「お、お姉ちゃん……」
「しっしっ!ほら、あっち行けったら!」
 怯えるロリィの気持ちを悟ったのか、執拗に吠え続ける野犬はレズリーの声ぐらいでは逃げようとしなかった。レズリーは仕方なく野犬に向かって足を伸ばしたのだが、それが野犬の攻撃本能を刺激したのだろう、今にも飛びかかってきそうな体勢をとる。
「ロリィッ!」
 レズリーは本能にも似た恐怖心から、慌てて自分にしがみついている小さな身体を背後へとかくまった。
「ガウッ!」
 野犬が大きく跳躍した瞬間、レズリーはロリィの身体に覆い被さるようにして目を閉じた。
「……?」
 覚悟した痛みが襲ってこないことと、何やら苦しげにもがく犬の鳴き声を耳にして、レズリーはおそるおそる目を開ける。
 陽に焼けた褐色の肌に黒い髪。
 一目で外国人と知れる若い男が、犬の首根っこを押さえつけていた。
「あんまり治安が良くないようだな……」
 落ち着いた声でそう呟き、野犬をなだめるように耳の後ろを軽く撫でている。
「あ…?」
「いきなり背中を向けて逃げなかったのは感心だが、攻撃する意志は見せない方が良かったな……」
 男がにっと笑うと白い歯がこぼれる。
「ほらっ、行け…」
 男の手に軽く尻を叩かれ、野犬は脅えたようにかけていった。
 それを見届け、男はすっと立ち上がった。
「え…?」
 レズリーは、男の身長がかなり高いことと、その顔立ちが未だ少年めいた何かを残していることに驚いた。
 これから夏に向けて半鎖国政策は順々に解除されていくらしいが、今のドルファンでは、外国人というとほとんどが傭兵志願に限られている。
「……アンタ、傭兵なのか?」
「ん、……ああ」
「あたしは、戦争する人間は嫌いだよ……でも、助けてくれてありがと」
 地面に視線を落としながらレズリーが呟いた瞬間、ロリィが身体の脇を駆け抜けていく。
「王子様だっ!ロリィの王子様!」
 嬉しそうに男の身体にしがみつくロリィを見て、レズリーはこめかみのあたりにじんわりとした痛みを感じた。
 男もまた、どこか毒気を抜かれたような表情でレズリーを窺うように見つめている。
「……お嬢さん?」
「レズリー、あたしはレズリー・ロピカーナ。その子はロリィ・コールウェル。」
「俺は丈。海燕丈だ……」
 レズリーは何か言いたげな海燕を手で制し、蜂蜜色をした髪の毛を軽くかき回して呟いた。
「その子の事は気にしないでくれ……病気なんだ」
「ロリィ、子供でも病気でもないもんっ!」
 ロリィはぷくっと頬を膨らませる。
「ほら、ロリィ……変な奴と思われないうちに離れろ……」
「やーっ!この人、ロリィの王子様。」
 海燕の身体にしがみついたロリィを引き剥がし、レズリーは申し訳なさそうに頭を下げた。
「すまないな……しばらく面倒なことになると思うけど」
「わかった。それまでに白い馬を手に入れておこう」
「ははっ、そんなこと言ってるとロリィは本気にするよ…」
「ロリィ本気だもん!」
 ガランガラン……
 学校の始まりを告げる合図が響いてくると、いきなりロリィは背筋を伸ばした。以前遅刻したとき、鞭でお尻を叩かれた痛みでも思い出したのだろう。
「お、お姉ちゃん……」
「ああ、そうだな。じゃあ、海燕……ありがと」
 男に向かって軽く右手を挙げると、レズリーはロリィとともに学校の校門を駆け抜けていった。
 
