「如月さん、誕生日おめでとう。」
 自分の目の前にそっと差し出された物体と状況を把握するのに少し時間がかかったのか、未緒はどこかぼんやりとした表情でその包みを受け取った。
「え?」
 受け取ってからやっと自分が誰からプレゼントをもらったかを理解して、その白い頬が朱に染まる。
「あ、ありがとうございます。こんなのもらえるとは思ってなかったから・・・嬉しいです。」
 そう言いながら、未緒はそっと指先で目尻の涙を拭った。そんな姿を見せられたからか、少年もまた照れたように彼女から視線を逸らしながら頭をかいていた。
 
 家に帰ってから、未緒はゆっくりとそのプレゼントの包み紙をはがしていった。
「わ、これってこの前私が欲しいって言った本だ。・・・覚えててくれたんだ。」
 未緒は少し子供じみた仕草でその本をぎゅっと胸に抱え込んだ。
 その本を抱えたままベッドの上に寝ころんで幸せそうに微笑む。前から読みたかった本だったはずだが、もったいなくてすぐに読めないのだろう。
 しかし自分の心の中の感激をできるだけ持続させようとしていた試みも、やがて未緒の知的好奇心の前に敗北を喫した。
 ゆっくりと繰られる表紙。しばらくすると、未緒の表情は既に本の世界に没頭していることを示していた。
 
 とんとんとん・・・
 何度呼びかけても返事のない娘の様子を心配して、母はそっと部屋の中をのぞき込んだ。
「あらあら、この子ったら・・・」
 ベッドの上で幸せそうに眠りについている未緒を見て母は微笑む。その手にしっかりと抱かれた本が少し気になったが、結局布団をかけてそのまま寝かせてやることに決めたらしい。
 未緒の18度目の誕生日はこうして過ぎていった。
 
 
                    完
 
 ま、お誕生日ってことで。
 如月さん以外のキャラで書くつもりはほとんどありませんけどね。(笑)
 でも、吉井さん。言われたとおりに書いても更新されるのはいつになるんですか?

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