お題……『春恋乙女 〜乙女の園でごきげんよう。〜』(WIN)
 
 私立聖フランチェスカ学園。
 上流階級にかなりシフトした生徒構成を持つ全寮制のお嬢様学園で、(以下略)。
 いや、去年までお嬢様学園だったのですが…(以下略)。
 
 さて、それとは別に鷹宮学園。
 主人公である早坂章仁(はやさか・あきひと)は、本来、鷹宮学園に通う学生だったのだが……少子化の波というか、バブルの後遺症というか、早い話、昨年度をもって廃校に。
 そして、今年から共学化を決めた聖フランチェスカ学園……通常なら1年だけが、男女共学になるのだが、それではちょっとバランスが悪かろう、と。
 2年、3年にも、他の学校からの編入という形で男子生徒を少数ながら受け入れよう(もちろん、新入生の男子生徒比率も鑑みつつ)ということで……主人公の章仁は、実に主人公らしい都合の良さで、するりと聖フランチェスカ学園への編入権をゲットしたのだった。
 男女共学と言っても、いきなり生徒比率が半々になるわけもなく……特に、2年である主人公の場合、クラスに男子は1人のみ。
 憧れだったフランチェスカに入学を決めた妹の羽未(うみ)、進学によって離れることになった幼なじみの結衣佳(ゆいか)との再会なども含めて……主人公章仁の、新しい生活が始まる。
 
 
ラオウ:「お嬢様特集じゃん(笑)」
吉 井:「特集ですね」
高 任:「まあ、気にするな」
ラオウ:「と、いうか…このゲームって、OVAとか作られたんだっけ?」
吉 井:「さあ…?」
高 任:「つーか、そもそも何年か前に、あんたがこのゲームを俺の家に置いていったんだよ(笑)」
ラオウ:「いやあ、あんまり覚えてないけど、多分やる暇なかったんだろうな。ここに置いていけば、どういうゲームかリアクション来るし(爆笑)」
吉 井:「……どっちをツッコめばいいのか」
ラオウ:「対談と、いうわけで…まあ、やってみたけど」
高 任:「やってくれましたか」
ラオウ:「なにこれ?(爆笑)」
高 任:「なんでもかんでも、無差別に俺の家に置いていくな(笑)」
吉 井:「……ここで本当に怒って良いのは、俺だけなのではと思う今日この頃」
高 任:「とはいえ、ゲームをプレイして即座に『対談だ、対談でタコ殴りにするしかないっ!』というレベルまでいきり立ちはしなかったところが、ある意味弱いところか」
吉 井:「高任君的に、絶対値が足りないって事だね」
 
 
ラオウ:「まあ、これまで何度も言ってきた台詞ですが……シナリオが、全体の足を大きく引っ張っているゲームだな」
吉 井:「いつも通りですね(笑)」
高 任:「とはいえ、正直、もうちょっとどうにかならなかったのかと(笑)」
ラオウ:「もうちょっと、とか言うレベルじゃないだろ」
高 任:「いやまあ……俺が見たところ、攻略対象6人のうち、なんとかなってるのが1人、こりゃダメだろってのが3人、これ書いた人間大丈夫なのかよってのが2人だから…」
ラオウ:「全然ダメだろ、それ」
高 任:「……まあ、お嬢様特集かどうかさておき」
吉 井:「……?」
高 任:「以前、キャラクターの記号化についてはちょっと触れたと思うんですが、今回は悪い意味でシナリオの記号化が始まってるような気がするなあと思って、それが顕著にわかるというか、比較することで実感しやすいようなゲームをセレクトしてみました」
ラオウ:「……なるほど、これがもっとも悪い例だと」
高 任:「んー……何というか、『お嬢様』の黄金パターンって、それほど開発されてないにも関わらず、閉塞感ただよってんなあというのが、俺の感想なんですが」
吉 井:「まあ、確かに……今回取り上げたゲームの中でも、シナリオかぶってるのがいくつもあるし(笑)」
高 任:「まあ、ギャルゲーというか、ライトエロゲーに関して言うなら、ほぼ9割方舞台はお嬢様学校のはずですが、正直それはお約束と言うより、思考の硬直化じゃねえのかなあ、と」
ラオウ:「作り手側じゃなくて、受け手側の思考の硬直化だったり(爆笑)」
高 任:「まあ確かに、女子校というだけでいい感じにトリップできて、『エンジェル結花様』がいたく気に入ったのか、未だにあれを書けとうるさい知人が1人います」
吉 井:「エンジェル…ああ、あれですか」
高 任:「まあ、今現在のお嬢様の定義というか、『世間知らず』『家の都合によって、自分の意志を発揮できない』『自分の家柄を誇って、他人に対して高飛車』あたりが3種の神器ですか」
吉 井:「3種の神器(笑)」
高 任:「『世間知らず』は、どこか突拍子もないキャラ作成に利用されることも多いですね……いわゆる、世間からずれてるというか、隔絶というか。で、『自分の意志が発揮できない云々』は、大抵シナリオの中で利用されるというか…」
ラオウ:「お前の頭は、もう少し社会的に有効に活用されるべきではなかろうか?」
高 任:「この対談を目にした誰かが、これをきっかけに新しい黄金パターンを作り出すかも知れないじゃないか。これ以上に有効な活用があるか?」
ラオウ:「(棒読み)うん、そうだね」
吉 井:「(同じく棒読み)そうかも知れないね」
高 任:「……現状を認識するための分析。これは絶対に必要な…」
吉 井:「あ、トーンダウンした…」
 
