコンプレックスはどこからきたのかな…って、疑問がわきまして」
吉 井:「どういうこと?」
高 任:「いや、そういう外見的なファクターって、結構話題になりやすいでしょ?はっきりいって、いきなりあんな爆発を繰り返してたら身が持たないし、夏樹の性格からしてちょっとうなずけないような気がしまして」
ラオウ:「ほう?」
高 任:「で、これもまた色々なケースを想定して推理してみたんですが……早い話、夏樹が今のような『夏樹様ぁ〜♪』の状態になったのは、少なくともちびっこが演劇部でプロデュースしてからだろうと」
ラオウ:「その根拠は?」
高 任:「根拠というか、辻褄があいやすいと言うか……仮に、昔から同性に大人気だったとしたら、高等部で夏樹が演劇部に入部した時点で、同級生が何人も演劇部に入部したんじゃないかなあ…とすると、廃部の危機ってのはあれですし」
吉 井:「う…ん」
高 任:「真面目に説明すると時間かかるからはしょりますが…基本的に、夏樹の性格はおとなしめで、誰かに頼られるよりは頼りにしたい感じ……それが先天的か後天的は抜きにして、あまり目立たたないポジションを好むんだけど、ちびっこにプロデュースされてから状況は一変。で、現状としては本来の自分の資質とは違う自分を演じるストレスがつもりにつもった状況……という感じかなあ、と」
ラオウ:「まあ、目立ちたくない云々についてはそうだろうが…」
高 任:「んー、頼る頼らないに関しては、ちびっこの関係を考えると、それが一番スムーズじゃないかと。結局、夏樹の周りで頼りになるのはちびっこだけでしょ」
吉 井:「冴子は?」
ラオウ:「いや吉井さん、冴子と夏樹が友人なのは偽チョコ設定です。原作では、あの二人の接点なんか描かれてなかったです(笑)」
吉 井:「……でしたっけ?」
ラオウ:「知らず知らずのうちに浸食されてるよなあ…」
高 任:「まあ、偽チョコでの冴子と夏樹ってのは夏樹の性格から考えてああしたというか……話は戻りますが、夏樹が身長にコンプレックスを抱いているはずなのに普通に歩いているとかも含めて、多分さっき述べた性格、状況ってのが一番しっくりくると思いますわ」
吉 井:「な、なるほど…」
高 任:「……と、まあそんな感じで各キャラの分析を……って、元々何を話してましたっけ?」
ラオウ:「紗智が、臆病とかなんとかだったと思うが」
高 任:「そういえば……と言うわけで、とりあえず俺は、紗智というキャラをここぞの場面で一歩を踏み出せずに来た『臆病さ』を抱えている……というところからキャラの原型づくりを始めたんですよ」
ラオウ:「……ごめん、本当の最初は麻里絵の話だったような気がする。(笑)麻理絵の性格から、紗智に飛んだ…みたいな」
高 任:「……あーそーいえば。(笑)んー、でも原作において紗智と麻里絵の関係はどう考えても麻里絵が受けに回ってるから、紗智の原型をある程度設定しないと、麻里絵の仮人格が組めなかったというか……それに、人間がいろんな経験を経て変わっていくように、キャラだって時間の経過とともに変化していくわけですから……小学校時代の麻里絵に影響を与えたのは主人公で、そして中学時代の麻里絵に影響を与えたのは……そして現在……と、時間軸に沿って、こういうキャラがどういう経験を経て変化していきこうなったか……ってのを考慮にいれないと、どうしても、キャラとしてはギクシャクするかなあと」
 
 注……ここではあくまでもキャラメイクの最初の段階なので、実際に偽チョコで描かれるキャラとは微妙に違います。
 
吉 井:「……頭痛くなってきました(笑)」
ラオウ:「そりゃ、話を書く上で一番ツライ部分ですし……というか、高任さん」
高 任:「はい?」
ラオウ:「キリがなさそうだから、ずばっと聞くけど……麻里絵は明らかに失敗したよな?」
