これを書いている正確な日付は5月26日の土曜日である。時刻は午前5時前。
 時間にしておよそ7時間ほど、あるゲームをプレイしていた訳なのだが・・・なのだが・・・なめとんかこらあっ!(怒)
 この憤りを誰かに伝えなければやっとれんわあっ!
 そのにっくきゲームのタイトルは『FRANE(フラン)』
 
 高任は基本的にあまり説明書を読みません。(笑)
 何故かというと、その方がゲームを始める瞬間にどきどきするからです。つまるところ、ゲームを始める瞬間の、このゲームは一体どんなゲームなのか?という、わくわく感が大好きなんです。
 そして、このゲームを始める前にわかっていたことと言えば、『どうやら天使育成ゲーム』ということだったのですが・・・さて、ゲームスタートです。
 いきなり気合いの入ったオープニングが始まり、否応なしに高任の期待が高まります。
 画像には海外映画のように字幕が入っており、それを読む限りではどうも天上界の住人の1人が神の言いつけに背いて直接地上世界に関与しようとしており、仲間の1人がそれを止めようとしているようです。
 だが、そんなことを許す神様ではありません。
『この馬鹿者が!』
 と一喝して文字通りカミナリを落とします。
 竜の背中に乗っていた1人(地上世界へと降りようとしていた)がその雷にうたれたのを見て、もう1人がそれを助けようとして見事に心中。二人とも地上世界にたたき落とされます。
 それと同時に画面一杯に羽が散らばる様がとても綺麗です。
 この巻き添えを食って地上に墜ちた天使の名前は『フラン』。何とかして仲間を助けようとするあたり、心優しき天使にちがいありません。
 彼女の使徒である妖精さんが、気を失って地上に倒れている彼女を見つけた瞬間からゲームがスタートします。
 フランを発見したものの、身体の小さな妖精さんではどうすることも出来ません。彼女の周りを心配そうにぱたぱた飛び回っているところに、偶然、主人公であるところの少年が通りかかります。少年の名前はセディ。もちろん、プレイヤーです。
「あ、いいところに。ちょっと、私達非常に困ってるの。もちろん助けてくれるわよね。
 さすが天使の使徒だけあって、かなり高飛車な妖精さんです。
 『助ける』と『助けない』という選択が出てきますが、私も大人ですので『助ける』を選択。某ゲームみたいに『いきなりゲームオーバーにされてしまう』ことがあり得ないとも言えませんし。それに、そのぐらいの展開はお約束として認めることにやぶさかではないつもりです。
 そして主人公はフランを自分の家に運びます。
 ここで、初めて妖精さんから状況説明がなされるという展開です。
 しかし、話を聞いてみるとこの妖精さん、実は高飛車ではなくて『異常にノリがいい』コトが良くわかります。まあ、実にあっさりと状況の説明を受け、当然のように頼み事をされます。ちなみに『主人公の名前をいきなり頼りなさそうとか呟いてくれます』が、私は聞かなかったことにしました。
 時々都合良く目や耳を悪くできるのは、ギャルゲーのやりすぎでしょうか私?
 一言で言うと、
『この世界に散らばった彼女の羽を集めて欲しい。そうしないと、彼女は目覚めない。』
 と言うことらしいです。
 なるほど、羽と言えば天使の象徴。
 まかせとけ!と言いたいところですが、もちろん拒否権はありません。まあ、お約束ですので早速近くの村の武器屋に直行しました。
 ここで、文字速度がちょっとたるいような気がしたので、環境設定を・・・生憎文字速度設定はありません。おや、これは声が出るんですか?と、音声をオンにして再びプレイに戻ります。
 全員がそうというわけでもないんですが、二人ほど『凄い大根な声優さんだった』ので聞くに耐えられず、またオフにしましたけど。
 村人に話を聞いてみると、どうやら世界に羽が散らばってから凶暴なモンスター達が出現し始めたようです。
 危険だからと言うので村の長老の許可を貰わないと村の外へは出してくれません。
 すぐに長老の家を探し出し、交渉を始めます。
『羽を集めなければフランが目覚めない』
『いや、そうは言っても妖精1人で危険な森へと行かせるのは・・・』
 
 ……ちょっと待て。
 
 テキストをよく見てみると、実は長老と会話してるのは全て妖精さんで、主人公はぼんやりと突っ立っているだけです。挙げ句の果てに妖精さんは『セディが手伝ってくれるから大丈夫だよ!』などと言い出す始末です。
 これほど、プレイヤーに疎外感を与えるゲームは久しぶりです。でも、最初だから仕方がないか・・・などと思っていたのですが、この考えは甘かったです。
 基本的に主人公は妖精さんの操り人形です。いや、たまには会話もしますけど。
『ふむ、セディがなあ・・・血は争えんと言うことか・・・』
 何やら意味深な台詞を呟きながら、長老は許可を出してくれました。
 さあ、出発です。
 フィールドにはモンスターが見えていて、それに向かってタイミング良く攻撃するタイプのRPGのようだ・・・
 
 ……天使育成ゲームじゃなかったのか?
 
