お題……『アマガミ』(PS2)
 
 名作TLSシリーズに見切りをつけ……『キミキス』が発売、そして今作『アマガミ』へ。
 開発時、『アマガミ(仮)』というタイトルで政策を進めていくウチ、あらためてタイトルを考えるのが面倒くさくなったのか、いつの間にか(仮)がとれて正式タイトルに。
 いや、それは良くあることですし別に構わないんですが……
 
 タイトル『アマガミ』なのに、『あま噛み』シーンがほとんどないよっ!何かのキャラで、適当にそういうシーン作ってくれないっ?
 
 みたいなやりとりがスタッフ間であったのでは……みたいな想像をさせる内容ですので、あまり内容とタイトルの関連性は気にしない方がいいかと。
 
 作品紹介の前にいきなり愚痴か、俺。(笑)
 
 
 舞台は、キミキスの8年ほど昔にあたる輝日市の……輝日東高校。
 季節は晩秋……とくれば、クライマックスはクリスマス。
 しかしながら、高校2年生の主人公にとってクリスマスは、苦い想い出以外の何物でもない。
 2年前、中学3年生の冬……好きになった同級生に友人達の助けを借りながらアタックし、ついにクリスマス当日にデートを約束を取り付ける。
 待ち合わせ場所の公園で、彼女のへのプレゼントを胸に待ち続けた主人公……しかし、彼女は現れなかった。
 そして、主人公は知るのである……彼女が自分を笑いモノにするためだけに、デートの約束に応じたことを。
 
 あれから2年……輝日市にまたクリスマスがやってくる。
 
 このままじゃいけない、何かを変えなきゃ……そう決意する主人公の前に現れる6人(プラスアルファ)の少女達。
 
 その少女達とのふれあいの中で、主人公の心にまた、クリスマスはやってくるのか?
 
 
高 任:「さて、対談を始める前に…」
吉 井:「…?」
ラオウ:「…?」
 
 グラスを3つとウイスキーのハーフボトルをテーブルの上に置く高任。
 
ラオウ:「おいおいおいっ!」
吉 井:「いきなり、喧嘩上等スタイルですかっ!?」
高 任:「いやいやいや、別に酔っぱらって打撃系の対談をやろうという意味じゃなくて」
ラオウ:「なら、何故酒っ!?俺はお前と一緒に飲むのだけはイヤだ、絶対にイヤだっ!」
吉 井:「な、何故そこまで…」
ラオウ:「こ、この男限界越えると…」
高 任:「いや、あの時は申し訳なかったけどさ……ハーフボトル1本で、酔っぱらうも何も(笑)」
ラオウ:「申し訳ないですむことかっ!?」
吉 井:「……ラオウさんは、僕の知らない高任君を知っている(笑)」
 
 脱線。
 
高 任:「……大体、このゲームがネタだったら、酒の力なんか借りずとも、打撃系対談ぐらいいくらでもやったるわ(笑)」
ラオウ:「むう、まあ、それはそうかもしれんが」
吉 井:「じゃあ、このウイスキーは?」
高 任:「ああ、それはですね…」
吉 井:「……」
ラオウ:「……」
高 任:「なんというか……このゲームをプレイした人で、多分俺の言うことを理解してくれる人は少なからずいると思うんですよ」
吉 井:「……?」
 
 2人のグラスにウイスキーを注ぎつつ。
 
ラオウ:「おいおい」
高 任:「(自分のグラスに注いで)……数年前から薄々気付いてたんですけどね、このゲームをプレイしてやっと、ああ、俺の知ってるギャルゲーは死んだんだなって認識したよ」
吉 井:「(グラスを持ち上げながら)こ、これはいわゆる…」
ラオウ:「ギャ、ギャルゲーに対する、弔い酒…か?」
高 任:「(レコーダーに向かって)この対談読んでる人っ、未成年じゃなくて、俺のいってる意味が瞬間的にわかった奴は今すぐグラスに注いで酒を飲めっ!目標1200万人っ!(大爆笑)」
 
 仕事中(休憩中含む)の方、すみません。(笑)
 
高 任:「ギャルゲーってのは引き算で作られるゲームだと思うんですよ」
吉 井:「……」
ラオウ:「もう、酔ってる?」
高 任:「いやいや……表現としてのリアリティと、現実としてのリアリティが別なのは当然として、恋愛を題材にしたお話としての……という意味です」
ラオウ:「んー、それは……リアルとしてあるべき恋愛から、何らかの要素を除くという意味?」
高 任:「まあ、そんな感じ……で、ギャルゲーとエロゲーは主題が恋愛であっても別物って言いますけど、ギャルゲーが引き算であるのに対して、エロゲーのお話ってのは足し算なんですよ、俺の感覚としては」
ラオウ:「なるほど……そしてBLはかけ算だと(爆笑)」
吉 井:「(テーブル叩きまくり)」
高 任:「(むせながら)て、てめっ、誰が綺麗に落とせと…」
ラオウ:「(まじめくさった表情と口調で)で、わり算は?」
吉 井:「(床、叩きまくり)」
高 任:「ごふっ、ごふっ……」
 
 中断。(笑)
 
高 任:「こ、この男…」
ラオウ:「いや話が長くなりそうだったから…簡潔に頼むよ。読み手のために、そして俺のためにも(笑)」
高 任:「簡潔に語るとちゃんと伝わるかどうか自信がないのだが……イメージで言うと、エロゲーのシナリオはいろんなモノが混ざったコップの中の液体に、エロをどんどんぶち込む感じかなあ。いろんな要素があるのは同じなんだけど、結果としてエロの割合が高まっていく…みたいな」
ラオウ:「ふむ」
高 任:「で、ギャルゲーの方は……いろんなモノが混ざったコップの中の液体から、丁寧に丁寧に不純物を取り除いていく感じとでもいうのか。そうやって、純度を高めていくというか」
吉 井:「あ、それはなんかわかりやすい」
高 任:「カップルの年齢にもよるけどさ……一応名目的に未成年じゃないとは言っておくけど、恋愛において、普通に18禁な行為は含まれるでしょ。だけど、ギャルゲーの中で語られる恋愛ってのは、思い切りよくと言ってもいいけど、18禁の要素を、取り除いたところから出発したと思うわけだ」
ラオウ:「なるほど」
高 任:「もちろん、それはコンシューマという規制上の手段だったかも知れないし、漫画や小説なんかの手法を盲目的にまねただけかも知れないけど……事情はさておき、何らかの要素を取り除いたところが出発点だった、と俺は思ってます」
吉 井:「……なんというか、本当に無駄な分析とか好きだよね、高任君は(笑)」
ラオウ:「まあ、分析する態度そのものは間違ってないんだけど(笑)」
高 任:「やかまし。『告白でエンディング』とか『キスシーンでラスト』とかが、いわゆる今のギャルゲーの相場だけど、極端な話、引き算次第でカップルが紆余曲折しながら、初めて手を繋ぐ……みたいなシナリオだって、やろうと思えば出来るわけですよ」
吉 井:「むう」
高 任:「極端な話、初めて視線が合うとか、初めて話しかける……とか、そういうエンディングに向かうシナリオだって、やろうと思えば出来るはずで」
ラオウ:「ふむ、よーするに……現実の恋愛としてある状態から、ひたすらエロ要素を足していくのがエロゲー、何を除くかは決まってないけど引いていくのがギャルゲー?」
高 任:「うむ……まあ、ここでは恋愛の要素のないエロゲーは対象外って事で(笑)」
吉 井:「なんか、久しぶりに高任君の新しい理論を耳にしたような」
高 任:「極端な話、エロゲーは法律で定められたラインに向かってチキンレース……時々確信犯的に崖から落ちるメーカーもあるけど(笑)」
吉 井:「落ちるというか、高くジャンプするメーカーが(笑)」
ラオウ:「……その理論で言うなら、『アマガミ』のシナリオは足し算で作られてるな」
高 任:「つーか、下世話な言い方すれば『レーティングに引っかからない程度まで、サービス、サービスぅっ!』という構造になってるよね、これ?」
吉 井:「それは確かに…」
高 任:「で、そのサービスシーンも基本的に、シナリオの展開上必要不可欠というモノじゃなくて、あくまでもご褒美的な……」
ラオウ:「……」
 