高 任:「失敗でしたねえ……全キャラを登場させるためのしわ寄せというか、設定はきちんとつめたんだけど、俺の表現力不足というか、麻里絵の心の奥を書き込むとやばいというか(笑)」
ラオウ:「高任さんの表現力不足はもちろんあるだろうけど……俺としては構成のミスとしか思えなかったが」
高 任:「構成のミスですか?設定のミスではなくて?」
ラオウ:「いや……後で各キャラの話を書くっていう狙いがあったとしても、偽チョコって全体に説明不足の話だと思うんだわ」
高 任:「え?」
ラオウ:「自覚無いのか(笑)」
吉 井:「ラオウさん、前に『ヒント多すぎ』とか言ってませんでしたか?(笑)」
ラオウ:「いや、その説明じゃなくて……何というか、もちろん設定をダラダラと垂れ流すのは最低の部類に入る文章なんだけど…」
高 任:「?」
ラオウ:「どうなんだろ……原作をプレイしたことがない人間に対して、また原作をプレイしたことがある人間に対しても、この作品は全体的に説明不足なんじゃないかと俺は思う」
高 任:「あ、何となく言いたいことが伝わってきた……でもさ、登場キャラが状況を説明できない状況にあるのに、作者が説明文としてそれを説明するのはおかしくないかなあ?」
吉 井:「ん?」
高 任:「えっと……わかりやすい例で言うと、主人公と世羽子がつき合ってた当時の話とか……世羽子はああいう事情に追い込まれない限り、弥生に一部とはいえ話すことはなかっただろうし、青山は青山でそんなこと素直に話す人間じゃない……もちろん、主人公はそういうことを話さないワケで……余談レベルとか、ちょっとした補足レベルならまだしも、話の根幹に関わる設定を、書き手が説明文として読者に語って良いことかなあ。と、すると…人間は会話の端々に自分の知っていることとかを滲ませるわけだから、そういうのを利用して、各キャラの台詞にそっとヒントを紛れ込ますのが精々なワケで」
ラオウ:「……じゃなくて。局所的に言えばその考えは正しいけど、構成ってのは……物語を語る上で、読者に対して適切な量の情報を与える話の流れまで計算して練らなきゃイカンだろ。もちろん、文章のあちこちでそのヒントってのは散見できたけどさ……面白い面白くないじゃなくて、俺としては、この偽チョコはそういう構想の部分で失敗してるとしか判断できないし、やはり読み物として失敗作やと思う」
高 任:「むう…正論だな」
ラオウ:「まあ、本当なら推敲してもう2回ぐらい書き直して完成するわけだから……まとまってないのは仕方がないとは思うけど」
吉 井:「……ラオウさん」
ラオウ:「はい?」
吉 井:「いや……これを失敗作といいきるのはステキだな、と」
ラオウ:「まあ、これ以上に失敗してて、設定は矛盾だらけで破綻しまくってて、しかも読むに耐えないのがごろごろしてる文庫もありますが(爆笑)」
高 任:「またさらりと毒を(笑)」
吉 井:「例によって、具体名は出さないでくださいね」
高 任:「ただ、ラオウさんよ」
ラオウ:「はい?」
高 任:「情報を得るためのヒントはちゃんと与えたと思ってるんですが……少なくとも、『ヒント多すぎ』と言ったラオウさんは、そのヒントからそれなりの情報を得たんと違いますの?」
ラオウ:「俺の場合、高任さんという人物を知ってるからなあ……つーか、高任さんの感覚では、えーと……主人公がみちろーに会いに行く前日の綺羅の台詞、『明日は休むという噂が…』ってのは、かなり重大な伏線というかヒントと思ってるよな」
高 任:「めちゃめちゃヒントじゃないですか?他にどういう解釈が?」
吉 井:「え?」
高 任:「え?」
ラオウ:「いや、高任さんのヒントというか、伏線ってあまりにもさりげなさ過ぎたり、あまりにもあからさますぎたりしすぎ……本格推理小説じゃないんだから(笑)」