 ま、まあ自分自身をレベルアップさせると言うことは育成ゲームといえなくもあるまいなどと、どこか自分をごまかしながら森へと旅立ちます。
 まずはお約束通りスライムが出てきました。
 多分ダッシュ切りとかできるんだろうなあ、と思ってやってみたらできます。スライムは一撃で死亡。その後に何やら羽らしきものが一枚舞い落ちます。そして主人公のパラメータにあるいくつかの種類がある羽の1つの数値が0から1へと。
 なるほど。
 モンスターが凶暴化・・・つまり天使の羽というのは力の源であり、モンスターはその力に心を奪われてしまったと言うことだろう。しかも種類があると言うことは、この羽をどう集めるかによって、フランの能力値が変化するに違いない。
 と、思ったのですが基本的には間違ってませんでした。
 モンスターを倒しても、主人公がそこから離れたら新たに出現するというタイプの戦闘です。キリがなさそうなので適当にあしらいながら森を進むと、立て看板が。
 
 『危険なので北東には近づくな!』
 
 モンスターが出没し始めたのはごく最近のはずなのに……なんていうツッコミを入れるほど子供じゃないです。それにしても、そんなに広くないマップなのに、さっさとそこに行け、とばかりの心憎い演出です。
 もちろん、その通りでした。
 北東に進むと、いきなり妖精さんが独り言を呟きます。
『フランの力を感じる・・・この奥だわ!』
 妖精さんの言ったとおり、森の奥にはフランの羽によって凶暴化したモンスターと騎士数人が戦闘を繰り広げていました。
 撤退しましょうと叫ぶ部下に向かって隊長は首を振りますが、部下が1人モンスターにやられた途端
『くうっ、私がくい止めている間に早く行けっ!』
『た、隊長・・・どうかご無事で!』
 と、走り去る部下・・・なかなか良い場面ですが、『それなら最初から撤退しろよ』などと思うのは私だけでしょうか?
 それよりも、何故全員で撤退しない?このモンスター動きが鈍いんですけど。あ、そうか…部下を死なせたからどのみち罰せられるのが分かっていたんですね。
『一級騎士の名にかけてただではやられん!』
 などと頑張っていた隊長もあえなく死亡。さて、我らが主人公セディの出番です。
 どんな血筋かは知りませんが、基本的にただの少年でレベル2。装備はバトルナイフと皮の鎧。
 
 ダッシュ切り3発で倒せました。
 
 どうやらこの国の騎士はとんでもなく弱体化しているようです。後に『この国は腐っている!』などと言われるも仕方のないところです。
 なにはともあれ、倒したモンスターから『虹色の羽』を回収して家に戻ります。念のためにモンスターを大量になぎ倒して、レベルアップと羽をかき集めることも忘れません。
『これでフランが目覚めるよ。』
 などとウキウキの妖精さんですが、そんな甘いはずがありません。第一、今主人公が山のように抱えている5種類の羽はこれからメインとなる育成で使用されるはずなのですから。
 ちなみに、この森から帰る時点で羽は1種類につき99枚以上は持ち運びできない事がわかりました。おそらく何度も厳選したモンスターと戦闘を繰り返していくゲームなのでしょう。
 
 そして目覚めたフラン。
 予想通り冷めた表情をしていますが、妖精さんにとっては意外だったようです。
『あちゃー、羽が足りないんだ。もっと集めないと。』
 などと呟く妖精さんに向かって、フランは
『・・・そこの4枚羽。(妖精さんのことらしい)羽音がうるさいから黙って。』
『あんた、本当は元に戻ってるんじゃないでしょうね?』
 
 ……って元に戻ってもこんな性格なのか?……不安だ。
 
 それ以前に感情と記憶が欠落しているとは思えない楽しい性格のようで、フランは妖精さんと口げんかを始めます。主人公が二人の喧嘩を呆然と見守った後、ついに育成コマンドが使用可能に。
 予想通り、羽を与えると数値が増減するようです。取りあえず良くわからないので手持ちの羽を全部渡してみました。
 すると数値がほぼ上限に。
 