 
ラオウ:「……一応ツッコミをいれておきますが、全寮制の学校の場合、入学式より前に学校の寮に入る事がほとんどです(笑)」
高 任:「まあ、そうだけど……ほら、お約束として、主人公が学校の建物とかを見上げながら『うわ、すげえ…』って呟かないと、この手のシナリオは始まらないよ」
吉 井:「別世界への導入ですからね…」
ラオウ:「……最初に寮に入ってからの数日を、プロローグで使えばいいのでは?当然男女別の寮なんだから、男友達との出会いがあって、学校の対する説明があって…」
高 任:「いや、そこはとにかく最初にヒロインの誰かを登場させないとユーザーがだれちゃうよ(笑)」
ラオウ:「それこそ、『あれ、寮はどっちだ…?』で、案内してもらうとか、『わ、私も、新入生ですので…』とかの出会いとか……そっちの方が自然なのでは?」
吉 井:「言われてみると、そういうのほとんどないですね…」
高 任:「……まあ多分、色々設定作って説明するのが面倒くさいとか難しいとか、そもそもユーザーが飽きたらまずいからとかの理由もあるんだろうけど、スキップ導入のために『お約束』が使われているケースが多いのは確か」
ラオウ:「まあ、それはわかるんだが…」
高 任:「それと同じで、『労力を使いそうなところ』を全部『お約束スキップ』にしたあげく、終わってみたらどこかでみたようなお約束ストーリーができあがりました……とまでは言い過ぎかも知れないけど、その『労力をつかいそうなところ』で、頭を絞って汗とかいろんな何かを流さないと、オリジナリティとかアレンジも発揮しようがないと思うわけで……」
ラオウ:「なるほど……シナリオの記号化を語る上で、お嬢様というジャンルを選んだのはそういう理由だと」
高 任:「まあ、このゲームの場合は、頭の絞りどころを完全に間違っていると思いますが(爆笑)」
吉 井:「……彩夏が特にひどかったね」
ラオウ:「正直、精密検査を受けた方がよいと思う」
吉 井:「彩夏が?」
ラオウ:「いや、シナリオ書いたやつ(爆笑)」
高 任:「独断と偏見ですが、お約束がお約束である所以を分析もせず、小手先で変化させようとしてどつぼにはまったとしか思えません」
ラオウ:「……というか、このゲームの主人公というかシナリオにある程度共通して言えることなんだけど、主人公が何もしないまま事態が好転するとか、何も解決しないままハッピーエンドになってるとか、誰もツッコミいれなかったとしたら、ここのメーカー終わってるだろ」
高 任:「『ONE2』を作ったとこ」
ラオウ:「なるほど、謎は全て解けた……言われてみると、あれも妙なひねり方をするシナリオだったな。あれで解決したとでも思い込んでるのかどうか知らないけど(笑)」
高 任:「いや、シナリオが同じかどうかまでは調べる気もしなかったんですが…」
ラオウ:「あれって、2003年ぐらいだっけ?で、このゲームが2005年?」
高 任:「いや、そこまでは…」
ラオウ:「きついこと言うけどね、良いシナリオのゲームを作るメーカーってのは、それを見ながら仕事を覚えていくから、後に続く人間もそれなりにシナリオの書き方を覚えていくんだよ。つまり、シナリオがダメなメーカーで仕事を覚えた人間は、基本的にダメになる。例外としては、出来る人間が外部からやってくるとか、最初から頑固なまでに自分を持ってる…(以下略)」
吉 井:「……ダメなプログラムを組む先輩に仕事を教えてもらった後輩は、ダメなプログラムを組んでしまうと」
ラオウ:「そうです。仕事できない人間に教えてもらった人間は、仕事のやり方を理解してないんですよ。勤続年数じゃなくて、どういう人間に仕事を教えてもらったかが重要であって…」
吉 井:「わかります、それすごくわかりますよ、ラオウさん」
高 任:「もしもーし(笑)」
 
