約1年ぶりに訪れた和子の墓はわりあい綺麗に見えた。
 あの事件からもうすぐ3年になる。
 事件直後、閉鎖を噂されたファンタージェンが持ち直すのを待って俺は仕事を変えた。
 だから、あそこを訪れるのは2年半振りになる。
 目を閉じると和子の顔が浮かんでくる。ただ、今日の和子は笑顔ではなく、何かを哀れむような表情で俺をみつめていた。
「じゃあな、和子。またくるから・・。」
 もうこれないかもしれないけど・・・
 和子の墓に背を向けた俺の目に意外な人物の顔が映った。いや、正確には人物達というべきかもしれない。
「久しぶりぞな・・。」
「佐渡島警部・・・。」
 忘れられるわけがない特徴的な顔。それに較べて胡桃沢さんは少し落ち着きのある外見になっている。それはそうだろう、3年経てば人は変わるものだから。
 俺は黙って軽く頭を下げた。・・皮肉ではない、無能な警察に対して俺は礼が言いたい位なのだ。
「・・・あれから、3年ぞな。」
「・・そうですね。」
 奇妙な沈黙である。胡桃沢さんは少し悲しげな瞳で俺を見つめている。
「まだ、忘れられない、か?」
「・・・無理な相談ですね。」
 警部が沈黙を破って口を開いた。
「あの事件は・・・」
「もう止めましょう。・・・終わったことです。」
 言葉を遮った俺を警部は鋭い目つきで眺めている。
「ずいぶんと鍛え直したみたいだが・・・」
「仕事柄仕方のないことですから・・。」
 突然それまで黙っていた胡桃沢さんが口を開いた。静かな声だった。
「本当に終わったんですか?」
「井上は友人だった・・例えどんな罪を犯したとしても。そして彼は死んだ。」
 嘘はついていない。井上達4人は過去に罪を犯した。だが、彼らが俺の友人であり、その内の1人が俺の恋人であったこともまた事実である。
「死んだ人間を裁くことはできない・・。」
 そう、死んだ人間は・・・。
「お主、あの事件の真犯人を知っているんじゃないのか?」
「言葉の意味が良くわかりませんが?」
 警部はつまらないことを喋ったという風に顔をしかめた。忘れてくれとでも言いたいのだろう、警部は右手を軽く振った。
「では・・」
 急がなくても近い内に会うかもしれない、あの2人には・・。当然そうならないことを願ってはいるのだけれども。
 