 ……こんなの育成じゃないやい。
 
 と言うわけで、これは育成ゲームではなくてれっきとしたRPGです、多分。
 ちなみに最初に出てきた愛らしいスライムを倒して手に入る羽は、『正義感の羽』。もちろん、フランの正義の数値が上昇します。
 ただしどれかをあげると、他の何らかのパラメータが減少したりしますが。
 それよりも一番下にある『さみしさ』というパラメーターに、とても私は嫌な予感を覚えました。
 ……予感と言うより確信に近いものがありましたけど。
 気を取り直して、再び羽を集めるために家の外へと出ました。
 感情と記憶が欠けてると言うことは、おそらく『虹色の羽』とやらを後2つは探さないといけないのでしょう。
 そうして家から外に出ると、妖精さんが話しかけてきました。
『フランの能力値と私達の能力には関係があるの。』
 どうやらフランの愛は主人公の防御値、活力は主人公の攻撃力に影響するようです。だが、既にほとんどの能力値がマックスになっているのでもはや手遅れです。
 それ以前に、この異常発生しているモンスターの数からしてとんでもない数の羽がばらまかれているはずなんですが、情報が一切出てこないので、ある意味プレイヤーに突っ込む隙を与えません。
 そうこうしている内に、主人公の父親が実はこの国の有名な武人であることがわかったり、この国の革命を目指しているキャラなどが登場してきたりします。
 順調にレベルをあげていた私は、ふと家に残してきたフランの事が気になってパラメータを覗いてみました。(主人公のステータス画面でのぞけます。)
 
 『さみしさ』の数値がアップして、ついでに他の数値が下がってます……愛情とか。
 
 どうやら、このゲームにはギャルゲーの要素も組み込まれているようです。
 なんて盛りだくさんのゲームなんだろうと思うよりも先に、まめに家に帰ってやらないと多分非道い目に遭うのだろうという思いが頭を駆けめぐります。もちろん、試してみる気にはなりません。
 大体プレゼント用アイテムがあることを甘く見てました。
 何やら『薬漬けで正義感を植え付け勇者をたらし込む』某ゲームが頭をよぎりました。いや、あのゲームはあれでなかなか面白かったんですけど。
 
 そして途中に『異常に性格の悪い村人達の村』に立ち寄ることになりました。
 女性の落とした指輪を拾ってやると、『さっさと返しなさいよ』と罵られ、武器屋や道具屋に立ち寄っても、『これで客商売が成り立つのか不思議になるほどのぞんざいな態度で』主人公を扱ってくれます。
 ちなみに店での買い物は、主人公が自己主張できる数少ないチャンスです。
 そして、ついに『妖精さんが』キレました。
『もう、何なのよこの村は!感じが悪いったらありゃしない。』
 しかも相手は村の中でただ1人だけまともに礼節をわきまえていた娘さんに対してです。
 普通それは八つ当たりと言います。
 礼儀正しい娘さんから話を聞いてみると、どうやらこの村の人間達は『自分たちが神に選ばれた特別な存在だと思っている』らしく・・・いや、確かに恐ろしいほどに恩恵に恵まれた村であるらしいのですが。
 はあ、まあ頑張ってくださいね…などと思いながらそこを立ち去ろうとした瞬間、村の広場に謎の女性が出現します。
 その女性は、腕組みをして村をざっと眺め回すとこう呟きました。
『醜いな・・・これが恩恵をほどこされた人間の姿か・・・ならば次は試練の時間だ。』
 いきなりモンスターを召還します。
 個人的には力一杯応援したい位なんですが、主人公は村人達と一緒に村長の家に避難します。どうやらこの村は働かなくても食べ物には困らないらしく、みなさん結構のんびりとしています。
 しかし、それも妖精さんが『この林檎1つちょうだいね』と言い出すまででした。
『モンスターが出たのはお前らのせいだ。』
 ・・・多分間違ってはいないでしょう。そもそも『私がこんなゲームを始めなければこんなモンスターは現れなかった』でしょうから。
 しかし、主人公の心のオアシスである心優しい娘さんが叫びます。
『どうしてみんないつもいつも人のせいにするの?自分たちで何とかしようとは思わないの?』
 できれば、『妖精さんも含めて』みなさんに反省して欲しかったのですが、村人の反応は冷ややかです。
『そこまで言うなら自分でどうにかすればいいだろう?』
 売り言葉に買い言葉、娘さんはモンスターが徘徊する外に向かって駆け出します。どうやら、熱いキャラだったようです。
『わかりました。モンスターだって話せばわかってくれるはずです。』
 
 ……もとい、ただの世間知らずな娘さんのようです。
 
 もちろん、娘さんがいなくなれば主人公が追い出されることは当然です。仕方なくナイフ片手に村中のモンスターを一掃しますが、森での戦闘のように次から次へとわいてきて根本的な解決には至らないようです。
 村の外に出てみると、モンスターの住処という選択肢が。
 
 召還されたんじゃなかったのか?
 
