お題……『姫×姫』(WIN)
 
 私立桜花林学園。
 超のつく、上流階級の紳士淑女が集う……というか、あまりにも高額な学費と設備費、そして鎖国的とも言える徹底的な学園の環境が、それ以外の生徒派を排除するとも言うが。
 買い取った島に、学園および寮などの設備を建設し……交通手段は、鉄道(初等部中等部を含めて島の中の駅はなんと15にのぼる。)と船。
 まあ、まさに下界とは隔絶された環境というか(以下略)。
 
 まあ、何はともあれ……。
 
 私立桜花林学園は全寮制の学園である。
 上流階級にふさわしい知識・気品・能力を身につけるため、学生達は日夜いろんなものと戦うのだ。
 
 
 さて、主人公の優介くん。
 幼い頃に父を亡くし、女手1つで育てられた、いわゆる母子家庭。
 やや世間知らずな母に余計な負担はかけられないと決意し、進学の際は奨学金がもらえるようにと、勉強と陸上に打ち込んで、見事陸上競技推薦で進学。
 さあ、このまま頑張って卒業して…出来るだけ早く自立して、今度は自分が母親に楽をさせてあげるんだ……。
 などという美しくもけなげな決意を胸に秘めて、生活していたある日。
 
母 親:『あのね、優介…いい知らせと悪い知らせがあるの。どっちから聞きたい?』
優 介:『なんか悪い予感がするって言うか…本当はどっちも聞きたくないけど、まあ、いい知らせから聞くよ』
母 親:『うんうん、よくぞ聞いてくれました。実はね、母さん再婚することになっちゃいました』
優 介:『ああ、やっぱりそうだったんだ…』
母 親:『あれ、どうしてわかったの?』
優 介:『だって、ここしばらく化粧して、いそいそと出かけてたし…なんとなくね』
母 親:『そっか、ごめんね…優介に何の相談もなく』
優 介:『別にいいよ。母さんだって色々あるんだろうし』
母 親:『でね、母さん実家に戻ることになったの』
優 介:『実家…って、確か父さんと母さんが結婚するときに大げんかになって絶縁状態だったんじゃ』
母 親:『そうなのよ、母さんの再婚相手が有名な資産家ってわかった瞬間に謝ってきてね……相変わらずお祖父ちゃんは、上流階級以外の人間は、人間って思ってないのが丸わかりよね』
優 介:『……それ、悪い知らせにつながってない?』
母 親:『……』
優 介:『母さん?』
母 親:『あのね、お祖父ちゃんがね、結婚の条件として『優介を跡継ぎにして、それにふさわしい教育を受けさせること』なんて言い出してね…』
優 介:『ま、まさかそれ…OKしちゃったの?』
母 親:『ごめん優介、でも母さん、我慢できなかったの〜』
 
 と、いうわけで……優介は、学園のある島へと続く鉄道の駅で、万物は流転するという言葉に思いをはせていたりするのでした。
 まあ、冷静に考えると、この母親は再婚相手との愛情を取ったんだよな……しかも、子供を人質にして。(笑)
 
 
ラオウ:「ふつー(大爆笑)」
高 任:「ラ、ラオウさんっ!対談が一言で終わっちゃうからそれっ!」
ラオウ:「でも、それ以外の言葉はいらない(笑)」
吉 井:「(礼儀正しく無言)」
高 任:「ラオウさん、今の世の中で求められているのは、本質を的確に言い表す言葉ではなく、無味無臭な美辞麗句によって飾り付ける能力だと思うんだが」
吉 井:「何故とどめを刺すか、高任君…」
ラオウ:「おお、倒置法」
高 任:「……というわけで、お嬢様特集だぜ」
ラオウ:「開き直った、こいつ(笑)」
 
