裏技イカサ麻雀街〜兄ィさん、つかんじまったようだね〜
 
 裏技・イカサマを駆使し、手積み麻雀道を極めろ!
牌が欲しけりゃ手前の器量で奪い取れ!
積み込み上等!何でもアリがルールだ!
麻雀の腕はイカサマ抜きでも本物だ!
 (同ゲームのパッケージより抜粋)
 
 実際の打ち手の表情や呼吸のリズム、牌の並べ方などの重要な情報が抜け落ちた麻雀の思考ルーチンは所詮確率論でしかなく(確率で打てる人間もほとんどいないが)、原作付きの麻雀ゲームは『哭きの竜』こそが最高傑作と固く信じている高任にとって、ゲームの出来はともかくこれは袋小路に入り込んでしまった麻雀というゲームジャンルに新たな道を切り開くモノでは……なんて考えがあるわけもなく、ただパッケージから濃密に流れ出るバカゲーオーラに導かれ、このゲームを胸にいそいそと家路を歩む高任がいたりしたわけで。
 
 さて、最初は平打ち(イカサマ無し…ただし、そういうモードがあるわけではないので高任がそれを使用しないだけ)で勝負。
 いきなり、牌の平積みシーンから始まることにちょっと感激。
 ここでイカサマの種を仕込むわけです……が、積み込みをしないという選択肢があったので、他の3人が目一杯積み込みをしているのをよそに高任は余裕で見物。
 予想はしてましたが、このゲームってサイコロの目が自由自在です。(笑)
 だったら、2の2で天和だ(わかる人だけわかってください。これを説明しようとすると何ページ使っても足りませんので)……などと言いたいところですが、おヒキ(主人公の相棒というか仲間)ができるイカサマは通しだけ。
 さて、イカサマありのゲームだけに、このゲームには各キャラの視線が存在します。
 あと、度胸というゲージがあって、イカサマが発覚すると度胸が減少し、この値が0になると即ゲームオーバーになります……。
 ぺし、ぺしと手を進め、2巡目……高任は途方に暮れました。
 何故かというと、
 
 対面の人間が、高任の捨て牌に手を伸ばしたままじっとしているから。(約2秒)
 
 口元半笑いでそのまま放置していると、おや、高任の捨て牌がすり替えられてしまいました。
 
 次の順目で何故かその牌を捨てたりしましたが。
 
 説明書を読むと、相手のイカサマを封じるコマンドがあることが判明……システム上仕方のない演出とも言えるのでしょうが、相手のイカサマを逆手に取る防御策が1つもないみたいなのは何でもアリの麻雀にしてはちと寂しいですな。
 まあそれはそれとして、ぺしぺしと相手のイカサマを放置しながら場をすすめます……などと軽く書きましたが、この間にすり替えはおろかツバメ返し(自分の山に仕込んでおいた13ないし14牌とごっそりすり替える技)まで炸裂したことを明記しておきます
 
 つーか、ツバメ返し成功させたんならあがれや。
 
 もう、この時点でネタとしては最高です。
 麻雀知らない人間にさっぱりでしょうが、麻雀知ってる人間なら爆笑モノです……いろんな意味で涙が止まりません。
 何はともあれ、対面がリーチ。
 そして一発……
 
 いきなりすり替えかいっ!
 
 あまりにあまりなので、高任はついついツッコミを……じゃなくて、イカサマ防止コマンドを入力。
 すると、プレイヤーの手がすっと伸びて対面の男の手をべしっとはたき、対面の男の手がすっと引っ込みました。
 
 えーと、イカサマに対するペナルティはそれだけですか?
 
 まあ、何はともあれさっきのイカサマがブラフでない限り対面の手はガラスです。
 当たり牌はばればれなんですから絶対捨てるわけが……
 
 って、おヒキが捨てるし!
 
『へへっ、そいつだよ…』(対面の男)
『なんてこった!』(おヒキ)
 
 そりゃ、こっちの台詞だ。
 
 の、のーみそついてんのかこいつ?
 麻雀の腕はイカサマ抜きでも本物だ!とか謳ってなかったかこのゲーム?
 と、慌ててゲームのパッケージを高任は手に取りましたが……これは多分、『このゲームって最高』という台詞の『最高』という言葉ぐらい微妙な使われ方をしているに違いありません。
 日本語って難しい。
 まあ、麻雀ゲームのストーリーモードのお約束で最初の相手は激弱なんでしょう……こんな麻雀につき合ってられないので、相手のイカサマをぴしぱしと防御しつつ高任はトップを独走……と思ったら、何故か高任が親の時におヒキがでっかい手をツモ上がり。
 仲間に親かぶりさせてどういうつもりなのか?
 