 まあ、あの娘さんはモンスターの住処に話し合いに行ったと思われるので、助けに行かなきゃならないんでしょうね。確かに、主人公をかばってくれた唯一の人材ですし、放ってはおけません。
 でも、その前にフランの機嫌をとりに家に帰ることにします。
 既にこの前の戦闘で『虹の羽』によって感情を取り戻したフランが、家に帰ると主人公(もしくは妖精さん)を笑顔で迎えてくれます。
 ・・・やはり、私も男なので機嫌良く笑ってくれると悪い気はしません。
 何やら部屋を掃除していたらしく
『部屋が綺麗になっていくのって素晴らしいですよね。』
 などと爽やかに語ってくれます。
 しかしこういうイベントは、苦労して羽を集めて少しずつフランの能力を取り戻していく過程で見せた方がゲームとして正しいのではないでしょうか?
 やはり、育成ゲームからはほど遠い気がします。
 この後モンスターの住処に突入したのですが、『世間知らずの娘さんは無事』でした。悪い人ではないのでこの時ばかりは心の底からほっとしました。
 
 そして、いろんな事があって主人公がある吊り橋を渡りかけた瞬間
『まだだ、まだ足りない。』
 突然空から現れた謎の女性・・・あの『性格の悪い村を虐殺の場に変換しようとした人物』は、そう呟きながらいきなり魔法をとなえます。そして橋は見事に破壊され、主人公は渓谷へと落とされました。
 
 ……足りないものって『試練』じゃなくて『死者』ですか?
 
 しかし、さすがは腐っても主人公。何とか一命を取り留めました。
 気を失った主人公を助けてくれた少年との会話を勝手に進めていく妖精さんが、そろそろ『プレイヤーの敵』に想定されそうで危険です。
 どうやら、村の大人達が拉致監禁されているとのこと。
 妖精さんへの恨みはともかく、少年に対しての恩は恩ですので、少年の住む村の大人達を助けに行くのが主人公としての正しい道と言えましょう。本当は壊れた吊り橋を直して貰うために職人さんを助けに行くのですが、黙ってればわかりません。
 などと思ってると、おっとまた『さみしさ』パラメーターが上昇している。機嫌をとりに家に帰らなければ。
 
 気分は既に爆弾処理です。
 
 そして家のドアを開けた瞬間、
『林檎が、林檎のおばけがっ!』
 林檎の食べ残しを散らかしたまま、訳の分からない台詞を叫びながら眠りこけているフラン。
 『妖精さんとフランの会話』から察すると、『最近5キロも太ったので林檎ダイエットを始めた』とかなんとか。その他にも、『皮と実の間の部分にビタミンとか栄養が多く含まれている』などと素敵な会話を繰り広げています。
 もちろん主人公がその会話に割り込めるはずもありませんが、一言良いですか?
 『世界観を破壊して楽しいですか?』
 ……っと、いけない。これは制作者に向けて言うべき言葉だったな。
 おそらく真面目なストーリーの中にアクセントとしてのジョークを交えたつもりなのでしょうが、悪目立ちしすぎです。
 この他にも、あの試練を与えまくる女性が水を飲んで『ぷはー、まずいっ、もう一杯!』などと明らかにこのゲームの世界観にはふさわしくない台詞を吐いたりしますが、そんな小ネタ使わない方がましです。
 
