お題……『アトリの空と真鍮の月』(WIN)
 
 
 2000年に発売された『果てしなく青い、この空の下で…』の続編というか、同世界観におけるスピンオフ……は言い過ぎか。
 ヤマノカミ、そして海神……いわゆる近代化からは遠い信仰が色濃く残る山村を舞台に語られる物語なのは前作と同じなのですが、はてなんといえば……。
 
 ちなみに、世界観そのものは、かつてのこの地球上は猛き神々のすみかであり、それらの神々を地上から追い出し、いわゆる第三界へと封じ込めたのが、別の世界に存在する遠き神々で、人類のその創造物というか。
 しかし、第三界に封じ込められたはずの神々は、かつての自分たちのすみかを取り戻そうと狙っており…細々とつづられる人類の歴史の片隅で、その脅威が人類に災厄をもたらす。
 まあ、おおむねそんな感じ。
 
 
 前作と言って良いのかどうか、『青空』において根強いファン層を持つ矢車文乃にくわえ、一部で大人気の悪役だった代議士堂島の兄が悪役というか、道化役として登場。
 今回も良い壊れっぷりというか、悪役を好演です。
 堂島ファンには必見と言えましょう。(笑)
 
 
吉 井:「いやあ、懐かしい」
ラオウ:「懐かしいですね」
高 任:「まあ、ほぼ10年経ちましたからね(笑)」
ラオウ:「なんというか……『青空』はすばらしい作品でしたね(笑)」
高 任:「ラオウさんの表情をお見せできないのが残念(笑)」
ラオウ:「何が言いたい?」
高 任:「いや、目は口ほどにものを言う、と(笑)」
 
 ちょいと脱線。
 
ラオウ:「……というわけで、今作の『アトリの空と真鍮の月(以下アトリ)』ですが」
吉 井:「……ですが?」
ラオウ:「……」
高 任:「何故俺を見る?(笑)」
ラオウ:「いや、こう、なんというか…言いにくいことを言うのは高任さんの役割ではないかと(笑)」
高 任:「……尖〇諸島問題?(笑)」
ラオウ:「別に、俺はかまわんぞ(笑)」
吉 井:「いや、俺が構いますので絶対やめてください」
高 任:「と、時事ネタを1つ挟んだところで……正直なところ、前作から1枚か2枚……んー、1枚半落ちるかなというのが、俺の評価だが」
ラオウ:「まあ、そんなとこか」
吉 井:「そこまで落ちますかね?」
ラオウ:「言葉のあやってやつかもしれませんけどね……少なくともこのゲームって、萌えとかエロとか、ギャグを前面に押し出した作りではないよね」
高 任:「何気なく、釣りキチ〇平のネタとか出てくるけどな(笑)」
吉 井:「あったよね」
ラオウ:「メインじゃないだろ」
高 任:「まあね」
ラオウ:「もちろん、そこらに転がってるゲームのシナリオなんかより百倍はましですけどね……今作は構成がちょっと荒いというか、構成のミスなりシナリオの矛盾点を、制作者サイドのエゴというか、ご都合主義とも思えるノリでカバーしてるとしか思えない部分が散見できたというか」
吉 井:「んー」
高 任:「俺としては……あるべきモノがきちんとはまり込む感覚がないというか……読後感が美しくない?」
ラオウ:「うん、その表現が一番近いか」
高 任:「まあ、風呂敷をきちんとたたんでないあたりに原因があるんでしょうけど」
ラオウ:「……たたんでないのかなあ、それともたためてないのかなあ?」
高 任:「と、いうか…」
ラオウ:「ん?」
高 任:「多分このゲーム、シナリオの鷹〇さんに負担がかかりすぎてるというか……おおまかな設定だけ作って、細かいところは他の人間に任せたんじゃないかなあ」
吉 井:「また高任君は、そんな見てきたような…(笑)」
高 任:「細かな例を挙げればきりがないんだけど……(パソコン立ち上げつつ)……シーンとシーンのつながりの部分がかみ合ってないというか、矛盾しまくっているというか…」
ラオウ:「また、例によってキャラごとのセーブデータを細かく作成したかね(笑)」
高 任:「うん…(操作しながら)…まあ、最近はそこまでしようと思うゲームにはほとんど出会えないけど……まずはこれでもいくか」
吉 井:「これは…立花のエンディング?」
高 任:「ええ、エンディングについては別に言いたいこともありますが……ここの文章」
 
『芦日学園は残念ながら閉園となったが、新しい校舎が建てられるそうだ。その校舎が建つまでは、隣町の学園に通うことになりそうだった。』
 
ラオウ:「(苦笑しながら)……これか」
吉 井:「……?」
高 任:「そもそも1年前の時点で、この学園は今年限り(エンディングの時点で1年経過)で閉園という流れだったはずですが……」
吉 井:「あれ、道路を通すという話が進んで閉園が撤回されたんじゃ…」
高 任:「いや、そこは問題じゃなくて(笑)」
ラオウ:「つーか、閉園になった学園の新しい校舎を何故建てますか(笑)」
吉 井:「あぁ」
高 任:「いや、それはこの地域の避難所という役目もあるだろうし…ほら、災害記念碑みたいな感じも含めて」
ラオウ:「何故矛盾を指摘した人間がそれを弁護する?(笑)」
吉 井:「でも、このぐらいは…」
高 任:「いや、当然これはジャブですから…(と、データを読み出し中)…次はこれ」
 
 (確認中)
 