 珍しくふたりがエキサイト。
 
高 任:「……基本的に、キャラを選択して後はキャラ専用のストーリーに分岐のシステムだから、キャラ別で語りますか」
ラオウ:「つーか、他に語るとこないだろう」
吉 井:「……」
高 任:「じゃあ、主人公の妹である羽未から」
ラオウ:「ひねるな」
高 任:「……」
吉 井:「……」
ラオウ:「下手な考え、休むに似たりともいう」
高 任:「ああ、そういう意味ね」
吉 井:「妹キャラは最後に持ってこいという意味かと(笑)」
ラオウ:「妹じゃ、ねえじゃんっ!(大爆笑)」
吉 井:「あー、なんというか…」
高 任:「ものすごい無理のある裏設定でしたね…」
ラオウ:「遠縁とか、漢字が違うとは言え、そもそも同じ名前の子供を引き取ろうと考える親なんているか?事故で死んだ娘の代わりに…だとちょっとシナリオがグロすぎるとでも考えたのかも知れないが、妹の死によって錯乱した主人公を落ち着かせるための人身御供として選ばれたって流れの方がよっぽど自然だと思うぞ」
高 任:「まあ、言いたいことはわかる」
ラオウ:「ああでもない、こうでもない、とシナリオひねくり回して、たどり着いた先は、おぞましいキメラでした…って良い例だな」
高 任:「そうだな、眼鏡娘のいないギャルゲーみたいなもんだ」
吉 井:「確かに」
ラオウ:「……ごめん、ちょっと冷静になったよ(笑)」
高 任:「うむ、それは何より(笑)」
 