 2対2ではなくて、1対3と考えた方が無難かと。
 
 まあ、なんだかんだで高任なんとかトップ取り。
 それにしても、叩かれても叩かれてもイカサマを繰り出してくる相手の度胸ゲージってどうなってるのやら?
 さて、省略してましたがストーリーは結構おもしろいです……多分、麻雀放浪記で言うところのノガミのドサ健が上野を守るお話がベースっぽいですが。
 ただし、このゲームの主人公はグリフター(流れ者)で、ゴルゴ13のように、一言も喋りません。(笑)
 そして、次の相手……相手…なるほど、平打ちではどうにもならないのですねこのゲーム。
 このゲームってば、トップを取るのは当たり前で、大三元字一色をあがれとか、数え役満をあがれとか、天和をあがれとか、国士無双13面待ちをあがれなどの条件が突きつけられるのです。
 それらの役をあがってない限り、いくらトップを取っていても即ゲームオーバーです。
 
 平打ちではかなりに無理っぽい……っていうか、無理。
 
 と言うわけで、説明書を読みつつとりあえず『ぶっこぬき(自分の山を前に出すフリをして不要牌とすり替える)』と『牌すり替え』『通し(このゲームではおヒキの手配とのすり替え)』の3つを覚える。
 
 さて、このゲームのイカサマについてですがコマンドは主にアナログコントローラーの左右スティックを使用します。
 相手の隙を見て、左右スティックを同時に上、下、上でツバメ返しとか。
 ただ牌のすり替え系統のイカサマに関しては、イカサマを行う前準備として欲しい牌に印を付ける(カーソルを移動させて欲しい牌の上で□ボタン)事が前提。
 例えば、自分の手牌の1つと誰かの捨て牌をすり替えたいときは、自分の手配に印を付け、捨て牌に印を付け(順序はどっちでも良い)その上で、相手の隙を見つけて右スティックを素早く右、左……何というか、イカサマのコマンドはめっちゃ簡単です。
 ヨガフレイムを出すのに死ぬほど苦労しバリバリバルカンパンチを出せたことのない高任がそう思うのですから、多分誰でもできます。
 
 と言うわけで、イカサマありの麻雀開始。
 とりあえず手積みですが牌の拾い……画面一杯に牌が散らばっている中から1つ1つ選択……もちろん、自分が欲しいと思っている牌は相手が欲しがっている牌でもあるので速度が命。
 そして、これこそまさに実践そのものなのですが、例えば自分があがった牌の中に白が3つあったとしますと、この牌が3つ固まって置かれています。
 つまり、自分がどういう牌を集めたいかということを念頭に置き、上がり形を決めていくという戦略が必要となってきます……じゃないと、東南西北3枚ずつとか、同種の牌を4枚ずつとか一回では集めきることはまず不可能ですので。
 
 ……ちなみに、ストーリーがすすむと何割かの牌が裏返ったまま積んでいくことになります。
 
 まあ、『ぶっこぬき』用に必要そうな牌をいくつか左端に積み込んで置くことに。
 もちろん、サイコロの目を操作して容赦なく高任の親から開始し、対7を出して相手二人の山を崩壊させておきます……というか、相手の山を残しておくとツバメ返しを連発されて鬱陶しい。
 配牌を取って、とりあえず『ぶっこぬき』……って、このゲームでは一度に2山(4牌)までしか出来ませんので、さらに不要牌に印を付けて『ぶっこぬき』、さらにもう一度。(笑)
 
 何でもアリの麻雀にしてはマークゆるゆるです。
 
 というか、牌を取り終わってからしばらくすれば相手の視線が集中するかと思いきや、時間が経てば何故か視線を逸らすのですこいつら。
 ですから時間さえかければ何回だってイカサマは可能。
 おまけに、おヒキとの牌すり替えも自在ですので……約1分後。
 
 『おっと、切る牌がねえなあ…(こんな台詞はないですが、演出上)』
 『な、なんだとっ!』
 『なんてこった!』(このおヒキ、これしか言わない)
 