吉 井:「これは、俺もなんか引っかかってた(笑)」
ラオウ:「夜に手を引かれて、その場から逃げたはずが、三葉の後を追って時神のところに歩いて行ったことになってるしな(笑)」
高 任:「つーか、バグかと思ったよ俺は(笑)」
吉 井:「でもこれって、選択肢の…?」
高 任:「まあ、そうなんですけどね。秋の選択肢と、冬の選択肢の組み合わせというか、それによっては、主人公が三葉の後を追いますけど……そうじゃないときのテキストシーンぐらい作っとけやとか思いません?そんなたいした量にはならないんだから」
ラオウ:「まあ……な(笑)」
高 任:「つーか、本来は手を引かれてその場から逃げての脱出シーンにつながる文章の脱出シーンをぶった切った上で、ここにつなげてるわけだから……作り手側は、ここの矛盾に気づいていながら放置してた疑いもあるよね」
ラオウ:「ふむ」
高 任:「別に、文章共有シーンがあるのは全然良いんですが、チェック甘過ぎというか…こう、ディスプレイに向かってツッコミいれるレベルの矛盾は解消してほしいなあ、と」
ラオウ:「そういや、バッド確定の夜ルートで、主人公が夜(朝)と共に生き埋めにされるよね?」
高 任:「ああ、あれですか(笑)」
ラオウ:「村の人間が全員参加してないにしろ、主人公は生き埋めにされて殺された事になってるはずなのに、主人公が平気で村をうろつくよね(爆笑)」
吉 井:「ちょっとは、身を隠せよ(笑)」
高 任:「あれはちょっとなあ……まあ、あれだけじゃないけど」
吉 井:「他にも?」
高 任:「ありますよ……それらから察するに、結局いろんなシーンを複数の人間が書いてるんじゃないかとしか思えなくて」
ラオウ:「……つまり、全体的な構成を理解しているのは〇取さんだけで、他の人間は細かいチェックができなかったと?」
高 任:「と、思いますよ俺は……テキスト量を減らそうと試みた感じもありますが、シーンとシーンのつなぎがぎこちない部分が多すぎますもん。『このぐらいは勘弁してよ』という甘えが存在してたかどうかはわからんけど」
 
 ちょい脱線。
 
ラオウ:「しかしアレですな……やっぱり悪人は堂島なんですな(笑)」
吉 井:「まあ、兄弟ですから」
高 任:「弟が代議士で、兄が不動産というか、建設業ですか……堂島家の野望で一本書けそうですな(爆笑)」
ラオウ:「確かにね……高度経済成長期に、地方でその組み合わせは最強だよね(笑)」
高 任:「まあ、稼いだ金を使って弟を政界へ……最近はともかく、あの当時は珍しくも何ともないです(笑)」
吉 井:「(ぼそぼそと)…断言ですか」
ラオウ:「今作に関して言えば、設定があれれれ?な感じなんですが、何故か小悪人の堂島に関してはリアリティ溢れるというか」
吉 井:「……単純に、2人とも地方のそういう暗部が生活に密接していたと言うだけじゃないでしょうか」
ラオウ:「まあ、そうとも言います(笑)」
高 任:「談合と癒着は、地方政治の華ですからね(爆笑)」
吉 井:「そのぐらいで」
高 任:「いっそのこと、堂島3兄弟とかになりませんかね?(笑)」
ラオウ:「政治家、建設業と来たら、次は芸術家か、プロスポーツ選手だよな(笑)」
吉 井:「何の話ですか…」
高 任:「堂島6兄弟(笑)」
ラオウ:「いや、あんまり力を合わせないだろ多分」
高 任:「じゃあ、堂島4兄弟で」
ラオウ:「…?」
高 任:「島津4兄弟は、ウルトラ6兄弟より強いよ?」
吉 井:「また、マイナーなネタを…」
 
 ちょい脱線。
 
ラオウ:「まあ、文乃に言わせると堂島は『年中発情してるような男』ですが(笑)」
高 任:「そうかもしれんが、この人間くささにちょっと憧れるよね(笑)」
吉 井:「こんなんが、憧れなのか高任君…」
高 任:「いや、金のためなら人当たり良く他人に近づいて、強者に媚び、弱者を虐げ……弱みを見せた相手は徹底的に嬲り抜く。人間、なかなかこうは自分の欲望に忠実には生きられませんよ」
吉 井:「ろくでもないクズ人間としか思えないよ(笑)」
ラオウ:「まあ、確かに憎めないところはあるよな…基本的に隙だらけというか間抜けだから(笑)」
高 任:「つーか、多分堂島を好きだって言う人間はいても、上蔵を好きだって言う人間はほぼ皆無ではないかと」
ラオウ:「ちょっとおかしくなって、芋虫食べたり、イタチを食い殺したり…あれ、堂島だから笑える部分であって、他のキャラがやったら読み手はひくだろうね」
吉 井:「あれ、笑える部分でしたか…?」
 
 
高 任:「…設定と言えば……裏シナリオのオープニングで主人公と義母の神那の乗った車が、隣町から3時間かけてこの作品の舞台となる芦日村に来ましたやん」
ラオウ:「まあ、そんな村に新興住宅地は形成されないよなあ(爆笑)」
吉 井:「あれは…主人公が住んでいた街からという意味合いでは?」
高 任:「でしょうね」
吉 井:「じゃあ…」
ラオウ:「でも、夏に海守市に旅行に行く描写の中で、南の街に出るために早朝の連絡バスで2時間かかったってありました(笑)」
吉 井:「んー」
高 任:「まあ、別に物語の本筋に影響しない設定ですし……実際、山の方だとものすごい交通手段が限られてきますからね」
ラオウ:「東京都の面積の4分の1の広さの村に、人口は3千人(ふつーに実在します)とか……多分、都会で生まれ育った人間にはピンと来ないはず(笑)」
吉 井:「……ピンと来る俺は田舎者なのか(笑)」
ラオウ:「じゃあ、この三人みんな田舎モノ(笑)」
高 任:「そういや、オープニングのムービーで出てきた山道が、田舎のそれにそっくりで懐かしかった」
ラオウ:「いや、山道はどこでも同じようなもんだろ」
高 任:「まあな…でも、ほら、〇の谷筋から〇山の稜線へ上がっていく道とか覚えてへん?」
ラオウ:「……あそこ、数年前に高速バスを通す工事でなくなったはずだぞ(笑)」
高 任:「え、マジで?」 
 
