ゴールデンウイーク、そして修学旅行と続いた一種のお祭り騒ぎが未だ余韻を残しているのだろう。久しぶりの授業の後、教室内は喧噪に包まれていた。
 智子は教室内をざっと見回し、クラス替え直後のどこかぎこちない雰囲気が嘘のようになくなっているのを感じた。
 ひょっとすると、修学旅行がみなの交流を深めたのかもしれない。
 そんな風に教室を観察している智子だが、自分もまた微かに微笑んでいることに気が付いていない。
 もっとも、その微笑みは1人の少年が与えてくれたものだったが……
「委員長。修学旅行の写真が出来てるってよ…」
 軽く肩を叩かれ、智子は反射的に身体を硬くした。
 慌てて口元を引き締め、そちらの方を振り返る。
「……随分早うないか?」
「雅史の奴、そういうのまめなんだ。まあ、旅行が終わって週末を挟んでたし。」
「……そやね。」
 浩之に導かれるように、席を立ち上がった。
 あかりの席の周りに、いつものメンバーが集まっている。机の上には写真を収めた簡易アルバムが何冊も開かれて転がっているようだった。
「……長岡さん。アンタ、クラスに友達おらんのかいな。」
「こっちの方が居心地がいいだけよ。…ってアンタに言われたくないわよ。」
 ぶっきらぼうな返事をしながらも、アルバムを差し出した志保を見て智子は思う。
 お調子者やけど悪い人やない、と。
「ふーん…なかなかよう撮れてるやないか。」
 などと写真を見ながら呟いている智子の袖を、雅史が軽くつついた。
「……?」
「あ、これ保科さんの写真だから……」
 必要以上にさりげなく差し出された封筒に、ぴんと感じるものがあった。
「さよか…後で見させて貰うわ。」
 そう言ってポケットの中に封筒を押し込む。
 多分あの写真だろうと智子は見当を付けていた。その写真をみんなの前で広げるほど無神経ではないつもりだった。
 ふと、智子は視線を感じて顔を上げた。
 あかり、志保、浩之の3人は写真を見ながら、ここではどうだったとか、あそこではああだったなどと話しているだけだ。
 念のために教室内をぐるりと見回す。もちろん、こちらを見ている者はいない。
 気のせいだったのかもしれない、と智子は無理矢理そう思いこもうとした。
 自分という人間が、クラスからあまりよく思われていないコトを知っている。しかし、さっき感じた視線はそういう類のものではなかった。
 自分に嫌がらせをした3人組の見せた粘っこく陰険な視線とは違った、純粋な敵意のこもった視線。
 少なくとも、そんな敵視を受けるいわれはない。こちらに引っ越してきてから、誰にも関わらずに過ごしてきた筈なのだから。
 不安そうな表情を見せていた智子に気が付いたのか、浩之が声をかけてきた。
「どうした、委員長?」
「……いや、なんでもないんよ。」
 2人きり以外の場所で、名前を呼ばないように決めたのは智子自身だった。人前でそう呼ばれるのを気恥ずかしいと思ったのと……後は、やはり遠慮だろうか。
 休み時間の終わりを告げるチャイムの音。
「おっと、また来るからっ!」
 びしっと手を挙げて教室から出ていく志保。そして雅史。写真をそのままあかりの机の上に置いていったのはわざとなのか、それともうっかりなのか。
 あかりが、アルバムを持って浩之の顔を下からのぞきあげた。
「……浩之ちゃん。この写真……」
「あ?まあ次の時間に取りに来るだろ。」
「うん、そうだね……」
 ぱたぱたと机の中にそれらをしまい込んでいく。