 と言うわけで天和炸裂。
 もちろん次の局も容赦なく天和。
 次の局はちょいと変化を付けて天和国士。(ダブルあり)
 さらに次の局は天和大三元字一色でゲーム終了……調子に乗りすぎて突きつけられた条件の役をあがってなかったのでゲームオーバーになったのは内緒(笑)ですが、このゲームでは『てっぺんルール』というモノが存在し、30万点以上集めると自動的にトップ終了してしまいます。
 というか、それがないと永遠に終わりません…マジで東一局52本場とかなっちゃいそうですし
 あまりに手応えがなさ過ぎて、何やら幼稚園児を相手に全力で野球をしているような気分になってしまい、高任の心の中で天和禁止令発動。
 ついでに『ぶっこぬき』は一度まで……と心に決め、他のイカサマコマンドを全部覚えることに。
 とりあえず、相手にいらん事をさせないように手積みの段階では牌を散らす事だけに専念。
 ただ、手積みをしようがしまいが、自分の山の中身はわかります……覚え切れたらの話ですが。
 とりあえず、すり替えすり替えすり替えすり替え…(以下略)…て、大三元字一色四暗刻テンパイ。
 で、このゲームって四暗刻ツモならただの役満なんですが単ツモならダブルになります……つまり、シャボ待ちで四暗刻積もってもあがってはいけません。
 ここでプレイヤーが取るべき正しい行動は、単騎待ちになるように一旦上がりを放棄し、次のツモで先ほど捨てた牌とすり替えて四暗刻単騎ツモでダブル役満をあがる事です。
 もちろんリーチをかけると使用できるイカサマが制限されてしまうので厳禁です……このゲーム、役満縛りのつもりでプレイした方がいいです。
 ストーリーの後半になると相手もさるもので、もちろんイカサマを防止する時間が短縮されるのもありますが、相手の1人がイカサマをしようとしたのを阻止した瞬間に、もう1人がツバメ返しを決めるなどという、絶妙のコンビネーション(何か違う)を発揮してきます……もちろん、ダブル役満以上の可能性が高い。
 後、気をつけなければいけないのが、こちらがイカサマをした瞬間というのは相手に対してノーマークになってしまう事。
 つまり、こちらが牌のすり替えを敢行した瞬間にツバメ返しを決められたりするとイカサマの有効度でこっちが負ける。
 あがられたらこっちがどんな手をてんぱっていても終わりですし。
 後、すり替え時に牌に印を付ける……と言うのが結構手間取る作業で、一瞬の隙をつくイカサマからしてちょっと首を傾げてしまうかなと。
 また、対面の男の手が見えにくい……牌のすり替えなんかはこっちに手が伸びてくるので阻止することが容易ですが、エレベーターや手牌すり替えなんかはイカサマしてるのかしてないのかよく見えないのがなんとも。(イカサマをしてないのにイカサマ阻止コマンドを入力するとプレイヤーの度胸ゲージが下がるというペナルティがあります)
 
 ゲームとしてみれば全体的に難易度は低い……というか、友人達と『ここでそれを使うか!』などとわいわい騒ぎながらプレイするのが正しい遊び方なのか。
 というかイカサマの種類が少ない云々はさておき、応用が効かないと言うかある種の爽快感が感じられないところにこのゲームはまだまだ改良の余地が残っているかと。
 例えば誰かがリーチをかける……と次の瞬間に、リーチをかけた人間の捨て牌をすり替えてフリテンにしてやるとか、隙を見てリーチ者の手牌を抜いてやるとか、配牌時に山の端に牌をくっつけて積み込みを無効(逆利用)にしてやるなどの緊張感をプレイヤーに与えてやるとか。
 後、プレイヤーがもたもたしていたら相手の視線が集中して絶対にイカサマができなくなる状態にするのは絶対に必要かと。
 個人的にはおヒキと示し合わせての『必殺卓回し』のイカサマがあったらいいな。(笑)
 もちろん、改良の余地が残っていると言うことはこのゲームシステムに可能性が残っていると言うことでもあるので、行き詰まった感のある麻雀ゲームにおいてこれはこれで意義のある作品かも知れません。
 麻雀の思考ルーチンとしては完全に出来損ないですが。
 
 しかしまあ、現実において絶対あがれそうもない役をあがることができるってのはちょっと嬉しいですなあ。(笑)
 それと、イカサマという言葉はアレですが、プレイヤーの能動的な行為によって運命を切り開いていくと思えば……実にポジティブなゲームかと。
 ゲーセンの脱衣麻雀なんかで、いきなり天和国士なんかであがられた日には責任者出てこいゴラァ!ってな憤りに襲われますが、このゲームだと、『くっ、やるじゃねえかアンちゃん…』などとニヒルに呟き、タバコでもくわえたくなってしまいます。
 はっきり言ってこのシステムの場合、何をやられてもプレイヤーの責任です。
 『ついてなかった…』とか『所詮インチキ…』なんつーヌルイ言い訳は全く通用しません……人間というのは往々にして言い訳を必要とする生き物ですが、言い訳を与えられすぎるとダメになります。
 と言うわけで、まさに頼れるモノは己の両腕のみという麻雀ゲーム……一度はいかがですか?
 ストーリーはかなり渋め。
 例えば『ブロックの松』というキャラが主人公と行動を共にし、大勝負の場へ主人公を引っ張り出すのですが……
『くっくっくっ……アンタ、どうしてそいつがブロックの松と呼ばれているか知ってるかい?断っておくが守備が上手いんじゃねえ。ブロックはブロックでも去勢牛のブロックなのさ……何があったかはしらねえがな』
 とか、
『そいつがアンタの新しい相棒ってワケ……それでよくあたしの前に顔出せたものね』
 などと無口な主人公とは対照的に、やたら登場人物の間で熱いドラマが展開されていたりするので楽しいのなんのったら……オチが付いてないのが厄介ですが。
 
 というわけでシンプル2000シリーズのこの作品、麻雀好きならいろんな意味でお勧めです。

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