 脱線。
 
ラオウ:「そろそろまともに、この作品について語ろうと思いますが」
高 任:「語りますか」
吉 井:「……」
高 任:「……なんか吉井さんが、味のある表情で無言を貫いてますけど(笑)」
吉 井:「いや、シナリオについて語り出すと、2人とも遠くまで行ってしまうから(笑)」
ラオウ:「まあ、それはそれとして」
吉 井:「軽く流されたよ(笑)」
ラオウ:「前作の対談で、構成がすばらしい…とか言った記憶があるんだけど…はて、今作に関しては妙に歪なモノを感じたというか」
高 任:「……俺が思うに、前作と今作って、題材は同じで視点が違う物語なのに、同じ構成にしようとしたところに無理があったのではと」
ラオウ:「……というと?」
吉 井:「文乃はおいといて、メイドさん、巫女さん、妹系、眼鏡娘、ちょいツンデレのゴールデン5人組?(大爆笑)」
高 任:「ごふごふっ……つーか、多分、メイドさんと巫女さんは、絶対に譲れないラインと見た(笑)」
ラオウ:「題材的に巫女はともかく、メイドさん登場の必然性皆無だよな(笑)」
吉 井:「メイドに対する執念を感じるよ(笑)」
高 任:「確かに……って、話逸れてる」
 
 ちょい脱線。
 
高 任:「『青空』の場合さ……言ってみれば、『ヤマノカミ』は抗うことのできない大自然の驚異みたいなもんやん」
ラオウ:「大自然の驚異(笑)」
高 任:「それで笑えるラオウさんが大好きです(笑)」
吉 井:「…?」
ラオウ:「…で?」
高 任:「たしか、あの時の対談でラオウさんも言ったよね?『ヤマノカミ』そのものをどうにかするという話じゃなくて、人間がどうこうできない超常現象に付随するサブストーリーがメインとして描かれたとか何とか」
ラオウ:「……言ったな、多分」
高 任:「その前作に対して……今作の『アトリ』の場合、もろに『ヤマノカミ』というか、超常現象そのものにぶつかってるよね。にもかかわらず、前作と同じ構成で描いてるよね?」
ラオウ:「あー…お前の言おうとすることはわかった」
高 任:「えっと、アレだ。同じ地区に、全国制覇も夢ではない野球の強豪校がいて、野球とか、学校生活そのものを楽しもうとする漫画と、打倒強豪校をぶち上げて、努力根性友情に邁進する漫画だと、自ずから描き方が変わってくると言うか」
吉 井:「言葉の意味はわかるけど、わけわからないよ高任君(笑)」
ラオウ:「(ため息をついて)……ほんと、お前は自分の思考というか、考えを他人に説明するのが下手……というか、時間がかかるな」
高 任:「むう」
ラオウ:「つまりあれだろ……前作の『青空』は、人間の営みというか、生活を通じて人間の優しさや愚かさを描き、その上で『ヤマノカミ』という人間には手に負えない超常現象が存在するから、『日常』という大切さが表現できたと」
高 任:「うむ」
ラオウ:「それに対して、今作の『アトリ』は、前作と同じように最後に『日常』という大切な何かを表現しようとする構成であるに関わらず、本来人間の手に負えない超常現象に立ち向かうため、ある意味登場人物と同じレベルまで引き戻してしまった……それも、登場人物が『普通の人間ではない』という手段を用いて」
高 任:「心の友よ(笑)」
ラオウ:「(無視)……結局、奪われた日常に対して、登場人物というか、主人公なりヒロインが失った日常と、守った日常の間に齟齬が生じて、読み手側に違和感を生む原因となっているのではないか……と、こんなとこか」
吉 井:「なるほど、わかったよ高任君(笑)」
高 任:「うん、そんな感じです(笑)」
ラオウ:「もうちょい、プライド持てよ(笑)」
高 任:「読み手にきちんと伝わる方が大事……それが俺のプライド(笑)」
吉 井:「ツッコミどころ満載なんだけど…」
ラオウ:「あまり気にしない方が……というか、言われてみるとそうだな。確かに、『青空』と『アトリ』はそういう意味で視点が全く違う作品ではあるわな。目の付け所に関してはさすがだな、とほめてやろう」
高 任:「わーい」
吉 井:「(ぼそぼそと)……多分、馬鹿にされてるよ高任君」
高 任:「あ、ついでに言えば……『アトリ』の場合、奪われるというか、失う事に対して描写が中途半端な気がする」
吉 井:「バッドエンド好きの高任君としては物足りないと(笑)」
高 任:「まあ、それは否定しませんが(笑)……なんかね、シナリオそのものがキャラクターに対して全体的に甘くないですか?」
ラオウ:「え?」
高 任:「いや、この甘いは…えーと、甘やかすの甘い」
ラオウ:「ああ、なるほど…」
高 任:「俺、最初のプレイで立花のエンディングにたどり着いたんですよ……村を救うというか、己に課せられた義務を果たすため、命を捧げて海神の加護を求めた立花に対して、主人公は死にそびれたというか…結果として犠牲者は多く出したけど、数ヶ月経ってやってきた春という季節の中で村は力強く復興に向かっていて……でも、立花がいない」
吉 井:「……」
高 任:「で、そこに唐突に『すまぬ、なんとか戻ってこれたようだ』とかいって、立花が戻ってくるわけですよ」
ラオウ:「まあ、アレは俺もツッコミいれたよ(笑)」
高 任:「もう、良かった…とかいう気持ちより、『なんでやねんっ!』って、ちゃぶ台をひっくり返す方が先というか」
吉 井:「まあ、確かに…(笑)」
高 任:「ワン・〇ーレンの死亡確認じゃねえんだからさ、死ぬべき時に死なないと、それは見苦しいだけというか」
吉 井:「本当なら主人公も死んでなきゃいけないのにね(笑)」
高 任:「そりゃもちろん、変な理屈をつけようとすればいくらでもつけられるけど……なんかこう、ご都合主義というか、盛りあがりのための設定をハッピーエンドのために自らぶちこわしてるイメージがね…」
ラオウ:「まあ、設定が物語に奉仕するために存在する以上、全ての物語はご都合主義であるわけなんだが……結局、それが読み手にとって自然な流れとして受け止められるかどうかが問題であって」
高 任:「少なくとも、自然な流れではないよな?」
ラオウ:「まあ、確かに」
高 任:「あと、夜の設定とか」
ラオウ:「まあ、言いたいことはわかるが(笑)」
吉 井:「朝だけが残るとか……確かに都合良すぎかも」
高 任:「……結局、傷を吸って自分のモノにするとかは、主人公に対して献身的な姿を読み手に見せるための設定としか思えないし、絶望や悲しみを感じる事でしか生きられないのは、山神の獣というか僕だからなのかどうかとか……そもそも、朝が夜の(ぴー)だとしたら、三葉の影響受けないのは都合良すぎないかとか……まあ、色々あるよね」
ラオウ:「……文乃の存在に対する暗喩の働きも期待してたと思うが」
高 任:「まあ、文句ばっかりたれてたら誤解されるかもしれないけど…前作が『青空』だから余計に粗が目立つってのは言っておこうか」
ラオウ:「順番が逆ならね(笑)」
吉 井:「多分、高任君の文句はここまででなかった(笑)」
高 任:「そういう部分が多過ぎなのはさておき、一応、作品が『惜しい』出来のレベルではありますので断っておきます」
ラオウ:「まあ、下を見たらキリないです」
高 任:「……あぁ、なんかわかったかも」
吉 井:「え?」
高 任:「……人がね、幸福感を味わう基本は、自分を取り巻く現状が向上する事にあると思うんですが」
ラオウ:「……は?」
高 任:「いや、なんというか……自分を取り巻く現状が向上したと人に思わせるのには2つの手段があるわけだ。ひとつは、そのまま対象の現状を向上させる」
吉 井:「いきなり何の話?」
高 任:「さっきの、前作と今作とでは視点が違うというか……それについて、自分なりの言葉が浮かんだというか」
ラオウ:「ま、まあ聞こうか…」
高 任:「で、もうひとつは……対象の現状を一旦落としてから、元に回復させる」
吉 井:「どこかで聞いたような…(笑)」
高 任:「エンディングで、戻ってきた日常をしみじみとかみしめるのは、後者だと思うんですよ。一旦落ちた現状の回復によって、その大切さを実感するというか」
ラオウ:「……ふむ」
高 任:「シナリオが全体的にキャラクターを甘やかしてるように思えるという事は、つまりこの作品においては、主人公を取り巻く現状がきちんと落とされてないのではないかと」
吉 井:「……」
ラオウ:「……なるほど」
高 任:「途中経過なり、バッドエンディングなり……現状のレベル低下が大きくないから、エンディングの原状回復に実感がわかない」
ラオウ:「なるほどな、確かにそういう側面はある……うむ、『ヤマノカミ』を代表する脅威の相対的レベル低下が、お前のいう現状のレベル低下の幅を小さくしていると考えれば、これはかなり説得力があるな」
吉 井:「……要するに、シナリオのメリハリの幅が前作に比べて小さくなっている、と?」
ラオウ:「原因そのものは、シナリオの構成とか、描写そのものの甘さということになるんでしょうけど、大きな目でとらえれば、そうですね」
高 任:「やはり、バッドエンドをないがしろにしてはいけないということですな」
ラオウ:「……本当に理解してるのか、お前?(笑)」
 