 
ラオウ:「まあ、羽未(羽深…うみ)に関しては結衣佳も絡んでくるんだけど……無茶ぶりというか、シナリオに説得力なさ過ぎというか、むやみやたらにシナリオの穴をふさいでみましたという感じですか」
高 任:「結衣佳もなあ…普段ののほほん顔は全て演技でしたという部分は大好きなんだが、いかんせん、いろんな部分でつじつま合ってないだろというか…」
吉 井:「高任君の得意そうなジャンルだと思うけどね…(笑)」
ラオウ:「だよなあ……お兄ちゃん大好きの羽未に向かって黒い微笑みを浮かべながら、『あ、知らなかったんだ羽未ちゃん。兄妹は絶対に結婚できないんだよ。だから、羽未ちゃんがどんなに頑張っても、あきちゃんとは離ればなれになっちゃうの…こんな風に、ね』などと、車に向かって羽未の背中を突き飛ばすぐらいは平気でやらすよなあ(爆笑)」
高 任:「そりゃ、やらすけど(笑)」
ラオウ:「やらすんかい…(笑)」
吉 井:「やだなあ、そんな結衣佳(笑)」
高 任:「シナリオとしてそれが必要と感じて、なおかつ設定としてつじつまが合うと感じたなら、俺はキャラクターに何でもやらせます」
ラオウ:「いやまあ、それはそーだけど…キミの場合、必要以上に酷薄な選択をさせる傾向が強いというか」
高 任:「つーか、そもそも結衣佳の側に『自分は主人公と幸せになってはいけない』という動機を持たせるために、こういう設定になったというか、そもそも羽深もそのとばっちりを食ったんだと俺は想像するんですが、裏を返せば羽深の存在が不要なんですよ」
ラオウ:「お前なんて事を」
高 任:「いや、妹役はキャラ登場に必要なのはわかってるし、妹役そのものを否定するんじゃなくて、主人公と結衣佳ともう1人、幼なじみという設定をつくったら良いだけの話と違うん?多分、それだけで、結衣佳と羽未のシナリオのぎこちなさはほとんど解消されるよ」
ラオウ:「……だろうな」
高 任:「どうしても2人を絡めたいと言うんだったら、主人公と羽未が義理の兄妹で、羽未の姉が主人公と結衣佳の同い年……で、この姉が死んだって設定でいいでしょ」
吉 井:「いや、いいでしょと言われても…」
高 任:「幼なじみの死に責任を感じる主人公、それとは別の意味で死の原因を作ったという風に責任を感じてる結衣佳……姉が死んでから、2人の関係はややぎこちなく、それと同時に、自分に優しくなったと感じている羽未。主人公が自分に向けている優しさは、本来姉に向けられていた優しさではなかろうか……と、疑心を抱いた羽未は、それが少し哀しく、また少し悔しくて、必要以上に主人公にべったりになり、結衣佳に対する複雑な感情を……」
ラオウ:「ふむ…」
高 任:「ほら、簡単で、かつすっきり設定(笑)」
吉 井:「うーん」
高 任:「そもそも、結衣佳が及川(主人公の同級生)とつきあい始めたのも、主人公を自分から遠ざけようとする結衣佳の思惑とは別に、シナリオを書く人間にね、クライマックスにおける嫉妬という感情の共有をさせるためという狙いがあったと思うんですよ」
ラオウ:「……だろうね」
高 任:「でもね、回りくどすぎる上に、そもそもそれがシナリオとして本質的に必要かどうかあたりの判断がおかしいような気がする」
ラオウ:「まあ、主人公と幸せになってはいけないという動機付けというか、嫉妬というか自身の醜さをあげる結衣佳に対し、『誰だってそうだ。俺だって、結衣佳と及川がつきあい始めたと知って…』という主人公の台詞がね、はたして結衣佳にとって救いになるのかどうかってことに関して、疑問はあるね」
高 任:「だろ?あそこで重要なのは、自分の抱いた嫉妬という感情によって、主人公の妹である羽未を、結果として死に追いやってしまった(事実かどうかはさておき、結衣佳はそう思い込んでいる)……という部分でしょ?はたしてここで必要なのは、『誰だって、嫉妬ぐらいはする』という一般論なのか?違うだろ、ここで重要なのは、主人公の妹を死に追い込んでしまったという罪悪感であり、また妹の死によって錯乱状態に陥ってしまった主人公を目の当たりにしたことで悟った罪深さというか、結衣佳自身が持つ主人公に対する愛情そのものだろ?それをね、『誰だって綺麗なだけじゃない、俺だって、誰だって嫉妬ぐらいする』という一般論が、結衣佳にとって救いになると思ってるとしたら……そもそもこのシナリオは狙いそのもののピントがずれてる」
吉 井:「……なるほど」
ラオウ:「まあ、このシナリオに関してだけじゃないですが……シナリオの本質を、シナリオを書いた人間がつかめてないのでは…と思える部分が散見できるって事は、このシナリオそのものが、単に借り物に過ぎないと言えるよな?」
高 任:「正直、『あ、こういうのいいかも』みたいな感じで、お約束をつぎはぎしたとしか思えないんですよね。お約束の分析というか、本質を考えてないから、それをつなげる部分で間違って、しかも必要なお約束を持ってきてないというか…」
吉 井:「そこまで…」
 