 人が人を裁くなんて越権行為であると人は言う。そうかもしれない。だが、人以外の何が人を裁くというのだろう?また人ではないものをどうやって裁けばいいのか?
 人は神になれない。だが、違うものにならなれるのだ。
 俺はその事を良く知っている。
 ここに客として訪れるのは初めてである。俺は入り口付近のショップをのぞき込んでみた。あれから、2年以上経ったのだから仕方のないことかもしれない。
 喧噪に混じって、繁みの中から微かな、くぐもったような声がする。俺は苦笑いしながら繁みの中をのぞき込んだ。そしてしばらくその場で待っていた。
 ひょこっと繁みから顔を出した女性に声をかけた。
「久しぶりだね、さくらちゃん。」
 さくらは不思議そうな顔つきで俺の方を眺めている。やがて、さくらの手が俺の股間に伸びズボンの上からナニを握りしめた。
「あーっ、斎藤さんだ。」
「何故、それでわかる?」
 俺は苦笑した。というか、苦笑するしかない。
「急にいなくなっちゃうんだもん。じゃあ、再会の記念に・・」
 さくらはそう言って俺を繁みの方に招き入れようとするが、俺は首を振って断った。不満そうな表情を見せていたさくらも何かに気が付いたのだろう。彼女には珍しい寂しそうな表情で俺を見つめている。
「さくらなら、忘れさせてあげられるよ・・。」
「まだ忘れたくないんだ・・。」
 じゃあ仕方ないね、とばかりにさくらが微笑んだ。
 いい笑顔をするようになったと思う。きっといろんな経験を積んだのだろう・・。何せ2年以上も会ってなかったのだから・・。
 俺はさくらと別れて中華料理屋へと向かった。丁度昼時でもあり、混みあった客にてんてこまいの様子である。
 ある種の感動を見るものに与えずにいられない絶妙のバランスをもって、しなやかな体つきの女性が忙しげに働いている。しかし走り回る子供達が彼女のバランスを崩し、あわや大惨事の一歩手前で料理の盛られた器は俺の両手と右足へと移っていた。
「・・たまみちゃんかな?」
 女性は軽く頷くと、俺の持つ料理を手早く客のテーブルへと配り終えた。
 それと同時に右のハイキック。同時に軸足をねじりこむことで軽量のハンデを補う威力を作り出している。俺はスウェーでその蹴りをかわした。が、一旦俺の目の前を通り過ぎたその蹴りが戻ってくる。かけ蹴りという技だ。
 俺はかけ蹴りをしゃがみ込んでかわすと彼女の軸足を軽く刈ってやった。大股開きでひっくり返る姿を見て、若い女性には酷な攻撃だったかもしれないと俺は後悔した。
 しかし、当の本人は全く気にもしていないようだ。
 俺は大喜びのたまみちゃんに引っ張られるようにして料理長のハーンさんに再会することになった。
「ずいぶん鍛えたようだな・・。」
 ハーンは俺を一目見るなりそううなった。しかし、ここにはとんでもない戦闘力の人間が多い。無論今の俺なら遅れはとらないだろう・・・あの時のようには。
「今日はいったいなにしにきたんだ・・・」
 ハーンはたまみにひじ鉄をもらってしまったという表情になる。・・・あまり、気をつかう必要はないんだけど。
「・・・墓参りです。」
 俺は努めて明るく、懐の花束を指さした。
 和子はこのファンタージェンで死んだ。・・・正確には病院で死んだのだが・・。つまるところ和子は2度殺されたのだ・・。
 俺はドラクル城へと向かう。
 一応昔なじみには全員会っておきたい。
 パレードを寂しそうな顔で見つめているひかるの肩をぽんと叩く。え?という風に振り返るひかるの顔が笑顔になるのにそう時間はかからなかった。ひかるは慌てて近くにいた志津子を呼んだ。
 2年以上も経つのに暖かく迎えてくれる事がとてもありがたい。
「・・・私は未だにダンサーの卵。・・・でもどうやら無精卵みたい。斎藤さんは?」
「俺は売れない警備員ってとこだな。」
「警備員が何を売るのよ?」
 と、これは志津子のつっこみである。相変わらず黙っているときにしかお嬢様には見えないようだ。
「そうそう知ってる?左遷された天野女史がここの責任者に返り咲いたのよ。」
「へえ、でもあの人の実力なら当然かもね。」
 じゃあ、下手をするともう一度左遷されることになるな・・・。申し訳ない。
「牧子もまだここで働いてるんだけど・・・」
 志津子と一緒にきょろきょろとあたりを見回してみるが姿が見えない。
「どこに行ったのかしら?」
「まあ、また後で顔を見せるよ・・。」
 何気なく花束を持ったままの右手をあげたのだが、その花束をみてひかると志津子の表情がやっぱりというように曇る。特にひかるはあからさまに俺から視線を逸らそうとしている。あの事件の後、献身的に俺を支えようとした彼女の気持ちに答えることはできなかった。あの頃既に俺の心の中には今日という日が計画されていたのだから。
 