 ちょい脱線。
 
高 任:「文乃が堂島一家惨殺事件の重要参考人になってるって事は、前作『青空』でいうところの悠夏のバッドエンドからの続きみたいな感じですかね?」
ラオウ:「……悠夏?」
高 任:「……覚えてないなら、正直にそう言おう(笑)」
吉 井:「巫女さんです」
ラオウ:「ああ、あれか。うん、覚えてるよ(笑)」
高 任:「ちなみに、メイドさんの名前は?」
ラオウ:「……名前ってのは、所詮記号に過ぎないと思うんだが」
高 任:「それはそうですが…」
ラオウ:「まあ、少なくとも……文乃が主人公とのハッピーエンドで終わってないのは確かだな(笑)」
吉 井:「『文乃ちゃんは、自分の好きに生きていけばいいと思うよ』……でしたっけ?あのシーンの文乃は可愛すぎるというか、かなりの人間がやられたとか」
高 任:「あれはやられるでしょう(笑)」
ラオウ:「今回のラストというか、文乃、月乃のエンディング前の会話っておかしくない?」
高 任:「そうか?あれは、キャラの性格とか含めてかなり計算され尽くしたシーンだと俺は思ったが…」
ラオウ:「えー(口元半笑い)」
高 任:「いや、冗談でも何でもなくて……(データ呼び出し中)…ここか」
ラオウ:「……なんか、会話が重複してたり、かみ合ってないような気がするんだが」
高 任:「違う。もっと、こう、包み込むように考えるんだ……そもそも、文乃は時神を召喚して(以下略)…は既に決めてたことだろ。つまり、このシーンの『決めたの。もう一度同じ事をするわ。手伝いなさい』という台詞の『決めたの』は、これまで決めていたこととは別のことを決めたという文乃の決意表明として読み取る必要があるだろ」
ラオウ:「いや、それは俺も考えたけど…」
高 任:「そもそも、時神が追い返された後『あきらめない(以下繰り返し)』と言ってたやん。時神を召喚するという事に関しては、あらためて決めるまでもないのは明らかですよ」
ラオウ:「まあ、それはそうだが…」
高 任:「その上で……『月乃にも手伝ってもらうわ』の台詞の後、月乃はちょっと考えてから自分の『お腹をさすって』答えるよね。ここでわざわざ『お腹をさする』という描写を組み込む以上、この行為には意味があるのは当然だよね?」
ラオウ:「当たり前だろ」
高 任:「で、文乃がやってくる前に月乃は『子供が出来ちゃったら…よろしく』って主人公に言ってるわけだ。でも実際、子供ってのは可能性はともかく本質的にただの口実に過ぎないだろ?そうすると、ここで月乃の『お腹をさする』という行為は、『口実』という暗喩を示すわけだ」
ラオウ:「うん、だからこそ会話が成り立ってないと言うか…」
高 任:「だから、ここで月乃は『同じ事をするから手伝え』という文乃の言葉が主人公のそばにいるための口実に過ぎないことを見抜いたわけだろ。それゆえに『私、彼と結婚しちゃうかも』という強烈な牽制の言葉を発する必要性を感じたわけだ」
ラオウ:「いや、それならそこで何故『あの血ね…わかったわ』の台詞になるねん?そもそも、儀式のために月乃が文乃に手渡したとき、『これは…彼との?』て聞いてるやん?」
高 任:「何言ってんだよラオウさん。その台詞を意訳すると『ああ、あなたはそれを口実に彼のそばに居座ろうとしてるのね』ってことで、月乃の牽制に対して牽制仕返したってことだろ?」
ラオウ:「……」
高 任:「で、その後文乃が『いえ、ちょうどいいわ、月乃にも手伝ってもらうから』って言うだろ。つまり、ここで文乃は月乃に対して『目的は同じなのよね?私、彼を独り占めしようとまでは言ってないわよ?』と提案を発してるわけだ。この『手伝え』って言葉は、『あなたもわかっているでしょうけど、彼ってとことんお人好しなんだからぼやぼやしてると、誰か他の女のモノになって私達から離れていかないとも限らないわよ。そうさせないためにも、手伝いなさい』という意味なんだよっ!」
吉 井:「あ、あの『手伝って』は、そこまで雄弁だったのか(笑)」
ラオウ:「いやいやいや、ちょっと待って?」
高 任:「だからこそ、月乃も『……わかった』って応えるんだよ。わかれよ、ラオウさんも(笑)」
ラオウ:「いや、わからんだろ…つーか、無茶言うな(笑)」
高 任:「あの会話の面白いところは、本質的に主人公が2人の会話を理解していないところですよラオウさん(笑)」
ラオウ:「そ、そこまではいいかもしれないけど、なんでわざわざ『時神…つかまるかしら?』なんて台詞を月乃が言う必要があるんだよ?」
高 任:「そりゃ、2人の間で合意が出来たんだから、次は主人公を納得させるための口実が必要だからだが」
ラオウ:「……」
高 任:「ひょっとしたら、文乃に対する抗議みたいな部分もあるかも知れないけどね……月乃としては、例の行為とか含めてちゃんと主人公に対して『好き』って告白してるじゃないですか」
ラオウ:「というと?」