「こらぁー!早く席に座らんかっ!」
「やべっ!」
 教室のあちこちでがたがたと机や椅子の鳴る音が聞こえてくる。智子もまたそのうちの1人。
 また、平凡な授業風景が戻ってくる……
 
 昼休み、智子と浩之の2人は昼食を終えて屋上にいた。
「あ、せやせや…忘れるとこやった…。」
 ポケットから封筒を取りだした。
 封筒の中には、写真が数枚。それらのほとんどは、みな二枚ずつ焼き増しされた写真だった。
「……?」
「ほれ、あんたの分や。」
 写真を何枚か選んで、智子は浩之に手渡した。
「ああ、あの時の……」
「せや。」
 何でもない風景をバックに、智子と浩之が2人寄り添って立っている写真。浩之はその写真をじっと見つめ、そして智子の顔を見た。
「な、なんやの…人の顔じろじろ見て?」
「いや、いい笑い方をするようになったなと思って……」
「あんたのおかげや…。」
 何故か狼狽える浩之に向かって、智子は軽く肘でつついた。
「そんなことないよ、ぐらい言いな。……会話が続かんやないの。」
 智子は手を頭の後ろにやって、空を見上げて呟いた。
「あーあ。せっかく人がほめたろ思たのに……うちは素直になること少ないんやで。」
「うん、知ってる。」
「憎たらしい男やなほんま……」
 頬のあたりに血が上ってくるのを感じて、智子はぷいっと浩之の視線を避けるように背を向けた。
 そしてしばらく間をおいてから小声で呟く。
「……嘘やで。」
 聞こえているのかそうでないのか返事はない。
 自分の弱みをさらけ出すのはあまり好きではないが、今更という気持ちもある。
「…?」
 また視線を感じたが、それは一瞬だけのこと。
 智子は出来るだけさりげなさを装いながら、屋上をゆっくりと見回した。春の陽気に包まれた屋上だけあって、かなりの生徒がだべっている。
 元々自分が人の視線に鋭いとは思っていない。だから、気のせいだと思うことにした。
 キーンコーン……
「……っと予鈴だ。」
「……そやね。」
 智子と浩之が教室に戻ると、あかりと志保が2人を見つけて声をかけてきた。
「なんだ、2人一緒にいたんだ。」
「まあな…探してたのか?」
「うん…雅史ちゃんがみんなで写真を分けてよって言ってたんだけど、2人がいないと……」
 あかりは、そう言ってアルバムを持ち上げる。
「俺は残ったのでいいよ……みんなで写ってるのは後で雅史に焼き増ししてもらうから。」
「ほほう。」
 志保がにやにやといやな笑みを見せて、浩之に近づいた。
「何だよ…?」
 突然、志保は何かに気が付いたように教室の入り口の方を振り向いた。
「あ!」
「ん?」
「いただきっ!」
 志保の手が浩之の制服の胸ポケット素早く伸びて、中の写真をつまみだした。
「あ、こら志保、てめえ。」
「…ふふーん、残った写真で構わないんでしょ。」
「志保!」
 いつになく厳しいあかりの声に、志保はきまり悪そうに視線を逸らして、写真を浩之の胸に戻した。
「冗談よ、冗談。ほら、あかりもそんな恐い顔しない。」
 あかりをなだめるように、志保は肩の辺りをぽんぽんと軽く叩いて笑った。
「……ん、ごめんね。」
 あかりが素直に頭を下げると、ぎこちない雰囲気が多少和らいだ。気を取り直したように、あれこれと写真を選び始める。
 しかし、智子は写真を選びながら、頭の中では全然違うことを考えていた。
 ……長岡さん、なんで写真のことを知ってたんやろ?