吉 井:「ラオウさん、あれって何のヒントなんですか?」
ラオウ:「宮坂と綺羅がグル、もしくは主人公の行動に関しての情報を自動的に綺羅に流すという関係にあるのがとりあえずは明らかです」
吉 井:「ん……綺羅がじょにーから情報を買っただけでは?」
ラオウ:「主人公が学校を休むと決めたのは昼休み……で、帰りのHRまでに綺羅が宮坂からどういう情報を買うんですか?しかも、何かを調べろ…ならともかく、学校を休むってのは主人公や男子校生にとって特に珍しい行動じゃないわけで……単純に情報を買うという手段でそれを得るのは無理とは言いませんけど、かなり不自然です」
吉 井:「ああ、はいはい……言われてみれば、そういうつながりがないと、綺羅の発言は確かに不自然ですね」
ラオウ:「ここから先は推測になりますが……第一話を読んだ限りでは、雪の日に主人公や青山を酒盛りに誘ったのは宮坂……という感じですし、外伝の入学式でも、宮坂はあの二人を知っていて近づいたんじゃないか……という感じですよね、高任さん?」
高 任:「あっはっはっ……どうせならもうちょい踏み込んで考えると……何故綺羅はそういう発言をしたか……ってのが問題になってきますね。あの発言で青山はもちろん気付きますし、主人公も即座に宮坂を呼びましたよね……『自分の情報を売られて怒るのは筋違い…』ってな発言を昼休みにしてるにもかかわらず」
ラオウ:「だよなあ」
高 任:「綺羅が単にうっかりさん(笑)なのか、それとも『私と宮坂君は仲間ですよ、情報は筒抜けになりますからね…』と、主人公にプレッシャーをかけつつ、女子生徒を調べたりするなという気持ちを暗に伝えたかったという解釈が一つ、主人公の情報源を奪うために宮坂を捨てごまにしたという解釈……それはそれで、自分には別の情報源があるという含みにもなりますが(笑)」
ラオウ:「んー、後半宮坂が綺羅を裏切るというか……あのあたりは、捨てごまにされた絡みかなと思ったけど」
吉 井:「ごめん高任君っ……ひょっとして、この話って、全編そんな感じでヒントが散らばってたりする?」
高 任:「別にヒントに気付かなくても、楽しめる話にはしたつもりですし、これから書く話の中でそれぞれの世界観というか設定ってのはあかしていくつもりですし……その手のヒントは、裏ヨミするのが好きな人に対してのモノですから」
吉 井:「高任君……それはやりすぎ(笑)」
ラオウ:「しかもご丁寧にこの男、原作をプレイしたことのある人間は綺羅と宮坂の関係を知っているし、原作をプレイしてない人間には、あの前後で情報を売り買いする宮坂の姿を印象づけているから、わざわざあの台詞を何気なく読み飛ばしてしまうように誘導してますからね……ヒントと言うより、確信犯としか思えない(笑)」
高 任:「ラオウさん……それは偶然(笑)」
ラオウ:「嘘つけ(笑)」
高 任:「まあ……書き手にも、そのぐらいの娯楽が許されても良いだろ」
ラオウ:「その程度ならな……でも、ギャルゲーのパロディで何回も何回も前の話を読み直して……『うおっ、こいつこんな所にちゃんと伏線はってやがるっ!』などと読み手に叫び声を上げさせるのは、読み物としては失敗作と判断する……ゲームで言うと、多分無駄に情熱を注ぎ込んだ馬鹿ゲーに分類できるかと(笑)」
高 任:「や、俺って馬鹿ゲー好きですし……」
ラオウ:「あのあたり……設定的にかなり深部だよね?紗智が主人公の行き先を知っていた、もしくは確信を持ってたってのは当然みちろーから麻里絵に……(笑)」
高 任:「ラオウさん……(笑)」
ラオウ:「俺は……高任さんが、途中で麻里絵の設定を一部投げ出して再構成したと睨んでるんですが」
高 任:「ラオウさん……今は確か、偽チョコを書く設定を決めていく作業の話なんですよね?」
ラオウ:「うむ、じゃあ後でツッコムよ」