高 任:「自分だけじゃなく、文乃にも主人公に対する好意を表明させる……それでようやくフェアな関係でいられるというか、口実だけで彼のそばにいるのは許さないという感じの」
ラオウ:「ごめん、意味がわからない」
高 任:「『時神を召喚するから手伝え』というのが文乃の口実。当然、月乃は召喚のために『時神を捕まえる』ことが必要なことを知っているし、それがかなりの困難を伴うというか、ほぼ不可能なこともわかっている」
ラオウ:「ふむ」
高 任:「『時神…つかまるかしら?』の台詞を口にすることで、これは当然文乃としては『それがかなり難しい』と答えざるを得ない。文乃がそう答えたら、当然主人公は『召喚を手伝え…って、捕まらなかったらどうすんの?』という疑問を口に出さざるを得ないよね。基本、主人公はツッコミ対質だから」
吉 井:「ツッコミ対質(笑)」
ラオウ:「あぁ…つまり、月乃は、その台詞によって会話の流れをコントロールした……と?」
高 任:「ちゃんと、文乃自身が裏シナリオの冒頭で述べてるやン。『月乃は賢い娘よ。堂島も上蔵も、この村にやってこざるを得ないよう、月乃にしむけられたんでしょうね』って」
ラオウ:「……むう」
高 任:「まあ、文乃としても月乃がそう仕向けたのは理解していても、言わざるを得ないですやん『捕まらなかったら、無期限によろしく』と(笑)」
吉 井:「まあ、それこそが文乃自身の望みでもあるわけですし」
高 任:「ええ……ただ、『時神が捕まらなかった無期限によろしく』……いくら鈍くても、ここまで言えば少なくとも自分の好意そのものには気づいてくれるだろうと思ったにもかかわらず、『大人になったら仕事もしなくちゃいけないんだけど』とか『月乃ちゃんとの子供が出来てるかもしれない』とか、『貴方のそばにいたい』とまで告白した形の文乃にしてみれば、主人公がなめた事いうわけですよ。そりゃ、怒りますよね(笑)」
吉 井:「なるほど、『私とも作ればいいじゃない』は、鈍い主人公に対する怒りからきた文乃の失言だと」
高 任:「ええ、でも、自分がそこまで主人公に執着してるとは思われたくないというか、ちょっと照れが入ったんでしょうね、『田舎では良くある事よ…』の発言は、主人公を納得させるためと言うより、別に特別な事じゃないわよ、だから私もそんな特別な執着を貴方に抱いているわけではないわ……という言い訳でしょう。いわゆる、ツン(笑)」
吉 井:「な、なるほど…」
ラオウ:「……」
高 任:「まあ、前作からもわかるように、文乃は愚鈍な人間に対してわりと腹を立てるというか……ツンに対する反動を含めて、『いいかげんに気づきなさいよ、どこまで私に羞恥プレイを強要するつもりなのかしら』みたいな感じで、開き直りにも似た『諦めておとなしく幸せになりなさい』の発言に続く……と俺は理解してるんですが。文乃の性格を考えると、前作の『好きにさせてもらう』に勝るとも劣らないすばらしい告白シーンだと、俺は感動したですよ?(笑)」
ラオウ:「それなりの説得力があるのは認めるが、どこかこじつけっぽい気もする」
吉 井:「主人公が最後まで理解してませんし(笑)」
高 任:「だから、『俺、幸せは普通のモノでいいよ!?』という主人公の発言に対して月乃が笑うんじゃないですか……主人公が『そこ、月乃ちゃんが笑うところ?』とかツッコミいれてるけど、このシーンにおいて文乃の告白を理解していない主人公は喜劇役ですからね」
ラオウ:「うーん…そうかなあ」
高 任:「まあ、エンディングの時点でも、主人公気づいてませんからね(笑)」
吉 井:「……っていうか、月乃は主人公に告白してるよね。しかも『ずっと私のそばにいなさい』とか言われてるのに、『月乃ちゃんのことは、男として責任があったから当然としても…』とか言って…(笑)」
高 任:「どんだけ鈍いんだよ、主人公(笑)」
吉 井:「……この会話、プレイしてない人間には絶対理解できませんね(笑)」
高 任:「え、吉井さん、そこ笑うところ?(笑)」
ラオウ:「……(なんか考えてる)」
高 任:「そういや、この後のエンディングの『どうして誰も俺に意見を求めないんだろう』という主人公の呟きは名言ですな(笑)」
吉 井:「俺、月乃の『ちっちゃくしてっ!』が好きなんだけど(笑)」
高 任:「ああ、あれも名言ですね」
ラオウ:「そういや、女難エンディングって…」
高 任:「女難エンディング(笑)」
吉 井:「さすがラオウさん、表現がひと味違いますね(笑)」
ラオウ:「……あれって、朝だけ蚊帳の外でしたっけ?」
高 任:「言われてみれば…」
吉 井:「三葉だけですよね、弟子入りするの」
ラオウ:「人生経験もかねて、弟子として嫁いでみろ…も名言だよね(笑)」
高 任:「(ぶつぶつと)朝が眼鏡娘だからなのか…だから、1人だけ一緒には住まないとでもいうのか…そういや、夜エンドは眼鏡外しやがるし…これか、これが眼鏡娘の現実とでも言うのか…」
ラオウ:「おーい…」
 