 まあ、いろいろあってなんとか橋を修理してくれる人を助け出して再び吊り橋へ。おや、さっきは異常に苦労したモンスターの種類が変わってしかも弱くなっている。
 まあ、それはさておき、職人さんは上機嫌で昼間から酒を飲んでいます。
『ありがとよ、こうして酒が飲めるのもお前達のおかげだ。』
 妖精さんは何もしてません。お前達って言うな。
 と、この時はそう思ったのですが、やはり説明書というのは大事なものです。
 なんと、妖精さん(もしくは火竜)はただ主人公のまわりを飛び回るだけではなくて、魔法攻撃が出来たのです。
 もちろんそれに気が付いたのはゲームを終わらせてからですが。確かに、『このマジックポイントって何のためにあるんだろう』などという疑問が頭の隅に引っかかっていたのですが。
『吊り橋を修理するならツタが必要だな。』
 ・・・はいはい、取りに行くんですね。
 ちなみにこのツタ、ある山にしか生えていないとのこと。
 ただし見つけた場所は、『洞窟の中の宝箱の中』でしたけど。
 しかし、ツタを探しに気軽に出かけたこの山で、プレイヤーは宿命とも言えるべき敵に出会うことになります。
 そう、あのいきなり主人公を殺そうとしてくれた謎の女性である。
 首尾良く(?)ツタを手に入れた主人公の前に颯爽と現れて、再び呟きます。
『まだだ、まだ足りない。』
 今度は洞窟の中でモンスターを召還・・・失敗。
 落盤が起こり、妖精さんの悲鳴が耳に響きます・・・いや、これはこれで大した攻撃力のようですが。
 そして主人公が目覚めると、どこか呆然とした表情で謎の女性が突っ立っています。
 さっきの影響で魔力を一時的に失ってしまったらしく、今が攻撃するには絶好のチャンス・・・もとい、和解のチャンスとばかりに話しかけてみると。
『気安く私に話しかけるな!』
 当然妖精さんが文句を言うはずだと思いましたが・・・さっきの事故で妖精さんとはぐれてしまったようです。ラッキー!
 慌ててこの場を立ち去ろう・・・もとい、妖精さんを探しに行こうとしたら
『待て、魔力を失った私を置いていこうとするのか?これだから人間は・・・』
 思わずダッシュ切りを仕掛けてしまいましたが、どうやら味方になってしまったらしく攻撃できません。
 さて、ここからが正念場です。
 
 主人公にとってではなく、プレイヤーにとって。
 
 マッピングをしていなかったことを少し後悔していた洞窟内を進み始めてすぐに、女性が立ち止まります。
『・・・疲れた。休息が必要だ・・・あなたはお先にどうぞ。』
 それを聞いて私はいきなり全力ダッシュで女性を置き去りにして走り去ってしまったのですが、洞窟の入り口が塞がれていて出られません。どうやらあの女にどうにかしてもらわなければいけないようです。
 仕方なく元の場所に戻って話しかけてみると
『のどが渇いた・・・どこかに水はないだろうか?』
 洞窟内を探し回ること25分。(リアルタイム)
 何気なく転がっていた樽の中に『天然水』がたまっているなんて、ちょっと気が付きませんでしたがそれを持って女性の元へ。
 もちろん、女性の台詞はあれです。
『ぷはー、まずいっ!もう一杯!』
 そりゃまずいのは当たり前でしょうが、再び主人公は水をくみに走り去ります。
 こんな事してる間に『フランのさみしさが上昇している』ので私としては気が気じゃないのですが。
 そして再び歩き出す二人。もちろん、戦闘は主人公任せです。
 再び女性の足が止まります。
 激、嫌な予感。
『林檎の美味しい季節よねえ。』
 それはつまり何か?林檎が食べたいと言うことか?
 主人公のアイテムの中に『完熟林檎』があるのですが、どうやらそれは使えないようです。もちろん、女性はその場から一歩も動こうとはしません。
 仕方なく主人公はまた洞窟の中を走り回ります。今度は転がっている樽を重点的に調べますから割合早く見つかりました。
『何、その林檎は・・・ひょっとして私にくれるの?』
 ゲームのキャラにこれほど憎しみを抱いたのは久しぶりです。だが、それを逆なでする様に一口かじってから吐き出します。
『ぺっ、何これ・・・もういいわ、行きましょう。』
 そりゃ、洞窟内に置き去りにされてたりんごだから無理もないよね、などと思うわけもなく、当たり判定はないですが、ダッシュ切りを連発して気分を落ち着けました。
 とにかく洞窟の出口はまもなくです。
 そこまで行けば心の修行も終わるはずです。
 しかし、女性は三度足を止めます。
『もう一度水を飲みたいわ、魔力を早く回復させないと。』
 本気で永遠の安らぎを与えてやろうかと思いましたが、どうにも出来ません。ただ、これ以後主人公の敵に回ったときは瞬殺してやろうと固く心に刻み込みながら水をくみに走ります。
『・・・これが、人か・・・あなた優しいのね。』
 そして、ぎこちなく視線を逸らしながら
『あり・・・がとう』
 この瞬間、私は高校時代の記憶を取り戻しました。
 どういう話の流れだったかは忘れましたが、女性教師と『関白宣言』という歌について会話していた時の記憶です。
『あれもしろ、これもしろって、さんざんこき使っておいて一言だけですまそうってのがふざけるなって感じよね。』
 素晴らしいです。
 表現こそ陳腐ですが、これ以上私から言うことはありません。
 結局洞窟の外に出てから、『また会おう』と言い残して女性は消えます。ええ、確かにお会いしたいです・・・ただし、敵として。
 それと入れ替わるようにいて妖精さんが現れます……ちっ、生きていたのか妖精さん。
 主人公のかわりに話を進め、中ボス相手に向かっては相手の容姿をおちょくって怒らせるなどと、私としては是非この妖精さんを主人公にして欲しかったのですが。その方が育成ゲームとしてはなかなか楽しめそうです。(笑)
 はっきり言って、主人公の存在価値は戦闘以外なさそうです。
 