 
吉 井:「まあ、タイトルが『姫×姫』だから、最初は女の子同士を連想してしまいましたが」
高 任:「まあ、第一章のタイトルが『姫っていったいなんなのさ!?』ですし」
ラオウ:「学生の自治とか、このゲームの姫制度(まあ、生徒会長みたいなモノと思っていただければ)に限らず、お嬢様の出てくるゲームには、こういう無茶な学校側の制度がつきものですな(笑)」
高 任:「まあ、それ言い出すと…全寮制の学校で、転校してきた主人公の寮の部屋が空いてないとか、普通あり得ないですし」
ラオウ:「ヒロインというか、姫である咲姫(さき)と関わらせるための導入ですね……というか、ゲームパッケージの『巻き込まれラブストーリーアドベンチャー』に、ある意味ふさわしい強引さと、都合の良さに満ちあふれてて、そこは好感が持てたな」
吉 井:「え、好感なんですか?」
ラオウ:「別に俺はご都合主義とか、そういうモノを全否定しているわけでは…」
高 任:「そういや、ここまで超特急で主人公の境遇が変化するゲームは久しぶりだなあ……」
吉 井:「まあ、お母さんひどすぎ(笑)」
高 任:「愛のためなら子供でもゆでる(笑)」
ラオウ:「しかし、主人公の優介は、祖父の跡継ぎとなるにふさわしい教育というより、優秀な秘書になるためのエリート教育を施されているような(笑)」
吉 井:「というか、何代か前の姫の時に建てさせたアトリエに、住まわせてやるかわりに従者をやってもらう……って、そもそも、あのアトリエって、咲姫のモノではないのでは?」
高 任:「絵を描くのが好きな姫が在籍中に自費で建てたアトリエなんだけど、代々姫が自由に使っていいから…みたいな形で譲渡されたモノでは?」
ラオウ:「いや、学校の敷地は、そいつのモノじゃないだろ」
高 任:「まあ、大学の敷地にも、生徒達が無許可でこしらえたバラック風の部室とかあったし、そういうモノと思えば…」
吉 井:「無許可は無許可だよ、高任君(笑)」
ラオウ:「人におごらず、気配りが出来て……人間としてはなかなかに出来た人物かも知れないけど、お祖父ちゃん、こいつを跡継ぎにして大丈夫?(笑)」
吉 井:「学校卒業したら、約束を反故にしちゃえ…とか自分で言ってましたし」
高 任:「……いや、それを反故に出来るような人間じゃないよ、この主人公」
 