高 任:「だったら、ギャルゲーもどきじゃなくて、エロゲー作れば?」
 
吉 井:「た、高任君、それ以上は…」
高 任:「だって、そうでしょう?シナリオ的に必然性もない、そういうシーンを、『15歳以上推奨』なんつー半端な規制に縛られて、『ぎりぎりまで頑張ってみましたぁっ!』とか言いたいなら、そもそも自分が進むべきベクトルを見失ってるとしか俺には思えないんですが」
ラオウ:「まあ……同人誌でやるようなことを、本家がやってるからなあ(爆笑)」
高 任:「コンシューマーとエロゲーで規制が厳しいのは当然コンシューマーで、開発者にとって本当にやりたいことがそっちのベクトルだったら、当然自分がより多くのことを出来る方を目指すべきでしょう」
吉 井:「んー」
 
高 任:「つーか、二人羽織の練習でそばの代わりに肉まん用意して、幼なじみの胸を揉みしだきながら『むう、この肉まんはっ、この肉まんはっ!?』などというシーンに何の必然性があるかっ!(一同大爆笑)」
 
ラオウ:「ま、まあな…」
高 任:「ゲームやってない人間にはさっぱりわからないだろうけど、ラストでクリスマスとはまったく関係無しに露天風呂に入ったり、ホテルの部屋でバスタオル姿の相手と2人ッきりになったり、(中略)……あまつさえ、会話コマンドで女の子の手を握って指を舐めるって、お前らが作りたいのは、絶対にエロゲーだろっ!」
吉 井:「まあ、女の子に指を舐められたり、女の子のおへそにキスしたり…(中略)……TLS以来の伝統お約束、『神風が吹いて下着が』…のシーンが、何の冗談かとしか思えないぐらいアレですしね(笑)」
高 任:「別に俺はエロゲーを否定するんじゃなくて、ギャルゲーをうたって、半端なエロゲーを作るなと……つーか、これはギャルゲーじゃねえっ!」
ラオウ:「……(諦めたように、酒を飲む)」
高 任:「半端なエロサービスに逃げるような人間に、ギャルゲーがどうとか言われたくないわっ!ギャルゲーはな、ギャルゲーはなぁっ!」
 
 中略。
 
高 任:「……というわけで、このゲームがギャルゲーとして扱われている現状に、俺は俺の知るギャルゲージャンルが衰退どころか、死亡したことを絶望的に悟ったんですよ」
ラオウ:「まあ、全部が全部そうとは思わないが……確かに、このゲームの出来はさておき、位置づけとしてはエロゲージャンルの、二軍って感じであることは否めない(笑)」
吉 井:「冷静に考えると、すごい勢いでいろんな人に喧嘩売ってません、この対談」
高 任:「俺は、それほど間違ったことは言ってません」
ラオウ:「正しいことを言った方が、敵が増える世の中だから(笑)」
吉 井:「いや、間違ったこと言っても増えますよ(笑)」
高 任「つーかね……いいかげんきちんと認識して欲しいんですよ。ギャルゲーってのは、法律とか規制的に18禁じゃなくて、ターゲット層としての18禁だって事に(笑)」
ラオウ:「むう、間違ってないな、それは(笑)」
高 任:「人間、18歳以上になると、手つないだり、偶然視線があって顔を背けるとか……そういうの基本的に出来なくなるんですよ(笑)」
吉 井:「……」
高 任:「18歳未満の人間は、実生活でそれが出来るから、ゲーム世界は必要ないんです。ゲーム世界が必要なのは、18歳以上の人間なんだよっ!」
ラオウ:「うん、堂々とそれを言えるキミはえらいと思うよ(笑)」
高 任:「つーか、昔と違って今の世の中、18歳未満の少年達のリビドーを解消するネタなんて死ぬほど転がってるんですよ。つーか、俺は中学生の頃、少女漫画を読んで涙し、スポ根漫画を読んで涙しつつ、それと同時に某フ〇ンス書院文庫の官能小説とか読みまくってました(笑)」
ラオウ:「おいおい」
高 任:「つーか、わざわざ『15歳以上推奨ラインで頑張ってみました』ってな努力は、18禁な内容を求める人間にとっては論外で、18歳未満の内容を求める人間にとっては大きなお世話なんだよっ!簡単にいうと、18歳未満の人間はとことん18禁の内容を追求し、18歳以上の人間はとことん18歳未満の内容を追求しなきゃ、ユーザーの要望から外れてるんです」
ラオウ:「ひとくくりにするなよ(笑)」
高 任:「そもそも、1つのジャンルに全ての要素を詰め込む時代じゃなくなってるんです。もちろんごくまれに名作は誕生するけど、ほとんどのモノは笑いなら笑い、泣きなら泣き……という特定の目的に特化した作品が、時代の要請とでも言うか」
吉 井:「それは、眼鏡娘なら眼鏡娘専用ということで」
高 任:「それはちょっと違うような気もしますが、条件付きでそういう感じです吉井さん」
 