「レズリー……」
「ククッ…なんだよ、海燕?」
 レズリーは困った顔を向ける海燕に対して笑いを隠そうともしなかった。
「助けてくれ…」
「いや、そうなったロリィはもう誰にも止められないって」
「お兄ちゃん、今度はあっちに行こうね!」
 海燕のまわりをぐるぐると移動しながら、あっちこっちへとはしゃぎ回るロリィ。
 レズリーからすると、今度の王子様は思いのほか長持ちしている。初めて出会ったのが5月だから、あれから半年ほど王子様熱が続いている計算だった。
 ひょっとすると、ドルファンではまず見かけることのない東洋人という容貌がロリィの想像力を過分に満たしているのかもしれない。
 レズリーにしたって、商人ではない東洋人を見たことは初めてだ。ましてや、会話を交わすにいたっては正真正銘海燕が最初だったということになる。
「ねえねえ…お兄ちゃんはどの競技に出るのぉ?」
「いや、俺は別に……」
「おいおい…枯れた事言ってないで出ろよ。今日は収穫祭だぜ…」
 一年の収穫を祝う収穫祭、この日のドルファン城塞内では地区警備と軍の人間の一部以外はみなお祭り騒ぎに没頭する。
「お兄ちゃん、ロリィのために勝ってね!」
 瞳をキラキラさせながら期待の眼差しを向けてくるロリィと、からかうように後押しするレズリーに押し切られるように海燕は競技会の受付に行くはめになった。
「はい、あなたは馬術競技の申し込みですね……」
「なんだよ、剣術じゃないのか?」
 海燕の手元を覗き込み、レズリーがそう呟くと海燕は困ったように肩をすくめた。
「木刀は苦手でね……」
「やれやれ、そんなのでよく傭兵なんかやってられるな」
 海燕の口元が何かを言いたげに一瞬だけ開きかけたが、結局そのまま閉じられた。
「まあ、王子様は白馬に乗るものらしいからな…」
「いい馬に恵まれるとは限らないらしいよ……」
 剣術競技は個人の能力だけが競われるが、馬術競技では似たような馬が使われるとはいえ多少の能力差がある。
「まあ、期待しないで応援しててくれ」
「負けると、ロリィが怒るぞ……」
「怒るだけならかわいげがある……」
「……確かに」
 海燕が負けたらロリィがどのような態度をとるか、レズリーには容易に想像できた。その時の台詞は多分……
『お兄ちゃん、ロリィのこと嫌いになったの?』
 自分のことを好きならば何でもできるはずと信じて疑わない事が、はたして無邪気という言葉ですませられるかどうかレズリーにはわからない。
 ただ、ロリィは本気でその台詞を口に出すことだけはわかっている。そして、その余波が自分にまで及ぶであろう事も……
「……まあ、できる限り勝ってくれ」
「善処しよう……」
 
「……すまないな、送ってもらって」
「レズリーにお姫様を背負って貰うわけにもいくまい」
「ふふっ、呑気な顔して……」
 レズリーは、海燕の背中で安らかな寝息を立てるロリィの顔を覗き込んで笑った。収穫祭であれだけはしゃげば疲れるのも無理はない。
 しかしレズリーは、自分の3年前がこんなにも子供だったとは到底思えないのだった。
「むにゃ…ロリィの王子様…」
 寝言なのか、そう呟いて海燕の背中をキュッと掴むロリィ。
「……どんな夢を見てるのやら」
「さあな……笑ってるなら、悪い夢ではあるまい」
「……ああ、そうだな」
 レズリーはそう呟き、夜空を見上げた。
 街の中心部には赤々とあかりに照らされているが、住宅地に入ってしまえばそれほどでもない。十分に星が見える暗さだった。
 去年の収穫祭は、ロリィと二人で星を見ながら帰った。
「なあ、海燕……東洋でも同じ星が見えるのか?」
「そうだな……極端に北や南に行かなければ同じ星が見えたよ」
「そうか…」
 世界中のいろんな景色が見てみたいという、憧れに近い思いがレズリーにはあった。それは、画家として若い頃に各地を回った叔父さんの影響かも知れない。
 ダナンの軍事情報局員として働く両親ではなく、レズリーは母方の弟である叔父さんによって育てられた。
 叔父さんは何も言わなかったが、両親によって自分の世話を頼まれたのではないかと思っている。
 ひょっとすると、自分の世話をするよりももっともっと世界を巡ってみたかったのではないかと聞いてみたくとも、叔父はもうこの世にはいない。
 レズリーが今のロリィの年には、既に1人で暮らしていた。
 もちろん両親から生活費は届いたのだが、ダナンと切り離された今の状況ではそれも届かない。軍からの最低限の給付金、そしてレズリー自身のアルバイトの収入によって日々を過ごしている。
「なあ、海燕……」
「なんだ?」
「アンタ……いろんな国の景色を見てきたんだろ」
「そうだな……でも、俺が見てきたのはその国の人で、あまり景色は見てこなかった……」
 遠い目をして夜空を見上げる海燕。
 確かに、画家ではない傭兵が見るのは景色以外のものだろう。
「時間があったらでいいんだが、いろんな国の話を聞かせてくれないか?」
「興味があるのか……?」
「この国の景色を描き終えたら……違う景色を描きに行きたいと思ってる」
「なるほど……」
 ふと、海燕の足が止まった。
「どうした?」
「いや、ロリィの家はこのあたりなんだろう?」
「すぐそこだよ。このままで……」
 いいじゃないか、と言いかけたレズリーを海燕は遮った。
「東洋人で傭兵……ご両親はいい顔をしないだろう」
「そんなの関係……」
 レズリーは海燕の真面目な視線に気付き、寂しそうに首を振った。
「いや、そうだな。多分アンタの言うことが正しいよ……ロリィ、起きろ」
 レズリーがゆさゆさとロリィの身体を揺さぶると、ロリィは不機嫌そうに目を擦りながら呟いた。
「ん、ロリィ眠いからこのまま寝るの…」
「ロリィ……どうせ寝るなら暖かいお布団に包まれて……」
「……お兄ちゃんの背中の方が暖かい…」
「……海燕、落としていいよ」
「それも少し乱暴だな……」
 海燕が身体をゆっくりと地面に下ろすと、ロリィは仕方無く自分の足で立たざるを得なくなった。そして、目を擦りながら自分が立っている場所を確認する。
「ん、あれ?もう少しなのに……」
「すまないなロリィ。ちょっと軍から呼び出しを受けたんだ」
「あ、そうなの……じゃあ、仕方ないね。お兄ちゃん、ばいばい…」
「ありがとな、海燕」
 そう言って片目を閉じたレズリーに軽く頷くと、海燕は急いでいるような足取りで曲がり角の向こうに姿を消した。
「お祭りなのにお仕事なの……?」
「ロ、ロリィ、早く帰ろうぜ…」
 ロリィの背中を押すようにして家に帰らせると、レズリーは1人で家路についた。
 