高 任:「……」
吉 井:「高任君、大丈夫?(笑)」
高 任:「いや、まあ…ラオウさんが相手と言うことで覚悟はしていたが…覚悟はしていたがぁ」
 
 
高 任:「まあ……そんな感じで、主要登場キャラの原型を原作から吸い取って……今度は話の構成の大まかな流れを…」
吉 井:「え?さっき、構成を練るって…」
高 任:「いや、それはあくまで骨組み以前の問題というか……各キャラの原型ができてやっと、具体的にどういう話にするか……って事ができるワケで。このキャラだからこういう話は無理……という風に、ある程度道筋がつけられる状況じゃないと話なんて作れません」
ラオウ:「むう…また新鮮な(笑)」
高 任:「いや、大抵のオリジナルの場合は世界設定があって、流れるべき話があって……そこで、物語を織りなすためのキャラが必要になってくる……んでしょうけど、この場合、まずキャラができてるんですよ。下流から上流にさかのぼっていくんだから、それなりの手間はかかるって言うか……パロディより、オリジナルの方がある意味楽です(爆笑)」
ラオウ:「……なるほどなあ」
高 任:「……何か言いたそうですね」
ラオウ:「いや……一応、順序立てて説明してもらってるけど、実際はキャラ設定と構想、世界設定の構築が同時期に激しくクロスオーバーしつつ考えてるんじゃないかと」
高 任:「そりゃそうですが……それだと説明しにくいし」
ラオウ:「うむ」
高 任:「で、まあ……この時点では、青山も世羽子もまだ原型の前の状態で。もちろん、青山はどちらかといえば頭脳担当という方向性は決めてましたし、主人公が中学校の時につき合ってた彼女が女子校にいるってのも決めてました……これは、前に言った通り、麻里絵の5年間に対して主人公の5年間はどうだったのか……という対比演出のためです」
吉 井:「あ、二人ってまだその状態なんだ」
ラオウ:「と、いうかその時点で二人はすでに登場予定なのか(笑)」
 
高 任:「で……一応、偽チョコと銘打つわけで、しかもチョコキスをプレイしてない人間も読むだろうから、少なくとも前半部分はある程度インパクトを重視しつつ、エンターテイメントに徹した話作りじゃないとダメだなと」
 
吉 井:「全編、エンターテイメントに徹しようよ(爆笑)」
 
高 任:「いや、ここでいうエンターテイメントってのは、いわゆる『つかみ』の問題で」
ラオウ:「……校舎破壊って、あのネタが原型か?」
吉 井:「え?」
高 任:「いや……前に、ラオウさんと二人でチョコキスの同人誌を作る計画があってですね……こう、男子生徒が工事中の校舎を壊すんじゃなく、主人公に惚れた夏樹達が校舎を壊すという話を」
吉 井:「うわ」
ラオウ:「冴子と夏樹は、卒業までの期間一緒にいられたら良いってんで、二人とも工事現場に忍び込んでそれぞれちょこっと壊すわけですよ……で、その後に弥生、麻里絵、紗智がそれぞれやってきて、もうちょっと派手な壊し方をして帰っていき…」
高 任:「その後にちびっこと御子がやってきて……できるだけ時間がかかるように基礎部分の破壊……で、綺羅と安寿がとどめを刺して(笑)」
吉 井:「なるほど」
ラオウ:「まあ、私〇学園のパロディですよね…(笑)」
高 任:「話を考えてるときにふと思いだしたんですよ。もし最初の校舎破壊が、大雪のせいではなく、実は人為的なモノだったとしたら……と」
吉 井:「発想の転換というヤツですか」
高 任:「それなら多分、チョコキスのプレイ有無に関わらず、読み手に対するインパクトはそれなりにあるかなと……」
ラオウ:「……あれって結局、最終的にとどめを刺したのは綺羅と宮坂だろ?」
高 任:「ほほほほ…(笑)」
吉 井:「なんのために?」
