昔々あるところに、高い高い塔が立っていました。
その雲よりも高いと思うような塔には入口がなく、一体この塔は何の目的で建てられたのか周囲の人間にはさっぱりわからないでいました。
でも、実は……この塔のてっぺんには、1人の女の子が閉じこめられていたのです。
女の子は何故自分がこんな所に閉じこめられているのかわかりません……不思議な魔法でもかけられているのか、時間になると食事の支度がしてあったり、入浴の準備が為されたりしているので生きていく分には何の問題もありませんでした。
しかし、部屋の中と、窓から見える景色……それだけが女の子の世界の全て。
女の子が、一日の大半を窓の外を眺めて過ごすようになったのも無理はありません。
朝も、昼も、夜も……ただ窓の外を見つめ、ここから外に出たいと願っていたある日……
「それ、リーナが書いたの?」
少年の手からひったくるように奪い取ったノートを旨に抱えたまま、リーナは顔を赤くして俯いた。
また笑われる、そう思ってきゅっと唇を噛んだ瞬間……
「へえ、すごいなあ」
お愛想でも何でもなく、ただ感心したという口調が、リーナの顔を弾かれたように上げさせた。
「……笑わない…の?」
「何で?」
「だって…」
ランディは笑ったもの……という言葉をのみ込んだ。
のみ込みはしたのだが、少年は全てを察したような表情を浮かべて言った。
「リーナのそれ、みんなが笑った?」
「……」
リーナは首を振った。
このノートの存在……と言うか、リーナが自分で物語を書いたりしているのを知っているのは母とマリン、そして以前このノートを拾ったことがあるランディぐらい。
母とマリンは笑わなかった……が、それはおそらく違う理由で。
「リーナは、この村の外に出たことがある?」
「……ううん。お母さん、そういうの嫌いだから」
それに身体が弱くて……という言葉をのみ込む。
「ボク、一度だけ王国の首都に行ったことがあるけど……人がいっぱい、いろんな人がいた」
「……」
この少年は何を言いたいんだろう……と、リーナは心の中で訝る。
「笑う人もいるかも知れないけど、笑わない人もいる……多分、それだけのことだよ」
少年は一旦言葉を切り、そしてにこっと笑った。
「ボクは笑わない」
「ジャンくん……」
笑った人間をただ否定するのではなく、全てを包むような……暖かい言葉だった。何故かちょっとだけ涙が出そうになって、リーナはジャンから視線を背けた。
「ど、どーしたの、リーナ?」
「なんでもないの…」
指先で目元を拭い、リーナはジャンに向かって笑いかけた。
「目にゴミが入っただけ」
体をこわしてから憂鬱でしかたなかった眩しい陽射しが気にならなかった……そんな夏の日の出来事からリーナの夏休みが始まった。
「やあお嬢さん、いい月夜ですね」
「……あなたは、誰?」
それは、ある月夜の晩に窓の外に現れました。
「泥棒さん?」
「いや、そういうわけでは……」
少し気分を害したのか、半透明の羽を気ぜわしげに揺らす……
「それより、こんな良い月夜の下でぼんやりと窓の外を眺めていても仕方ないでしょう……どうです、一緒に散歩でもしませんか?」
自分が求めてやまなかったそれを、何でもない事のように口にする男の人を女の子は悲しそうに見つめました。
「あの……私、飛べないんです。あなたみたいに、羽がないから……」
「リーナ、いつものお薬よ」
「うん…」
カナリア草という可憐な花を煎じたモノで、あの外見からどうしてこんな……と思うほどに、味、匂いともに強烈なシロモノである。
これを毎日飲み続けていたら、大人になる頃には元気になっているだろう……そう言われて、もう何年が過ぎたのか。
本当に効果があるかどうかリーナ自身は疑問を感じているのだが、このカナリア草は何年もかけて成長する花のため、母ローザは最近これを探すのに大変苦労しているようだった。
