……もう半年以上もずっとこの日を待ってました。(笑)
 と、いうわけで今更くどくどと説明するのもなんですが、今から約1年半前にデビュー作『ファーストライブ』をひっさげて唐突に『乙女ゲームブランド』を確立したアメデオの第2作、『シエスタ』!
 ゲームの出来に関わらず(笑)我々瀕死連合で特集を組もうと事前に吉井氏と話し合っていたのですが……
 さあ、運命の4月12日(金)……高任の明日はどっちだったのか?
 
 徹夜明けの高任の網膜にまず焼き付いたのは、パッケージのど真ん中にあったこの言葉
 
 
 誰もが一度、シンデレラになる夜……
 
 
『つかみオッケー!ディ・モールトッ!』
 などと某女性向けゲーム御用達ショップでパッケージをしげしげと眺めて口元に笑みを浮かべながら呟いてしまう高任……店員さんはおろか、周囲の客の視線がチクチクとそり残した髭のように身体のあちこちに刺さりますが、それもまたよし。
 購入して、そのまま近くのゲーム屋を覗いてなんか見たりしてみるとわざわざ女性向けゲームフロアに行かなくてもたくさん売られてました。(笑)
 特典でもらったポスター等を抱えたままダッシュで自宅へ。
 ゲームを始めたらそれ以外のことができなくなるので、まずはやらなきゃいけないことを先に片づけることに。
 何というか、餌を目の前にして飼い主にお預けくらっている飼い犬の心境に近いものを感じながら数時間かけて用事を終わらせました。
 そして、にこにこしながら包みを破ってゲームを取り出してまずは観察……と、ここで高任は初めてパッケージの裏側を目にしました。
 
 
 デビュー作『ファーストライブ』から一年半…
 女の子のための『乙女ゲー』ブランド、アメデオから第二弾『シエスタ』が発売されることになりました。
 全年齢対象・女性向けはそのままに、シナリオもグラフィックも『ファーストライブ』の約2倍……
 
 平凡な学園生活を送る主人公は、ある日を境に突然居眠りしてしまう不思議なクセができてしまいます。
 そして、居眠り中に見る夢の中では花売り娘になったり、お姫様になってお見合いしたりと、不思議な体験ばかりを繰り返します。
 しかもその夢の世界に出てくる彼は、どこかで見たことある男の子ばかり…。
 果たして2人を待ち受けるものは?
 2つの世界の向こうに待つ、主人公達の恋模様とは…?(パッケージより抜粋)
 
 
 ……高任の経験からすると、表面はともかく、この裏面のパッケージからはクソゲーとまでは言いませんがイヤな香が漂っています。(笑)
 ストーリーの概要もやばいと言えばやばいのですが(笑)、『シナリオもグラフィックも前作の約2倍』というキャッチフレーズに高任の視線は釘付け。何故かというと、恋愛モノにおいてストーリーの長さと密度は反比例の関係になりがちという格言があるからです……後は前夜祭対談で述べたとおり。
 高任の個人的主観ですが、前作のシナリオおよびイベント数の密度はユーザーの心に隙を与えないという点で秀逸でした。
 ストーリーを2倍と言うことは、イベント数を3倍ぐらいにしないとあの密度は維持できない様な気がするのだが……などと開封もせずにしばらく頭を掻きむしっていたのですが悩んでいても仕方ないのでとりあえず開封、即インストール。
 そして、シンデレラになるために(笑)ゲームスタート。
 基本的に高任はこういうゲームの一回目は気の向くままにプレイするんですが、全てのキャラが登場したプロローグの時点でちょっと冷や汗。
 この時点での内容および推測される構成はこんな感じ。
 