 ちょい脱線。
 
高 任:「さて、たたんでほしいというかたたみたい風呂敷が何枚かあるんですが?」
ラオウ:「それは俺も同感だ(笑)」
吉 井:「神那とか?」
高 任:「謎ですよねえ」
ラオウ:「まあそもそも、父親が自分の息子に対して、再婚相手の神那とは性交渉が皆無だった……なんて告げる必要はないよね普通」
吉 井:「ないですよねえ」
高 任:「だとすると、あの再婚には(神那にとっては初婚)何らかの意味が含まれてなきゃおかしいんだけど……主人公の『母さん、最後に教えてほしい。母さんは何故父さんと再婚したの?』という質問に対して、『あなたに一目惚れしたからよ』の答えで納得できるプレイヤーいますかね?」
吉 井:「……納得しようとするなら、神那ルートがないと(笑)」
ラオウ:「実際に一目惚れだったというのは?(笑)」
高 任:「そりゃ、出来ないことはないよ……湊本家に縛り付けられて生きてきた神那が己の精神バランスを保つために守るべき存在を必要とし……そこに、母親を亡くして心を閉ざした子供が現れた……あたりで」
吉 井:「あれ、再婚してから、村に来たんだよね?」
高 任:「んー、大学に行くため街に出ていた……のでは?」
ラオウ:「つーか、そもそも再婚の時期が6年前だっけ?ちょうど、村に危機が訪れて砌の両親が山神の生け贄になった時期と重なってることからしても、何らかの意味があったとしか思えない設定なんだけどね」
高 任:「放置プレイですよね」
吉 井:「まあ、シナリオにうるさくない俺でも気になります(笑)」
ラオウ:「あと、八葉もな」
高 任:「神那よりはヒント多いよね」
吉 井:「そうですか?」
高 任:「いや、三葉のエンディングで…(データ読み出し中)……山神を第三界に送り返した結果、捕らわれていた魂が解放された…みたいな描写があったじゃないですか…うん、ここ」
吉 井:「ん?」
ラオウ:「森から砌とその両親、神社から立花と養父……という感じに、関わりのある人物が同じ場面に描かれてますよね?」
吉 井:「え、あぁ…ああ」
高 任:「つまりここで、文乃、月乃、と同じグループにいれられてるわけですよ、八葉は」
吉 井:「ん……とすると?」
高 任:「まあ、普通に考えれば三姉妹云々になるんだろうけど……?」
ラオウ:「あと、時神召喚儀式の途中において、贄にされた八葉をさらっていく腕……について文乃が『海神?』みたいなこと言ってるけど、ちょっと情報が足りません」
高 任:「朝とのエンディングで、八葉に似た少女を見かけた……みたいな記述もあるけど」
ラオウ:「まあ……たためないよね(笑)」
高 任:「いらいらするよね(笑)」
吉 井:「むう…」
高 任:「うがった見方をすれば、裏シナリオの最初の教室でのシーン、立花の台詞に『八葉はこの村で育ったから、砌のこともよく知っている』ってのがあるから…」
吉 井:「いや、そもそも三葉と姉妹なんだから…」
高 任:「だから余計に、ですよ。『この村の人間だから』とか、『この村で生まれ育ったからな』という言葉ではない事に引っかかりを覚えるというか」
ラオウ:「まあ、立花も赤ん坊の時に養父に連れられてこの村に来たわけだから……そう考えると、『この村で育った』ってのは意味深な台詞ではあるな」
高 任:「うん、他所から連れてこられた……という可能性は大いに残るよね。まあ、それを立花が知っているのかどうかはさておき」
ラオウ:「夏の、家が燃えたときの神那とのやりとりも含めて……多分、ちゃんと設定はあるんだと思う。まあ、わざわざ名前に『八』ってつけてるぐらいだからな」
高 任:「……とはいえ、与えられた情報だけではたためないよね」
ラオウ:「たためないな」
高 任:「しかも、物語の本編において関係もないよな?」
ラオウ:「いや、多分この作品だけじゃない大きな物語の中では意味があるんだろうけど、この作品においては関係なさそうに見えるってことだろう」
吉 井:「とすると、さらに続編……もしくはスピンオフが?」
高 任:「……つーか、妙に〇取さんの引退を臭わす部分が散見できたんですが」
ラオウ:「それは俺も感じた」
吉 井:「え?」
高 任:「つーか、このメーカーいったん解散したよな?」
ラオウ:「まあ、〇取さんの物語に惚れた出資者が別のメーカー作って……その後のことは、俺もよく知らない」
吉 井:「いや、どこが引退を…?」
高 任:「基本的に、鷹〇さんって、超常現象っつーか、そういうのを題材にして書くことが多かったですやん」
吉 井:「うん」
高 任:「なんかね、『神とかそういう時代ではなくなった』という類の台詞がね、妙に意味深というか。会話というか、話の流れ的に、ちょっと唐突だったんですよね」
ラオウ:「引退というか、最前線から退く……みたいな意思表示のような」
 
