−逃がした魚は大きい−
 全くその通りだと思う。
 野球部の練習の合間に、サッカー部の方を見て沙希はため息をついた。
 沙希の視線の先には2年生ながらチームの中心として活躍する高見公人の姿があった。去年の春、今からちょうど1年ほど前彼は沙希の誘いを蹴ってサッカー部に入部してしまったのだ。入部してすぐにめきめきと頭角を現し始め、今では高校サッカー界で脚光を浴びるプレイヤーの1人として注目されている。
 −彼がこっちに入ってたら・・・−
 覇気のないかけ声。目的意識のない練習。誰もが弱小チームとして太鼓判を押してくれるであろう練習風景に沙希は再びため息をついた。
 沙希は目をつぶって、野球部のユニホームに袖を通した彼の姿を想像した。
 −次々と繰り出される分身魔球、殺人スライディング、大噴火打法そして人間ナイヤガラ・・・・−
 沙希は拳を握りしめ、彼ならば可能であったはずの数々の技を思い浮かべた。
 他はともかく人間ナイアガラは一人では無理だろうという作者のつっこみをものともせず、グランドの片隅でマニアな盛り上がりをみせる沙希の目の前でとうとう50メートルコンセントレーションを公人は会得した。
 −逃した魚は大きい−
 沙希は三度ため息をついた。
 −いけないいけない、マネージャがこんなことじゃ。−
 沙希は自分の頭をこつんと叩き、球拾いの手伝いに向かった。
 
 沙希は何かに耐えるように目を閉じ歯を食いしばっている。
「夏休みを前にして少々浮かれるのは仕方ないと思うの・・。でもね」
 やがて、彼女の中の何かのスイッチが入ってしまったのか激しく目の前の人物の肩を前後に揺さぶりながら自分の思いをまくし立て始めた。
「夏の主役たる高校球児が早々と予選敗退して、『夏が暇になったよー』とか『どこに遊びに行こうか?』などと新チームの現役部員が坊主頭ではしゃいでるのって絶対間違ってるわ!本当なら先輩の無念を晴らすべく猛練習に明け暮れようと決意するのが当然じゃない?ねえ、高見君。私の言うことなんか間違ってる?」
 揺さぶられ続ける公人(サッカー部)は何も言わない・・・いや言えない。
 脳味噌が程良くシェイクされ、そろそろ耳から醤油が出るんじゃないかなどと考え始めた頃、沙希は公人を解放した。
 公人はくわんくわんする頭を押さえながらやっとの思いで沙希に答える。
「うー、個人的には正しいと思うけど・・その思想に賛同する人間は今現在かなり少ないと思うよ。・・・虹野さんには悪いけどスポ根はもうはやらないんだ。」
「はやるはやらないの問題じゃないの!いいものはいつの時代でも輝く物なのよ!」
 もう日が落ちて真っ暗なグランドの片隅で力んで立ち上がる沙希。
 一人で新たなる必殺シュート名付けて『アクセルシュート』の練習をしていたところを沙希に見つかってしまったのが公人の運の尽きであった。
「じゃあ高見君はどうして絶滅寸前の魔球とか必殺技にこだわるのよ?はやらない上に苦しい特訓までこなすのはなぜなの?」
 公人は夜空のひときわ明るく輝く星に目をやる。
「理屈じゃないんだ。・・そうだな強いて言えば血が騒ぐんだよ。」
「それよ!」
 びしっと公人を指さす沙希。
 どうやらこの2人、出会うべくして出会ったようである。
 今のところ2人の道はすれ違っているようだが・・・・
 
「サッカー部はいいわね。『1人の新入生がチームを変えた!』みたいな王道を歩んでるんだから・・・。」
 帰り道、沙希はぽつりと呟く。
 それに反応して公人が切り返す。
「1人の選手がチームを変えるってことはすごい傲慢だし、そのチームの未熟さの証明だから現実問題としてどうかと思うけど・・。」
「それでも、ずっと変わらないよりいいと思う。」
 しばらく、無言でてくてくと歩く2人。
「そうだ、虹野さん。こういうのはどうだろう?『マネージャーの涙がチームを変えた』の黄金パターン。」
 沙希は静かに首を振る。
「それは最後の武器よ。」
 そんな会話を続ける2人を黒猫が避けていった。
 