そんな思いを無駄にすることかできる筈もなく……リーナは今日もそれを飲む。
「……ふう」
最初はあまりのアレさにむせ込んだりしたのだが、最近では喉の筋肉がヒクヒクする程度に耐性はついた。
「お母さん、ちょっと外に出てくるね」
「……気をつけるのよ」
「大丈夫、マリンと一緒だから…」
そう言い残して、リーナは家の外へ出た。
約束はしていないが、今日もマリンは釣り糸を垂らしているのだろう……だとすれば、大体場所は限られてくる。
「あ……」
リーナが思い描いていた3つのポイントの中で、一番近いところにマリンは居た。ルフィーの家を出てすぐの、チョウイの橋のすぐ下手。
「マリン、今日のポイントはここ?」
「うん、今日はちょっと涼しいから……海に近い方がいいかなと思って」
「見ててもいい?」
「いいよ、いつものことだし」
「そうね…」
リーナはちょっと笑い、橋の日陰に腰を下ろした。
「何かいい事あったの?」
「え…」
リーナはマリンの顔を見つめ、そして小さく微笑んだ。
「ええ、あったわよ」
「へえ…」
聞いてもいいのかな……という戸惑いを示すように、ちょっとマリンらしくない言葉遣い。
「ジャン君……私の物語を読んでも笑ったり、バカにしたりしないの」
「ああ…」
マリンは小さく頷き、そして大きく竿を振った。
「いい奴だろ、ジャンって」
「うん…」
「……別に、ランディ達がいい奴じゃないってワケじゃないけどさ」
「うん……そうね」
それっきり2人の会話は途絶え、聞こえてくるのは川のせせらぎと蝉の声……と、リーナが本のページをめくる微かな音だけになる。
「ねえ、マリン……」
「……何?」
「釣り……楽しい?」
「……もちろん」
「……」
「リーナは…」
「え?」
「見てて楽しい?」
「……うん」
マリンはちょっとだけため息をつき、そして観念したように言った。
「またリーナと一緒に走り回りたいから……だから…好きでやってることだから」
マリンは一旦竿を上げて餌をつけ直し、再びラインを投げ込む。
「だから、ぬしを釣るよ」
ごめんね…と言いかけて、リーナはにっこりと笑った。
「ありがとう、マリン」
アカメクラック……その魚の肝は万病に効くという言い伝えがある。
それは、おそらく珍しさから語られだしたことで、実際に効能があるかというと疑わしい……2人はもちろんそれを知っている。
夏休みの間、ほぼ毎日のように糸を垂らす親友マリンの姿から目をそらすべきではない……リーナはそう信じていたのだった。
「それなら……」
パチン、と男の指が鳴った瞬間、女の子は背中のあたりに奇妙な感覚を覚えました。
「え?」
女の子はくるりと振り返……ったつもりが、バランスを崩してしまいます。
「髪を梳くように……優しく空気を掴んでごらん」
ふわ…と、足の裏が床から離れる感覚をどう表現すればいいのか。
女の子は興奮に頬を染め、目を輝かせました。
「私、飛べるの?」
「ええ、飛べますよ…」
「あ、あの……今日は、なんだか身体が軽くて……ちょっと歩こうかな、なんて……」
海からの微風が微かに潮の香りを運んでくるプエルコルダンの朝。
「うん、いいよ」
リーナにみなまで言わせることなく、ジャンは頷いた。
「どこに行く?」
「……お花畑まで」
村の北にあって野生の花が数多く咲く……いつからか、村人達がそう呼び始めた草原のことだ。
リーナのペースに合わせたゆっくりとした足取り……とはいっても、精々が30分程の道のり。
日中は草いきれに包まれる草原だが、陽射しの優しい朝ということでむしろ微かに花の香りがしていた。
「朝露は……大丈夫だね」
「うん、ありがとう…」
リーナとジャンの2人は腰を下ろし、しばらく空を見上げていた。
