ちっぽけな公園の片隅、そこに彼はいた。人ならぬ者の眠りを覚ます人を越える慟哭の発生源。
 幼体は泣いていた。その感情の波動が心地よく気分を高ぶらせ、身体は喜びにうち振るえた。私は音もなくその幼体に近づき声をかけた。
「あるよ。あなたがのぞむえいえんはあるよ・・。」
「えいえん・・ずっと幸福でいられるばしょ?」
 私はゆっくりと頷いた。そしてかんで含めるようにゆっくりと一字一句丁寧に言葉を続けた。
「あなたがのぞむものはぜんぶあるわ。でも、あなたがそれを信じられなくなったときその世界はおわるの・・。」
「だったらぼくはそこに行くよ。でも・・きみはいったい誰なの?」
「わたしはあなたののぞみをかなえるもの。」
 幼体は少し何かを考えているようだった。やがてその幼い顔を勢いよく上げて呟いた。「ぼくはずっと君にそばにいてほしい・・。」
 盟約としての言霊が彼の台詞にのって私の身体へと吸収される。
「あなたがのぞむかぎり側にいることを約束するわ・・。」
 果てしなく続く時の流れの中で、たまにはこんな時を過ごすのも悪くはない。
 幼体の魂の可能性を消費してその願いは私の身体を通して今実体となりつつあった。幼体の魂が牢獄の中へと取り込まれたとき、この人間世界における幼体の一生は終わりを告げた。
 
 自分の家のように瑞佳は階段をリズム良く駆け上がっていく。何のためらいもなく部屋の中に入り、勢いよくカーテンを開けた。部屋の中に太陽光が差し込み、ベッドの上で惰眠をむさぼっていた少年は吸血鬼のように布団の中へと潜り込んでいく。
「ほら、起きなさいよーっ。」
 と、一応声をかけてはみたものの反応は無し。瑞佳は布団に手をかけると、やけに重く感じる掛け布団を力任せにひっぺがす。まだぬくもりの残るベッドの上には誰もいない。
「わ、わっ、どうして?浩平、どこにいったの?」
 瑞佳は慌てて部屋の中を見渡した。すると、ひっぺがした布団が床の上でゆっくりと丸まっていくのが目に入る。まさか、とは思いながら瑞佳はゆっくりと布団の真ん中を踏んでみた。
 ぎゅっ。
「・・・中身が詰まってる・・・。」
 そう呟くと、瑞佳は浩平の顔があると思われるあたりをぎゅっと両手で押さえ込んだ。
 二十秒、三十秒。
 布団がびくんっびくんっと大きくけいれんをおこすが、さらに体重をかけるようにして押さえ込む。
 がばあっ。
「やっと起きた・・。」
「永遠に眠ってしまうとこだったぞ!」
 荒い息を吐きながら浩平が声を荒げる。浩平の胸が酸素を求めて大きく上下するのを眺めながら、瑞佳は開け放した窓によっこいしょと布団を掛けていく。
「な・何事もなかったように布団なんか干しやがって・・。」
「だって、いい天気なんだもん。」
 瑞佳の指さす方に視線を向けて浩平はなるほど、と呟いた。
「浩平はいいお嫁さん貰わないと大変だろうね・・。」
 瑞佳に追いたてられるようにして浩平は学生服と鞄を抱えて部屋から出ていく。それを確認すると瑞佳はふと空を見上げた。
 繰り返される日常。
 瑞佳は、この牢獄の管理者の1人でありながら囚われの身である自分の状況が何故か心地よく感じるときがある。『監視する者』から僅かとはいえこの世界に干渉する事が可能な自分の立場になったことが単純に新鮮なのかもしれない。
 この世界の全ての住人が、浩平の作りあげたものというわけではない。浩平と同じ立場の人間もまたこの世界の構築に力を貸している。彼らの望みはそれぞれ影響しあって、お互いの望ましい環境を作りあげている。
 今日もまた新しい住人がやってくる。
 