 
吉 井:「しかし、まあ……姫である咲姫に、美由紀(主人公のいとこ)、ひかる、菜南の3人のバレット(姫に選ばれた人間が自由に任命できる、学生統括責任を果たすための仲間というか)と、一方的に咲姫をライバル視している保奈美……ここって女子校だったっけ…などと勘違いしそう(笑)」
ラオウ:「何を今更」
高 任:「というか、『姫×姫』のタイトルって、一応保奈美をさすんですかね?」
ラオウ:「なのかなあ…一応シナリオ的にも、菜南とひかるは、タイトルとは無関係ですって感じだし」
高 任:「俺は咲姫の名前に『姫』が入ってるから、そっちなのかな…と思ったんですが」
吉 井:「まあ、咲姫のライバルとしては、保奈美はやや力不足というか…」
ラオウ:「実は主人公の幼なじみでした(笑)」
高 任:「何をいきなり(笑)」
ラオウ:「いや、何というか……夏合宿というか、それっぽい旅行の後に各キャラのルートに分岐するけど、咲姫、保奈美、美由紀の3人のルートって、こう、なんか腹立ってこない?」
吉 井:「……え?」
高 任:「(ちょっと考えて)……それはつまり、『志村、うしろうしろっ!』って事ですか?(爆笑)」
ラオウ:「うん、まさにそう……っていうか、今回の対談ではそのネタを多発するつもりか(笑)」
吉 井:「ラオウさん的に、『馬鹿なキャラには耐えられない』と?」
ラオウ:「馬鹿なキャラと言うより…こう、全部が全部ってわけじゃないけど……なんというか、『頭脳明晰なキャラであるにも関わらず、そのぐらいのからくりなり、策略も見抜けないのか?』とか思うとね、どうしてもふざけんなよっていう思いが出てくる」
吉 井:「ふつーのキャラがふつーに見抜けないのは構わない、と」
ラオウ:「それは別に気にならない」
高 任:「まあ、ラオウさんはデ〇ノートのあれでも、そういう感じでしたし」
ラオウ:「たとえば、100メートル競走で金メダル取った選手が、その距離を走り終えるのに20秒かかったとしたら、それは当然、そこに読み手を納得させるだけの理由付けが必要だろ?ゲームのシナリオに限らず、漫画や小説なんかで、肉体的なモノに関する理由付けはされても、頭脳的なことに関しては、理由も何もなく、ただわからないというケースが多いような気がしてな」
吉 井:「書き手のキャパを越えるからじゃないでしょうか」
ラオウ:「まあ、それはそうなんでしょうけど……このゲームなら、咲姫に限らず、優介レベルで見抜けるレベルでしょう」
高 任:「いや、それは、これまでの経験で話の展開の先が読めることと無関係ではないような…」
ラオウ:「まあ、黄金パターンというか、お約束という感じのストーリーですからね、どいつもこいつも(笑)」
吉 井:「さっき高任君がちょっと言ってた、シナリオの記号化って意味が別の意味でわかる(笑)」
ラオウ:「少し話は逸れますが」
高 任:「なによいきなり?」
ラオウ:「ゲームに限らず、漫画なんかでね……これまでに多くの作品を読んだという前提で描かれている作品がやたらめったら多くなってないかなあ、と」
高 任:「と、いうと?」
ラオウ:「簡単に言うと……お約束というか、読み手が過去に読んだ作品の力を借りることで説得力を補うというか」
吉 井:「ああ、それはなんとなく…」
高 任:「本来、コマのロングカットや背景を描くことで状況を説明するはずなのに、顔のアップと台詞だけで、説明する漫画とかですか」
ラオウ:「まあ、それはおいとけ……というか。そもそも、昔って、初めて読む作品というか、どういったら良いんだろうな……作品って言葉だとピンと来ないから漫画って言葉を使うけど、『漫画が好きな人、これまで漫画を読んできた人のための漫画が多いというか』」
高 任:「……むう、わかった」
ラオウ:「本当か(笑)」
高 任:「つまりあれだな、眼鏡娘だけしか登場しないゲームは、もともと眼鏡娘好きな人間しか買わないというか、あらたな人間をそこに引き込めないと言うことだろう」
ラオウ:「……うん、多分8割方あってる」
吉 井:「これまで漫画を読んだことのない人間とか、漫画に対して否定的な感情を持つ人間についページをめくらせてしまうような描き方が為されてないという感じですか?」
ラオウ:「そう、素晴らしい吉井さん(笑)」
吉 井:「話や絵柄の好みはともかく、昔の漫画家の描いた作品の方が、きちんと読めるなあというか、読ませるなあってのは、わりと感じるので」
高 任:「なるほど…」
ラオウ:「で、話が戻るけど……このゲームのシナリオってな、平均点というか、もう本当に普通なんだけど、これまでこういうゲームをやったことがない人間が、初めてこれをプレイしたら、はたしてどう思うのかなあ…などと」
高 任:「……このゲームに限ったことか?」
ラオウ:「まあ、それはそうなんだけど……お前の言う、シナリオの記号化ってのは、そういう意味合いも含めてのことと違うのか?」
吉 井:「ゲームの対談じゃなくなってきてますよ?(笑)」
 