「アンタって変わってるよな…」
「……だろうな」
「ふふ、そういうところが特に変わってるよ…」
 レズリーは小さく微笑み、手の中でもてあそんでいた草の芯を抜き取った。そうして空洞になった草の茎を口にくわえて即席の草笛を吹き鳴らす。
 人工的な楽器とは違った頼りないフレーズは、潮風に紛れて消えてゆく。ただ、その分だけ聞く者に押しつけがましさを感じさせなかった。
 そうして数分、草笛の音が途切れた。
「はは、やっぱり適当に作ったものは長持ちしないな……」
 レズリーは少年のような笑みをこぼし、口にくわえていた草を地面の上に投げ捨てた。
「ま、長持ちしないから味があるとも言うが」
「そうかも知れないな……」
 そう呟いて、レズリーは草原の上にごろりと寝転がった。
「おいおい、汚れるぞ…」
「洗濯するのはアタシさ、アンタじゃない……」
 何一つ視界を遮るものがないため、青い空に手が届きそうに見える。一面に広がる青さは、吸い込まれそうな魅力と共に、レズリーには恐怖を与える。
「絵を描くんじゃないのか?」
 今は、持ち歩いているスケッチ道具に手を伸ばそうとは思わなかった。
「……アタシが描きたいのは、そこから見える一番のモノさ」
「気に入った景色じゃないのか?」
「たまにはのんびりするのも悪くないだろ……」
 レズリーは海燕の視線から逃れるように、ごろんと背を向けた。
「のんびり……そう言えば、今日はロリィがいないんだな」
「家族でお出かけだってさ……あの子といるとのんびりなんてのは無縁だからね」
 レズリーはほんの少しだけ笑い、ロリィには言うなよと海燕に念を押す。
 そのままぼんやりと空だけを見つめているレズリーを見て、海燕は何かを思いだしたように呟いた。
「海が嫌いだったか?」
「まあね。でも、こうして見るだけなら海も悪くない……」
 レズリーはむくっと上体を起こし、空と海の境界線のあたりをじっと見つめた。
 空の青と海の青……どちらがどちらを染め上げているかはレズリーにはわからない。
「海燕はさあ、海とか好きなのか?」
「まあ、そうだな…」
「海の上って……恐くないのか?陸の上だといろいろなモノがあって、大きさや距離を比べる事ができるけど、船以外何も見えないんだろ?」
 レズリーは小さい頃の記憶を思い出す……息苦しさの中で見回した周囲全てが青く染まった景色と、そしてどちらが上で自分が今どちらに向かってもがいているのか全く知ることのできない恐怖。
 そして、自分のせいで命を落としてしまった大事な人のこと……
「アタシは…恐いよ。多分、アタシは海には出られない……」
「……陸の上にも海がある」
「え?」
「草原の海だ……見渡す限りの草原の他には何もない。そこに住む人たちは風の匂いやちょっとした起伏で自分たちがいる場所を知るらしいが、何も知らない旅人は迷いに迷って死ぬしかない」
 潮風に前髪をなびかせ、遠い目をした海燕が海の彼方に視線を向けている。レズリーはその瞳に映っているだろう広大な草原を想像しようとしてもできなかった。
「……多分、海だろうと陸の上だろうと同じなんだろうな。自分が何者で、どこにいて、どこに行こうとしてるのか……それがわからないなら迷うしかない」
「……アンタは、どうなんだい?」
 控えめなレズリーの言葉に、海燕はニヤリと笑った。
「俺は根無し草でな……まあ、そのおかげでいろんなモノを見ることができたが」
「いつから……と、何でもない」
 レズリーはのどまで出かかった言葉をのみ込み、そのまま口を閉じた。
 ドルファンから遠く離れた東洋域は広大だが、その東洋の遥か東に大東洋と呼ばれる区域があり、海燕がどうやらそこの出身であることは会話から何となく知っていた。
 傭兵として少しずつ流れてきたとしたら、ここに辿りつくまでにどれだけの月日が必要なのか考えようとしたところで、レズリーは思考をストップさせた。
「アンタ…家族はいないのか?」
「難しい質問だ……」
「いや、答えたくないなら別にいいんだけど……」
「答えたくとも、答えを知らないからな……いや、俺は多分木の股から生まれてきたりはしてないぞ」
 海燕はレズリーの表情を見て、おどけたように呟いた。
 レズリーとしても、それで多少は救われる。
「悪いな、変な質問しちまって…」
「なあに、ロリィはもっと凄いぞ」
「……あの子、遠慮がないだろ?」
「遠慮ばかりする子供ってのは、あまり見たくないがね……」
「子供ねえ……ロリィが聞くと怒るよ」
 口元に微笑を浮かべたレズリーが、揶揄するように海燕の肩を軽く叩いた。
「子供は子供だ……ま、子供の俺が言うことでもないが、世の中に大人なんて存在は滅多にいないと思ってるよ」
「子供だろうが大人だろうが生きていくのには関係ないって事か?」
「そんなことにこだわるだけ馬鹿馬鹿しいだろうな……」
 どこか突き放したような海燕の口調が、不思議と心地よく響く。
「アンタは大人だよ、きっと……」
 