 ずっしゃああああぁぁぁ。ごろごろごろごろっ。
 摩擦係数を無視したような見事な転げっぷりを披露した少女は恨めしげにこちらを睨みつけている。いや、正確には浩平をだが・・。
「ねえっ、そこの人見てたでしょ!」
 そんなこと言われても困る。
 誰が悪いもなにもこの出会いは浩平と少女が・・少なくともどちらか1人がそう望んだ出会いなのだから・・・。
「あ・・・うん、浩平が悪いかな?」
 瑞佳がおそるおそる答えると、慌てたように浩平が熱弁をふるいだす。
「なにいぃっ!危ないから重心を低くして半身で駆けていけといったのはおまえじゃないか?」
「そうなのっ!?」
「言ってない言ってない!」
 少女の顔が怒りで真っ赤に染まる。こういうふざけてはいけない雰囲気に異常に敏感な浩平はいきなり走り始めた。仕方なく瑞佳も小さくごめんね、と呟いてから浩平の後を追って走り出した。
「傷ついた少女を置き去りにするとはなんてやつだ長森。」
 予鈴の鳴り響く廊下を歩きながら浩平はとんでもないことを言う。
「だって私悪くないもん・・。」
「まあ、気にするな。見たこともない制服だったし、もう二度と会うこともないだろう。」
「・・・・・・・・・そうだね。」
 瑞佳は浩平には気付かれないように小さくため息をつくと自分の席に座った。入れ替わるようにして担任が教室の中に入ってくる。続いて先程の少女。少女の姿を目にして教室の男子生徒が獣にも似た咆哮をあげながらウエーブを開始する。ちらっと浩平の方に視線を向けると、浩平もまたこちらの方を見つめている。瑞佳が浩平に向かって小さく頷き返すと、浩平は何やら複雑な表情で転校生である少女の方に顔を向けた。
 
「浩平、ほら起きて!」
「いつもすまないねえ・・。」
「おじいちゃん、それは言わない約束でしょう・・。」
「・・・・長森、そうやって真顔でぼけられると俺の立つ瀬がないんだが・・。」
 起き抜けのくせに、なんでこういうことには浩平は良く頭が回るのか?瑞佳は内心不思議に思いながらもあまり相手にせずに制服と鞄を浩平に押しつけた。
 たったったっ・・・。
「しかし、なんだな。毎朝こうしていると、俺は長森がいなければろくに学校に行けないんじゃないかと錯覚する時があるな・・。」
「・・・多分錯覚じゃないよ・・。まったく、ちゃんと感謝してよね。」
「ふむ・・・じゃあ今度デートにでも誘ってやろう。」
 たったったったたたたたっっったたっ。
 いきなり足並みがそろわなくなった。
「はいっ?・・・誤解されるよ?」
「別に誤解されてもかまわないぞ。」
「わっわっ浩平バカだよ。わたしなのにっ、わたしなのにっ、わたしなのにっ。」
「落ち着け長森・・・。俺はお前の方が心配だぞいつも卑下ばかりして・・・。」
 浩平の瞳が一瞬優しい色をたたえたように見えた。
「私は1人で何でもできるから大丈夫だよ・・。」
 この世界での自分の存在意義を考えれば矛盾した会話である。瑞佳という存在は浩平が望むならばずっと側にいる。この世界から浩平が消えれば瑞佳もまた盟約から解き放たれここにいる必要もない。
 瑞佳はふと空を見上げた。あの青い空は遠い遠い別の世界。そのことに浩平が気付くのが早いのか、それとも瑞佳という存在が浩平にとって不必要になるのが早いのか?その答えはまだ見つかりそうになかった。
 ただどちらを選んだとしても結末は同じ。浩平という魂の消滅、それ以外にはない。
 