 ちょい脱線。
 
高 任:「そういや、キャラについて語ってないな」
吉 井:「まあ、基本どれもいい娘ですし(笑)」
ラオウ:「いや、三葉はいい娘を通り過ぎて、〇痴みたいになってますが」
高 任:「確かに、素直というか、あっけらかんとしすぎて……ある意味、心配になるキャラです(笑)」
吉 井:「砌は猫で(笑)」
高 任:「つーか、役目を終えて消えてしまったダミー砌を可哀想に思うのは俺だけ?」
吉 井:「ダミー砌(笑)」
ラオウ:「……正直に言うと、シナリオの構成上、アレの必然性に疑問を感じる」
吉 井:「あれって、砌シナリオは最後じゃないとクリアできませんよね」
高 任:「多分」
ラオウ:「つーか、主人公以外の誰が砌をああしたのか……アレも疑問というか。正直、バッドエンドを書くためだけの設定のような気配が…」
高 任:「夜との修羅場がイカす(爆笑)」
ラオウ:「結局それか…」
吉 井:「容赦ないよね、夜」
高 任:「ひいたふりして、潜ませておいたオオカミにいきなり襲いかからせる」
ラオウ:「設定に疑問は残るが、『主人公を傷つけることを朝が望んでいない』ってな言葉が口実に過ぎす、実際は夜が主人公に好意を持っているのは明らかなんだけど……なあ?(笑)」
高 任:「いや、アレは隙あらば砌を亡き者にして、主人公をゲットだぜ……という深謀遠慮でしょ?」
吉 井:「怖っ!」
高 任:「砌シナリオだけじゃなく、夜は結局、『山神の獣』として山神を守るという自分の立場はもちろん、朝を自分の防波堤として使ってる部分が散見できるというか……それから察するに、主人公に対しては好意を持ってるからしおらしいけど、かなり利己的な性格であることは間違いない」
ラオウ:「まあ、不意打ちの形で砌にオオカミを襲いかからせたときも、『山神の獣』としての立場上仕方ない……みたいな言い訳してたし。付き合うとしたら、もっとも怖いキャラなのは否定できないな(笑)」
高 任:「そういう意味では、立花はけなげですよね」
吉 井:「けなげだよねえ……他に女を囲っていても構わぬとか」
ラオウ:「押しが強そうだけど、実際は耐える女というか…」
高 任:「誤解を承知で言うと、男性サイドが押しつける昭和の女。着てはもらえぬセーターを、寒さこらえて編み続けるような(爆笑)」
ラオウ:「あれは…そもそも自分が人間ではないという理由に起因するのかな?」
吉 井:「……というか、何故あんなに主人公に固執するのかの理由の方が謎」
高 任:「神那のことといい、子供の頃の主人公は、なんか特殊なフェロモンでもまとっていたのかも(笑)」
ラオウ:「むう…」
高 任:「グラフィック的には、デフォルメ顔というか、立花の逆三角形の口が好きだ(笑)」
ラオウ:「また良くわからんこだわりを…」
高 任:「さて、眼鏡者としては眼鏡娘をプッシュすべきなんだろうけど…」
ラオウ:「眼鏡者ってなんだよ?」
吉 井:「多分、カブキ者みたいな(笑)」
ラオウ:「この男は、次から次へと妙な表現を…」
吉 井:「まあ、最初は『目が見えないのに、なんで眼鏡かけてんだよっ!?』などと思いっきりツッコミいれましたが」
高 任:「いや、それは誰だってそうですよ吉井さん」
ラオウ:「……ぁ」
高 任:「へ?」
ラオウ:「やべえ、俺全然気づいてなかったわ(笑)」
高 任:「それはまた、ラオウさんにしてはうかつな……まあ、何故眼鏡をかけてるかに関しては理由が述べられますが」
吉 井:「結局、伊達眼鏡娘ってわけですか(爆笑)」
高 任:「い、言われてみると…確かにそーですね(笑)」
ラオウ:「(多分、眼鏡の話題を打ち切りたかったと思われる)……月乃の描写に、熱意を感じたが(笑)」
高 任:「あるな……書き手の愛というか、少なくとも文乃に対する比較というか、可愛いキャラにしようという意図は節々に感じられたというか」
吉 井:「というか、可愛い(笑)」
高 任:「天然は偉大だ」
吉 井:「でも、ドジは禁句(笑)」
ラオウ:「……高任さん、月乃なの?」
高 任:「一番のお気に入りという意味では違うが」
吉 井:「え、違うの?」
高 任:「何故意外そうに?」
吉 井:「いや、文乃はとりあえずおいといて…思いっきり高任君のストライクゾーンと違うの?」
高 任:「野球のストライクゾーンはですね…」
吉 井:「え?」
高 任:「いや、一応左右はホームベースのここからここまで、高低はバッターのここからここまでという基準はあるんだけど、これは審判によって微妙に違うんですよ」
ラオウ:「理由はともかく、何が言いたいかはわかった」
吉 井:「なんとなくって、大事ですね(笑)」
高 任:「ここでいう、審判はゲームのシナリオ傾向というか……ライトな感じのシナリオなら確かに、月乃は俺の心を根こそぎ盗んでいったかもしれない(笑)」
吉 井:「それはまた、とんでもないモノを…(笑)」
ラオウ:「じゃあ、ひねって脇役の八葉とか?」
高 任:「いや、神那で」
二 人:「なんでよっ!?」
高 任:「いや、放っておけないというか……こう、砌シナリオでやられたというか」
ラオウ:「なんかあったっけ?」
高 任:「いや、堂島家の地下で色々乱暴されて……堀田に保護された後の、主人公との会話がね、悲しすぎるというか」
吉 井:「……?」
高 任:「最初から、母子という関係に対して主人公は懐疑的で……他のシナリオにおいて二人の距離感は曖昧なままなんだけど、砌シナリオのあのシーンだけは決定的に違いますよね。神那としては、主人公のために全てを犠牲にしてるという意識であるにも関わらず、主人公は『この人は結局、俺のことを何も理解していない……だから、こういうことをわざわざ口にするんだ…』と、完全に母子関係を諦めるというか、距離感どころか関係の断絶ですよね」
ラオウ:「ああ、あれか…」
高 任:「あの場面で、主人公は神那との間につながっていたはずの細い糸を自ら切ったんですよ……神那は他人だ、と」
吉 井:「……」
高 任:「基本的にヒロイン連中に対して甘いシナリオなのに、神那は…下手をすると神那に対してだけおそろしく冷酷というか。夜もなかなかに救いのないキャラですが、それに輪をかけて救われないというか、とてもじゃないですが、俺はあのキャラを放っておけないですね」
ラオウ:「それは、気に入ったキャラと言うより…別の何かのような」
高 任:「いや、神那かわいいですよ。もうね、主人公に一目惚れしたから父親と再婚した…でいいです(笑)」
ラオウ:「お前さっき、『納得できるやついませんよね?』とか言ってたよな?(笑)」
高 任:「立花に対して頭を下げながら『神室さんには良くしてもらって…』とか言いながらも、内心は嫉妬してるんですよ。文乃と一緒にお風呂に入ってるって聞いて、脱衣所の壁に背中を預けて、わき上がる黒い感情を必死に抑え込もうとしてるんですよ、可愛いじゃないですか」
吉 井:「心でゲームをやり過ぎでは…」
 