 
高 任:「さて、みんなのアイドル如耶(きさや)姉様です(笑)」
吉 井:「璃々香(りりか)が可愛い」
高 任:「ですねえ(笑)」
ラオウ:「……まあ、高任さん的にストライクなのは予想してましたが、吉井さんまで」
高 任:「いやあ、璃々香いいですよ……強いて言うなら、璃々香が主人公の部屋を訪れたところを写真にとって、それを如耶のところに送る…感じのイベントが欲しかったですが?」
吉 井:「そういえば、あれって……璃々香に対して、主人公と関係を持てみたいな命令を出すのはよいんですが、その後どうするつもりだったんだろう?俺はてっきり高任君が言ったように、それを如耶に教えて2人の仲をさくというか、そういう狙いがあったと思ったんだけど…」
高 任:「別に、自分と結婚してくれたらそれまで誰と付き合おうとも気にしない…とか言ってましたしね。如耶の両親に対して圧力をかけている現状、璃々香にそれを命令しなきゃいけない理由が今ひとつつかめないというか」
ラオウ:「いや、だからそもそもシナリオ担当がダメだからだろ」
高 任:「まあ、匿名でもよいけど、璃々香が主人公の部屋で服を脱いだ瞬間の写真とか送ってこられて……如耶が璃々香に聞くんですよ。『これは、どういうことなのだ?」とか」
吉 井:「そうそう」
高 任:「で、璃々香が如耶に『章仁様はなんと…?』とか聞くと、『章仁殿は何も言わぬ…だから璃々香に尋ねている』とか言うわけで……ふっと、璃々香の中で何かが芽生えるというか、あれですね。『如耶姉様…章仁様は、越小路様について何かおたずねになりましたか』…『章仁様は、如耶姉様の事を信じて、何もおたずねになりませんのに、如耶姉様は、章仁様をお疑いになりますの?』などと…」
吉 井:「いいね、そういう展開を希望してたよ俺も(笑)」
高 任:「と、いうわけで、璃々香が可愛いんです」
ラオウ:「全部妄想じゃねえか(笑)」
高 任:「いやあ、他のキャラはぴくりとも筆が動きそうにないけど、璃々香だけは動くね」
吉 井:「書かなきゃ、それは是非書かないと、高任君」
高 任:「やっぱ、書かないとダメですか」
吉 井:「ダメだよ。書きたいと思ったときが書けるときだよ、高任君」
ラオウ:「そういや、脇役のくせに、璃々香だけには18禁シーンがあったな」
 