 脱線。
 
吉 井:「とはいえ…ゲームって基本的に、システムが進化していくことで発展してきたじゃないですか」
ラオウ:「まあ、システムの発展が止まったジャンルは、袋小路ですね、確かに」
吉 井:「正直、10年前のギャルゲーも5年前のギャルゲーも、今のギャルゲーも、システムは変わらないですよ」
高 任:「ギャルゲーはシステムじゃなくてシナリオです」
吉 井:「それは否定しないけど……いわゆる恋愛のシナリオって、古今東西、文学やら何やらで書かれてきたジャンルだから、シナリオそのものがどこかお約束になって目新しさを失っていくのは…」
高 任:「いや、ここで重要なのはこれほどまでに長い間恋愛について人々はそれを表現したと言うことですよ、吉井さん」
ラオウ:「なんか、話をすり替えられたような気もするが(笑)」
高 任:「っていうかね……恋愛モノって、膨大な学問なんですよ」
ラオウ:「学問ときやがったか(笑)」
高 任:「例えば、今となってはギャグでしか書けない感のある、『砂浜に書いたラブレター』のお約束」
吉 井:「確かに、真面目には書けないね、それは」
高 任:「このお約束の本質を『人の目に触れることのない告白』と定義した上で、それと同タイプのお約束をいくつ挙げられますか?」
吉 井:「え?」
ラオウ:「雪の上に書く、とか?(笑)」
高 任:「ちょっと反則くさいが、それもある(笑)」
吉 井:「いや、いきなり言われても…」
高 任:「短歌で、涙で書いた恋文ってのがありますし、手に持った花火で宙に描くとか、手話での告白とか、雪だるまに相合い傘を書いた上で雪を押しつけて隠すとか、曇りガラスに書くとか、病弱の眼鏡娘が油絵の下に塗り込めた想いとか…」
ラオウ:「それは、病弱の眼鏡娘じゃないとダメなのか?」
高 任:「ダメだ」
ラオウ:「そ、そうか…」
高 任:「外国文学では、戦場に行く幼なじみの靴下の折り返し部分に小さく刺繍でとか……こんなもん、いくらでもあるわけですよ」
吉 井:「た、確かに、どれもこれも、どこかで聞いたことあるような…」
高 任:「落語の『三題噺』じゃないですが、自分の中に蓄積されたネタがどこまであるかってのはやっぱり重要ですから、これは学問以外の何物でもないですよ?」
ラオウ:「ありふれたシナリオしか書けないのは勉強が足らないってのは、ちょっと筋違いのような気もするが」
高 任:「あ、いやちょっと話が逸れた……ギャルゲーというジャンルの売り上げが芳しくないから、エロ要素を取り入れるってのは、開発者の怠惰だろうと。お約束によってカテゴライズされた内容をただ踏襲するだけで、『やっぱり売れないよう』なんて泣き言いってたら、世の中のサラリーマンに殺されますよ(笑)」
吉 井:「うん、殺されるね(笑)」
ラオウ:「うお、吉井さんがさわやかな笑顔で物騒なことを」
高 任:「それでそっち方面の追求というか……少年漫画にもラブコメとかもあるけどさ、何がすごいってやっぱり恋愛方面に関して少女漫画は偉大なんですよ」
吉 井:「まあ、それは…」
高 任:「何年か前、『少女漫画はいつの間にこんな風になった?』みたいな感じに、男性が今の少女漫画を読んでびっくりするみたいなネタが散見できたけどさ……偉大な少女漫画の世界でも、やっぱり1980年代ってのは、ちょっとしたターニングポイントになったわけだが、これは関係ないのでおいといて」
ラオウ:「…?」
高 任:「少女漫画の何が偉大かって、状況に対する貪欲さとでも言うのかな……手垢の付いたネタではない新しいモノを追求する姿勢が、少年漫画のそれとは段違いなのよ」
吉 井:「というと?」
高 任:「例えば世の中にポケベルが登場する……と、ポケベルというアイテムでしか語れない恋愛のシチュエーションが次々と飛び出してくるわけですよ。もちろん、二番煎じみたいなネタもあるけどさ、新しいアイテム、新しいネタに対する嗅覚というか、執念というか、すごいなあと」
ラオウ:「ふむ」
高 任:「で、さっきの『少女漫画はいつからこんな18禁なシーンが連発するように』というアレも、本当の最初は『18禁の行為』とか『妊娠』という状況を使うことでしか語れない恋愛を描くためってのがほとんどだった。もちろん、最近は、みんな描いてるから気軽に…みたいなのもあるけど」
吉 井:「ふんふん」
高 任:「まあ、他にも言いたいことはあるけど……ギャルゲーのシナリオを書くにあたって、そこまで貪欲に追求しているかどうかに対して俺ははなはだ疑問です」
ラオウ:「なるほど…」
高 任:「特に最近は例外も多いけど、基本的に少女漫画で描かれる恋愛モノの中に18禁な行為があるのは、その行為を通すことでしか描けない恋愛模様を表現するための手段に過ぎないのに対して、何の脈絡もなく、そういうモノを客寄せのためにだけ使うのとは全然違うわけで」
吉 井:「……」
高 任:「このゲームのシナリオ、ギャルゲーというジャンルというか、シナリオに行き詰まりを感じて、こういう路線に走った……ってのとは根本的に違うとしか思えないでしょ?ゲームを作る上での苦労とかじゃなくて、恋愛モノの話を表現する上でというか、ギャルゲーのシナリオを描くという上で、苦労せずに安易にそっち方面に逃げたとしか思えないよ、俺は」
ラオウ:「まあ、全面的には認めないが、一理あることは認める」
高 任:「まあ、何の脈絡もなく、半端なエロシーン書く人間も、苦労はしてるんだろうけど、もっと違う部分で苦労すべきだと思う」
ラオウ:「引っ張るなあ、お前(笑)」
高 任:「まあ、何はともあれ…俺は『アマガミ』をギャルゲーとしてはこれっぽっちも認めないってことです」
 
 テーブルの上の酒を片づけて、麦茶をセット。
 
高 任:「……というわけで、ギャルゲーじゃない『アマガミ』というよくわからないジャンルのゲームについて対談を始めましょう(笑)」
ラオウ:「ね、粘着質な…」
吉 井:「酒の後に、麦茶…(笑)」
 