「……なんだかね、お母さんやマリンにすごくすまないって思っちゃうの」
「うん……」
ジャンは小さく頷き、そして流れる雲を見つめながら呟いた。
「その気持ち、何となくわかるよ……」
「頑張って身体を治さなきゃ……って思っても」
「……」
「ちっとも良くならないからっ」
事ある毎に熱を出し、貧血で倒れ……読書が趣味といえば聞こえがいいが、何のことはなく、みんなのように目一杯体を動かすことができないだけ。
リーナは音もなく立ち上がり、花畑の柵を越えて崖に向かって歩き出す。
「リーナ?」
「羽があったらいいのに…」
「え?」
「私の書いたお話……あの話のように、羽があったらどこにでもいけるのに」
崖の側で、リーナの身体が危なっかしく風に揺れる。
「そうかな?」
「え?」
「あの女の子は、妖精から羽を貰って、本当にどこにでも行けたのかな?」
「……」
「ボクあの話はまだ未完成で……あの女の子は妖精に羽を貰ったからじゃなくて、夢から覚めた後にどこにでも行けるようになるんだと思ってた」
「……」
ジャンはリーナの手を取り、崖の側に立つリーナの身体をそっと引き寄せた。
「……ジャンくんは、そう思ってたの?」
「リーナ…」
「あれは……」
リーナはちょっとだけうつむき、そして言葉を続けた。
「ただの物語だから……私とは、関係ないの」
自分には羽をくれる妖精などいないし、まして人は羽など持てない。
「リーナ、ちょっと背中を向けて」
「え?」
いきなり何をと首を傾げつつも、リーナはおとなしくジャンに背中を向けて座った。
服の上から、リーナの薄い背中をジャンの指先がなぞる。
「ジャ、ジャン…くん?」
顔を赤らめて後ろを振り返るリーナを一瞥もせず、ジャンは指先をリーナの肩胛骨の上でピタリと止めた。
「ここ…わかる?」
「け、肩胛骨でしょ…」
「……ここはね、人間に羽が生えてた時の名残なんだって」
「……名残?」
「うん、そう……でもね」
そう呟き、ジャンはそっとそこをなで始めた。
「目に映る羽はないけれど……みんな、目に見えない羽を持ってる」
「見えない……羽?」
「この骨は……そのためにあるんだ。人には、羽があるってわからせるために」
「……」
「だから……リーナも羽を持ってる」
ジャンの指先から、ジャンの言葉から、リーナは暖かい何かが身体の中に流れ込んでくるような気がした。
「チェインやシンシア、ルフィー……みんな羽を持ってる。どんな障害も飛び越えていく羽を持ってるよ」
「でも……私は」
そんなに強くない……そう言いかけた瞬間、トン、と優しく背中を押された。
「ローザさんやマリンが、村のみんなが背中を押してくれてるよ……」
「あ…」
「ボクも押す」
「……うん」
リーナは、こぼれる涙を隠すために下を向いた。
「元気になるよ、リーナは…」
元気になろう……ジャンの手の温かさを背中に感じながら、リーナはそう思った。
「マリアさん、これ……パンの注文です」
「あら、いつもありがとう…」
「具合はどう?」
「今日は…いいみたいです」
マリアに紙を渡すと、リーナはきょろきょろと視線を泳がせ始めた。
「……ジャンならパンの配達中だけど」
「あ、あ、ああの……別に、そういうわけじゃ…」
顔を真っ赤にして首を振るリーナを優しく見つめ、マリアは言った。
「うふふ……最近ちょっと変わったわね、リーナ」
「え?」
「なんでかしらね?」
ほんの少しだけ意地悪な微笑み。
「…?」
その夜、リーナは少しだけ熱を出した。
「……夏休みももうすぐ終わりかぁ」
「え…?」
ゆったりと水車が回転するのを見つめていたリーナは、マリンの呟きを耳にして顔を上げた。
「終わ…る?」
「何言ってるのさリーナ……」
マリンは一旦竿を上げて、再びそれを投じた。