 主人公鈴原理緒はある朝、大好きだったお祖母ちゃんと2人で過ごした頃の夢を見ます。お祖母ちゃんにとっての運命の人……いつか、自分にも運命の人が現れるのかな?そんな幼い疑問をぶつけてくる理緒にお祖母ちゃんは暖かい笑みを浮かべて理緒の頭をそっと撫でてくれました。
『いつか大きくなったらね…』
『ほんとう?だったら約束だよ、理緒が大きくなったら運命の人をちゃんと教えてね!』
 嬉しそうにぎゅっとお祖母ちゃんを抱きしめる理緒……その視線の先にはお婆さんの左手の指に光る白い石の指輪があったのでした。
 で、そんな夢を見てから理緒は目を覚ますのですが、気がつくと自分がお祖母さんの形見である指輪をぎゅっと握りしめていることに気がつきました。
 お前もこの指輪を使う時期が来たんだよ……とお祖母ちゃんが優しく語りかけてきた様な気がして、理緒はそっとその指輪をはめてみるのでした。
 で、この指輪をはめてからというもの、以前からの幼なじみ、しばらく疎遠になっていた幼なじみ、家族は隠しているけれども血のつながっていないはずのお兄さん、アラブの石油王の息子(ハーフ)で浮き名を流しまくってる美貌のプレイボーイ、知的でクールなそして不思議な力を持っているらしい学校の先輩の5人と関わるたびに、理緒は居眠りをしてしまい、その間に不思議な夢を見るのです。
 しかもその夢を見ているのは理緒だけではなく……(以下略)
 あ、ちなみに前作のヒロイン、しおんは主人公の友人として登場します。(笑)時間系列としては前作の1ヶ月前ってとこですが。
 
 ……まあ早い話攻略したいキャラクターの夢を見続けることでフラグが立っていくんだろうという推測はすぐに立ったのですが、まずは気ままにプレイしてる最中なので攻略云々は無視してプレイ。
 それにしても現実世界と夢の世界でのイベント展開がぶつぶつにきれているせいで、続きが気になると言う前に流れが悪く感じてしまいます。
 まあ、確かに前作のように最初から最後まで一気に押し流すゲームを続けるというのも考え物だし、これはこれでなんとなくこれからの展開に期待させる雰囲気は……ある、と思いたい。(笑)
 そしてフラグの立たないまま9月3日から始まったゲームは9月18日で終了。
 えーと、シナリオが前作の2倍って事は……フラグが立てば多分夢の世界に2人でジャンプしてどうにかしてしまうという展開でしょう。
 ……すると何か?
 シナリオが2倍って事は、現実世界における展開と夢の世界(異世界?)での展開の同時進行という意味で2倍なのか?
 この時点でイヤな予感が2倍に。
 ただ、このゲームのキャッチフレーズが『誰もが一度、シンデレラになる夜…』ですので、おそらくは最終日である9月18日に指輪の力を借りて異世界へと旅立ち、かなり濃密なイベントなどが展開されると予想されます。(笑)
 つまり、イベント内容が『ファーストライブ』並みの破壊力だったとしたら、あのイベントが僅か一日でぎゅっと……やばい、そんなコトされたら高任は呪われた赤い靴はいて死ぬまで踊ってしまいそうです。(笑)
 などと、不安と期待をないまぜにしたまま2回目プレイ……もちろん、これからは攻略優先です。
 で、一回目プレイでお手軽そうに思えたのが幼なじみである小早川一平……主人公は全く気がついていないのですが、この幼なじみかなりのお坊ちゃんであることは既に判明。
 しかも、わざわざ主人公に再会するために親の反対を振り切ってこの高校を受験した様子……これはかなりの高密度のイベントが期待されます!
 30分後……
「ぐああっ、どこでミスったのか全然分からん!」
 毎晩一平の夢を見続けたのですが、夢の内容がジャンプしてしまっていたのです。つまりこれは、フラグがきちんと立てば授業中に夢を見るというイベントが起こる可能性を示唆しているわけですからこのプレイは確実に失敗しています。
 事実、そのままわびしくキャンプファイヤーを終えるバッドエンドに行き着きました。
 可能な限り一平に会いに行き続けたのですが、やはり選択肢を一度ミスるとフラグが消滅してしまうシビアさは健在のようです。(笑)
 じゃあ、どこで失敗したかすぐにわかるのでは?と言われそうですが、一日の終わりに主人公が見る夢の内容ってフラグが潰れると好感度の上下かランダムで出てくるような感じなのです。
 つまり、既にフラグは消滅してるんだけどお目当てのキャラの夢を見てしまう……なんつー厄介な現象があるわけで。(笑)
 さらに言えば、オープニングにおける各キャラとの出会いの選択肢がまた難解です。
 例えば、草薙先輩とのファーストコンタクトでは、『草薙先輩の姿を目で追ってしまった』『草薙先輩の姿が印象に残ってしまった』の2択。
 