 
高 任:「まあ、ランダム性を排除した新しいシステムに挑戦したり、いろんな意味で意欲作というか……まあ、出来としては良くできてますよね」
ラオウ:「……」
吉 井:「……」
高 任:「ど、どーしました?」
ラオウ:「いや、さっきあれだけこきおろしといて、よくぞそこまで切り替えられるモノだと(笑)」
高 任:「まあ、作品として中途半端さは否めませんが、きちんと仕上がっているという意味では、なかなか良くできたゲームなのは間違いないですし」
吉 井:「眼鏡娘だけじゃなく、ギャルゲーにも、高任の中に多分触れてはいけない逆鱗があるんですよ、ラオウさん」
ラオウ:「な、なるほど…」
高 任:「……さて、ラオウさんはおいといて(笑)」
吉 井:「なに?」
高 任:「吉井さん、エンディングはいくつ見ました?」
吉 井:「梨穂子はかわいいなあっ!」
高 任:「他には?」
吉 井:「梨穂子はかわいいなあっ!!」
高 任:「……」
吉 井:「梨穂子はかわいいなあっ!!!(笑)」
高 任:「……(笑)」
吉 井:「大事なことは3回言わないと通じないし(笑)」
高 任:「……梨穂子だけなんですね?」
吉 井:「エンディングを見たという意味では」
ラオウ:「ああ、あれか…」
吉 井:「そういやラオウさん…今回も例によって、全員のエンディング見ないと、妹の美也シナリオに入らないんですが…?」
ラオウ:「(親指を立てて)力技で何とかしました」
 
 注…『ラオウさんの力技』
 5月某日。
 
ラオウ:『……高任さん、あれって、やっぱ全員のエンディング見ないとアカンの?』
高 任:「正確には全員のエンディング見て、隠しキャラを登場させてそいつをクリアした上で、もう一度やり直して美也シナリオに入る選択肢を選んでからエンディングを見て、もう一度最初からやり直さなきゃアカン」
ラオウ:『……むう』
高 任:「いじるん?」
ラオウ:『……セーブデータを送れ』
 
ラオウ:「……というわけで、一応高任さんのセーブデータにあるイベントは一通り目を通しました(笑)」
吉 井:「この人ダメだっ(笑)」
高 任:「泣いてもいいですか、俺」
ラオウ:「いや、正直なところ……このゲームたるい」
吉 井:「続きが全然気にならないシナリオという意味で、ある意味芸術的というか(爆笑)」
高 任:「ちなみに、このゲームの出来は?」
ラオウ:「あ、そこそこ良くできてると思うよ」
吉 井:「同じく。出てくるキャラ、可愛いし……裏を返せばそれだけとも(笑)」
 
 ゲームの出来は良いといいながら、プレイする気にはなれないという矛盾。
 これが、ある意味『アマガミ』というゲームの本質のような気がします。
 
 ゲームシステムは、主人公が学校のどこに行くか……でなはく、各キャラのシナリオがパネルのようになっていて、時間帯によって選べるパネルというかイベントを選び、その選択で新たなパネルが……まあ、ぶっちゃけていうと、ゲームじゃねえな。(笑)
 それぞれのキャラのイベントを読んでいく……そんな感じ。
 もちろん、会話システムは健在で……シナリオを読んでいく上での選択肢によって、各キャラの星を獲得すると、女の子と主人公との関係が1段階レベルアップします。
 
 ステップ1の出会いで星を獲得するとステップ2の『憧れステージ』へ。星が獲得できなかったときは、ステップ2の『知り合いステージ』へ。
 『憧れステージ』から星を獲得すると『好きステージ』へ、獲得できないと『仲良しステージ』へ……この『仲良しステージ』は、『知り合いステージ』で星を獲得することでも到達します。
 つまり、最終段階であるステップ3には『好き』『仲良し』『疎遠』の3つのステージがあり、それぞれのエンディングへ向かうと言うか。
 バッドエンドを除けば、6人の各キャラのエンディングは『好き』と『仲良し』の2つ。
 隠しキャラには1つ……そして。(笑)
 
高 任:「ラオウさん、妹キャラである美也のシナリオはどうでしたか?」
ラオウ:「ちょっと暴れたな(笑)」
吉 井:「あ、なんか他のキャラシナリオではいい感じだと思ったんですが、ダメでしたか?」
ラオウ:「……なんか、タイトルが『アマガミ』だし、こんな感じでいいんじゃねって感じの、適当さ溢れるくそエンディングでしたね。高任さんからセーブデータ借りずに、自力でやってたら、大惨事だったかも(笑)」
高 任:「まあ、元々『アマガミ』は仮につけたタイトルで、結局発売日が近づいてあらためて考えるのが面倒くさくなって、そのままつけた…らしいですから」
吉 井:「なるほど、薫の出会いイベントから仮につけたタイトルが、そのまま残ってしまった感じですか」
高 任:「まあ、美也のエンディングと、薫との出会いイベント以外、これっぽっちもないですからね」
ラオウ:「そこは、『ユーザーの心を甘噛みするハートフルシナリオ』などと、嘘でも言っておくべきでは?(笑)」
高 任:「……つーか、このゲームのシナリオ、何から何まで投げっぱなしなので、個人的なイメージとしては……えーと、アイドルDVDみたいな感じとしか(爆笑)」
吉 井:「な、なるほど、それは言い得て妙かも」
ラオウ:「アイドルDVDを知らないので何とも言えないが……1つだけわかることが」
高 任:「なに?」
ラオウ:「兄のことを『にぃに』と呼ぶって事は、それを教えた隠しキャラは東北出身だなと(笑)」
吉 井:「え?」
高 任:「あ、そうか…吉井さん隠しキャラわからないんだ(笑)」
吉 井:「いや、それもありますけど…『にぃに』?」
ラオウ:「東北地方では、そういう呼び方をします」
高 任:「さすがラオウさん」
ラオウ:「誉めてないよな、それ(笑)」
高 任:「誉めてますとも」
 
 
高 任:「しかし、プロローグがわけありな感じだったから、思いっきり勘違いしましたよ俺は」
ラオウ:「まあ、単純にふられただけであそこまで臆病になるか…とは思った」
吉 井:「恋愛に臆病とか言う割には、『お宝本』とかいって、グラビアアイドルやらの本やDVDを秘蔵してるあたりは、妙にお気楽というか」
高 任:「つーか、待ち合わせに約束した彼女は来ない……ひたすら待ちぼうけで、そこに幼なじみやら薫あたりがやってきて、暗い表情で主人公を病院に連れて行く……感じの過去を想像してましたよ俺は」
ラオウ:「いや、王道にも程があるだろそれ」
高 任:「待ち合わせの場所に向かう途中に彼女が事故にあって死んだ……ぐらいのべたべたなシナリオの方が、これよりなんぼかマシでしょう」
吉 井:「多分…今流行の、草食系男子ってやつをイメージした主人公なんだと思いますが」
ラオウ:「そういう意図は、詞のキャラメイクあたりにうかがえたけど…」
高 任:「基本的に、女の子キャラの方が主人公を引っ張っていく展開が多いからそうなんでしょうけどね」
吉 井:「そういう意味で、紗江は異質ですか、ゲームの中では」
高 任:「ふかふか(笑)」
吉 井:「ふかふか(笑)」
ラオウ:「というか、久しぶりに男の願望をぎゅっと濃縮したようなキャラを見た(笑)」
高 任:「いや、あんまりひとくくりにするのはどうか(笑)」
吉 井:「『せんぱいが、こういうのお好きって聞きましたから』とかいって、誕生日プレゼントに自分がコスプレしてそれを撮影し、一冊の本にまとめて……」
高 任:「正直怖いです。つーか、隠しキャラの方がまだ許せる」
ラオウ:「……いわゆる、草食系男子ってあれだろ?一昔前の、日本撫子の男版というか。あれも極端な話、当時の男にとって都合の良い理想像を女性側が押しつけられただけというか」
高 任:「……反論を承知で言うと、『判断および、責任を相手に委ねる』キャラですわな。そういう人間を正面から相手にするのって、ものすごいエネルギーが必要ですが……今は男もそうだけど、女性にもそれだけパワー持ってる人はあまりいないというか、まだまだ女性にとって女性であるというだけでエネルギーを浪費させられる世の中ですから。多分、ぐいぐいひっぱっていくというより、お互いあまり干渉せずに生きて行くみたいな感じが多数ではないかと」
吉 井:「みもふたもない…というか、話が逸れすぎ(笑)」
高 任:「じゃあ、ふかふかで(笑)」
吉 井:「ふかふかで(笑)」
高 任:「まあ、公式に発表されてるデータとしては、紗江より梨穂子の方が、胸は大きいらしいですが(笑)」
吉 井:「梨穂子はかわいいなあっ!(爆笑)」
ラオウ:「なんだこれ?(笑)」
 