「あ、お姉ちゃん…」
「なんだ、ロリィじゃないか……さては、海燕と遊びに行くのか?」
 よそ行きの服装に身を包んだロリィを見て、レズリーは指先で額をつついた。
「えへへ……でも、遅刻したから急いでるの、またねっ!」
 元気良く手を振るロリィの姿に、レズリーは少し寂しさを覚えた。
 まわりがどう思っているのかは知らないが、レズリーにとってロリィは確かにワガママではあるのだがいないと寂しく思うのも事実だ。
 ロリィ曰く、『今度こそ本当の王子様』と出会ってから約1年。
 確実にレズリーの側にいない時間が増えていた。
「王子様…ねえ……んっ!?」
 微妙な感情の入り混じった呟きをこぼすレズリーの目の前で、突如通りかかった馬車から伸びた手がロリィの身体を抱きとめる。
「お前らっ!」
 その不穏な空気を感じ取り、馬車が動き出すよりも早くレズリーはロリィの身体にしがみついた。
 しかし、ロリィの身体を抱えた腕がレズリー共々二人をそのまま馬車の中へと引き入れる。
「かまわん、行けっ!」
 急発進した馬車の中には男が2人。
 馬車を操作している男も含めると、この場にいる男は全部で3人。
「勇ましいお嬢ちゃんだな……ちょっと眠ってな」
 レズリーの後頭部に衝撃が走る。
「お姉ちゃんっ!」
 悲しそうなロリィの声を聞きながら、レズリーの意識は闇の中へと落ち込んでいった。
 
「レズリー、起きろ…」
「……ぁ?」
 ズキズキと痛む後頭部を押さえながら、レズリーはゆっくりと目を開ける。すぐ側に海燕の顔があることに驚き、大きく開けられた口を海燕の手が塞いだ。
「……んうっ?」
「静かに……お前らを誘拐した人間が何人かわかるか?」
「……アタシが見たのは3人だけど、それで全員かはちょっと…」
 レズリーの言葉を聞いて、海燕は小さく頷いた。
 海燕の背中には、気を失っているらしいロリィが背負われている。
「わかった…他に仲間がいないとも限らないから、とりあえずここを出るぞ。……歩けるか?」
 レズリーは慌てて立ち上がり小さく頷いた。
 そして、血の匂いに気が付く。
「アンタ…?」
「……ま、殺しちゃいない」
 足音を立てないようにして薄暗い通路をしばらく歩くと、前方に日の光らしきあかりが見えてきた。
 十分にあたりを注意してから、2(3)人は地下遺跡から地上へと出た。
「……カミツレの遺跡?」
「立入禁止指定のな…いろんな意味で長居は無用だ」
 レズリーは小さく頷いた。
 風化の進んだカミツレ地区の遺跡の一部では崩落事故が相次いでおり、国の文化部によって危険と思われる遺跡を立入禁止指定している。
 せっかく助かったのに事故に巻き込まれたりするのは馬鹿馬鹿しい。
「ロリィは無事なの?」
「多分気を失っているだけだ……下手に起こすと、騒がれそうな気がしたんでそのままにしてたんだが」
「なるほど……」
 周囲に注意しながら遺跡区を抜け、割合に人通りのあるレリックス駅が見えてくるとレズリーの身体から緊張が抜けた。
「もう、大丈夫だな……」
 そして、海燕達がカミツレ地区警備隊の支部に到着したのはそれから30分後のことであった。
 