高 任:「んー……今全国で学校の校舎などの耐震化等が進められていて、所属する地方自治によりますが、それに対する補助金だの、天災による破壊の保険金、国からの見舞金……などに絡んだ、薄汚い裏が」
ラオウ:「おまえのそういう設定って、大抵洒落にならん」
高 任:「まあ、そういうのは実際に起こった事件を参考にしますし、洒落にならなくて当たり前というか(笑)」
吉 井:「じ、実際に…って」
高 任:「え、わりと多いんですよ、教育がらみの補助金の不正とかなんとか」
ラオウ:「事件になるのは少ないが(笑)」
高 任:「まあ、それを無理に書くと読み手がどんひきになりますよね……それ以前に、綺羅個人の話じゃない限り、それを書く必要ないですもん(笑)」
吉 井:「それは……書かなくて正解かなあ」
高 任:「そういや、この前北海道のどこかで、私立と公立の学校の合併などという珍しいケースがニュースになってたな……こんどまた調べてみようと思ってるんだけど」
 
 ちょっと脱線。
 
高 任:「……断念したんですけど、最初はもう一人新キャラ欲しいなと思ってまして(笑)」
ラオウ:「おい」
高 任:「いや、チョコキスって、お嬢様女子校なのに……こう、いわゆるお嬢様キャラっていないよね?」
吉 井:「綺羅は?」
高 任:「……原作では、そういう扱いと違いますやン(笑)」
ラオウ:「だからといって、あそこまで汚れキャラにして良いかというと(爆笑)」
高 任:「と言うわけで、ベタベタなお嬢様キャラというか……世羽子にやたらライバル意識を持ってて、主人公と世羽子が昔つき合ってたことを知って主人公にちょっかいをかけてくる……みたいなシナリオも練ってたんです。とりあえず、名字は漢字で3文字かなあ、とか(爆笑)」
吉 井:「うんうん、お嬢様キャラは漢字で3文字だよね」
ラオウ:「……偽チョコでは冴子が浮き気味だったから、その役を冴子に持っていけば良かったのでは?」
高 任:「それ、明らかに冴子の性格と違いますもん……というか、冴子は…こう、本当は違う役目があったのに…うう、枚数というか、話の中の日程不足が」
ラオウ:「結局、構想失敗してるやんけ…」
高 任:「まあ……お嬢様キャラについてはかなり練り込んだんだけど、涙を呑んで諦めたというか」
吉 井:「高任君、諦めたらそこでおしまいだよ」
高 任:「というか……世羽子がね、言ってみれば新キャラでしょ?新キャラの絡みで新キャラのストーリーが動いていくってのは、それはチョコキスのパロディとして問題じゃないかと」
吉 井:「むう…」
高 任:「だから、偽チョコのパロディならそれもありかなとは思いますが……いくら書きたいと思っても、チョコキスのパロディでそれはダメだろうと」
吉 井:「なんか話だけ聞いてると、高任君ってかなり制約のきつい中で話を作ってるよね……なのに、出来上がりだけ見るとかなり奔放な話が炸裂してるというか(笑)」
高 任:「俺はやるべき事をやってるだけで(笑)」
ラオウ:「……まあ、やるべき事をやってないだけの話なんぞごろごろしてますので、技術的な話はさておき、ある意味高任さんの話を聞くとほっとしますね」
高 任:「ほっとしますか」
ラオウ:「高任さん…技術面ではぼろぼろなのに、それなりに読めるってのはある意味すごいぞ」
高 任:「うわあ、ほっとしていいのかどうか悩ましいお言葉(笑)」
ラオウ:「……で、結局書き始める瞬間の構想としてはどういう感じ?」
高 任:「そうですね……大まかな流れとして、前半10話程度でキャラ紹介、その次に麻里絵の過去というか中学時代、それを受けて主人公と世羽子の中学時代、弥生が世羽子と主人公の仲を知って世羽子の家から出ていく……の流れで御子と弥生の状況を説明、というのが一つの流れで」
吉 井:「はあ」
高 任:「と、同時に夏樹とちびっこのラインが存在して……まず主人公がちびっこの信頼を得る、それから主人公が夏樹のフォローに回り、次第に夏樹が主人公に心をひかれていき……」