 
ラオウ:「しかし……隠しキャラのイベントを見た限りでは、主人公ってモテモテだよね(笑)」
高 任:「つーか、やばい系の女子を吸い寄せる何かが出ている(笑)」
吉 井:「え、黒沢さん…じゃなくて?」
高 任:「まあ、それも含めて……ストーカー2人に……メインキャラ6人も、ある意味やばい系キャラも多いし(笑)」
ラオウ:「一応、詞もやばい系?」
高 任:「やばい系もなにも、別にあのぐらいはふつーでしょ?」
ラオウ:「そりゃ、お前はな(笑)」
高 任:「アンタもだろ…なあ、仮面優等生(笑)」
ラオウ:「お前が言うなよ」
高 任:「高校の時の俺は、別の仮面をかぶったもん」
吉 井:「(話題を変えるように)結局、詞の生徒手帳には何が書いてあったの?」
高 任:「あれ、詞のイベント見てるんですか?」
吉 井:「別に、どのキャラもさわりぐらいはプレイしてるって」
ラオウ:「生徒手帳と来れば、やはり『殺すリスト』で(爆笑)」
高 任:「つーか……修羅場イベント全部見てないから何とも言えないんだけど、謎は全て解けませんというか、投げっぱなしのシナリオがほとんどですから」
吉 井:「なるほど…」
ラオウ:「……俺は、イベントリプレイに目を通しただけだから、通してのプレイじゃないとは断っておくけど」
高 任:「…?」
ラオウ:「詞と薫の2人に関して、シナリオ展開というか、論理展開が特におかしいな」
高 任:「否定はせん」
吉 井:「梨穂子はかわいいなあっ!(爆笑)」
高 任:「いや、梨穂子以外のシナリオがわからないのはわかってますから」
ラオウ:「こう、ゲームシステムが、イベントとイベントを繋ぐような作りになってるせいもあるだろうけど、多分シナリオ制作者の頭の中で完結してる部分があるというか、ユーザーに対してきちんと情報提示できてない部分が目立つし、論理展開も万人を納得させるようにはなってない」
高 任:「まあ、通してプレイしても多分そう(笑)」
ラオウ:「……さっき高任さんが、『別の部分で苦労しろ』とか力説してたけど、俺が思うに、そもそもシナリオライター連中の力量不足だよ」
高 任:「き、厳しいな…」
ラオウ:「まあ、シナリオそのものに大きな流れがないから、目に見える破綻をしてないだけで、イベントイベントの、細かい部分で雑と言うか、齟齬が目立つな」
吉 井:「……」
ラオウ:「さっき、高任さん厳しいこといってたように見えるけどさ、俺からすれば無意識のうちに評価が甘くなってるね」
高 任:「そ、そうか?」
ラオウ:「ギャルゲーとは認めないとかそういう意味じゃなくて、昔だったらシナリオそのもののレベルで暴れてるよ多分……それを思うと、高任さんの評価は甘い」
高 任:「い、いや…このゲームシステムの場合、そもそもシナリオの位置づけが…」
ラオウ:「つーか、はっきり言わせてもらえばこのゲームのシナリオはクソだよ。行き当たりばったりに、思いつきだけで書いたといわれても仕方ないレベル」
 
吉 井:「(話題転換を図って)……さ、さて、そろそろキャラクターについて…」
 
高 任:「ある意味意欲的なキャラクターの詞ですが……もったいないよね」
ラオウ:「もったいないというか、なんというか…」
高 任:「いや、いくらでもキャラの内面に踏み込めたと思うんだけど……黒沢さんのイベントなんかでも、『わざわざ相手に説明してやる』ところが、自分に刃向かった黒沢さんに対する彼女なりの優しさやん。じゃあ、その優しさがどこから来たのか……みたいな展開にして、主人公に『1つ間違えたら、彼女は私だったかもしれないから』ぐらいのこと言わせるだけで、ぐっと深みが出ると思うんですけどね」
ラオウ:「まあな…」
高 任:「主人公とのからみだけでも、いくらでも可能性ありますよね。『主人公のお節介が、自分を惨めに見せる』とかいう感じでの対立路線、自分の生き方を変更するために主人公を必要とする路線、主人公を否定するために自分の生き方を押しつけようとするバトル路線、自分とは相容れないと判断して主人公を完全に無視しようとするんだけど、主人公がすり寄っていくギャルゲー王道路線とか」
吉 井:「よく、ポンポンと浮かぶよね、しかし」
高 任:「学問ですから(笑)」
ラオウ:「というか……主人公の存在が、詞に対して影響を及ぼす云々に対して、あまりにも説得力不足なんだよな。主人公は理由がわからないけど、勝手に詞が納得してしまう…みたいな」
高 任:「ああ…」
ラオウ:「ユーザーが第三者として、2人のやりとりを楽しむという構想なら、もっと詞の精神面での情報を提供しなきゃいかんはずなのに、戸惑う主人公とユーザーは、同じ立場で、説明は基本的に無し。結局、構成がおかしいとしか」
高 任:「詞が、クラスの人間の前で素顔をさらした理由なんかも、多分人によって解釈が違うんでしょうね。それとは別に、『仲良し』ルートで語られる、詞の逆鱗は別物としか思えないし」
ラオウ:「多分、家族に認められないから社会的に認められることを目標とする詞にとって、クリスマス委員としてみんな認められる自分の立場を危うくするモノってのが正解に近いんでしょうけど……微妙に論理展開が変というか」
高 任:「『好き』ルートのあれが、『主人公がけなされたことにたいする激昂』であって、クリスマス委員長をおろされることにこだわりはしなかったのに対し、『仲良し』ルートでは、クリスマス委員長の立場にこだわった……というのが、構図としてはすっきりするんだろうけど、それだと他のイベントで色々不都合が出てきますし」
ラオウ:「正直、こういうキャラにチャレンジしたことは評価しますが……なんだかなあ(笑)」
高 任:「そういや、『知り合い』ルートから『仲良し』ルートにレベルアップしたとき、詞が『何でばらしちゃったんだろう…』とか自問自答してますけど、ゲームシステム上、ばらさざるを得なかったからってのが露骨すぎて笑えました(笑)」
ラオウ:「あはは、そりゃ詞本人にはわからないわな(笑)」
高 任:「結局、詞というキャラをきちんと書ききれなかったというか、超不完全燃焼のイメージが強いです、俺には」
 