 さて、これからどうしようか?
 俺は何気なく隠しカメラの1つにウインクしてみた。しばらくすると、警備員の1人が俺の方に近づいてきて口を開いた。
「あの、ひょっとして斎藤剛史さんですか?」
 どうやら、今日の俺はついているようだ。
「由佳里ちゃんかな?」
 その警備員はオペレーター室まで連れて行ってくれた。そこで懐かしい女の子、と呼ぶには失礼かもしれないが、あまり外見的に変わることの無かった由佳里は相変わらず可愛い女の子に俺には見えた。
「お久しぶりです。いきなりウインクなんかするから笑っちゃいましたよ・・。」
「ごめんごめん。ひょっとして?という軽い気持ちでやったんだけど・・」
 由佳里は複雑そうな表情で俯いた。
「あ、でも・・今日は斎藤さんが来るような気がしてましたから・・。」
「天野女史は元気?なんか返り咲いたんだって?」
 暗くなりそうな話題を強引に俺はうっちゃった。それを聞いて由佳里はぎこちなく笑った。
「最近機嫌悪いんですよ・・。会わない方がいいんじゃないですか?」
「むうっ。しかし、せっかくだし、天野女史にストレス発散でもしてもらおうかな?」
 由佳里は軽くため息をついた。
「そうして貰えると助かります。あの調子だと新人の女の子とかが怖がっちゃって。」
 俺はおそるおそる懐かしいドアを開けた。
 天野女史こと美雪は眼鏡のレンズをきらりと光らせながら顔を上げた。その表情が俺の顔を見て崩れた。彼女のこんな表情を見られるとはやはり今日の俺はついている。
 美雪はやけに楽しそうに微笑むと、ずり落ちた眼鏡のフレームを指先で調節しながら叫んだ。懐かしい響きである。
「減俸!」
「どこから引くおつもりですか?」
 俺は今日何回目になるか覚えていない苦笑を浮かべた。
「あら、由佳里ちゃんにハックして貰えば不可能でもないのよ・・。」
「勘弁してください・・。給料安いんですよ・・。」
 などと馬鹿話に花が咲いた。しかし、相変わらず年齢を感じさせない若々しさと美貌である。四捨五入すれば40の筈なのに・・。(笑)
 ふと美雪が真面目な顔つきで俺の持つ花束に目をやった。その瞳にどんな感情が浮かんだのかはレンズの反射によって読みとることが俺には困難だった。
「この時期になるとあの事件のことを思い出すわ。・・あなたは忘れたことなど無いでしょうけど・・。」
 美雪は音もなく立ち上がると窓ガラスに顔をよせた。
「井上はあの事件の犯人ではないわ・・・。彼は頭が悪かったもの・・。そう考えないと全てのつじつまが合わないものね。」
 美雪の理知的な美貌が冷たく冴え始める。
「笹塚と島本の死はコンピューターのミスではなくて間違いなくあの一連の事件。その時、井上は死んでいた。・・・聞きたくなければ聞かなくていいのよ?」
 俺は黙ったまま視線でその先を促した。
「草加部は生きてはいない。なぜなら、井上の『そんな馬鹿な』という言葉と笹塚のあの態度がさししめすもの・・・事故かどうかは知らないけれど井上達は草加部を殺した。」
 美雪はふうっと息を吐いた。
「私がわかるのはここまで・・。でも、あなたは知っているんじゃなくて?」
「何を・・・ですか?」
 美雪は肩をすくめた。もし彼女が警察の一員であるならば間違いなくあの事件は3年前解決していただろう・・。
「ねえ、勘違いかもしれないけど私また左遷される事になるのかしら?」
「さあ?」
 美雪は眉をひそめながら大きくため息をつき、ぶつぶつと口の中で何かを呟いている。
 やがて、引き出しの中からカードのようなものをとりだして俺の方に投げてよこした。
「これは?」
 俺は反射的に受け取ったものには目もくれずに美雪の方を見つめる。
「・・・関係者証明カードよ。・・・あなたの好きにしなさい・・。」
「・・・・機嫌が悪いと聞いてたんですが?」
 美雪はにっこりと笑ってポケットの小型ラジオを取り出した。
「さっき大穴が来たの。・・ここ一ヶ月の負けを全部取り返したわ・・。」
「私情を仕事の場に持ち込むのは良くないですよ。」
「あら、私はあなたと違って人間なんだもの・・。でも、本当は誰もが心の中に鬼を飼っているのよね・・。」
 鬼。なるほど、上手いことを言う。
「・・・ギャンブルはほどほどに・・。」
 俺はそう言い残して総責任者の部屋のドアを閉めた。俺を哀れむような、それでいて優しい美雪の視線が俺の心に残った。
 