 
高 任:「さて、ちっちゃいお嬢様の咲姫」
ラオウ:「まあ、優介の父親がやっていた会社の融資が止められてつぶれて、父親が後に過労死したとか色々あるけど」
吉 井:「いや、一言ですませるような内容ですかそれ?(笑)」
ラオウ:「高任さんも当然わかってるとは思うけど、このシナリオを成立させるために一番必要な…」
高 任:「愛だな(爆笑)」
吉 井:「ま、また、絶妙のタイミングでボケを…」
ラオウ:「いや、あの表情から察するにボケだけでもないというか…」
高 任:「咲姫が優介によせる愛情と同じく、姫制度に対する愛着とかそういうモノの説得力がないとダメという話だろう?」
ラオウ:「……そうだね」
高 任:「というか、シナリオの規模に対して、ストーリーが短すぎたのでは?正直、この倍は必要だろ。そもそもキャラルートが分岐するまで5章あるけど、1章は姫制度というか、状況認識のための章で、2,3、4章は、姫と3人のバレットの人物紹介みたいなモノだから、実質1人のキャラに限定して言えば、全部で3章しかないともいえる」
ラオウ:「まあ、よくいえばコンパクトな仕上がりのゲームだし」
高 任:「悪く言えば?」
ラオウ:「言わせるつもり?(笑)」
高 任:「でもまあ、そつのないゲームだよね全体的に」
ラオウ:「体操競技というか、今はフィギアの方が良いのか……完全につくりあげても、そもそもの基準点が低い構成ともいう」
吉 井:「キャラの話じゃないんですか…」
高 任:「キャラで言うなら…ちょっと可哀想でしたね、咲姫は」
ラオウ:「……?」
高 任:「いや、咲姫にも色々事情があるのに……咲姫というキャラの魅力をきちんと語り尽くしたかというと、かなり疑問が残る」
ラオウ:「ああ、そういう意味か…」
高 任:「そういう意味では、保奈美の方は、かなり恵まれましたね」
吉 井:「幼なじみは強いよなあ…」
ラオウ:「というか、咲姫のキャラとかぶってるような…」
高 任:「興奮すると関西弁が出るというのは、既にキャラ立ちのための項目なんだよな…」
吉 井:「興奮すると関西弁って、さっきどこかで聞いたような…(笑)」
ラオウ:「でも多分、そのあたりも考えて対談するゲームを選んでますよ、この男」
高 任:「……」
ラオウ:「キャラ設定とか、シナリオとか、やたらかぶってるのが多いから」
高 任:「声優もな(爆笑)」
吉 井:「まあ、実は幼なじみで、一途で、意地っ張りだけど頑張り屋で……多分、ヒロイン格の咲姫より人気出たんじゃないでしょうか(笑)」
ラオウ:「咲姫と同じく、ちびっこですし(笑)」
高 任:「ラオウさん」
ラオウ:「ん?」
高 任:「ちびっこイコール結花だから(笑)」
ラオウ:「そりゃ、失礼」
 
 
高 任:「主人公のいとこというか……お母さんの妹の娘の美由紀」
ラオウ:「つーか、主人公のお祖父ちゃん大変だよなあ」
吉 井:「ですよねえ(笑)」
高 任:「順番的に、美由紀の母親が、いわゆる私生児(実は、父親が咲姫の祖父)を産んだのが先になりますよね」
ラオウ:「だからこそ、主人公の母親の結婚にあれだけ反対して勘当騒ぎになったんだろう」
吉 井:「そ、そう考えると深いですね…」
ラオウ:「あれ……主人公の両親の都合で引っ越しして、主人公と保奈美は会えなくなったし、美由紀とも文通だけの関係になったんだよな?」
高 任:「だから、父親の会社がつぶれたんじゃねえの」
ラオウ:「……むう」
吉 井:「冷静に聞くと、ものすごくディープな状況だ……幼なじみとの思い出なんて、甘い状況じゃないよね(笑)」
高 任:「多分、父親のいない美由紀よりも、親のライバル心に巻き込まれた保奈美よりも、両親を亡くした咲姫よりも、苦労してますよ主人公は(笑)」
ラオウ:「まあ、それはおいといて、美由紀のシナリオって、美由紀の立ち位置がちょいと不安定というか……ひょっとしたら、保奈美の立ち位置にこそ、美由紀の存在はふさわしかったかも知れない」
高 任:「そうなると…主人公と姫の関わり合いが難しくなってきますね」
ラオウ:「まあ、それはどうにでもなるよ……つーか、このシナリオだと美由紀の迷いと、最後に吹っ切れた部分がね、どうしても正面衝突しちゃってるんだよな」
高 任:「主人公と咲姫がつきあい始めて、『そう、結局あの娘は全部私から奪っていくのね…』で、ああなるのならわかるんですが」
吉 井:「また、高任君の好きそうなシナリオだ(笑)」
ラオウ:「別につきあい始めなくても、誤解で構わないのと違う?」
高 任:「疲れて眠ってしまった咲姫の髪の毛の糸くずを取ろうとかがみ込む主人公……それを物陰からみていた美由紀が思いっきり誤解して……『そっか…ゆーちゃんは、姫のこと…好きなんだ…』みたいな?」
吉 井:「どっちみち、高任君の好きそうなシナリオだ(笑)」
ラオウ:「修羅場好きだよなあ、ホントに」
高 任:「というか、生の感情のぶつかり合いが好きなんだよ……いや、ある感情が、ごそっと別の何かに変質する瞬間…?」
ラオウ:「次行きましょうか、吉井さん」
吉 井:「そうですね、ラオウさん」
 