 ああっという間に冬。
 国立競技場。公人の周りでチームメイトが喜んでいる。観客席で学校のみんなが祝福するように大歓声をあげている。
 そんな中で、公人は独り背中に孤独を張り付かせ競技場から控え室への通路を歩き出した。
 −どうしてこんなに簡単に優勝できてしまうんだ!−
 やるせない思いをのせて公人は通路の壁に右拳を叩きつける。
 −しかも既に俺にはライバルがいない。−
 50メートルコンセントレーションをはじめ、数々の必殺技を持つ公人と対等に渡り合えるのはもはや宇宙からの侵略者以外にはないのだが、公人は例えようのない喪失感をまぎらわせようとただ壁を殴り続けた。
 そんな公人を柱の影から心配そうに見つめる沙希の姿があった。
 
 公人にとって惰性の日々が続いた。練習と特訓こそ欠かさないものの、明らかに精彩を欠いている。そんなどん底の状態でも公人の相手になれる者がいないことがますます公人を憂鬱にさせた。
 −なんのために?−
 沙希の励ましも公人の心には響かないようだった。
 そんなある日の昼休み。
 −ピンポンパンポーン−
「野球部の代表者は今すぐ校長室まで来てください。」
 −ピンポンパンポーン−
 時が動こうとしていた。
 
 放課後。
「あ、困ります今練習中なんです。」
 誰かを制止しようとするサッカー部のマネージャーの声に公人は振り向いた。
 こちらに真っ直ぐ歩いてくる虹野沙希はいつもより大きく見えた。
「高見君。かわいそうな人ねあなたって。」
 公人の前で立ち止まり、開口一番沙希は言い放った。
「2年生にして全国制覇。あなたが情熱を費やして会得した力、技、それを使用するに値しない敵。もはやサッカー界ではあなたの乾きを癒すことは不可能ね。」
 公人の身体がぴくりと反応する。
「そんなサッカーにいつまでしがみついているつもりなの?」
 たたみかけるように沙希の言葉は続く。
「高見君。我が野球部は、この夏深紅の大優勝旗を持ち帰らない限り廃部を余儀なくされるわ。」
 −廃部?−
 濁ったような公人の瞳に小さな光が灯った。
「あなたはわかっているはずよ。トップは守るものではなく奪うものであるということを!」
 公人の瞳のあちこちに小さな光が出現しては重なり、力強い輝きへと変化していく。
 サッカー部員が叫んだ。
「いかん!キャプテンの耳を塞ぐんだ!キャプテンは、あのてのキーワードに弱い。」 部員達によって取り押さえられる公人。
 その公人にすっと差し伸べられる沙希の指先。
「いらっしゃい、あなたにとっての新天地へ。野球部ならあなたの乾きが癒されると私は信じてるわ。・・・そして野球部はあなたを必要としています。」
 公人を押さえ込んでいる部員の1人が叫ぶ。
「馬鹿なことを言わないでください!誰が好きこのんでそんな無謀な事を・・」
 −無謀?−
 慌てて自分の口を押さえる部員。
 押さえ込もうとする部員をはねとばして公人は立ち上がった。
「キャプテン!まさか?」
 公人はユニホームを脱ぎ呆然としているマネージャーに手渡すと部員達を振り返った。
「世話になったな。」
 それだけを呟いた。
 沙希の後について歩き出す公人。その背中に微かに『2』の数字が浮かび上がっていた。 ここにきて初めて2人の道は交差したのである。
 あとにはあきれ果ててものも言えない部員達だけがのこされた。
 
「たった2週間で素人の俺のほうが上手くなるたあどういうこったあ!」
 怒気もあからさまに公人は足下のバケツを蹴り上げる。
「やる気あんのかあいつら!」
 罪もないバケツが再び宙を舞う。
 −野球ってのは良くも悪くも9人でやるもんなんだよ。−
 公人は認めたくはない事実を認めざるをえなくなった。
 −普通の練習や手段では勝てない!−
 その結論に達したとき、公人は自分の中で何かのスイッチが押される音を聞いた。
「やるしかないだろう・・・・あれを!」
「その言葉を待っていたわ!」
 公人の上方から投げかけられる言葉。
 公人がその声を追って見上げると、倉庫の屋根の上で腕組みをし公人を見下ろす沙希の姿。凛々しいジャージ姿は安くて丈夫なプー○製だ。   
 このとき2人の道は二度と離れないほどしっかりと赤い糸によって結びつけられてしまったのかもしれない。
 次の日から2人は学校から姿を消した。
 