 とにかく速攻で家に帰ると、フランがすねていました。
 ますますギャルゲーをプレイしている様な気分になります。
 なんとかなだめすかしてから、吊り橋を修理してくれる人に会いに行くと
『よし、これで修理が出来る。でも気をつけな、橋が直ると、モンスターが渡ってくるからな。』
 なるほど。
 モンスターの種類が一変してたのはそういうことでしたか・・・でも、空を飛ぶモンスターだったはずなんですけど?
 そしてモンスターの頑強な抵抗を振り払い、村に到着。
 ちなみにこの村、『性格の悪い村』と違って、『試練しか与えられない村』らしいです。ここまで来ると大体のストーリーの顛末は予想できますが、『あのクソ女を叩きのめすために』ゲームを続行します。
 ちなみにこの村でも妖精さんはキレました。
『もうっ、何なのよこの村は!辛気くさいったら!』
 確かに主人公がおばさんに話しかけると、
『・・・あんたは澄んだ瞳をしているねえ。さぞかし今まで幸せな生活を送って来たんだね。』
 などと暗い表情で呟かれます。
 ……そうですか、この状況でまだ澄んだ瞳をしていますか主人公は。
 プレイヤーとしてはさっきの出来事で、かなり濁りに濁った瞳をしているはずなのですが関係ないみたいです。
 そして村から出ようとすると、『王城への通行証となるペンダント』が盗まれます。村人達に聞いてまわってもほとんどが知らんぷりをしています。
 どうやら、試練ばかりを与えても性格は悪くなるみたいです。私、プレイヤーとしてそれを実感しています。これが俗に言う体感ゲームという奴ですか?
 しかし、この村にも熱い性格をした1人の少年が。
 この少年の情報で、主人公はペンダントを取り戻すべく新たな場所へと移動・・・の前にフランのご機嫌うかがいに家に帰ります。
 ちなみに、最初生命力が20だった主人公も立派に成長して今や2800を突破して、装備も鋼鉄の甲冑にソルブレイドと今現在では最高のものを装備しています。
 しかしこのゲーム、『レベルが上がれば上がるほど過酷な戦いを強いられる』ので一瞬たりとも気が抜けません。
 生命力が20でダメージを1ずつ食らっていた最初に比べ、今は一撃が400から500ポイントにも及びます。しかも、気が付くと20匹以上に取り囲まれ身動きできないままに瞬殺されてしまうのです。
 その上妙にCPUが優秀で、キャラの位置を半分ずらしながら近づいてきたり、わざわざ主人公の横や背後に回りこんでくるのが始末が悪いです。主人公の生命力は立ち止まっていると少しずつ回復していくのですが、とてもじゃないですがそんな余裕はありません。
 何よりも腹ただしいのが、ドラゴンの飛び道具が『障害物を突き抜けてくる』事でしょうか?狭い洞窟の中で安全地帯が存在しないというのはなかなか厳しく、『ボス戦闘になるとほっと安心したりしてしまう』のはRPGとしてもちょっと問題ありだと思うのですがどうでしょう。
 そのくせ、レベル設定やアイテムの金額設定は絶妙なのですから、制作者が狙ってやっているとしか思えません。
 
 まあ何はともあれ、最後の『虹の羽』を手に入れて家に帰りました。すると、妖精さんが一言。
『この後何が起こるかわからないからセーブした方がいいわよ。』
 ・・・親切です。
 どうやら私はこの妖精さんのことを少し誤解していたようです。
 フランに対して会話コマンドを使うと、何故かフランの使徒である火竜(見た目はプチドラゴン)と妖精さんの口げんかが始まったりするので、主人公のことを気にかけてくれているなど一瞬も考えてなかったのですが。
 ちなみにこの火竜は、イントネーションのおかしいエセ関西弁を話し、『フランの水浴び姿を覗きにいこう』などと持ちかけてくる小粋な奴です。
 まあ、取りあえずセーブ。
 やはり育成ゲームなので、復活時点でのフランの能力値によっては展開が変わったりするのでしょうか?
 でも能力はほぼマックスに保っていたので、まず間違いはないと思いながらドアを開けると・・・
 ・・・えーと一言良いですか?
 セーブさせる意味がないと思います。
 いきなりフランが復活するので、パラメーターを調節する余地がありません。つまり、最後の『虹の羽』を手に入れる前にセーブしないとどうにもならないと思います。
 やっぱり妖精さんに一杯食わされたようです。
 それはともかくフランの話を総合すると、昔から天使族は『恩恵を与えること』で悪魔族は『試練を与えること』によって人間をより高く成長させようと思っていた云々。
 
 ・・・つまり、あの女は『悪魔族』ですか?
 