 
吉 井:「菜南です」
ラオウ:「父親が有名なピアニストなんだけど、本人はそれに抵抗というか、ことさらに男っぽく振る舞い、格闘技の……いいかげん戻ってこいよ、高任さん」
高 任:「うん、俺は多分修羅場が好きと言うより、何らかのきっかけで生まれた感情というか、その瞬間の純粋な状態に、惹かれるんだと思う」
ラオウ:「いや、そっちに戻すな」
高 任:「……菜南ですか?」
ラオウ:「菜南だよ」
高 任:「主人公とくっついた後……親公認の婚約者みたいな存在が現れて、主人公が努力して、そいつと戦って、たおしてハッピーエンド?」
吉 井:「さっき、どこかで聞いたような…(笑)」
ラオウ:「はい、お約束フラグお疲れ様です(笑)」
高 任:「いや、だからといって対談を『以下略』で終わらせるわけには」
吉 井:「……対談始めるまであまり実感なかったけど、ものすごくシナリオかぶってるなあ」
高 任:「頑張りましたから(笑)」
ラオウ:「何をだ(笑)」
高 任:「しかし、お嬢様に限らず格闘技をやってる女性キャラって、背が高くて……みたいなのが多いね」
ラオウ:「小さいのも…」
高 任:「背が小さいのは、ほぼ柔道な」
ラオウ:「……まあ、戦いにおいて身体のサイズは見過ごせない要素だし」
高 任:「まあ、リアルで言うならそうなんだけど……そもそも、『女性キャラで格闘技』ってのは、『女性だけど格闘キャラ』って意味合いがあったのは否定できないと思うんだわ」
吉 井:「それは…だろうね。ギャップというか」
高 任:「そこを一歩踏み込んで、小柄な女性で格闘の猛者のキャラの登場が待たれる」
ラオウ:「いや、言わんとすることはわからなくもないが…(笑)」
高 任:「つまり、眼鏡娘が、運動万能でもいいじゃない」
ラオウ:「そっちか…」
 
 
高 任:「さて、唯一の眼鏡娘のひかる」
ラオウ:「……スタッフというか、ディレクターが『眼鏡〇の会』なんて名前だから、一瞬、眼鏡娘天国のゲームかと思ったんですが(笑)」
高 任:「……」
吉 井:「……」
ラオウ:「ど、どうしました?」
高 任:「ラオウさん」
ラオウ:「な、何でしょう?」
高 任:「今現在の眼鏡娘戦線はね、ラオウさんが考えているよりももっと過酷な状況でね」
ラオウ:「なんだよ、眼鏡娘戦線って?」
吉 井:「スタッフが眼鏡娘属性だから、眼鏡娘キャラをもりもり登場させようなんて時代ではないんですよ、ラオウさん」
ラオウ:「は、はあ…」
高 任:「勘違いするなよラオウさん。ディレクターに眼鏡娘属性の人間がいたから、ようやく1人の眼鏡娘を舞台に送り込むことが出来たんだ」
ラオウ:「え、ええ?」
吉 井:「スタッフに眼鏡娘属性の人間がいなければ…いや、それなりの発言力のあるスタッフでなければ、攻略キャラに眼鏡娘がひとりもいない…既にそういう状況なんですよ」
高 任:「攻略キャラに眼鏡娘がいる……これが当たり前じゃないんです」
吉 井:「眼鏡娘が攻略できないギャルゲーなんて、俺はギャルゲーとは認めない…」
ラオウ:「うん、ちょっと落ち着こうか2人とも」
高 任:「攻略キャラに眼鏡娘が登場する。これは、現在において敗北ではなく勝利なんですよ、聞いてますかラオウさんっ!」
 