吉 井:「あれ?」
高 任:「……何か?」
吉 井:「夏樹が主人公にひかれるの?ちびっこが主人公にひかれるじゃなくて?」
高 任:「……俺が言うのもなんですが、原作から分析する限りちびっこにとって一番の苦境ってのは、中学生の頃に部員の反対に遭いながらも演劇部の建て直しに奔走した件だと思うんですよ。時間をかけることなくちびっこが主人公に恋愛感情をいだくなら、多分それ以上の苦境が必要かなあ、原作のエンディングはあくまでも恋愛感情からは遠いモノで、夏樹を助けてくれたことに対する感謝が強いんじゃないかと」
ラオウ:「うん、確かにお前が言うなって感じだが(笑)」
高 任:「で、まあ……ちびっこが夏樹の恋のサポートに回るという予定だったのですがっ!」
ラオウ:「うん、その件は後でな…」
高 任:「……で、後は綺羅、冴子と安寿のラインを、日程的に空いたスペースに流し込む……のが、最終的に冴子のラインを流し込む余地がなくなって(笑)」
吉 井:「……今、冴子と安寿って言った?」
高 任:「え?」
吉 井:「考えてみたら、夏樹とちびっこと冴子じゃなくて、冴子と安寿?」
高 任:「キ、キノセイデハ?」
ラオウ:「……今さら」
吉 井:「ヒントですか?それもヒントがあるんですか?」
高 任:「で、各キャラのラインがほぼ出そろった頃に、デートだったり、学校内のイベントだったり……の、麻里絵、紗智、弥生、御子、安寿、綺羅あたりが争奪戦に突入して、バレンタインを迎える……と」
吉 井:「無視ですか…」
ラオウ:「自分にとって都合の悪い事は聞こえない高任イヤーを所持してますし」
高 任:「……と、まあそんな感じですが」
吉 井:「また無視ですか?」
高 任:「……大まかにこんな感じですが、もうこの時点で青山と世羽子の小6の時の出会いとか、世羽子と弥生の出会いとか、ちびっこが中学生にして高等部の演劇部に乗り込んだお話とかいう細かい部分はほぼ完全に出来上がってました」
吉 井:「青山の背景とか…」
高 任:「稲作可能な平地が少ないため、おもに商業に力を入れることで地道に繁栄してきた3万7千石の小大名、青山家……明治維新で多くの華族が没落していく中、元々商業を頼みに藩を経営していたせいで繁栄もせず、没落もせず第二次世界戦に突入……財閥解体、農地改革によっていわゆる大地主が崩壊した戦後、青山家の土地はその多くが山林だったためにあまり影響はなく……ただ戦争で多くの兄弟を失ったおかげというか、財産相続で分散することなく多くの山林を相続した青山鉄幹の手により、青山家は拡大路線へと突入……列島改造の中、所持していた山林を元に土地売買を繰り返すことで…」
ラオウ:「もうええ(笑)」
吉 井:「……そ、それもやるべき事を?」
高 任:「んー、全国規模じゃなくてその地方を固めたグループというか……結局、青山家の場合は土地売買を通じて政治家とつながり、そのつながりを持ってさらに拡大してきたイメージで、綺羅の本家である藤本グループはまたちょっと違ったアレで……ただ、青山家にとっては藤本グループは自分達のなわばりの近くにやってきたよそもんの意識というか……もちろん偽チョコでそういうのは書かないけど、そういう含みはきちんと決めておかないと、綺羅と青山の会話がどうしても矛盾するというか」
ラオウ:「……だ、そうですよ、吉井さん(笑)」
吉 井:「……」
高 任:「いや、1を書くために100に資料が必要とか言うじゃないですか……話として書く1の設定の裏には、100の設定が潜んでいるんですよ(笑)」
ラオウ:「キリ無いから次いこか…」

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