 予選開幕まで一週間。
 当然のように2人は帰ってきた。
 グランドへたどり着くなり崩れ落ちる2人の身体。慌てて2人に駆け寄る部員達を制する公人と沙希。
「身勝手なことをして悪かった・・。だがそれなりの土産は持って帰ったつもりだぜ。」 背中のズタ袋から赤黒く汚れたボールを取り出し、右足を高く跳ね上げる。
「これが俺の・・・『サンダーライジング』だ。」
 公人の左腕がしなった瞬間、グラウンドは静寂に包まれた。
 −たまらなく70年代のネーミングセンスであった。−
 いや・・・静まりかえったのは球の威力にだが。
 投じられたボールはバックネットを突き抜けて、職員室の窓ガラスを盛大にたたき壊したところで焦げ臭いにおいを放っていた。
「まあ、こんなもんよ。心配しなくても魔球以外も習得済みだ。」
 部員達の間に興奮が広がっていき、次々と公人と固い握手を交わしていく。
 野球界に嵐が近づこうとしていた−
 目と目で解り合う公人と沙希。
 そんな雰囲気をぶちこわす悲鳴。
「俺、そんな球捕れねえよ!」
 悲鳴の主はキャッチャー島村君その人であった。
 野球界から嵐が去ろうとしていた−
 
 地区予選開会式直後の第一試合。
 スタンドは各高校の選手達で程良く埋まっている。
 公人はぎりぎりまで使わない予定を変更することにした。
 サイレンの音が鳴り響く中、グランドに公人の絶叫がこだました。
「さあんだあーらいじんぐうぅ!」
 球場に衝撃が走り抜ける。 
 そのおかげか、きらめき高校のキャッチャーがやけにぶかぶかのユニホームを着て妙に小柄で、チームの中で1人だけ丸坊主じゃないことに気づいた人間は誰もいなかったそうな。
 それから約一月。公人と沙希は夜の甲子園を見上げていた。
 夜風が緊張に火照った体を程良く冷ましてくれる。
 傍らの沙希に比べ公人の表情は暗かった。
「ほう、これはこれはきらめき高校の高見君じゃないか。決勝を前に彼女とデートとは・・・うちもなめられたものだ。」
 公人は、伊集院に話しかけられたような感覚で声の方を振り返る。
 いち早くその声の主を認識した沙希は驚きの声をあげる。
「あなたは・・・明日の対戦校よろめき高校野球部主将、三条勝!」
「おや、ご存じでしたかお嬢さん?」
「野球関係者で君を知らないやつがいるとは想えないがな・・・。」
 公人のつぶやきのような台詞に、お互い様だろう?と応える三条。
 三条勝。
 よろめき高校野球部主将、現在甲子園4連覇中。この夏を制すれば高校時代負けなしの偉業を成し遂げることになる。
 簡単に言うと、『子供の頃からエースで4番』を実行している人間で、高校野球界では絶滅したと思われていたシャンプーの香りがするような高校球児といえば大体の想像はつくであろうと思われる。
 三条は華麗に右手を差し出し、公人に握手を求める。
「明日、君と僕のどちらが本物か証明されることになる。お互いの主張はグラウンドで語ろうじゃないか。」
 無言の公人の脇を通り過ぎながら耳元で三条が囁いた。
「君も宿舎に帰ったらどうだい?大事な左肘を冷やすのはよくないだろう。」
 無意識に左肘に手をやる公人を見て三条がくすりと笑った。
「それとももう手遅れかい?」
 右手を背後の公人達に振りながら去っていく三条。
 沙希が笑いながら公人に話しかける。
「あんな努力とも根性とも縁のなさそうな人に負けるわけがないわ。」
 公人は沙希の言葉に静かに首を振る。
「少なくとも彼の手は努力とは無縁というわけではなさそうだがな・・。」
 −彼は生まれついた才能だけでここまできたわけではない。甲子園には本物が幾人も存在したのは事実で、そこで常勝を誇っていたこともまた事実なのだから−
 思い起こせば予選から激戦の連続であった。
 点を与えねば負けないとばかりに公人を敬遠した清心学園は殺人スライディングの前に敗れ去った。公人の退場を狙った極道高校は殺人ノックアウト打法と塁を踏ませぬ公人の力投の前に散っていった。魔球『スクランブルエッグ』の三宅率いる吉良学園は延長15回の投手戦の末、公人の心眼打法が彼らの夢を砕いた。
 しかし、なんといっても今日準決勝の仏道高校の大念寺が投打にわたっての一番の強敵であった。『念』を込められた飛ばないボール、そして彼によって初めて『サンダーライジング』は前に飛ばされたのだから・・・。大回転打法の前に破れた大念寺は次のような含みのあるコメントを残して甲子園を去った。
「あのボールは普通の打法では打てないということに気が付くのが遅すぎた。・・・高見君と二度と戦うことができないのが残念です。」
 意味深長な大念寺の言葉を反芻しながらも、右手で押さえる公人の左肘が鼓動にあわせて熱くうずいていた。
 