 ざあああぁ・・・。
「学校をさぼるには絶好のお天気だな・・。」
 窓の外を見れば浩平なら確実にそう言うに違いない。しかし、部屋はもぬけの空で・・・加えて言うと家の中にも気配はない・・。
 瑞佳は首をひねりながら学校へと向かう。その途中、住宅地の中にぽつりと存在する空き地の中に2つの傘を見かけた。
 終わりの始まり。
 ふとそんな安っぽい言葉が脳裏に浮かぶ。あの2人が出会うことを誰が望んだのであろうか・・。浩平の『えいえん』の中で時が動き出した。弱々しく、いつその刻みを止めないとも限らない小さな時計。でもそれは『おわり』に向かう旅。
 瑞佳はしばらくその光景を眺めていたが、やがて学校に向けて歩き始めた。
「長森、里村ってどんなやつ?」
「可愛い子だよね・・?」
 里村茜・・・珍しい子だったから良く覚えている。2人一組でこの世界にやってきた変わり種。彼女もまた浩平と同じように、浩平とは違う『えいえん』を求めて。そのうちの1人はもうここにはいない。彼の求める『えいえん』と彼女の求めた『えいえん』はあまりにも違っていたから・・。魂の強い方が生き残った・・・ただそれだけ。
 ただ、茜は『彼』の魂と融合してこの世界にいる。彼女がこの世界に存在するかぎり『彼』もまたこの世界に存在することになる。ということは、彼女はこの世界から永遠に抜けられない。ここが決して彼女の望まない世界だったとしても・・。最近ふと思うことがある。それは魂の消滅よりも残酷な悪戯ではないのかと・・。ただ彼女達はこの世界におけるイレギュラーな存在。その存在が他人にどう影響を与えるのかは自分にもよくわからない。
 瑞佳はそこまで考えると小さくのどの奥で笑った。自分にとってはどうでもいいことである。ただ願わくばこの状態がもう少し続けばいい、そう思っている自分がいる。
 遊びはいつか飽きる。それでも、飽きるまでは楽しいものには違いないのだから。
 
 ずっしゃあああぁぁぁぁぁっ。ごろんごろろごろんごろっ。
「・・・むう。自己記録を更新してしまったようだ。」
 向上心にあふれた台詞がこれほど似合わない人物と状況というのも珍しい。そして状況が状況なら拍手の1つも貰えたかもしれない大記録に対して与えられたのは凄まじい殺気と聞くに堪えない罵声。少女とぶつかる瞬間に地面を強く蹴った浩平の動きは実に理想的な角度で鳩尾を肘で突きあげる結果となっていた。それで立ち上がれるところがこの少女もまた並ではないことを証明している。
 だが、ダメージに耐えかねたのか、バランスを崩して少女は片膝をつく。
「どうした七瀬?ずいぶんと具合が悪そうに見えるぞ?」
「・・・いつか刺してやるから・・。」
 実に高校生らしいさわやかな朝の一こまといえよう。
「ふむ・・具合の悪い七瀬を病院まで連れて行くということで学校を休むというのはどうだろう?」
 浩平の爆弾発言が理解できるまでに数秒の間があった。それぞれ3人の心に浮かんだのはどのような感情であったのか?
 ・・・病気がちな線の細い美少女・・・いける!いけるわっ!・・・
 ・・・何か騙されてるような気がするけど、七瀬さんが心配だし・・・
 ・・・問題は長森か・・・
 三者三様の見事な団結によって3人は6時間目から登校することになった。
「3人そろって大胆な遅刻だな・・。」
 呆れるのを通り越して感心したような住井の呟きに素早く浩平が反応する。心の中のやましさがなせる反応速度であろうと瑞佳はため息をついた。
「不可抗力だ。さぼるつもりならこうしてやってこない。」
「それはどうかな?折原1人ならともかく長森さんに説得されたんじゃないのか?」
 やたらうんうんと頷く住井の両肩に浩平はそっと両手を置き呟いた。
「真実というのは常に酸っぱいブドウでな、誰も見向きしてくれないのさ。」
「住井君、私が少しからだが弱いせいで2人に迷惑をかけてしまったの。そんな目で見ないであげて・・。」
 ほぼ同罪の七瀬が巨大な猫をかぶりながら浩平をフォローすると、住井は渋々と追及の手を引っ込めた。そんなやりとりをしりめに、瑞佳は自分の席へと避難した。
 