 ……ど、どっちが正解ですか?(多分目で追うが正解と思うけど)
 
 その点、一平の選択は何となく予想がつきやすいのが救いです。
 基本的に好きな女の子をからかうキャラクターなので、それに対するお約束は主人公がムキになればいいはず……多分。
 などと考えながらやり直してみると、いきなり最初の週末で見たことのないイベントが……ま、まさかこんな部分からフラグが消滅していたとはな。
 どうやら前作と同じく、『週末にデートができなければフラグが潰れている』という第一関門が存在していることが判明。
 これで、他のキャラを攻略するのも目安ができたので安心しました。
 で、一度フラグを立ててしまえば、夢の中で次の日はどこに行けばいいのか親切に教えてくれる(例・噴水という文字が赤く表示される等)ので、さくさくと現実世界と夢の世界でお話が進行していきます。
 ちなみに夢の世界では、一平は他国軍の新兵ジャックで、主人公は兵隊嫌いの花売り娘パティ。
 ちなみに現実世界では、主人公は一平と一緒に泳ぎに行って溺れたところを人工呼吸で一命を取り留めるとか、サッカーの試合に負けて悔し涙を流す一平と背中合わせに座って『格好良かったよ…』と慰めるとか、別荘に招かれタキシードでびしっと決めた一平と夜のテラスで語り合うとかで既に心はシンデレラです。(笑)
 そしてとどめとばかりに林間学校の出し物である劇の中で、2人は王子様とシンデレラを演じ、舞台の上で実際にキスシーンを演じてみたりとやりたい放題です。
 もちろん、ここにいたって高任のボルテージも好調。
 夢と現実世界の切り替えが頻繁なのでシナリオが間のびしているせいもあるのでしょう。どうもテンションが思ったようにあがってこないことを心配してたのですが、この様子だと運命の最終日においてかなりの濃厚なイベントラッシュが見られそうです。
 ただ一言だけ言わせて貰うと、一緒に泳ぎに行くときに『セパレート』と『ワンピース』のどちらの水着を持っていくかでフラグが消滅するのは勘弁して欲しいですが。(笑)
 ついでに言うと、一平の別荘に招かれたときに『手作りクッキー』と『手作りフェルト人形(一平)』のどちらをプレゼントするかの2択でフラグが消滅したりするのも勘弁して欲しいです。
 ま、それはともかくキャンプファイヤーが終了してから予想通りに2人揃って夢の世界へと旅立ち、夢の世界の本編が始まります。(笑)
 
 ……何のためによ?(笑)
 
 どうもゲームの根幹を為しているはずの夢の世界の存在価値が不可解すぎるんですが……などと思っていたら、これは全て主人公のお祖母ちゃんの仕業でした。
 主人公の住む世界での事象は、この夢の世界だけではなくいろんな世界の事象と絡みあっており、主人公が運命の人である一平と結ばれるためにはこの世界に置いてそのもつれた糸を解きほぐす必要があるのだとか……。
 どうでもいいですが、お祖母ちゃん、あなた一体何者ですか?(笑)
 まあ、そういう些細なことは脇においといてゲームを進めます……そして20分後。
「え、これでおしまい?」
 等とあっけにとられた高任の声が部屋の中に響くのでした。(笑)
 ついでに、あからさまに間違いばかりの選択をしてバッドエンドを確認……何故だろう、バッドエンドの方に心がひかれるような気がします。(笑)
 
 注:実は一平にはハッピーエンドが二つあり、この時点ではそれに気がついていませんでした。
 
 さて、こうなったらやることは1つです。(笑)
 高任は電話の受話器をとってある番号をプッシュするのでした。
『想像はつくけど何の用かね?(笑)』
「やばいっす!今1人攻略したところなんですけど、このゲーム、シナリオに背骨が通ってないからイベントが孤立してて薄いです!」
『……あのよ、これから購入しなきゃいけない人間にそういうこと話して楽しいか?』
「でもねでもね、今1人攻略したところだから僕にはまだ4人残っているんだよ!」
 ガチャッ!
 等とまくし立てているとラオウさんに電話を切られてしまいました。(笑)
 仕方ないので次は吉井さんに電話……(以下略)
 