 直接地上世界に関与するため、この世界を改革しようともくろむ人物の手助けを……だとするとあのオープニングからすると、悪魔族もまた神様の支配下にあって…?
 深く考えるのはやめましょう。私個人としてはあの女を叩き殺せばそれでおっけー。
 でも、話の展開からするとどうもそうはならない予感がします。
 気落ちした主人公・・・もといプレイヤーにフランは言います。
『今まで私のために努力してくれてありがとうセディ。・・・(中略)・・・私はずっとあなたを見ていて感じたことがあります。人間は自ら成長するものだと・・・それで・・・(以下略)』
 ・・・それはつまり、妖精さんが愚痴をこぼしていたように『最初から意識が戻っていた』ということでしょうか?
 どうやら、悪魔族にしろ天使族にしろ人間の敵となりうる存在であることが決定。個人的には、神そのものに立ち向かおうとする革命軍のリーダーに味方したいぐらいです。
 ちなみにそのリーダと主人公の父親はかつての親友同士・・・いや、今も心の深い部分でしっかりとつながっている熱い男の友情を感じさせます。
 その革命軍を追った父を追おうとする主人公に向かってフランは
『・・・もう少しだけ、私に協力してください!』
 ・・・フラン、君のいってることは無茶苦茶で全く筋が通っていないような気がするのだが?協力という言葉は、自分がメインになって活動している人間が使う言葉だ、普通。
 しかし、激烈さを増していく戦闘に手助けはありがたい。
 そう思ったのですが、フランは主人公のまわりをうろつくだけです。妖精さんと違ってクソの役にも・・・あ、違った。
 敵と自分の間に立たせて盾代わりにできます。(フランはダメージを受けません。置物のような存在と思ってください。)
 ただし、途中でいきなりさらわれますけど。
『キャーッ!』
 響き渡る悲鳴に、どうやらフランがさらわれたらしいと分かって妖精さんは、
『むうっ、まさにヒロインの鏡のような存在ね!』
 
 そんなヒロインいりません。
 
 見捨てて帰ってしまおうと思いましたが、妖精さんに怒られました。
 そして革命軍のリーダー、悪魔族の娘、主人公の父親などが勢揃いした城の奥に到着。ちなみにフランは全然平気な顔で突っ立っているので、『実はさらわれたのではなくて、主人公を置き去りにした』という説が有力です。
 どうやら悪魔族の娘は、『自分が体よく利用されていたこと』に薄々気が付いたようです。
 それでまあ、最後だけに異様にシリアスなストーリーが展開されます。ただし、天使族や悪魔族といった話ではなく、高任好みのすれ違っていく友情もの、リーダーと主人公の父親が渋く熱演を始めます。もちろん、ここでも主人公は蚊帳の外です。
『・・・よそう、もはや我々の道は二度と交わらない事は30年も前にわかっていたはずだ。』
『そう・だな・・・だが、30年過ぎてもお前は気づいてくれなかったのか。』
『新しい世界で、私の隣にはお前が・・・その夢を忘れたことはない・・・もちろん今もだ。』
『儂は、お前の元を離れてからも、心の底ではずっとお前を尊敬していたよ・・・だが、その申し出は聞けん。』
 ・・・お願いです、この二人のストーリーをメインにしてRPGを作ってください。天使も悪魔も育成もギャルゲーもいりませんから。
 ちなみに、この場面で悪魔族の娘がリーダーに殺されそうになるのを、主人公の父が身を挺して助けて死んだことだけは述べておきます。
 ・・・ちっ、馬鹿親父め。
 そして、リーダーと主人公の父親の道が分かれることになった思い出の地にて決戦の前のイベントが・・・。
『あなたは狂ってる、手段と目的が入れかわってるわ? 神にでもなるつもりなの?』
 必死に革命軍のリーダーのユーロに向かって叫ぶ悪魔族の女性。思いっきり騙されてたあなたがどの口でそんな言葉を言ってるのですか?
『認めた友を失い・・・最愛の女性を失った・・・それが私に運命づけられた試練ならば、もはや大儀などいらんっ!』
 ユーロの熱演は続きます。ひょっとするとこの物語の真の主人公は彼なのかも知れません。そのぐらいばっちり格好いいです。
『新しい世界・・・意味がない。・・・3人でなければ意味など無いんだ・・・。』
 しつこいようですがいい話です。天使族とか悪魔族の存在さえなければ。
 そして、リーダーとの最終決戦。
『・・・私も一緒に戦います!』
 そう叫んで戦闘に参加しようとしたフランを妖精さんが必死に押しとどめます。
「ダメよ、フラン!私達がこれ以上地上世界に直接関与してはいけないわ!セディ、地上の平和はあなたの手に委ねます。ユーロの思いを受け止め、それをうち砕くのは人間であるあなたの役目よ!」
 