 脱線…というか、転覆。(笑)
 
高 任:「だいたい、今回対談で取り上げたゲームで、攻略キャラとして純正眼鏡娘が出てくるゲームがいくつあるよ、考えてみ?」
ラオウ:「(素直に考えているらしい)……あれっ!?」
吉 井:「気づきましたか…いや、気づいてしまいましたか…」
高 任:「これが、世界の真実です」
ラオウ:「いや、世界の真実かどうかはともかく……このゲームの1人(『アトリ』において非純正が1人いる)だけ?」
高 任:「ええ、このゲームも5人の内1人なわけですが……プロ野球の先発投手にたとえて言うと、今や眼鏡娘は先発ローテーションの柱ではなく、6番手および7番手の投手なんですよ」
吉 井:「昔と違って、攻略キャラの人数は減少傾向にありますからね……高任君に言われて気がついたんですが、最近主流なのは確かに5人ぐらいなんです」
高 任:「そう、5人なんですよ。つまり、6番手、7番手の投手は、いつまで経っても先発できないというか、スタッフが推さないと、出てこられないんです」
ラオウ:「む、むう、そうだったのか……色々と他に言いたいことはあるが、少しは同情するよ(笑)」
高 任:「うむ、それを踏まえた上で、唯一の眼鏡娘であるひかるを語ろう」
ラオウ:「そ、そうか…」
吉 井:「親の期待に耐えかねて精神的引きこもりというか、ファッションや外見に何の興味もなかったひかるが、姫である咲姫との出会いで復活というか、おしゃれにも気を遣うように…」
高 任:「ここで凡庸な人間ならば、『眼鏡を外して、はい美人』などというクソ設定にしてしまうんだろうが、眼鏡をかけたままで可愛く変身。漢だ、このシナリオ書いた人間はほんまもんの漢だよ」
吉 井:「ディレクターである、眼〇友の会さんがものすごい漢なのか、それともシナリオ担当者が漢気を発揮してくれたのか……わかってますよ、本当に」
ラオウ:「……ああ、うん、そうね」
高 任:「わかるか、ラオウさん。眼鏡をかけたまま可愛くなるという、ごく当たり前の真実がシナリオとしてプレイヤーに届けられる…これはな、奇跡に近いんだぞ」
ラオウ:「うん、とりあえず、キミがまともに話が出来ない状態であるのは良くわかった」
高 任:「ゲームの出来はふつーというか、今ひとつかも知れないけど、このシナリオだけで俺は自信を持っておすすめできるよっ」
ラオウ:「いや、それはどうだろう…」
 
 
高 任:「……まあ、冷静に判断できる自信はありませんが、冷静に言わせてもらえば……このシナリオの構成そのものはもうひとつというか。ただ、主人公とひかるがつきあい始めるまでのもじもじっぷりやら、もどかしさはあれですな、『いちょうの舞う頃』を彷彿とさせて幸せな気分になるというか。これで構成さえきちっとできてたらもう、俺はダメかもしれなかったというのに…」
ラオウ:「大丈夫、この対談を読んでいる人間は生暖かい目で、見守ってくれてるよきっと(笑)」
高 任:「うわ、手を繋ぐのも初めてだ…なんて、主人公どきどきしてるけど、お前体育祭の後ダンス踊ったじゃねえかよなどとツッコミをいれさせてくれるなよこの野郎とか(以下略)……まあ、それはそれとして、こう、微妙に、色物キャラっぽい雰囲気があるのがなあ…」
ラオウ:「(生暖かい視線で)……ぽいじゃなくて、色物だよ」
高 任:「まあ、ものすごく頭が良くて、引きこもり時期に、漫画と小説とアニメだけが世界の中心になって、台詞の端々にその手の言葉を転用というか…」
吉 井:「……」
高 任:「いや、ぎりぎりセーフだろ」
ラオウ:「今のお前がぎりぎりとか言ってる時点でもうアウトなんだよ(笑)」
吉 井:「……眼鏡娘がいてくれるだけで、幸せ」
ラオウ:「ほら、キミも吉井さんを見習わないと」
高 任:「いや、それはそれで幸せなんですが、地面に這いつくばっていても、視線だけは高く空を見上げていたいのです」
ラオウ:「……良い台詞なんだけどなあ(笑)」
 