 
高 任:「さて、梨穂子はいい子だなあ」
吉 井:「梨穂子はかわいいなあ!」
ラオウ:「やっと参加できますか、吉井さん(笑)」
高 任:「まあ、近くにいすぎた幼なじみ……という、王道中の王道キャラ(腹ぺこ属性あり)ですが、1つ忘れていないかなあと」
吉 井:「眼鏡?」
高 任:「いや、そうじゃなくて……プロローグの出来事と、梨穂子のシナリオをまったく絡めないってのは片手落ちでしょ」
吉 井:「と、いうと?」
高 任:「いや、梨穂子は昔から主人公のことが好きだったわけでしょ。でも、幼なじみですらいられなくなることを恐れて、想いを伝えずに来たという純度100%の幼なじみキャラ」
吉 井:「うん」
高 任:「そんな梨穂子に対して、主人公は中学3年の時、好きになった女の子に振り向いてもらうためにどうすればいいか、梨穂子達に相談してるわけですよ」
吉 井:「おお…」
高 任:「自分が好きな男は、別の女の子が好きで、しかもその相談を自分に持ってくる……これ以上はないシチュエーションをシナリオに組み込まずどうしますか?このゲームシステムだと難しいかも知れませんが、他のキャラ攻略なんかで『梨穂子に相談してみよう』とかいう選択肢あったら最高ですよ」
ラオウ:「なるほど」
高 任:「表情を強ばらせて、『また、そんな残酷なこと聞くんだね…』とかいって真珠の涙を浮かべたら、男の子なんていちころですよ(爆笑)」
吉 井:「2つの胸の突起物は何でも出来る証拠ですし(笑)」
ラオウ:「おいおい」
高 任:「と、いうか……梨穂子が、プロローグの出来事に触れない理由が正直わからない(笑)」
ラオウ:「隠しキャラがいたからでは?」
高 任:「かも知れないけど……なんというか、そこそこまとまってはいるけど、梨穂子のシナリオは、今ひとつ幼なじみという関係に対して踏み込んでないような気がします」
吉 井:「会話の端々に、昔はこういう事あった…ってのがいっぱい出てきますけどね」
高 任:「言ってるだけですやン(笑)」
ラオウ:「言ってるだけじゃなあ(笑)」
高 任:「結局……梨穂子は、主人公の幼なじみになりきれてない気がします。そういえば、小学校は同じだったね……ぐらいの知り合い感覚というか」
吉 井:「それは言える」
高 任:「あくまでこういうスタンスでの幼なじみキャラというなら『昔は何でもわかったけど、今は相手のことがわからない』という感じでやるしかないと思うが」
ラオウ:「つーか、イベント毎で語られる2人の関係というかに、幼なじみとしての関係に矛盾が生じてるんだけど(笑)」
高 任:「……正直、その場その場のノリで、行き当たりばったりに書いたとしか俺には思えません(笑)」
ラオウ:「だよなあ…(苦笑)」
 
 
高 任:「つーか、個人的には梨穂子のクラスメイトの伊東さんが可愛い(笑)」
ラオウ:「またこの男は、脇役スキーの癖を(笑)」
高 任:「じゃなくて……結局、メインキャラの作り込みが浅くて、脇役と同じレベルに過ぎないからだと思うが」
吉 井:「今さらっとすごいこと言ったよ…」
高 任:「つーか、人気投票したら塚原先輩が一番じゃねえの?」
ラオウ:「いや、完全にお前の趣味だろ、それ(笑)」
高 任:「予備知識無しにプレイしたから、俺は最初塚原先輩が、学校で一番人気のはるかだと思ってたよ」
吉 井:「多分、薫の人気が高いと思うよ」
高 任:「主人公の悪友っつーか、友達感覚でつるめる女友達というポジションですな」
ラオウ:「(ぽつりと)…田中さんが生きてた(笑)」
高 任:「田中さん、生きてたねえ」
吉 井:「元気そうだよねえ、田中さん」
 
 注:『田中さん』……TLSシリーズ最後の作品で、隠しキャラというか、プレイによって『田中さん』だったり、『佐藤さん』だったりと、名字が3種類あってローテーションされる。
 我々3人の場合、奇妙な一致で全員『佐藤さん』で登場してきたため、てっきり『佐藤さん』だと思いこんでいましたが、後に知人に指摘されて気付きました。
 まあ、このゲームの田中さんは、キャラデザがそのまんまというだけの…薫の友人として脇役登場。
 
高 任:「『仲良し』エンドで、田中さんに言い寄られてぐらっと来たぜ(笑)」
吉 井:「え、そんなシナリオなの?」
ラオウ:「うむ、そんなシナリオです(他人のデータでイベント見ただけなのにえらそうだ、この男)」
 
 ちなみに田中さん、3人のなかでは大人気。(笑)
 