 脱線。
 
ラオウ:「で、如耶の話に戻すけど」
高 任:「木刀で、人を殴ってはいけません(笑)」
ラオウ:「刃物よりよっぽど危険だよな……しかも、剣道の有段者だし」
高 任:「まあ、それはさておき……このゲームのシナリオとしては、珍しく主人公が何かをするというかやり遂げるシナリオでしたね」
吉 井:「……と言っても、婚約者とか言う男が出てきてからは、ひたすら如耶を信じて待つだけ…の、受け身シナリオ全開ですが」
高 任:「つーか、あの婚約者(越小路)はなんのために如耶と結婚するんだろう?」
ラオウ:「……如耶の両親に圧力をかけられるってことは、少なくとも経済的に如耶の実家を遙かに凌駕するわけだな」
吉 井:「でも、上流階級の娘さんの中でも、如耶は王族クラスなわけで」
高 任:「結婚するまで、他の誰と付き合おうとも構わないわけだから……少なくとも愛情じゃないよね、政略結婚?」
ラオウ:「だから、根本的にシナリオ担当が(以下略)」
高 任:「……基本的に、主人公と如耶が付き合い始めるまではともかく、越小路(えんのこうじ)と結婚というか婚約しないと、両親および家に迷惑がかかるということで、主人公ではなく如耶の心が揺れるというか、そういうシナリオなんだけど」
ラオウ:「……多分だけど、主人公が如耶という視点でのシナリオの作りになってるのよ、これ」
吉 井:「と、いうと?」
ラオウ:「主人公は、もう如耶と心を通い合わせて付き合い始めたわけですよね……で、如耶サイドのお家の事情というか、そういうので2人の中がぐらつき始めるというか」
吉 井:「はい」
ラオウ:「どうするもこうするも、主人公は如耶を信じて待つだけでしょ。そりゃシナリオの流れとして、越小路と剣道の試合をしたりするけど、主人公サイドに何の問題もないわけだから、諦めるという選択肢なんかあるわけないじゃないですか」
高 任:「ここで選択肢があるのは、むしろ如耶の方だと?」
ラオウ:「ですよ……主人公が主人公である条件ってのは、結局未来に対する選択肢が与えられるって事ですよね。だとすると、このシナリオにおいて主人公は主人公でなく、如耶が主人公なんですよ。だからこそ、剣道の試合に勝つために努力するなんてシナリオの流れはあるのに、妙に受け身というか、ただ流されている感が濃厚というか(笑)」
高 任:「なるほど、つまりラオウさんはこう言いたいわけか」
ラオウ:「…?」
高 任:「このシナリオは、主人公が女の子の某少女漫画を転用したようなものだから、男性キャラをプレイするユーザーにとって違和感バリバリだと(爆笑)」
ラオウ:「いや、そこまでは」
吉 井:「……そういえば、このゲームのオープニングアニメですが」
高 任:「ええ、各キャラに対して、某少女漫画コミックスの表紙のパロディが用いられているというか…」
吉 井:「り〇んコミックスに、花と〇めコミックス、な〇よしコミックスに、マー〇レットコミックス……(笑)」
高 任:「ちなみに、羽未がり〇んで、如耶は花〇めですな……ひょっとして、このキャラのシナリオを、それぞれ各コミックスの特色に合わせているのか…などと思ったんですが…花〇ゆめが如耶で、如耶のシナリオが、花〇ゆめコミックスの何かとそっくりじゃねえかよ…なんて事があるのではないかと思ったのですが(爆笑)」
吉 井:「高任君、そのぐらいで(笑)」
高 任:「まあ、本気で少女漫画探せば、似たようなシナリオはいくつも転がってますからね……『ごきげんようでござる』の挨拶に、長身で剣道の実力者で…」
吉 井:「だから高任君、それ以上は踏み込まない(笑)」
ラオウ:「……?」
 
 
高 任:「なか〇しコミックスのソーニャです(笑)」
吉 井:「うん、まあ、なか〇しコミックスって感じだったね…」
ラオウ:「ごめん、そのネタ全然わからないんだけど?」
高 任:「いや、心暖まるお話だったなあ、と」
ラオウ:「否定はしないんだが……」
吉 井:「一応、唯一と言っていい、まともなシナリオでしたね(笑)」
ラオウ:「まとも…ああ、うん…まあ、まともですね……」
高 任:「なんだろう、ここは優しく背中をさすってあげなきゃいけないような…」
吉 井:「頭をなでてあげる…?」
ラオウ:「いや、どっちも固辞させてください(笑)」
高 任:「まあ、プロローグの登場シーンからして、幽霊か、吸血鬼だと思ったんですけどね、てっきり(笑)」
吉 井:「いや、それは考えすぎ(笑)」
ラオウ:「でも、鳩も含めて一瞬で姿を消した理由は、わからないままでしたね」
高 任:「ですねえ…」
ラオウ:「育ての親の影響で、感情が高ぶると関西弁になるとか……妙にキャラを立てようとしたけど、結局シナリオ的に使いどころがなくなっったのか、どうしようもなくなって、最後には綺麗さっぱりなかったことにしたんですかね…(笑)」
高 任:「なにやらとげを感じるね(笑)」
吉 井:「金髪碧眼関西弁……まあ、インパクト狙いだったんでしょうね」
高 任:「声優さんのぎこちないイントネーションが、ある意味はまった演技になってましたね」
吉 井:「納豆サンドイッチとか」
高 任:「デフォルメソーニャは、可愛いなあ」
ラオウ:「インパクト重視のキャラデザの敗北する様は、いつも哀しい」
高 任:「さっきから、なにかね?」
ラオウ:「いや、まともなシナリオって結局、大きな矛盾がないだけのシナリオというか、キャラデザやら何やら、シナリオに何も貢献してない設定が多すぎるって事は、何の計算もされてないシナリオって事じゃないのか?」
高 任:「いや、他のシナリオ見ればわかるじゃん。たったひとつでも、まともなシナリオが出来た奇跡を喜ぶべきだろう」
吉 井:「にっこりわらって、すごい毒を吐くね、高任君」
ラオウ:「つーか、エンディングで卒業と同時に、大学合格も決めている主人公をイタリアに拉致って、羽未とか、家族とか大丈夫なのかよ、とか」
高 任:「まあ、そのぐらいは、裏で手を回したんじゃないかと…」
ラオウ:「……つーか、主人公いなくなったら、本質的に早坂家の血は断絶したって事じゃん…(笑)」
 