 
高 任:「さて、個人的には一番お気に入りの城之内ミホです」
ラオウ:「また、脇役かよ(笑)」
吉 井:「ここは、『そうだそうだ』とか言わないとダメですか?(笑)」
ラオウ:「で、高任さんににらまれて、俺の後ろに隠れる、と(笑)」
高 任:「いや、多分ね、制作者の中で設定は出来てると思うんですよ……保奈美の従者というか腰巾着みたいな描かれ方してますし、保奈美にこき使われてますけど、保奈美が『城之内はしもべじゃないわ…友達よ』みたいな台詞をくちにしますからね。多分2人の出会いとか、色々あるはずで…」
吉 井:「イメージ的には、内弁慶の小型犬?」
ラオウ:「そのまんまですね」
高 任:「いや、咲姫と保奈美がそれぞれ主人公に好意を寄せていくんだけど、気がつくとミホとつきあい始めてました……みたいな、バッドエンド扱いでいいから、そういう話が欲しかったな」
ラオウ:「また、色々と微妙な雰囲気をもたらしそうだな、その状況」
高 任:「水泳が得意で、陸上はダメ、父親は、ホテルを多数所有しているリゾート王と呼ばれ……お嬢様じゃん(笑)」
吉 井:「言われてみると、保奈美の出会いが気になる」
高 任:「まあ、内弁慶だからあれですかね…友達はおろか誰とも話すことが出来ないで、そんなところに現れてそっと手を差し出してくれたのが保奈美とか」
ラオウ:「ああ、それっぽいね…」
高 任:「主人公と2人、夜の砂浜に腰を下ろして、暗い海を見つめながら『城之内(ミホは自分の事を城之内と言う)は、保奈美さんだけなんです…』などと、主人公に昔話を聞かせてくれるんだよきっと」
ラオウ:「……」
高 任:「保奈美は保奈美で、ミホの現状と先行きをやはり心配していて……『貴方が城之内の世界を開いてくれるなら、私は反対しない…止められるわけないでしょう…』などと、語ってくれるシナリオがきっと用意されていたに違いない」
ラオウ:「……」
 
 
ラオウ:「さて、一言で言うと……ふつー(笑)」
高 任:「最初と一緒かい」
ラオウ:「そりゃそうだろう、対談して変わるような評価は、そもそも評価と呼びがたい」
高 任:「なるほど、それは確かに」
吉 井:「眼鏡娘は、眼鏡をかけているから可愛い」
高 任:「当たり前のことが奇跡に感じられるこんな世の中」
ラオウ:「……」
高 任:「吉井さん、別の世界線を探しに行きましょう(笑)」
ラオウ:「這いつくばっていても、視線は高く空を見上げていたいんじゃなかったのか……って、なんだよ、世界線って?」
高 任:「シュタゲ」
ラオウ:「しゅたげ?」
吉 井:「メールというか、携帯中毒の眼鏡娘が登場する…」
ラオウ:「わかった、もういいです」
 
 
お買い得度…… 6
操 作 性…… 7
音   楽…… 7
再プレイ度…… 2
絶対値評価…… 0(ごく一部で4)
 
 
 まあ、ゲーム買って、インストールして、プレイして、終了して……1ヶ月ぐらい経って、『どういう内容だった?』と問われて首をかしげてしまう。
 おそらく大半のユーザーにとってそんな感じの、可もなく不可もなく、脳裏に引っかかるところも、心に残る部分も、あまりないゲームです。
 まさに、無味乾燥を具体化したというか……だが、そこに咲いた一輪の花に、眼鏡属性は涙するであろう。
 いや、眼鏡キャラそのものじゃなくて。(笑)
 
 だからこそ、ある意味このゲームは隠れた名作とは言えないだろうか……言えませんか、そうですか。
  

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