高 任:「話を戻して薫ですが、ブーメランフックですね(笑)」
ラオウ:「いや、あれは腰が入ってないな(笑)」
吉 井:「読者置きっぱなしのネタはどうかと」
高 任:「そういや、薫シナリオでもちょろっと黒沢さん出てきます」
吉 井:「そうなの?」
ラオウ:「……つーか、無理に隠しキャラ作らずに、黒沢さんで統一した方が、収まりよかったのでは?」
高 任:「俺、薫をクリアしようとしてたときに、初めて隠しキャラの一撃を食らいました(笑)」
吉 井:「…?」
高 任:「まあ、ネタばれですが……主人公を小学校の時からずっと好きだった女の子がいまして、例のプロローグがきっかけで、自分が一番主人公のことを理解している。他の女に主人公を傷つけさせたりはしない……と、主人公に近寄ろうとする女の子を、あの手この手で諦めさせるというキャラです」
吉 井:「むう」
高 任:「ちなみに、メインキャラ攻略時も、『主人公には付き合ってる人がいるんです』などと謎の写真を見せて、問答無用で諦めさせるというか。『敵対関係』になって、机の向きを変えられるとか地道な嫌がらせをくり返される(笑)」
ラオウ:「あれは何の写真なんだろうな」
高 任:「あれも謎ですね……つーか個人的には、隠しキャラと黒沢さんの……ああ、ひょっとして夏頃に隠しキャラが主人公の事を諦めさせた女の子って、黒沢さんの事なのかも」
ラオウ:「だとすると面白いけど、ちょっと無理があるな」
高 任:「確かに」
ラオウ:「正直、こっちの方が幼なじみっぽいよね、なんとなく」
吉 井:「中学からの連続したつき合い……にしては、そのあたりの事情って?」
高 任:「なんとなく、だそうです(笑)」
ラオウ:「このシナリオ、全部『なんとなく』のような(笑)」
高 任:「まあ、仲良しルートはともかく……好きルートは、いかにも唐突なシナリオだったような」
吉 井:「ああ、2人の関係を見直すとかのあれは…説得力ないね」
 
 
高 任:「紗江は、さっきちょっと語ったけど?」
吉 井:「と、いうか……そもそも何でこの時期(晩秋)に女子校から転校してきたのかな?」
ラオウ:「(高任を見る)」
高 任:「んー、会話とか全部チェックしたらあるのかも知れないけど、少なくともイベントでは語られなかったような…つーか、記憶にない」
ラオウ:「……ああ、女子校でまわりの女の子に可愛がられるのが苦痛になって、親に頼んで転校してきた……みたいな設定だと、多少あのシナリオの説明はつくか」
吉 井:「ああ、なるほど」
高 任:「好きルートの二股ルートとか、クリアするの面倒なんですよね、正直」
ラオウ:「?」
高 任:「いや、ステップ2に移行するとき、一応6人全員の星を獲得するのは可能なんですよ。でも、ステップ3に移行するときは2人までで、3人目の星はキャンセルされるわけです」
吉 井:「同時攻略不可(笑)」
高 任:「じゃなくて、ステップ3で2人とクリスマスの約束をして……という状況に持っていかないと、見られないエンディングがあるわけで。後、アタックイベントの目撃イベントとか」
ラオウ:「高任君の好きな修羅場(笑)」
高 任:「いや、修羅場じゃないし……まあ、紗江の場合は『付き合おう』と宣言してるわけだから、正直後味の悪さだけが残るというか」
ラオウ:「修羅場に関する、キミの価値観はよーわからん(笑)」
吉 井:「なんか、紗江はルートによってものすごく将来が変化するらしいね」
ラオウ:「コスプレ腐女子とか(笑)」
高 任:「まあ、結局そばにいる人間の影響を強く受ける主体性のないキャラを描きたかったってのが制作者サイドにはあったんでしょうね。なんかルートによって意図的にものすごく変化させた云々は、インタビューで語ってたらしいよ」
ラオウ:「なるほど…」
 
 
高 任:「さて、はるかは……年上で、天然で、色気担当?(笑)」
ラオウ:「うん、言葉の端々に、高任さんの感情が見え隠れしてるね(笑)」
吉 井:「まあ、高任君のストライクゾーンから大きく暴投してるっぽいし」
高 任:「んー……なんというか、シナリオ担当者に便利に使われすぎてて、むしろ哀れな感じがするんですが(笑)」
ラオウ:「……つーか、シナリオに説得力がなさすぎだろう、いろんな意味で」
吉 井:「え、そんなひどいんですか?」
ラオウ:「序盤は、天然ボケというキャラに寄りかかって風呂敷を広げ、中盤から後半にかけて、シナリオサイドの都合だけで動かされてるとしか(笑)」
吉 井:「そ、それはひどい…」
高 任:「まあ、年上のキャラだから……という理由だけで結局露出過多というか、詞みたいにチャレンジしようという情熱があったなら、ここはむしろ年下という設定にした方が意外性はあったでしょうな」
ラオウ:「無理がないか、それ?」
高 任:「いや、世間知らずプラス、年上の主人公をからかうみたいなスタンスで……過去にわけありのケースか、無しのケースはお好みで」
吉 井:「いや、ケースといわれても(笑)」
高 任:「まあ、それは冗談にしても……最後のホテルでのイベントとか、『魅力的な先輩に自分はふさわしくない』ってなイベントを挟むだけで説得力でますし、はるかサイドだけじゃなく、主人公サイドも描写不足で……『一緒にいると楽しいし、付き合おうか?』みたいなノリなのに、エンディングだけはドラマ仕立てにしたかったのか、妙に切迫感を与えようとしてバランスやら統一感をめちゃくちゃに破壊してるとしか」
吉 井:「む、むう…」
ラオウ:「うん…俺の言おうとしたことはほとんど言ってくれたね(笑)」
高 任:「まあ、服装検査の『これは寝癖なの』のイベントは好きですけど、多分シナリオ担当の中で、はるかというキャラは何人ものキャラのイメージがだぶったような感じで、きちんと1人のキャラになってないような気がします」
吉 井:「冷静に考えると、何から何まで問題点を指摘してない?」
ラオウ:「いや、正直シナリオやキャラメイクに関して問題点だらけです、このゲーム」
 
 
高 任:「さあ、逢だ」
吉 井:「おお、テンションが…」
高 任:「最初はね、ちょっと期待したんですが……なんか中盤で、普通にいい娘になって、終盤からエンディングにかけては何の脈絡もなく色気担当になってしまったような」
ラオウ:「序盤のイメージでそのまま押し通せば、新鮮だったような気がするんだけど」
高 任:「ちょい気が強めの、大人びた小悪魔キャラというか(笑)」
吉 井:「何やら矛盾を感じるけど、最初の方のイベントは見てるから言いたいことはわかるよ高任君」
ラオウ:「……というか、イベントだけを追ってるからよくわからないんだけど、何でクリスマスイベントに背を向けて、山の中腹にある露天風呂に2人で入る的なシナリオの流れになるの?」
高 任:「うん、そういうのが散見できるから『15歳以上推奨ラインでギリギリ頑張ってみたよぉ〜』的に作ってるとしか思えない(笑)」
吉 井:「ごめん、ちょっとイベント確認させて」
 
 イベント確認中。
 
吉 井:「……何これ?」
ラオウ:「ネオリアリズム(爆笑)」
高 任:「なんでやねんっ」
ラオウ:「いや、エロは偉大だよというリアリズムの中で(以下略)」
吉 井:「こ、これだけで語ったらダメなんだろうけど…これは、あまりにも」
高 任:「いや、ある意味『梨穂子は可愛いなあ』だけでこのゲームを終わらせてた吉井さんは幸せ者ですよ(笑)」
吉 井:「他のキャラのエンディングもちょっと確認…」
 