 実行犯は3人だが、そのうち2人は金で雇われただけらしく素直に供述を始めていた。もちろん、素直に供述しようがしまいが死刑は逃れられないところである。
「ロリィ…、あの男って以前ロリィをつけ回してた男じゃなかったか?」
「……そうかも」
 だとすると、身代金目当ての誘拐ではないことになる。
 レズリーは誘拐の目的を想像して少し身震いした。誘拐犯にとって、間違いなく自分は邪魔者だったのだから……
「でも海燕……良くアタシ達の居場所が分かったな」
「結構目撃者が多かったんでな……」
「なるほど…ロリィ、どうした?」
 レズリーは、いつもと違って元気のないロリィに首を傾げた。
「ん、何でもない……」
 やはり元気がない。
 レズリーとしては、ここぞとばかりに『王子様、王子様』と騒ぎ立てる姿を想像していただけに驚きが強い。
「どこか痛いのか?」
「ううん……お姉ちゃんは殴られたけど、ロリィはお人形さんみたいに扱われてたから……」
 そう呟いて、レズリーに心配そうな視線を向ける。
「アタシは大丈夫……さて、アタシ達は家に帰るよ。海燕、今日はありがとうな」
「お兄ちゃん、ありがとう…」
「気をつけて帰れよ……」
 まだいろいろと事情聴取が残っている海燕を残して、家路につくレズリーとロリィ。事件がショックだったのか、ロリィの口数は相変わらず少ない。
「ロリィ、無事だったんだから元気出せよ……」
「……お兄ちゃんが助けに来てくれた時ね、お兄ちゃん、ロリィよりもレズリーお姉ちゃんの縄を先に解いたの…」
 ぽつりと呟かれたロリィの言葉に、レズリーは首を傾げた。
「アタシが目を覚ましたとき、ロリィは海燕に背負われてたぞ?それに、ロリィは気を失ってたじゃないか…」
 ロリィは静かに首を振った。
「その後、ロリィ達を誘拐した人たちが帰ってきて……お兄ちゃんと戦いになったからロリィ気が遠くなって…」
「んーと、アタシだけが気を失ってたから気になったんじゃないのか?結局、その後はロリィを助けてからアタシを起こしたわけだし……」
「そんなの、ロリィ知らないもん!」
 ぷいっと、そっぽを向いてすねるロリィを見てレズリーは納得がいった。
 要するに、他愛もないことで嫉妬しているだけなのだと。
「はは、王子様ってのも大変だねえ……」
「むう、お姉ちゃん、ロリィを馬鹿にしてる……」
「まあまあ…今日の海燕はアタシにとっても王子様だったって事で勘弁しろよ」
 ロリィはちらりと横目でレズリーを見た。
「……今日だけ?」
「ああ、今日だけ」
「だったら、いいよ!」
 ロリィがにこっと微笑む。
「さて、早く帰ろうか」
「うんっ!」
 本当の姉妹のように仲良く手をつなぎ、2人は家へと向かった。
 
 D・ドルファン暦27年5月。
 ダナン攻防戦より約半月が過ぎたが、ダナンを奪回したということでドルファン城塞内はあかるい空気に包まれていた。
 ただし、ダナンを統治するベルシス家が駐屯軍を拒否しているため何やらきな臭いものはあるが、ヴァルファの脅威が一時的に去ったことだけは確かである。
 ダナンでの戦いから帰ってからというもの、宿舎でのんびりと体を休めていた海燕の元に、レズリーがさえない表情で訪れた。
「なあ、海燕。アンタの意見でいいんだけどさ……」
 そう前置きしてから、レズリーは微かに震える声を自覚しながら言った。
「アタシの両親はダナンの軍部情報局に勤めてる……そして、ダナンが解放されて久しいのに連絡が全くない……」
 海燕の眉がピクリと動いた。
「……以前の状況は知らないからあれだが、商人をはじめとして、ダナンへの出入りは結構規制が厳しい。それだけに手紙等の運搬を頼める人間がいない可能性は高いな……」
「……そうだな」
 レズリーが力無く頷く。
「軍部情報局に勤めてるなら、たとえ家族だろうと手紙のやりとりは規制されるはずだ……元々、頻繁にやりとりはできなかっただろう?」
「まあな……」
 レズリーは蜂蜜色の髪をうねらせて顔を上げた。
「そうだな、心配のしすぎか……」
 海燕は小さく頷いた。
 レズリーは自分の言葉が欺瞞に満ちていることに気が付いている。おそらくは海燕も。
 そんな後ろめたさを吹き飛ばすように、レズリーは意識的に作った明るい声を出して締め切られていた窓を開けた。
「この部屋、空気が悪いぜ。散らかってないだけましかもしれないけど」
「まあ、帰って寝るだけだからな……散らかすだけの荷物もない」
「昨日今日この国にやってきたわけでもないのに……確かに殺風景な部屋だな」
 レズリーは腰に手を当てて、部屋の中をぐるっと見渡した。
 備え付けの家具の他は、いくつかの衣服だけしか見受けられない。
 ベッドの上に再び転がりながら海燕が呟く。
「どの傭兵の部屋もこんなもんさ……」
「給付金貰ってるんだろ?」
「この国を出るときに荷物を持っていけるわけでもないしな……」
 当たり前のことを話すかのような穏やかな口調。
 その口調が、レズリーの心の深い部分を刺激した。
「……アンタ強いんだろ?騎士として仕えることになるんじゃないのか?」
 海燕はちらりとレズリーを見て、そして呟いた。
「一応そのつもりだ……」
「アンタはロリィの王子様だろ…」
「ふふっ、それもいつクビになるかわからないがな…」
「違いない……」
 部屋の中のこもった空気が、少しずつ窓の外へと流れていく。
「アタシ……戦争やってる人間は嫌いだけど、アンタは嫌いじゃないよ」
 聞こえるかどうかわからないぐらいの小さな声で呟き、レズリーは窓から身を乗り出すようにして太陽を見上げた。
「ははっ、こんないい天気なのに部屋の中でごろごろしていることはないな…」
「そうだな、レズリーの髪は陽光の下で見る方が綺麗だし」
 一瞬の沈黙。
「ば、馬鹿ッ!何言ってるんだよ、ったく…」
 微かに頬を染め、レズリーは慌てて窓を閉めた。
 