 傷心を引きずりながら、高任は休む間もなく二人目の草薙先輩攻略に着手……そして再びフラグ立てに苦戦しながらも数時間後。
「うがああっ!やっぱりちょっと俺の求めてたゲームと違うっ!」
 イベントの1つ1つはなかなか趣があって恥ずかしいのですが、そのイベントのベクトルの向きが少しずつずれている様に思えてならないのです。
 シナリオの構成として、現実世界(シンデレラストーリー)と夢の世界(泣かせる話系統)で別れているのが問題じゃないかと思うんですが、個人的に夢の世界におけるバッドエンドはなかなか泣けます。
 つまり、一言で言うと……
 作品が惜しい、という感覚。
 何というか、少しずつ歯車がかみ合ってない様な感じで、これなら現実世界なら現実世界、夢の世界なら夢の世界という風にすっきりとシナリオを一本化した方がよさげな気がします。
 しかも、このキャラもバッドエンドが格好良くて……いや、『君は鈍感だと言われないか?』とか囁かれながら白いカーテンにくるまれてキスしたりするくだりはかなり恥ずかしいのですが、そのイベントが妙に浮いちゃっているというか……んー、んー、もどかしい!
 よし、次はもう1人の幼なじみ奥田真之介、通称しんちゃんの攻略だ……って、どこかで聞いたような名前のような……と、自分の昔のアドレス帳をめくって疑問が氷塊しました。(笑)
 そしてこれまた数時間後……
「……違う、単独のイベントはいい線いってるけどちょっと違う…」
 こめかみのあたりを押さえながら高任は再びディスプレイに向かいます。
 残った2人のキャラと言えば、おそらくは血のつながっていない義理の兄と、アラブの石油王の息子(ハーフ)で美貌、財力、運動能力の三拍子揃ったプレイボーイ……彼らなら、彼らならきっとやってくれるに違いない。(笑)
 何気なく窓の外を見ると夜明けが近づいています……それはこれからの高任の前途を示しているようで……
「よし、お兄さんキャラは最後にしよう!」
 そして約数時間後…
 ……こ、このキャラすんごくおいしいんですが、夢の世界がこの上なく邪魔。
 ただ、現実世界におけるアラン(キャラの名前)最高です。問題は最終日に向けて盛り上がったテンションを夢の世界においておとしてしまうんですね……少なくとも高任にとって。
 もどかしい思いを胸に、窓を開けて爽やかな春の空気を吸い込んでみたりします。
 太陽は地を離れ、阪神タイガースは快進撃を続けています。
 しかし、しかし、今の精神状況で最後のキャラに挑んでしまって良いモノか?これで、最後のキャラも惜しい出来だったりしたら……
「……とりあえず、寝よう」
 考えてみれば夜勤を含めて40時間ほど寝てません。
 はあ、体調が万全でゲームの出来が最高なら3日ぐらい眠らなくても平気なんですが、寝ようなどと考える時点でやはり前作に劣る出来ということが決定。
 