 自分の方を興味深そうにみつめる視線に気がついて、瑞佳は昼食の手を休めて七瀬に話しかけた。
「七瀬さん、私の顔に何かついてるかな?」
「瑞佳ってば、よくあんなのと一緒にいられるわね?」
 七瀬は顎で『あんなの』を指し示してそう言った。どことなく自分の感情を無理に抑えつけているような響き。
「・・・ひょっとして授業中に浩平が何かした?」
 おそるおそる尋ねるような瑞佳の言葉に反応したのか、七瀬のこめかみの辺りを血管が暴れ始めている。
「ちゃんとしつけといてよ・・・。」
「・・・・なんで私が?」
 小首を傾げた瑞佳の目の前で、七瀬は手のひらをばん、と机に叩きつけた。
「ペットの躾は飼い主の義務でしょうが・・?」
「・・・ペット?」
 七瀬の指がびしっと浩平に向かって突き出される。
「・・・飼い主?」
 びしっ。
 今度は瑞佳に向かって。
「はいっ?」
「・・・・別に見てたらわかるわよ。つき合ってるんでしょ?あんたたち。」
 ぶんぶんぶんっ。
 ちぎれ落ちそうなほど激しく首を振る瑞佳の様子を見て、おかしいな?とばかりに七瀬は首を傾げた。
「幼なじみだよ・・。だから一緒にいるの。・・・約束したから。」
「別に幼なじみって言ったってピンきりだと思うけど・・・。まさかっ!」
 七瀬の顔が不意に赤く染まった。
 ・・・七瀬の考えが間違っていることにはらたいらに3千点。(意味不明)
 七瀬がもじもじといいにくそうに瑞佳の耳元に唇をよせて呟いた。
「・・・ひょっとして奴隷?」
「七瀬さん・・・そういう獣がごとき想像は口に出さない方がいいと思うよ・・。」
 平和な昼休みは過ぎていく・・・。
 
「じゃあ先輩、また明日。」
 浩平が手を振る先には2人の先輩の姿。
「川名先輩と知り合い?」
「最近な・・って長森はみさき先輩のこと知ってたのか?」
 驚きと感心の入り交じった表情で浩平が振り返る。
「・・・川名先輩は有名だよ。多分知らなかったのは浩平ぐらいだと思う・・。」
「なんで?」
 こういう台詞が自然に出てくるから浩平はいろんな人に嫌われないのだと思う。
「世の中が浩平みたいな人ばっかりだったら、あの子も『ここ』にはいなかったでしょうね。・・それがいいことか悪いことかはわからないけれど・・。」
 世の中の醜いものを見過ぎた少女。
 相対的な重さはともかく、少女はその絶対的な重さに耐えられなかったのかもしれない。
 ・・・それだけのこと。
「・・・何のことかわからないけど褒めているようだから良しとしよう。」
 誇らしげに胸を張る浩平に向かって、瑞佳はため息をついた。
「・・いいね、浩平は幸せで・・。」
「・・・そうだな、とても幸せだな。」
 その言葉が真実であるならば・・・・おわりは既に始まっている。
「綺麗な夕焼けだね。」
 浩平は瑞佳の言葉にただ頷き、視線をそちらに向けた。
 西の空が赤く燃えていた。
 冬の夕焼けは幻のように刹那的で、他のどの季節よりも美しく見えた。
 
「長森、俺はお前が好きだ。つき合ってくれ。」
「うん・・いいよ。」
 瑞佳がそう答えると、浩平は何とも表現しがたい表情を見せた。驚き、照れ、困惑、怒り、悲しみ、哀しみ・・そんな諸々の感情が入り交じっているような不思議な表情。瑞佳は浩平のそんな表情を見るのが嫌で、足早にその場を立ち去った。
 浩平に自覚があるのかどうかは知らない。
 瑞佳の存在に対する猜疑心は、そのままこの世界に対する猜疑心につながる。
 浩平が瑞佳の存在を求めれば求めるほど、その疑いの心は度合いを強めるだろう。なぜなら瑞佳は盟約に逆らうことができないのだから。そしていつかは気がつくに違いない。
 『なぜ瑞佳は自分と一緒にいるのだろう?』
 それは終わりの始まり。
 いや、もう既に始まっていたのかもしれない。
 