「後10日もすれば、9月じゃないか」
「え…だって…」
胸がきゅっと締め付けられるような痛みが背中まで抜ける。
あれは……あの言葉は、明日も、今日も……自分の側にいてくれるという約束ではなかったのかな…
ジャンの指先が触れた背中のあたりが……痛い。
「リーナ?」
「ううん、何でもないの……ちょっと、用事を思い出して」
リーナはぎこちなく微笑みながら立ち上がった。
そして、今や村で一番忙しい少年がパンの配達にやってくるのをじっと待つ。
「ああ、こんなとこにいたんだ、リーナ…はい、オミカンマフィン」
ふんわりとやわらかいパンを受け取りながら、リーナはジャンの顔を見つめた。
額に光る汗、日焼けした顔からこぼれる白い歯……自分にはない健康がそこにある。
「ジャンくん……ちょっと聞いてもいい?」
「何?」
「ジャンくんは……夏休みが終わったら帰っちゃうの?」
「……うん」
リーナはジャンから目をそらすと、小さく呟いた。
「また居なくなるなら……来なければ良かったのに」
「え…」
「ジャンくんなんて、この村に来なければ良かったのにっ!」
月夜の下で、女の子は初めて知る塔の外の世界に歓喜しました。
「ねえ、この空はどこに続いているの?」
「あなたの知らない全ての世界に」
「……今、こうして私が目にしているよりもずっと広いの?」
「ええ」
夢中になって飛び続けているうちに、女の子は少し疲れを感じました……生まれて初めての疲労感はどこか心地よささえ感じます。
「少し休みますか?」
「休む……って、どこで?」
男はそっと下を指さします。
初めて触った土は、石造りの床とは違ってどこか暖かく……何故か、懐かしい匂いがしました。
「……どうしました?」
「なんだか、懐かしい気がするの…」
「……」
男は少し困ったような表情を浮かべ、女の子から空へと視線を移しました。
「……そろそろ帰りましょうか」
「え、でも…」
女の子は不思議そうに呟きます。
「どうして……戻らなきゃいけないの」
「私、ずっと塔の外に出たいと願ってたのに…」
そして今、女の子は塔の外にいます。
「なのに……どうして戻らないといけないの?」
ちょっと困ったような表情を浮かべ、男は静かに首を振りました。
「……このまま目が覚めたら、あまりにも悲しいですから」
残酷な一言に、女の子は全てを悟りました。
「……夢だったんだ」
「……」
「目が覚めたらいつもの部屋の中……だったら」
ぽつりと呟き、女の子は自ら塔の中に戻ることを選ぶのでした。朝、目が覚めたとき、微かな希望が自分を絶望させてしまわぬように。
「……」
その次のページは白いまま。
自分の願望が絡めば、物語はどんどんと矛盾していくのがわかっていたから。
この物語はここで終わるのがいいのかもしれない。
ふと、そんな気になって……リーナは、ノートを暖炉の中に投げ込んだ。炎の中で、命を吹き込まれたかのように紙が踊り出し、そして死んでいく。
やがて、ノートは燃え尽きた。
刻まれた言葉と、これから刻まれるはずだった文字と共に。
「……あれ?」
ぼやける視界に目を拭い、リーナは自分が泣いていることに気付いた。
「止まらない……どうして…?」
何度も何度も流れる涙を拭い……リーナは、自分がジャンに恋心を抱いていたことを知った。
「……ーナ…リーナ…」
「……え…マリアさん?」
そこにいるはずのない人物を目にして、リーナは慌てて上体を起こした。
「これからちょっと大事な話をするね……誰にも言っちゃダメよ」
「……」
「この前、帝国と王国の間でいざこざがあったのは知ってるでしょ?」
「はい…」
リーナは曖昧に頷いた。
「そのいざこざは各地に飛び火して……ジャンの両親は、今行方不明……なの」
「えっ!?」
「信じられない?」