 長いサイレンと共に主審の右腕が高々と掲げられた。
 マウンドに公人。バッターボックスには三条。わざわざ打順を一番に繰り上げてきたところがにくい演出である。
 三条の手には革手袋と金属バット全盛のこの時代に木製のバット。
 最早全ての謎は暴かれていると思って良いだろう。
「ならば、お互いの力の勝負ということだ!」
 乾いた打球音と共に三塁線審の帽子が浮き上がった。レフトのポール際をかすめて場外に消えていく打球。沙希の背筋を冷たい汗が流れた。
「今のはほんの警告だよ。」
 さて、解説せねばなるまい。(笑)球に強烈なスピンをかけることで空気との摩擦による静電気を蓄え、金属バットには反発を、木製バット使用者には電撃を加えるサンダーライジング。公人の腕への負荷はかなりのものがある。それに加え昨日の試合での打撃により、公人の左肘はいつ終わってもおかしくない状態であった。
「今からでも遅くはない。野球界は僕に任せておいて、サッカーの世界に帰りたまえ。」
 公人がタイムを取ってベンチへと歩いていく。それを見て三条が賢明だな、と呟くのに対して沙希が声をかけた。
「馬鹿ね・・貴方はさっきの球をホームランにしとくべきだったのよ。」
「意味が良くわからないな・・。」
 独り言のような淡々とした沙希の呟きが続く。
「彼は天才なのよ・・。」
 三条もそれに関しては認めている。半年やそこらでここまでくること自体がその証明である。ただ相手がわるかっただけだ、と。
「いいことを教えてあげるわ、彼は右利きよ。」
 沙希はポケットの革手袋を3重にしてミットを持つ左手にはめていった。
 
 屈辱に身体を震わせながら三条はベンチに座っていた。バットすら振らせてもらえなかった自分の姿を周りにさらしたことで、今まで自分の築きあげてきたものが全て失われたのだから・・。強く噛みしめられた三条の下唇に赤いものがぽつりとふくらみ足下へと落ちていった。一通りの屈辱を胸に刻み込み、三条は顔を上げた。しかしその顔はやけに楽しそうに見えた。
 
 注目の三条の第二打席。三条は微動だにせずボールと公人、そして目に映る全てを観察し続ける。最早彼の興味の対象は試合の勝ち負けから公人との個人的な勝負へと変わっているようだった。
「なるほど・・予備動作か・・。」
 三振してベンチへと振り返った三条がぽつりと呟いた言葉に沙希は冷たいものを感じた。
「やはり、彼も天才・・・ということかしら・・。」
 沙希はベンチに戻ると公人にその事を伝えた。なぜか公人もまた楽しくて仕方がないという感じで口元に笑みを浮かべる。
「そうでなくてはな・・わざわざ野球を選んだ意味がない。それに、予備動作だけでは50点というところかな・・。」
 ちなみに予備動作というのは、身体が動き出そうとする前の決まった動作のことである。鳥が羽ばたく前に地面を蹴って反動を得たりする動作などが例になる。小さい頃やられた椅子に座って額を指先で押さえられると立てなくなるというのもそれの一種で、立ち上がろうとする前に人間は軽く頭を下げる動作をする。それを封じ込まれることで動けなくなってしまうのである。
 やがて三度目の対決の時が訪れる。試合のスコアは3対0になっており、最早勝負の行方は明らかである。それにもかかわらず、うねりのような大歓声が甲子園を揺るがし始める。滅多にみられない本物同士の戦いに興奮したのだろうか、だがそれも三条が打席に立つと球場全体が静まりかえった。
『この球はバッターの動きを予測し、その予備動作を何らかの方法で封じることによってバットを振らせない。・・・その何かとはおそらく・・。』
 人間というのは不思議なもので、動きを始めるきっかけを奪われると途端に動けなくなる。例えばシュートするインパクトの瞬間を遮られたサッカーのキーパー。そのきっかけに集中すればするほどそれを奪われたとき呆然と立ちすくむことになる。野球なんかだと読みがはずれて見逃したり、逆をつかれて戻れない走者とか・・。
 球場がざわつき始める。三条がバントの構えをとったからである。
 三条は低めに投じられた公人のボールに反応する気配がない。というより動けなかったからだが・・。三条はユニホームの膝の辺りを触ってにやりと笑う。
 腕の振りに較べて遅い球。そして初速に較べて極端に遅い終速。そして常に前に行こうとする打者の動作。
「タイムお願いします。」
 ・・・ひとつだけ予備動作が前に動かない打ち方があるんだよ、高見君。・・
 三条は再びバントの構えをとった。ただし両足の位置はピッチャーに向かって平行の位置にある。
 二球目が投じられた瞬間、三条はバットを後ろにひく。並はずれたスイングスピードを持つ三条だからこそ可能な事である。時速150キロだと手を離れてからミットまで僅か0.4秒。
 三条はバットに重みを感じた瞬間勝利を確信した。しかし球を運ぶまでの重みの延長性が無かったことに気が付き、後ろを振り返ってミットの中のボールを不思議そうにみつめる。沙希は笑ってボールを見せてやった。
 同じように三球目。決着はついた・・。あくまで現時点での決着ではあるが・・。
 