 確認中。
 
吉 井:「……」
ラオウ:「吉井さんの口から、エクトプラズムが出てる(笑)」
高 任:「そりゃ、それだけ見たら出るよ」
吉 井:「……なんというか、このゲームって本格的にイラスト集なんだね」
ラオウ:「なるほど、それは言える」
高 任:「いろんな女の子の日常生活を切り取った一枚絵と、簡単なコメント……それの集合体ってのが俺の中の結論ですが」
吉 井:「さっき、そこそこ良くできたゲームとか言わなかった?」
高 任:「ん、そりゃシナリオ重視の俺らからすればクソだけど、可愛い女の子と、そこそこそのイベント……そういうのだけを求めてるユーザーってのは、実際いますやん。そもそもマシンパワーの向上分をグラフィックと音声、音楽だけに費やしてる今のゲーム業界の流れからすると……多分、このゲームはそこそこきちんと出来てると評価せざるを得ないでしょう」
ラオウ:「むう、珍しく大人な意見を」
高 任:「まあ、個人としては絶対認めないけどな(笑)」
 
 
高 任:「ちなみに、逢の弟が好きなクラスの女の子って、『キミキス』の菜々だそうです」
ラオウ:「え、そうなん?」
吉 井:「と、すると…?」
高 任:「『アマガミ』は『キミキス』の8年前の世界らしいです」
ラオウ:「ふうん」
高 任:「うわあ、さめた反応だ」
ラオウ:「いや、何か意味があるとも思えないし(笑)」
吉 井:「それは確かに」
ラオウ:「というか…シナリオに説得力を持たせられない人間の考える事って、どこか論理的に破綻してる事がほとんどなのよ。そんな人間が、(以下略)」
高 任:「ラオウさん、そのぐらいで(笑)」
 
 
ラオウ:「さて、美也ですが(笑)」
高 任:「むう、絶対に負けられない強い意志を持ってラオウさんが切り出してきた(笑)」
吉 井:「……この『アマガミ』ってタイトル、そもそも仮の名前がそのまま付けられたんだよね?」
高 任:「多分、美也のイベントは最後に作ったんでしょうね…」
ラオウ:「まあ、それはおいといて(笑)」
高 任:「おいとくのかよ(笑)」
ラオウ:「いや、美也って紗江や逢に主人公のお宝本を見せようとするよね。あれは、主人公に近づく女の子に対する牽制というか、主人公に対して幻滅させようとする意図があるとしか思えないよね?」
高 任:「まあ、そうだろうね」
ラオウ:「(ぽんと手を合わせて)そういう方向で1つ、お願いします」
高 任:「何をっ?」
ラオウ:「いや、このゲームって高任さん的には許せない出来のはずだろ?ここはひとつ、『偽アマガミ』とかで、原作をメッタ切りにするのがキミのライフワークと違うの?」
高 任:「SSならともかく、そういうのは3年後ぐらいじゃないと(笑)」
ラオウ:「高任さん、今日できることは今日やろう」
高 任:「今日できないから明日やるんだよ……つーか、このゲームにしたって『キミキス』から3年経ってるじゃねえか」
ラオウ:「3年もかける内容とも思えないが(笑)」
吉 井:「心にしみるやりとりだ…」
高 任:「つーか、美也より、高橋先生とか、伊東さんとかひびきとかの方を書きたいよ俺は」
吉 井:「脇役オンリー(笑)」
高 任:「つーか、これで『偽』書こうとすると……プロローグで、彼女を事故に遭わせて殺すしかないやん(爆笑)」
ラオウ:「ええやん、別に」
高 任:「つーか、それで書くとヒロインが決定してしまうやん。俺的にはもうちょっと幅のあるアイデアが浮かぶまで書きたくないぞ」
ラオウ:「いや、俺が言うのもなんだが、最近高任さんの書く妹キャラは、なかなかに熟練してきたのではないかともっぱらの噂で(笑)」
高 任:「噂ってどこの噂だよ。そんな話、知人の誰もしたことないぞっ?」
吉 井:「つーか、菜々だけでしょ…」
 
 
高 任:「結局、最終的に7万本ぐらいですか?」
吉 井:「んー、7万本は越えたと聞いた記憶がある」
ラオウ:「なんか、日記で書いてたなそういや」
高 任:「まあ、最近のゲームは最終販売量の5割から7割ぐらいが最初の2週間で売れるらしいからね」
吉 井:「ときメモ(エンジン版)とは完全に逆ですな」
 
 
高 任:「まあ、結局なんというか……シナリオがひどすぎるとしか」
ラオウ:「多分、新しく挑戦したシステムのせいで、それが余計ひどくなったんだろう……と推測するけど、これはちょっと」
吉 井:「……などと、例によってシナリオ重視の2人の点数は、めちゃくちゃ辛いです」
高 任:「つーか、エロの魔力を否定するつもりはないけど、ギャルゲーというジャンルにおいて、それは反対の作用を持つと思う」
ラオウ:「いや、反対の作用も何も……露出イベントはもちろん、シナリオ全般に関して説得力がないせいだと思う。高任さんの意見はちょっと極端にしても、違うところで苦労すべきってのは賛成」
吉 井:「梨穂子はかわいいなあ(笑)」
高 任:「吉井さん、結局それで通すんですか(笑)」
吉 井:「いや、シナリオがおかしいとか、そのあたりに関しては間違ってないと思うけど…それでも、やっぱり梨穂子はかわいいよ、うん(笑)」
高 任:「吉井さんがいいなら、それでいいです」
吉 井:「あ、忘れてた」
ラオウ:「何がです?」
吉 井:「眼鏡娘いねえっ!?」
高 任:「脇役で1人ですからね…ひどいもんですよ、最近のゲームは」
ラオウ:「いや、しみじみと言われても…」
 
 
お買い得度…… 5
 音 楽 …… 8
システム …… 9(問題は残るけど、ある意味ユーザーフレンドリー)
眼鏡天国度…… 0(そう、ここは東京砂漠)
絶対値評価…… 1
 
 
 まあ、シナリオとか設定とか、そういうの求めない人なら多分買い。
 そういや、初回版を購入すると特典でもらえるドラマCDがあって、まあ主人公とヒロインが始めて過ごすバレンタインの……すっかり忘れてたので今になって聞いてたり。(笑)
 正直なところ……『アマガミ』だけでしか味わえないウリの部分という意味では、皆無なんじゃないかと。
 いや、絵が好きとかそういうのは抜きにして。
 そういう意味では……3年前の『キミキス』の対談時に言ったことは、間違ってなかったんだなあ、などとしみじみと考えているところです。

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