 ・・・好き勝手なことを言いやがって。
 
 結局主人公は最後の最後まで操り人形です。
 ますます、今から戦うことになるであろうリーダの味方をしてしまいたくなります。なんと言っても父親の親友であることだし。
 力の暴走が始まったリーダーは(いろんな意味で)主人公の手の届かない姿へと変貌しています。これは飛び道具がない限り勝てないと思いましたが、この戦いに限って剣を振ると衝撃波が出るようになるので安心です。
 結論から言うと凄い楽な戦いでした。
 その後、それなりに感動的なエンディングが流れ、『人間は自らを成長させる。既に世界は変わり始めている。』と言う神様は、ユーロに一年間の仮の生命を与えます。ますます誰が主人公なのかわからないエンディングです。
 その後、『これ以上地上世界に関与してはならない』という使命を守って、フランは悲痛な表情で主人公に別れを告げ、空へと飛び立つ瞬間に一言残します。
「わ、私、セディのことが・・・。」
 意味深な台詞を残し空へと飛び立っていくフラン。・・・今更どうでもいいが、やっぱり記憶が戻ってたのを騙してたんだな貴様。
 うっすらと涙を浮かべるフランに向かって、神様が優しく声をかけます。
『己を縛る掟に捕らわれることはない。自らが望む道を進め。』
 そして、主人公の父親と自分の愛した女性の墓を弔いながら、1人の人間として一年間という時間をを与えられたユーロが再び登場します。
『バルボア(主人公の父親)・・・お前の信じた世界を、私は最期の一瞬まで観察することにする・・・。』
 このままここで終わってくれた方が私としては良かったのですが、一応主人公の立場というものがあります。
 
 いろいろあって、最後は主人公とフランのツーショットです。
『これからもよろしくね、セディ。』
 
 プレイ時間は7時間弱。
 ふと窓の方に視線を向けると、空が白々と明るくなってきています。
 この時の私の気持ちをわかってくれる方激しく募集中。
 ゲームをやり終えた瞬間からこの文章を書き始めたわけですが、プレイ時間と同じぐらいの時間がかかってます。
 育成のやり方次第で違う展開があるのでしょうが、とてもそれだけの気力がありません。ある意味、これがグッドエンディングなのでしょうからこれ以外のエンディングに『笑い』以外の何かを求めるのは酷です。
 それにセーブ箇所が5カ所しかないので、再びあの激烈な戦闘を繰り返すのは今のところ死んでも嫌です。妖精さんを使えば多少ましな戦いが出来るのかなと思いますが、体力を回復させる魔法が一番使い勝手が良さそうです。
 
 数時間眠ってちょっと冷静になったので、ゲームについて一言。
 このゲームは多分いろんなものを詰め込みすぎです。
 このゲームの中の要素から、育成、RPG(2本)、ギャルゲー、の4つのゲームが新たに作れるでしょう。
 育成のための要素を戦闘で手に入れるというコンセプトはなかなか面白いです。RPGでの『人間同士のドラマ』は人それぞれでしょうが私にとっては秀逸でした。
 なのに・・・なんで、こんな惨めな思いを味あわなければいけないんでしょう?
 ゲームとしての出来も悪くはありません。
 シナリオが悪いかというとそうでもない。
 ただ、計算高さと妙な幼稚さが混同しているあたり、複数の人間が分担してこのゲームに携わった可能性があります。
 そこらで絶妙な不協和音でも生じたのではないでしょうか?
 もしくは高任とはとことん波長が合わなかっただけかも知れません。ちなみに、オープニング直後の選択で『助けない』を選ぶと、妖精さんに罵倒されて再度選択を迫られます。52回ほど試してみましたが、妙なトリックもなさそうなのでこれから遊ぼうとしてる人のご参考までに。
 しかし、激情のあまりこんな文章を書き上げてしまうとは、このゲームはある意味名作でしょう。別名、『絶対値の高いゲーム』とも言いますが。
 ただ、このゲームをやって面白いと感じた人間は間違いなくいるはずです。少なくとも部分部分ではなかなかのいい出来でしたから。
 

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