 
高 任:「マー〇レットコミックスの、彩夏です」
吉 井:「ごめん高任君、これは俺も良くわからない」
高 任:「いや、言ってみただけですから」
ラオウ:「まあ、よくわからないが、このシナリオがクソということだけは良くわかる」
高 任:「いやあ、これはひどいね……主人公の見せ場、ナッシングですよ(笑)」
吉 井:「……まあ、主人公が逃避している間に問題解決ですからね」
ラオウ:「生きるということに希望を見いだせず、手術を拒む少女……そんな少女を心配し、世話を焼く主人公だが、ある日ついに少女に拒否されて、絶望する……まではある意味黄金パターンと言っても良いんだけど」
高 任:「彩夏の友人に、無理矢理連れられて病院に行ったら、『あの日はごめんなさい…私、あなたがいなくなって初めて気づいたの…』……って、ふざけんなっ!(爆笑)」
吉 井:「まあ、そこだけじゃないけど、ひどいお話でしたねえ…」
ラオウ:「本当に、このシナリオでよいと思ってるのだろうか…」
高 任:「というか、別の意味で、彩夏は大丈夫なのか、と(笑)」
吉 井:「なんか、ことあるごとに、リストカットしそうなイメージが…(爆笑)」
ラオウ:「……それまでに描かれていたキャラクターと、エンディングで描かれるキャラクター……ついでに言うと、導入部分で描かれるキャラクターの、3人の彩夏の人格が、接触不良というか、全部別人だよね?(笑)」
高 任:「まあ、実は多重人格でしたとかいわれても、俺は驚かないよ(笑)」
吉 井:「シナリオが、人格を引き裂く……哀しい事件でした」
高 任:「脇役の眼鏡娘とか、こう、もっとよい味を出せると思うんですが」
ラオウ:「それができるぐらいなら、こんなシナリオにはならん」
 