 ロリィがじっと自分の髪を見つめているのに気付いて、レズリーは不思議そうに首をひねった。
「何だよ、ロリィ?」
「えへへ、お姉ちゃんの髪って綺麗だよね。お日様の下だとキラキラ光って、まるで天使様みたい……」
「……」
 いつぞやの海燕の言葉を思い出し、レズリーは言葉を失った。
「どうかしたのお姉ちゃん?お顔、少し赤いよ…」
「な、何でもないよ!ロリィが、て、天使様なんて言うからちょっとびっくりして…」
「だって、綺麗なんだもーん…いいなあ、ロリィもこんな髪が欲しいなあ…」
 ロリィの手が髪の毛を撫で回すのがくすぐったくて、レズリーは頭を振ってその手から逃げた。
「これはアタシの髪だからね……ロリィだって綺麗な髪だと思うよ」
 ロリィは自分の肩の辺りの髪の毛を指先でひねり、難しい顔をした。
「ロリィね、まだお顔が丸いから長い髪は似合わないってママが言ってた……」
「なんだ、長い髪にしたいだけなのか?」
「ロリィ、大きくなったらお姉ちゃんみたいに髪を伸ばすの!」
 その時が楽しみなのか、嬉しそうに言うロリィを見てレズリーはほっとため息をついた。さすがに『お姉ちゃんの髪ちょうだい!』なんて言われることを想像していた自分をちょっと反省する。
「そうしたら、白馬に乗ったお兄ちゃんに抱きかかえられて結婚するんだよ…ねえ、聞いてるお姉ちゃん?」
 聞いてません。(笑)
 もちろん、そんな素振りは少しも見せずにレズリーは大きく頷いた。
「ははっ、ちゃんと海燕の返事を聞いてからにしろよ…」
「大丈夫だよ!お兄ちゃんはロリィの、ロリィだけの王子様なんだから!」
 『ロリィだけの』の部分をやけに強調しながらにこにこと微笑むロリィを見て、レズリーは再びため息をついた。
 今年14歳になる少女の考えることとはどうしても思えないからだった。
 王子様とお姫様というより、どちらかというとお父さんと子供という組み合わせを強いられている海燕のことを気の毒に思わないでもない。
「……王子様の苦労か」
 ロリィには聞こえないように呟く。
 王子様であるための苦労があるのなら、きっとお姫様になるためにも苦労が必要だと思うのだが……そう思ったレズリーは、ロリィに視線を向けた。
 その視線がちょうどロリィのそれとぶつかる。
「お姉ちゃん、ここ退屈だからどこか別の場所に行こうよ…」
「……そうだな」
 レズリーは国立公園の東の入り口に位置するベンチから立ち上がり、ロムロ坂の方角に足を向けた。
「喫茶店でなんか飲もうか?」
「わーい、マニュ食べよっと…」
「甘いものばかり食べると太るぞ?」
「ロリィ、太らないように注意してるから大丈夫だもん!」
「……あ、そう」
 自分なら海燕にあまり苦労はかけないですむだろうに…と考えかけて、レズリーは慌てて首を振った。
「どうしたの?」
「な、何でもない……ほらロリィ、行くよ」
「うん、お姉ちゃん!」
 そういってさしだされたロリィの手を握ろうとして、レズリーは微かな躊躇を覚えた。
 
 あの時、何故自分が躊躇してしまったのか……
 その理由に思い至ったとき、レズリーは気のせいだと思う込もうとした。ロリィとは違って、いろんなモノをあきらめることには慣れている。
 そうして、ゆっくりと時間をかけて心にできたひび割れを埋めていたはずなのだが、やはり多少の不自然さが表面に出ていたのだろう。
 レズリーは風に髪をなびかせながら、先日の事を思い出した。
「お姉ちゃん……最近、ロリィのこと避けてない?」
「そ、そんなことないだろ?」
「……」
 大きな瞳で覗き込まれ、つい視線を逸らしてしまう。
 別に悪いことはしていない……ただ少し後ろめたいだけ。
「ロリィ、何かお姉ちゃんに悪いコトしたの?」
「いや、だからロリィの気のせいだって……」
「ううん、だってお姉ちゃん、ロリィがワガママ言って怒ったことはあったけど、逃げたりはしなかった……」
「だから、気のせいだって…」
「ロリィ、お姉ちゃんに嫌われたくないよぉ…」
 目元に涙を浮かべ、レズリーの腕にしがみつくロリィ。
 そんな姿を見せられれば見せられるほどレズリーは罪悪感を抱く。
 ロリィが悪いことをしてるわけじゃないし、もちろんレズリーが悪いわけでもない。ただ、ロリィの王子様に対して心を動かしてしまったのが後ろめたいだけだった。
 自分にとっては家族同然の、ひょっとすると物心付いてから数えるほどしか会っていない両親よりも大事な存在かも知れない。
「なにやってんだろ……アタシ」
 レズリーは自嘲的な呟きと共に、足下に落ちていた石を海に向かって蹴飛ばした。
 温暖なドルファンだが、冬の海を見に来る物好きはそうはいない。
 白く濁った波頭が寄せては砕け、砕けてはまた寄せてくる。
 その絶え間ない繰り返しのごとく、レズリーの心の嵐もまだ止みそうになかった。
 