 夕陽に染まる深紅の大優勝旗。誇らしげにそれをみつめる野球部員から離れて公人は寂しげな笑みをこぼす。勝利の後にはいつもむなしさだけがある。ふと人の気配に気が付いて振り返るとそこには三条の姿があった。
「久しぶりに楽しめた・・。礼を言うよ。」
「高見君、教えてくれ。一体あのボールは?」
「君ならほとんど謎解きはすんでいるんじゃないのか?それにつまるところあのボールは打撃妨害の反則にすぎない・・。」
 三条は静かに首を振った。
「だからどうした・・。」
 公人は声をあげて笑った。その言葉を持ち出されては笑うしかない。公人は説明を始めた。どのみち野球をするのも今日限りだろうから・・。
(注・・・突っ込むな。これはギャグなんだから。)
「衝撃波だよ。予備動作を封じるのは腕の衝撃波。そして、極端に終速の遅いボールをボール自身の衝撃波が追い越していく。君が打ったのはいわばボールの影だよ・・。」
 公人はゆっくりと立ち上がり、三条は小さく呟く。
「次は負けない。」
「次?」
 公人の背中にたまらない孤独が張り付いていた。
 
 結局沙希は自分を利用しただけだ。公人はそう思う。それをわかっていて敢えてのせられたのだから文句を言うつもりは無い。
 公人は夜空を見上げた。満天の星である。
「・・・次はどの星にかけようか・・。」
 
                完
 
 

 ふう。(笑)なんかファンの人には殺されそうな話です。ちょっと書いてみたかっただけなんですよ。・・・この手の話って文章にするとひどい有様になりますね。だからこの光景は!!とアニメや漫画の各シーンが即座に思い浮かばない人には苦痛でしかないと思います。
 でもこの話の中のパロディが全部わかる人。・・・あなたは病気です。(笑)アストロ球団やコスモスストライカーあたりは誰でもわかるとして、衝撃波の魔球(結局名前をつけなかったけど)とかスクランブルエッグがわかる、もしくは覚えているのはちょっと問題でしょう。アクセルシュートも厳しいものがある。シチュエーションも逆境ナインから巨人の星までバリエーションに富んで・・・。
 でも、熱血・スポ根・必殺技・魔球っていいですよね。最近は絶滅したかもしれませんが・・。
 やはり、ドリル・波動砲・大雪山おろしが70年代とすると(独断と偏見)、ジェットストリームアタック・ハイパー化・北斗神拳エトセトラエトセトラあたりが80年代。さしずめATフィールド・・・・ちょっと出てこない(笑)あたりが90年代の魂を揺さぶるキーワードですかね・・。個人的には30年パンチを加えたいところでありますが・・。
 しかし、わたしゃこの手のゲーム初めてやるときは自分の高校生活に沿ってプレイします。だもんで来る日も来る日も野球の練習に明け暮れてたら赤点とって補習を受けて辞めさせられるという泣くに泣けない結果になったのを覚えてます。
 ・・・仕方ない、もう一本虹野さんの話を書くか。これではあまりにかわいそうだし。一応全員幸せにしとこうかなと思ってるので・・。
 ところでアクセルシュートはマガジンで連載してるサッカー漫画じゃない方なので、といっても他にもいくつかあるけど・・。自分の一番好きなアクセルシュートはチャンピオンでやってたサッカー漫画のやつです。(笑) 

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