 
ラオウ:「たためなかった、たたまなかった……そのどちらにしても、ちょいと未完成な作品かな、という想いが個人的には消えません」
高 任:「前作もそうでしたが、ユーザーに対して媚びたところのない作品だけに…」
吉 井:「巫女さんとメイドさんは?」
高 任:「……」
吉 井:「……」
高 任:「ユーザーに対して媚びたところのない作品だけに、ちょっとした部分が評価を…」
吉 井:「巫女さんとメイドさん」
高 任:「多分、あれはユーザーに対する媚びじゃなくて、制作者本人の心のオアシスではないかと(爆笑)」
ラオウ:「独断と偏見にもほどがある(笑)」
高 任:「とにかく、完成度の高さを売りにせざるを得ないスタイルだけに……完成度が高くないと、それに伴って評価も落ちるというか……残念」
吉 井:「……」
高 任:「なんですか?」
吉 井:「いや、シナリオの矛盾とか、そういうものに気づかない方がある意味幸せなのかなあ、と」
ラオウ:「……最後の最後で、余計なお世話かも知れないけど」
吉 井:「はい?」
ラオウ:「主人公がさ、文乃が22歳には見えない……とか、自分とは〇歳違い……なんていう危険な会話してるけど大丈夫なん?」
吉 井:「……」
高 任:「そーいえばっ!?(笑)」
ラオウ:「しかも、主人公の年下のヒロインが……」
吉 井:「ラオウさん、そこまでで(笑)」
高 任:「うん、それ以上は言わんとこか(笑)」
ラオウ:「まあ、ちょっと気になっただけだから…(笑)」
 
 
お買い得度…… 8
操 作 性…… 8
音   楽…… 9
再プレイ度…… 8
絶対値評価…… 4
 
 
 そういや、月乃&文乃バッドエンドのあれは、主人公の子供なのかなあ…。
 などと、解けない謎も含めて、いろいろと後を引く作品なのは言うまでもなく。
 ちなみに高任は、神那とのエンディングを激しく希望。
 仕方ねえ、自分で神那とのベストエンディングを……などと入れ込んでしまいそうになるぐらい、神那が可愛いったらもう。
 
 あと、対談では割愛しましたが、堂島(兄)の名言も数多く。
 高任の独断と偏見でそのうちの1つ。
 
 ぐーるぐーる回されとりますわ。

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