 
「遅い!」
 校門を抜けたところでいきなり脳天にチョップを食らった浩之は、少し驚いた表情でその通り魔の顔を見た。
「……委員長。」
 べしっ。
「……と、智子。」
「よろしい。」
 授業がすぐに終わって学校を後にする帰宅部連中の人波は一段落しており、まわりには誰もいない。
 しかし、どこか納得のいかない表情で浩之は智子の顔を見ていた。
「……なんで?」
「藤田君、3月にうちの頭どついたやないか…」
「結構根に持つんだな……」
「そや。だから、うちは嫉妬深いし、ろくな性格やあらへん。覚悟決めた方がいいで。」
 スカートの裾を翻すように、智子は浩之にくるりと背を向けた。
 何故かは分からないが、智子は時折こうした態度をとってしまう。つきあい始めてまだ日が浅いため照れくさいのもあるのだが、自然とそうした態度をとってしまうのだ。
「……寂しがりやのくせに。」
 どこか笑いを含んだ口調。
 おそらくは浩之なりの仕返しなのだろうが、今の智子には効き目がない事に気が付いていない。
「……そやな。うちがこうして笑ってられるのも藤田君が側にいてくれるからやで。」
「う…。」
 明るく笑いながら素で切り返されると、浩之の方が言葉に詰まってしまう。
「藤田君も、恋人らしい会話はからっきしやな…」
「誰かとつき合うなんて初めてだしな……」
 だらだらと続く坂道を歩きながら、智子は小さく息を吐く。横目で確認する二人の距離は、2ヶ月前とは比べものにならない。
「ところで…俺には名前で呼ばせるくせに、相変わらず『藤田君』なのな。」
「……藤田君、神岸さんや長岡さんを名前で呼ぶやろ。」
 智子は微かに頬を赤らめて、浩之の視線を逃れるように空を見上げた。初夏の日差しが、眼鏡のレンズの中でキラキラと反射して目がちかちかする。
「……は?」
 わけがわかりません、と物語っている浩之の表情を見て、智子は仕方なく大きく息を吸い込んだ。
「あの二人、特に神岸さんは幼なじみやろ。うちを特別扱いせえとはゆわんけど、格下扱いはしてもらいたないねん。」
「……えーと、それは嫉妬?」
「男のくせにこれ以上ごちゃごちゃゆーてたら殴るで。」
「男女同権論は?」
「これはうちと藤田君の問題や。それは関係ない。」
「はあ、複雑なんだね……」
「藤田君が単純すぎるだけや……」
 智子はため息混じりに呟いた。
 気になった…ただそれだけでこれだけ深入りする人間を浩之の他に智子は知らない。多分おせっかいと紙一重の、誰にでも与えられる優しさ。
「きっと…」
「え?」
「なんでもない…。」
 あの時の自分の立場に誰か他の人間が立たされていたならば……その先を考えるのをやめた。その代わり、口元に笑みをたたえて隣を歩く少年を見る。
 この少年の価値を知る者は少ない。
 多分それでいいと、智子は思った……
 
「おはよう、保科さん。」
「おはよう……」
 智子の視線は、あかりに引っ張られている浩之の制服の袖あたりから、未だ眼が覚めきっていないぼんやりした表情に注がれる。
「神岸さんも、毎朝大変やな……」
「いつものことだから……」
 あかりは、少し困ったように俯いた。
「それに、毎朝きちんと起きて真面目に勉強するヒロユキちゃんって何か恐いと思う…」
 ちらちらと浩之をうかがいながら呟いたあかりの台詞に刺激され、智子はそういう想像をしてみる。
 ……駄目だった。
「……似合わんな。」
「……でしょ。」
「聞こえてるぞ……っていうか、本人の目の前で言う台詞か?」
 瞼のあたりを擦りながら、浩之は不機嫌そうに呟いた。が、自分でもそれ以上反論できないと思っているのか、それ以上のことは口にしない。ひょっとすると、どうでもいいと考えているのかもしれないと智子は思う。
「ヒロユキちゃんは、ヒロユキちゃんだから……」
「なんだよ、それ?」
「藤田君。それは多分誉め言葉や……」
 智子は、自分の持っている鞄が少し重くなったような気がした。
 そうこうしながら学校へと続く坂道を登っていると、背後から駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
「ヒロ!ビッグニュース、ビックニュース!」