 2時間ほど仮眠をとり、最後のキャラであり、またそのお約束な設定からメインディッシュに残しておいた主人公のお兄さん、鈴原涼の攻略を開始。
「きたきたきたあっ!最後の最後でやっときたぜええっ!」
 夢の世界での主人公が眼鏡娘でお下げ髪で錬金術師の卵だったりすることではなくて、(笑)間違いなく開発者の魂が感じられます。
 もう、読めばわかるのですがテキストおよびイベントの展開がノリノリです。
 主人公の記憶に微かに残る2人のリョウ……あり得ない血液型の秘密……出生、および戸籍の謎……優しすぎる兄の態度……
 どうやら高任は勘違いしていたようです。
 現実世界と夢世界のシナリオの同時進行の構成云々ではなくて、これまでの4人のキャラは全てを巻き込む破壊力および勢いに欠けていただけということに!
 主人公の熱き想いが兄妹の絆という鎖さえも溶かし、また涼の頑なな心さえも溶かし始めた瞬間……涼は生死を左右するような事故に……
 これです!これでこそアメデオ!
 なんかフラストレーションたまってたせいでしょうか、ここに来て一気に爆発したような気がしますが、もう高任の心はがっしりと鷲掴みされてます。
 この状態だと、シナリオの矛盾点なんかに気がついてもどうでもよくなるのでますます問題なし。
 そして、あきらかにこのキャラクターを開発者がプッシュしている動かぬ証拠が……
 エンディング間際、夢の世界においてスージー(主人公)を守るために戦い続けてぼろぼろになったサーシャ(涼)の心がふれあうシーンにおいて、他のキャラには存在しなかった挿入歌が!(笑)
 個人的に、涙ぐむ眼鏡娘のスージーのグラフィックに心が奪われかけた気がしないでもありませんが、とことんまでノリノリです。
 そのパワーを他のキャラに少し分けてあげればいいのになどと、ゲーム終了後に考えたりもしました。(笑)
 ちなみに、このキャラもハッピーエンドが2種類……一平もそうでしたが、どうでもよさそうな選択のミスで一方のエンドに飛ばされるってのはすごくわかりにくかったんですけど。(笑)
 エンディングは少し物足りなかったのですが、まあこれだけやってくれたら高任は文句いいません。
 そして、解説書を見る限りではサブキャラによるおまけシナリオがあることは間違いなさそうです……多分、5人のキャラの全てのイベントをクリアすると発動するような感じなので、これまた数時間かけて全てのキャラのイベントをコンプリート。
 そしてお約束通りゲームを最初から始めてみると、9月10日(?)の移動場所選択肢に『おまけ』の選択が。
 サイドストーリーなので、一旦それを選んでしまうと選択肢もなくお話がさくさく進んでいきます。
 基本的に泣かせるお話で、夢を見て中断したりしないせいもあってかテンポがよくていい話でした……まあ、高任がこの手のお話に弱いせいもあるんですが。
 
 さて、最後の1人とおまけのサイドストーリーにだいぶん救われましたが、全体としてはどうでしょうか?
 ゲームをプレイしている最中は上手く言葉にならなくてもどかしかったのですが、一旦ゲームを終えて考えてみると何となく見えてきました。ある程度キャラがかぶってしまったせいか、シナリオ展開としてあえて前作に背を向けすぎたのではないかと。
 例えば、幼なじみキャラなら絶対に出てくるお約束の昔の想い出がでてこなかったり、秘密の力を持つキャラなら、その力によって心を傷つけられた過去のイベントとか……何というか、前作と違ってキャラの掘り下げイベントおよび、主人公自身の心情描写というモノが極端に少ないのです。
 要するにイベントがパワー不足と言うよりも、ある意味で全体的にキャラが立ってない様な気がします。
 王子様は決してマネキンじゃないはずです。
 キャラクターの内面……何にこだわっているのか、また何に傷ついているのか、何故主人公に惹かれているのか……それらはエンディングでさらっと語ることではなく、あくまでシナリオの血肉としてがしがし活用するべきではなかったかと思います。
 そうすることで主人公がそのキャラに心惹かれていく過程を描くこともできますし、各キャラクターが主人公に惹かれていく過程……というか、このゲームでは各キャラクターが何故主人公に心惹かれていくのかがあやふやな気がします。
 同じ夢を見て仲間意識が芽生えたから?
 それだけでは弱い。
 主人公にとっては相手が、相手にとっては主人公がそれぞれ特別な相手であるという事を示唆するイベントが根本的に欠けていた…高任はそう思います。
 運命の夜、2人が辿りついた夢の世界で紡がれるストーリー……その場面においては2人の間の絆を確認というか追認するのが好ましいはずですし、と言うことはそこに至るまでに2人の交響曲が最終楽章に突入してなければいけないのでは?
 夢の世界と現実世界のシナリオの同時進行という構成が足を引っ張ってしまったのは確かで、ユーザーの心をつかみかけては放し、放してはまた新たなイベントで心をつかもうとする……そんな繰り返しをしているうちにエンディングに到達してしまったような印象を受けたキャラが多かったのは事実です。
 しかし、言い切ってしまえばこれもまたキャラクターの内面を深く掘り下げきれなかった事による弊害だと高任は判断します。
 
 全体的に悪い出来ではありませんが、少し期待を裏切られたかなという想いが先に立ちます。
 ただ、お兄さんキャラのシナリオはノリノリでしたし……この後の第3作の出来でアメデオさんはその真価を問われるのではないかと。
 いい足りない部分は、対談で。(笑)
 
 
文責・高任斎

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