 天野女史に貰ったカードのおかげですんなりと車両倉庫へと入れた。入ってしまえばまだ数人知り合いがいるおかげで特に問題はない。
 倉庫の片隅に俺は花束をそっと置き目を閉じた。・・・和子の顔が見えない。
 俺がこれからすることを怒っているのだろうか?
 別に殺すと決めたわけではない。それを決めるのは犯人なのだから。
 草加部を殺した井上達はそのことを常に気にかけていた。井上は他人を(特に女性に対して)傷つけることで、梶原は明るく振る舞うことでそれぞれ罪の意識を忘れようとしていた。京と和子は常におびえながら毎日を過ごしていた。
 井上はあの時死ななければ次々と犯罪を重ねていただろう。他の3人はおびえながら毎日を過ごすことになっていただろうか?
 彼女は草加部という愛する人を奪われて3年間どんな思いで過ごしたのだろうか。ゆっくりと積み重なっていく感情を見つめながら真相を追い求めた彼女。
 冷徹に京と和子にとどめをさしていった彼女。彼女は心の中の鬼に全てを売り渡してしまったのかもしれない。
 俺は彼女を裁くために3年待った。
 そうでなければ彼女の行動が理解できないと思ったからだ。殺意という激しい感情を3年もの間持続させること。それはとうてい人間には不可能であった。
 だから、おそらく彼女は鬼になったのだろう。
 俺が彼女を殺すということはあの時の彼女の行動を是認することだ。
 つまり、彼女を裁くことはできない。・・・だが、それはあくまで人間の考え方に過ぎない。・・・俺もまた人間であることを放棄した鬼なのだから。
 
 閉園後のドラクル城の展望台へと足を運んだ。
 草加部の眠るこの城。彼女は一生ここから離れるはずはない。
 闇の中にとけ込むような黒い衣装はウエディングドレスをそのまま黒く染めぬいた喪服の様な印象を受けた。
「お久しぶりです・・。斎藤さんを待っていました。」
 3年前と変わらぬ顔とその声。まるで彼女は年をとることを拒否したかのようにそこに静かに立っていた。
「俺が何をしに来たか君ならわかるだろうし、また俺の行動を否定はしないはずだな。」
 背後に迫った影を俺は振り返りもせずに一蹴する。
「友蔵さん、あなたでは今の俺に勝てない・・。」
「・・・そうかもしれん。しかし、」
 立ち上がりかけた友蔵を牧子の声が制止した。
「止めてください、御養父様。私が今日まで生きていたのはこのためなのですから。」
 なおも攻撃を仕掛けようとする友蔵を俺は静かにさせた。
 念のため脈を取ってみる。・・・気を失っているだけだ。
 俺は牧子の方を振り返った。
「1つ聞きたい・・。復讐を遂げて満足できたのか?」
 月明かりに照らされた牧子の顔は美しかった。内面を失った人形を連想させる美。
「死んだあの人は帰ってきませんでしたから・・。」
「君は勘違いをしている。」
 俺はゆっくりと牧子の方へと近づいていく。
「復讐というのは自分の手で直接命を絶って完成する。君は草加部のシステムを使って草加部に復讐させたかっただけなんだよ・・。」
 牧子の細い首に食い込んだ指先に感じる脈動が命そのものを連想させた。牧子は抵抗もせずに目を閉じた。目尻のあたりに涙を浮かべ喜びの表情にも見える。
 俺は牧子の首から手を放した。
「鬼が人間に戻れるとはしらなかったな・・。」
 牧子は咳きこみながら不思議そうに俺の顔を見つめている。俺はにやりと笑った。
「・・・殺してくれないんですか?」
「罪の意識があるんならそのまま生きていてもらおう。それが嫌なら、自分で死ね。」
 牧子の打ちのめされた表情に俺はいたく満足を覚えた。
 わざわざ牧子の魂を解放させてやることはない。俺の復讐を達成させるために生きていたなどと言っていたが、彼女は単なる臆病者に過ぎない。自らの手を汚さず、自首も自殺もできない臆病な魂。それでも聡明な彼女はいずれ死を選ぶだろう。彼女にとってそれが苦痛から逃れる唯一の手段。
 俺はドラクル城を後にした。
 