「志保、そんな若者おいてけぼりの台詞はやめといたほうが……」
「それが分かるヒロに言われたくないわ…じゃなくて、今日の午後から雨が降るって。」
 志保が有用な情報をもたらすことはこれまでの例からほとんどない事が分かっていたが、智子をはじめとした3人は晴れた空を見上げた。
「天気予報では晴れやったで……」
「私も見た。」
「俺は当然見てない……って、志保。お前何で傘持ってないんだよ?」
「だって、天気予報で晴れるって言ってたもの…」
 志保は、己の行動の矛盾性に気が付いていないのだろう。これっぽっちも悪びれることなくにっこりと白い歯を見せて笑った。
「じゃあ…」
 何かを言いかけた浩之を遮るゆにして、志保は手と首を振った。
「駄目よ、ニュースソースは命に代えても明かせないわ。」
「神岸さん、先にいこか…」
「うん、そうだね……」
 通学路の途中で延々と掛け合い漫才を始めた二人を見限って、智子とあかりは学校へと歩いていった。
 平和な朝の光景である。
 しかし、午後になってため息をつきながら空を見上げることになるとは二人ともこの時点で考えてもいなかった。
 
「ほっほっほっ…そーら、みなさい。」
 芝居気たっぷりに高笑いする志保を横目で眺めて、智子はため息をついた。
「傘も持ってきてない長岡さんに言われとうない。」
 教室内にいるのは、志保と智子の二人だけだった。
 あかりは雅史の置き傘に入れてもらうことになり、浩之は雨にうたれながら家に帰って傘を持ってきてくれることに落ち着いたのだ。
「いやーしかし、久しぶりの雨よね。」
 何でもないことのように呟かれた志保の言葉に、智子は微かに身じろぎした。
 前に雨が降ったのは4月末のこと……智子が忘れるはずもない。その日、雨にうたれたまま智子は公園のブランコをこいでいた。
 浩之がいなかったら、いつまでそうしていたかわからない。
「あの日……ヒロの家に泊まったの?」
「え?」
 智子は慌てて志保の方を振り返った。
 志保は指先で窓ガラスに何かを描きながら、暗い瞳を窓の外に向けている。
「長岡さん…あんた?」
「見てた…っていうより、見せつけられたかな……」
 志保の唇が微かに震えているのを見て、かろうじて彼女が喋っていると判断できるような低い声だった。
「ヒロの部屋の電気が消えて……30分ぐらいその窓を見上げたままぼーっとしてた。」
「……さよか。」
 言い逃れする気はないが、何と言っていいのか分からないのも事実だった。あかりのことはともかく、志保のことを智子はうっかり見落としていた。それとも、巧みに隠していたと言うことなのか。
「ここ数日、うちを見てたんは長岡さんか?」
「できれば見たくない顔よ……」
 志保は軽く肩をすくめた。
 その大げさな仕草は、自分の心を落ち着かせるためだろうか。
「まあ、アタシの予想はことごとく外れるってのが良くわかったわ。」
「……雨、降ってるやない。」
「そういうんじゃなくてね……ヒロが選ぶのはあかりだと決めつけてたから。」
「神岸さんなら我慢が出来ただけの話やろ、それは。」
 志保は普段以上の明るい笑顔で、辛辣な言葉を吐き捨てた。
「アタシ、やっぱりアンタのこと好きになれない……」
「そういうのは仕方ないんとちゃうの。」
「あかりはヒロより前に出会ったから……」
 途中でとぎれた志保の言葉を聞き返すようなことはしない。その代わりと言っては何だが、志保に背を向けたまま呟く。
「うちは…人に嫌われるのは慣れてる。気にせんでええ……」
「アタシ、自分の気持ちを隠すのにはもう慣れたから。ただね、ちょっと苦しんで欲しいだけ。アンタもヒロと同じで優しいようだし。」
「……買いかぶりやな。」
 雨足が強くなってきたらしく、雨音が少しずつ激しくなってきた。
「さて、アタシは帰る。」
「雨やで…?」
 教室の入り口に向かっていた志保の足がぴたりと止まった。
「あの日……保科さんが傘を持ってたらどうなってたかな?」
「……。」
 志保は顔だけを振り向け、隠すつもりもないのか、怒気の混じった声で吐き捨てた。
「それまでにもいろいろあったみたいだけど、……優しくしてくれたのがヒロでなかっても良かったんでしょ?」