 学生生活最後の夏休みだが、レズリーはいつもの年と同じように喫茶店でバイトに明け暮れていた。
 相変わらず両親からの連絡はないが、軍から多少の給付金がレズリーの元に送られてくるところを見ると無事なのだろう。
 いつもより涼しい夏だが、喫茶店の客はいつもの年と同じように訪れる。
「お待たせしまっ……」
 テーブルの足につまずいたレズリーの手からグラスが宙に舞い、横合いから伸びた手がそのグラスを見事にキャッチする。
「海燕…」
「すまん、さすがに中身は無事じゃない…」
 海燕の持つグラスの中身が半分ほど消えていた。幸いにも床にこぼれただけで、客に被害はない。
「し、失礼しました。すぐに新しいのを持ってきますので…」
 客に向かって頭を下げ、そして海燕の方を見た。
「1人か?」
「見ての通りだ」
「アタシ、後30分もすればあがりだから……」
 そう言い残して、レズリーはさっさと厨房に向かって歩き出す。
 わざわざこんな場所まで1人で来たと言うからには、何か用があってきたに違いない。交友関係がそう広くもない海燕だけに、その目当てが自分であるというレズリーのヨミは間違っていなかった。
 アルバイトが終了し、レズリーは海燕と肩を並べて喫茶店を後にする。
「……で、どうしたんだよ?」
「いや、ロリィに泣いて頼まれた」
「ははっ、何て頼まれたんだ?」
 予想は付くが、敢えて聞いてみる。
 レズリーとしては普段通りに接しているつもりだが、ロリィはそうは思っていないらしい。
「ロリィの説明が要領を得ないので正直よくわからん…」
「まあ、アタシが変だってとこじゃないの?」
 などと話しながら、どちらからともなく公園のベンチに腰掛ける。
「……喧嘩してるわけじゃないんだろ?」
「なんだろね……ボタンを掛け違えたような感じかな」
 ため息混じりにそう呟き、レズリーは空を見上げた。
 大きな雲がゆっくりと風にながれて形を変えていくのが見えた。一度崩れた雲は、二度と同じ形には戻らない。
「以前と同じようにしてる筈なんだけどね……ロリィがそうは受け取ってくれなくて」
「そりゃ、ずっと同じってわけにもいかないだろ。レズリーは気付いてないかも知れないが、ロリィだって出会った頃に比べれば随分変わった」
「……アタシは?」
「もちろん変わったよ。あくまでも俺の主観だがな…」
 レズリーは空を見上げたままぽつりと呟いた。
「……アンタは、変わらないな」
 変わっていないのか、それとも一部しか目に見えてないからなのかはわからない。
 それきり、ふたりとも黙ったままでしばらく時を過ごした。そうしてることに飽きたのか、海燕が口を開いた。
「最近、絵は描いてるのか?」
「描く気がしない……」
 どんな風景を目にしても頭に浮かぶのは1人の青年だった。そして、その青年に合った風景がこの国には存在していない。
「この国の風景は卒業か?」
 いつかの、『外の世界の風景を描いてみたい』という言葉を覚えていたのだろう。確かに、海燕はどこか外国の風景に馴染みそうな気がした。
「なあ、以前海のように広がる草原があるって教えてくれたよな?そこって遠いんだろ?」
「遠いな……遠いところだ」
 レズリーは一瞬だけ海燕の表情を見たくなったがやめておいた。多分、そんな表情を見てしまうと不安になることがわかっていたからだろう。
「アンタさ、もし騎士になってもこの国を出ていくつもりなんだろ?」
 そう呟いて、レズリーは視線を海燕に向ける。
 少し困ったような表情を浮かべ、海燕は大きく息を吐いた。
「多分、この戦争が終わると同時に外国人は追い出されるだろうな」
「そのぐらいは知ってる。アタシが言いたいのは……アンタがこの国に定住するつもりが無いって事だよ」
「ロリィには…?」
「こんな事ロリィに言えるわけないだろ!」
 レズリーは少し心が痛んだ。
 ロリィの名を借りて自分の主張に正当性を持たそうとしている事に、また後ろめたさを感じてしまう。
「自分が何者で、どこにいて、どこに行こうとしてるのか……答えが見つからないのか?」
「そんなたいそうな事じゃないんだがな……不意に、違うと感じるだけで」
 海燕の顔が一瞬だけ少年のように見えた。
 多分自分はその表情のことを忘れないだろうとレズリーは思った。
 