「・・このカード返しますね。」
「終わったの?」
 机に座ったままぼんやりと俺をみつめる美雪に対して俺は肩をすくめた。
「さあ、人を裁けるのは自分自身だけですから。・・・自分を裁けない人間は人間じゃないですしね・・。」
 俺は窓から闇の中のドラクル城を眺めてぽつりと呟いた。
「これからが終わりの始まりなんですよ・・。」
 くぐもったような笑いが俺ののどから漏れ出ていた。
 
 それから半年後。
 ファンタージェンのドラクル城が深夜崩れ落ちたという記事が新聞に載った。俺は予想より速い結末に鼻をならして目を閉じた。
 あれから和子の顔を見ることができなくなった。
 城のがれきから出てきた白骨死体から警察はあの事件の全貌を掴むだろう。牧子が恋人の眠る城と運命を共にしたことについては別段驚かなかった。予想できたことである。
 俺は休みを取って和子の墓参りに出かけることにした。下手をすると今回の事件の容疑者としてしばらくいけなくなるだろうから・・。
 和子の墓の前に座る先客の姿を認めて俺は足を止めた。
「胡桃沢さん・・。」
「北沢牧子さんは最近ノイローゼ気味だったそうよ・・。そして、彼女の持っていたシステム・・。3年前のあの事件は・・・」
「終わったことです・・。そうじゃないんですか?」
 本当にこれで全ては終わったのだから・・。
「そうかしら・・私にはまた救われない魂が1つ生まれたような気がしてならないのだけど・・。」
「それは、仕方のないことでしょう・・。」
 俺は墓に水をかけた。
 ゆっくりとたれる水が和子の涙のように見えた。
 
 
 

 思いっきり殺害しようかと思ったのですが、それはまずいなと思ったせいでちと話自体が一貫性を失ってますが気にしないでください。
 和子が殺されたときはすげえブルーになりましたよこのゲーム。(笑)なかなかよろしいゲームです。でも個人的には初代の方が傑作だと思ってます。二代目は秀作、さて、三代目はどうでしょうか?
 けど、負けの美学というか和子の墓の前で泣き崩れるエンドとか、ひかるの活躍をそっと見守るエンドとか、あまり幸せじゃないエンドに心惹かれてしまう自分はちょっと変なんでしょうか?このゲームヒントが多すぎたので謎解きとしては?ですが、秀作であることは間違いないです。復讐がメインなので、初代のように深入りしすぎて殺されたりしないところが(例外も1つ)不満ですが・・。
 最後の『救われない魂』は主人公のことなのかそれとも牧子に心惹かれていた誰かなのかの判断はみなさんに任せます。あえて、どちらにもとれるように文章をすすめておきましたので作者の考えは気にしないでもいいです。
 牧子は罪を隠したまま毎日を過ごす井上達を人間と認めなかったのか、それとも自らの殺意のままに復讐を遂げたのかはプレイヤーの判断にゆだねるしか無いところです。ここでの主人公はより深い苦しみを与えるために牧子の命を助けましたが、ここらのくだりは読者が納得できるかできないかの分かれ目になりますね・・。
 まあ、多少に関わらず殺意を自覚したことのある人間は数少ないのではないかと自分は思ってます。殺意は決して怒りの延長にある感情でもないし、『殺してやろうか』という気持ちでもなくて、今まさに誰かの命を奪おうとしている自分を冷静に観察した上でさらに一押ししようとする感情だと私は思ってます。
 ・・・あまり深読みしないように。単なる自分なりの定義にすぎませんので・・。

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