 そのまま志保は教室を出ていき、智子は教室に一人残された。志保が最後に言い残した台詞が、智子の心をかき乱している。
「本当にそうなんやろか…」
 浩之が傘を持って教室に帰ってくるまで、智子は降り続く雨をただ眺めていた。
 
「……と、言うわけ。おっと、アタシはもう行くから。」
 腕時計に目をやり、元気良く教室を出ていく志保の後ろ姿を見て、浩之は首を傾げた。
「志保の奴、なんかあったのか?」
 そう呟いてあかりを見るが、あかりは静かに首を振った。
「委員長は……知るわけないよな。」
「……うちは、いつもと同じに見えたけど。」
「いや、ちょっと不自然に元気すぎる…」
 浩之は首を傾げたまま立ち上がった。
「ちょっと見てくる。」
 志保の後を追いかけた浩之が、教室を出ていくと智子は小さなため息をついた。
「藤田君は、自分のまわりの人をよく見てるんやな……」
「……損だよね。他人の痛みまで自分の痛みみたいに感じちゃうから。」
 いつもと違ったあかりの口調に、智子はおやっと思って振り返った。いつもなら恥ずかしそうに俯くあかりが、今は智子の顔をじっと見つめている。
「神岸さん…?」
「だから…ヒロユキちゃんの前では心配させるような事をしちゃ駄目なの。」
 あかりの視線から逃げるように智子は顔を背けた。そしてため息。
「……そうやな。神岸さんが気が付かないわけあらへんもんな。」
 智子は志保が浩之の胸ポケットから写真を奪ったときのことを思い出した。あれは、智子と浩之、そして志保の感情までもを知っていた上でたしなめた行動だったのだと今更ながら気が付かされる。
「志保はね、ずっと私とヒロユキちゃんがつき合ってると誤解してて。私とは仲が良かったから随分苦しんでたと思うの……特に最近はずっといらいらしてた。そこに保科さんが現れたでしょ……今まで我慢してたものが切れちゃったんだろうね。」
 自分の友人のことを淡々と話すあかりに、智子は多少恐いものを感じた。
「神岸さんは……それでええんか?」
 あかりは、口元に手をやって少しだけ悪戯っぽく微笑んだ。
「嫌いになろうと思ったんだけど…ヒロユキちゃんも楽しそうだったから……」
「……神岸さんの判断基準は、全部『ヒロユキちゃん』なんか?」
「そうだよ。」
 少しからかうつもりで言った智子だったが、あかりがいともあっさりとそう答えたので反対にぎょっとする。
「そうだよ…って。」
「だから、ヒロユキちゃんに妙な心配をさせる今の志保は嫌いかな。でも、ヒロユキちゃんを笑わせる保科さんのことは好きだよ。」
 迷いのない澄んだ瞳で、にっこりと笑いかけるあかり。
「…長岡さんは?」
 自分の声が少しかすれていることに気づいたが、あかりは気にする様子も見せずに静かに首を振った。
「ううん、この事を話したのは保科さんが初めて。ヒロユキちゃんの大事な人だもの…ちゃんと知っててもらいたいし……どうかしたの保科さん?」
「……神岸さん、あんたちょっと恐いで」
「やだ、保科さんたら人聞きの悪い」
 そう囁いてあかりは天使のように微笑んだが、すぐにいつもの表情へと戻って後ろを振り向いた。
「ヒロユキちゃん、志保は?」
「いや、見つからない。……ま、ただの気のせいかも知れないし。」
「……そうだね。」
 ほんの少しだけ不安そうに微笑むあかり。普段通りのその表情が、今の智子には別の表情に見えた。
 
 
                   第一話完
 
 
 タイトルは勘違いじゃないです…つーか、分かる人間にはこのタイトルだけで高任のやる気が伝わるのでは?(笑)
 何で今更このゲームを…などと言われそうですが、葉っぱの部屋が最近更新されて無いなあなどと話題にのぼったのと、久しぶりにどろどろの愛憎劇を書いてみたいなあ……なんて思っただけです、はい。後は、たまには分割した話なんかも書いてみようかなと思っただけです。こうやっとけば、定期的に書くことになりそうだから都合もいいし。(笑)
 ゲームがゲームだけに、高任的には大分控えめな性格設定(笑)になってますが怒らないでね。
 今のところ全3話ぐらいでどうにかしようと思ってます。多分2ヶ月にひとつずつ位のペースで。 

前のページに戻る