 D・ドルファン暦28年3月
 3年の長きにわたったヴァルファとの抗争を終え、ドルファンとプロキアの間で棚上げになっていた休戦条約締結へと事態は駆け足で進んでいく。
 ドルファンにとって戦乱の予感漂う冬の時代の終了と共に、名実共に春が訪れようとしていた。
「ふう……」
 レズリーは、殺風景な自分のアパート内を見渡して大きく息を吐いた。
 備え付けの家具と僅かばかりの衣服……そして少なくはない画材。
「お姉ちゃん……」
「ああ、ロリィ」
 戸口の所で佇むロリィの姿に、レズリーは額の汗を拭った。
「やっぱり行っちゃうの?」
 レズリーの顔を見上げるロリィの目が赤かった。
「こらこら…まだそんなことを」
 軍によって自分の両親が死亡していた事を知らされてから悩みに悩み抜いた末の結論。
 まずはスィーズランドで本格的に絵の勉強をし、それから叔父さんのように絵を描きながら世界を歩いてみようと決めた。
「でもお姉ちゃん……1人になっちゃうよ」
「ははっ、ロリィに心配されるとは…」
 レズリーの両親が死亡していたことを知ったとき、ロリィはまるで自分のことのように泣いた。
「そら、一緒に海燕の見送りに行くんだろ…」
 そう言ってレズリーが手を取ろうとすると、ロリィはゆっくりと首を振った。
「ロリィはもうお別れをすませてきたから……だから、お姉ちゃん1人でお見送りしてきて……」
「ロリィ…?」
「ロリィ、子供だけど……でも、馬鹿じゃないよ」
 
「海燕!」
 居心地が悪そうにしていた影がレズリーの方を振り返る。
「おや、ロリィは一緒じゃないのか?」
「王子様は迎えに来てくれる存在で、見送る存在じゃないってさ……」
 黄昏色に染まる海にレズリーの髪が溶け込んでいた。
「嫌われたかな…?」
「……さあな」
 レズリーは小さく微笑み、海燕の顔を見上げた。
「次は…どこの国に行くんだ?」
「適当だ…」
「ははっ、アンタらしいな……」
 おかしそうに笑うレズリーを見て、海燕も笑った。やがて、レズリーは真面目な表情で切り出した。
「今まで黙ってたけど、アタシ、スィーズランドで絵の勉強をするよ。そして、叔父さんの見ていない景色を描く」
「ほう…」
「叔父さんが死んで、両親も死んで……でも、アタシは迷わないよ。アタシはこの国で生まれこの国で育った。この国で出会った景色を覚えている限り、アタシはきっと迷ったりしないと思う」
 キラキラと光る海に視線を向けたレズリーを見て、海燕は感心したように呟いた。
「凄いな……」
「……その景色の中に、アンタも入ってるんだぜ」
 凪の時間が過ぎ、少し風が出てきたようだった。
 おそらく出航の時間まで後僅かだろう。
「アタシは……アタシはアンタの景色にはなれなかったかい?」
「……」
「アンタは、海のように広がる草原の話をする度に遠い目をしてた。もし、もしも、アンタがそこで道に迷ったのなら……」
 レズリーは一旦言葉を切った。
 そして、ゆっくりと海燕に視線を向ける。
「……アタシが道標になれないかな?いつか、世界のどこかで偶然出会ったとき……その答えを聞きたい」
 
 
                      完
 
 
 ああっ、高任にとっての真打ち登場ですっ!(笑)
 ライズとレズリー。
 高任はこの2人がお気に入りでお気に入りで、もうたまらんすわっ!(笑)ただ、ライズに関してはあの高任好みの怒濤のシチュエーション(笑)に寄り切られた感があるので、純粋なキャラクター勝負なら多分レズリーでしょう。
 キャラクター順位とシチュエーションを含めた総合順位ってのはまた別物ですが、ライズに関してはキャラクター順位でも……って落ち着け俺。
 とことんやれとん指も折れよとばかりにかき込んでしまおうかと思いましたが、それをやると収拾付かなくなるような気がしましたのでちょっと冷静にこのぐらいの量で……って、これだけでもライズに次ぐ長さですけど。(笑)
 また、ライズの話し書きたいなあ……じゃなくて、(笑)ラストは、意図的にゲームの最後の2択シーンを連想させましたが……エピローグを付けた方が良かったでしょうか?
 しかし、そのエピローグだけで一本話ができてしまいそうな高任だけにちょっと危険。(笑)
 ……しかし1年以上にわたって書き続けてきましたが、ノエルはあれなので次でキャラクターが一周します……え?出入国管理局員のミューとか、シスターのルーナとかメイドのプリムがまだじゃんって?(笑)
 はっはっはっ…今の高任は徹夜明けだから凄くハイです。

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