 瑞佳が訪れるより先に浩平は家を出る。
 掴んだ手を振りほどかれる。
 照れというより、瑞佳という存在を極端に恐れている様にも見えた。何かを失うことに対して極端なおびえを見せる子供のように・・・。
 その結果、何も手に入れられずに心は自己の内部へと向かう。
「ねえ瑞佳、この人誰?」
 七瀬の何気ない一言。
 理由はわかっている。人間世界での浩平の記憶がこの世界における浩平の存在を浸食し始めたから。
 理由はわかっている。
 浩平は出会ってはいけない人と出会ってしまったから・・。
 その出会いそのものも誰かがそう望んだから。それは浩平の心の奥深くに埋もれていた哀しみの記憶だったのかもしれない。その記憶は、誰か解り合える存在を切実に求めたのだろうか?
「ん?なにかな?なにかな?」
 浩平と七瀬の顔を交互に見比べながらも、頭の中では休むことなくいろんな事を考えていた。この世界から消えようとする存在。人間世界の記憶を持つその存在はこの世界にとって危険な存在。だから消えていく。
 本来消えるはずだった『彼』は茜の中にいる。彼の名前は確か氷上シュンといった。
 『彼』は浩平の中の『記憶』と『現実』をつなげてしまった。だから浩平はここから消える。
 誰がそう望んだのかは知らない。
 ただ一つだけわかっているのは『瑞佳』はそれを望んでいないということ。やはりこの世界における自分はただの異邦人であることを強く意識し、そして哀しく思った。
 
「学校に行かなくていいのか?」
「・・・別にかまわないよ・・。」
 盟約。
 私はあの時の盟約に全てを絡め取られてしまったのかもしれない。浩平がこの世界に居続ける最期の一瞬まで彼の求めるものを与え続けなければならない。・・・いや、正確には与えてあげたいと私は願っているのだが・・。
 私の膝の上には、おだやかな微笑みを浮かべて微睡んでいる浩平の頭がある。それでも目は覚めていたのだろう、おだやかな優しい声で話しかけてきた。
「・・・そう言えば名前を聞いたことはなかったな。」
 意外な質問に変な顔をしてしまったのかもしれない。浩平は小さく笑った。
「・・・私は瑞佳、長森瑞佳だよ・・。」
「・・・そうか・・。」
 浩平はそう呟いて目を閉じた。
 それから私達はとりとめもないことを話し続けた。沈黙が怖かったのかもしれない。私と浩平が出会ってからの時間は一瞬だったのか、それとも限りなく永遠に近かったのか?その時間は、今確実に終わりを告げようとしていた。
 私達は本当に長い間休むことなく話し続け、ついにそれがとぎれるときがきた。
「今までありがとう・・・・瑞佳。」
 不意に膝の上の重量が消失した。
 足のしびれやぬくもりが少しずつ希薄になっていくのを感じる。
 私はそっと膝の上に手をのせた。そしてその事実を受け入れたとき私は泣いていた。
 
 浩平が消えると、私は耐え難い慟哭に襲われた。
 だから今こうして私は『瑞佳』としてこの世界にいる。この世界の住人になってふと気がついたことがある。浩平と自分が作りあげた絆は今も有効なのだろうか?
 以前の記憶を持つ私はこの世界においてイレギュラーな存在。『茜』と『シュン』は求めたものが違った。だから『シュン』はあんないびつな存在になった。
 もし彼らが同じものを求めていたらどうなっていたのだろう?その答えがもうすぐわかるような気がする。
 私はただその時を待って生きている。もしその答えが私の求めるものだったならばこの世界で『えいえん』を見つけてみたいとそう願っている。
 
 
 
 

 疲れた・・・。あの穴だらけの設定もこれなら多少形になっていると思います。ただ、瑞佳の心情の書き込みなんかはほとんどしていないので展開が突然すぎるのはわかってますが、どっちにしろゲームのシナリオをおうことになってしまいそうだから敢えて書きませんでした。(笑)
 ゲーム中に挿入される『果てのない海原』とかは魂消滅後の思念体による主人公との会話にしようかと考えてたんですが、宗教が入りそうなんでやめました。
 一応いろいろ考えたんです。キリスト教における『マリア様』の存在する世界(教義によって変わる)・・時間軸から切り離されている。・・・『マリア様』が常にこの世界のために祈っているという事に対する説明付け。などから、ひょっとすると宗教ばりばりの電波世界設定なのかな?とか悩みました。が、さすがに私も命が惜しいのでそういうのはやめましたけど。(笑)
 しかし、誰かこのゲームの世界観をきっちりと私に説明してくれませんか?いろんな意味でこれだけ悩んだゲームも珍しいですよほんまに。

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