 
高 任:「近〇麻雀コミックス……というか、福〇先生というか、はっきり言うと、ア〇ギのコミックスの単行本装丁の莉流(りる)です(笑)」
吉 井:「……これは別の意味でわからないというか」
ラオウ:「……他のキャラが少女漫画のコミックスの装丁のパロディを使っているのに、何故莉流は、アカ〇?」
吉 井:「わざわざあれを使うって事は、〇カギを知ってるってことで、知っていて、他のキャラは全部少女漫画なのに敢えてあれを使うって事は、そのこと自体に意味があるって事ですよね?」
ラオウ:「少なくともアカ〇には、デンプシーロールは出てこないし…」
高 任:「それについてはちょっと考えたんだけど」
ラオウ:「聞こうか」
高 任:「このゲームって、2005年ぐらいだったよな……とすると、ア〇ギの連載はワシズとの対決を描いてるところなわけで…」
吉 井:「ワシズとの対決、いつまで続くんだろう…(笑)」
高 任:「もうすぐ、決着ですよ」
吉 井:「……っていうか、浦辺の後からずっとあれやってるよね(笑)」
高 任:「まあ、話を戻しますが……莉流のシナリオにおいて、不自然なところというか、いわゆる後半部分の、あれだと思うんですよ」
ラオウ:「……?」
高 任:「ほら、自分に負けない自分を手に入れるまで、主人公に会えないとか何とか……」
ラオウ:「ああ……それ単独で言うならともかく、シナリオの流れとしては不自然きわまりないからなあ」
高 任:「で、〇カギのワシズとの対戦でね、揺れない心というか……やたら心の強さというか、人の本質について語っていた頃がありましたよね」
ラオウ:「まさか…」
高 任:「そう、多分あの頃…このシナリオを書いていた人間は、前から読んでいたのか、それともちょうどその頃読み始めていたのかわかりませんが、思いっきりア〇ギにはまっていたんじゃないかと思うんですよ(笑)」
吉 井:「そ、それは…」
高 任:「意識的か、それとも無意識かはさておき……莉流のシナリオを書く上で、アカギに影響された部分が思いっきり発露したんじゃないかと」
吉 井:「いやいやいや、それは…」
ラオウ:「……」
高 任:「莉流のシナリオに限らず、シナリオに一本線が通ってないというか、つぎはぎシナリオの印象を受けることから、いろんな作品の良いと思った部分とか、お約束なんかを無節操につなぎ合わせてるとしたら……このシナリオも、何らかの影響を受けて、あの部分がああなった……と考えるのは、それほど無茶な推測ではないと思うのですが?」
ラオウ:「……なるほど」
吉 井:「いや、なるほどじゃないですよラオウさん(笑)」
ラオウ:「じゃあ、なんでアカ〇のコミックスの装丁のパロディを?」
吉 井:「……」
ラオウ:「少なくとも、あのパロディを、莉流というキャラに対して使用するって事は、何らかの形で、あのキャラクターにア〇ギという作品の何かをのっけたという自覚がないと、ああはならないと思います」
吉 井:「……むう」
ラオウ:「ひょっとしたら、他のキャラクターも、その、高任さんが言うように少女漫画のコミックスの装丁に絡めてるのかも知れませんが……その流れで、莉流だけにア〇ギを持ってくるのは不自然だし、だとすると……高任さんの推測は、それほど的外れでもなさそうな気がするよ」
高 任:「まあ、実際にそうだとしたら、もうちょっと考えてシナリオに反映させろよとは思いますが…そもそも大会で優勝することが強さの証になるのか?『強くなったのか良くわからないけど…』って、だったらそれまでの行動全部無意味じゃんとか、結局それっぽい台詞とかイベントとか、本当の意味では何も考えてないとしか思えないというか…」
ラオウ:「それが出来るぐらいなら、そもそも(以下略)」
吉 井:「この対談、こればっかりだよ…」
 
 
ラオウ:「あー」
高 任:「何だよ」
ラオウ:「イラスト集じゃなくて、イベント集としてなら、何とか耐えられるかも(笑)」
吉 井:「イ、イベント集…(笑)」
高 任:「脇役で眼鏡娘が2人います。1人は眼鏡を外すととても美人で…喧嘩うってんのかこの野郎(笑)」
吉 井:「まあ、直訳すると、眼鏡属性の人にとって、このゲームには潤いがありません、と(笑)」
ラオウ:「……いや、ほとんどのユーザーにとって潤いがないよ、このゲームは」
高 任:「いや、璃々香が潤いだよ」
吉 井:「そうだ、璃々香がいた」
ラオウ:「……」
高 任:「まあ……シナリオのつながりを無視すれば、ところどころで、良いイベントはあるかも知れません……とだけは(笑)」
ラオウ:「……まあ、そんなとこか」
高 任:「あ、そういや眼鏡教師の『連休中は何もありませんでしたか?』は、ちょっと笑った」
吉 井:「『先生も何もありませんでした…』で、マジ泣きですか」
<
 
 
お買い得度…… 3
音   楽…… 7
操 作 性…… 7
再プレイ度…… 4
絶 対 値……−3
 
 
 いやあ、思考のスキップ機能を使えば、そこそこいけるのかも知れませんが……真面目にプレイすると、シナリオのナチュラルな狂いっぷりに頭痛がするというか。
 何というか……ときメモのような点のイベントが、シナリオに組み込まれているとでも言うんでしょうか。(笑)
 つまり、シナリオを線で追ってはいけないゲームなのです。
 
 ……何のゲームだよ、それ。(笑)

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