「だって…ジャンくん、あんなに明るくて……いつも元気で……優しくしてくれて…」
リーナは、信じられないっといった様子で途切れ途切れに呟く。
「1人じゃ寂しいだろうと思って……何も知らないフリをして、お手伝いをネタにこの村に呼んだんだけど…」
マリアはちょっと悲しげにうつむき、ぽつりと呟いた。
「従弟だしね……あなたは独りじゃないよって教えてあげようと思ってた」
「……」
「今ぐらいはいっぱい甘やかしてあげようと思ってたのに……マリアねーさん、役立たずで、全然出番無しなのよね」
マリアはおどけたように呟き、自分の頭をぽかりと叩いた。
「あの子、昔からそういう子だったのに。優しくて、強くて……いつもまわりの人間の事を考えて……気配り上手で、甘え下手」
マリアの言葉は続く。
「あの子はいつもみんなを笑顔を守ろうとするの……でも、あの子の笑顔は誰が守ってくれるのかな……マリアねーさんとしてはそれが心配」
何となく会話の方向性を感じ取って、リーナは静かに首を振った。
「……私には、無理です」
「……」
「この前も……私、自分のことばっかり考えて、ジャンくんに……ひどいこと言っちゃったし」
「リーナ」
「はい…」
「あの子……ジャンを、この村に呼ばない方が良かった?」
「それは……」
物語を呼んでも笑わずに励ましてくれたこと。
道で倒れたとき、背中に背負って助けてくれたこと。
花が好きと言ったら、お手伝いの合間に花束をつくってプレゼントしてくれたこと。
いろんな事を思い出し、リーナは首を振った。
「……ジャンくんが、この村に来て……嬉しかった」
確かに、全部が全部良かった思い出ばかりではない。
パンの配達を間違え、よりによって嫌いなカリコリ棒を渡されたりとか。
他の女の子と親しげに会話するシーンを見つけたりとか。
夏休みが終わったら、帰ってしまうこととか。
楽しかったこと、悲しかったこと……何もないことより、それは多分素晴らしいこと。
「明後日の朝……笑顔で見送ってくれる?勝手かも知れないけど……せめてこの夏は、あの子にいい想い出をあげたいから」
カチャ…
パン屋コロッセルのドアが開く……。
「ジャンくん…」
「え……」
戸口に佇むリーナを見て、ジャンはちょっとびっくりした様子で動きを止めた。
「あら、リーナ……ジャンの見送りに来てくれたの?」
「はい」
自信はないけど、上手く笑えたような気がした。
「……飛行船の時間までまだ少しあるわね」
パンッと、マリアは手を打って2人に言った。
「2人でお散歩でもしてらっしゃい…」
マリアは一旦言葉を切り、そしてジャンの耳元でで何事かを囁いた。
「ねーさんっ!」
「うふふ…ジャンにそんな度胸があったら、みんなで胴上げしてあげるからね」
「…?」
2人のやりとりにわけもわからず首をひねるリーナの手を、ジャンが掴んだ。
「行こう、リーナ」
「え、ええ…」
「あの…この前は」
「ううん、いいんだ」
「でも…」
「いいんだ……こうして、リーナが見送りに来てくれたから」
リーナは頬を赤らめつつ、何とかそれを口にした。
「ま、また……来てね」
「……」
ジャンはちょっとだけリーナの顔を見つめ、大きく頷く。
「うん」
「私…新しい物語を書き始めたから……今度来たときに読んで欲しいな」
「新しいって……前のは?」
「う、うん……ちょっと…で、でもっ、お話としては新しいって言うより、書き直しみたいな感じで…」
リーナの頬が、ますます赤くなる。
「あの、あのね……自分に羽があることを教えてくれた男の子にね…」
「話しちゃっていいの?」
「は、話さないと続きが書けないからっ!」
自分でもびっくりするような大きな声が出た。
「……?」
「そ、その…女の子が……恋をするお話」
「……」
「……」
二人して顔を赤らめ、やがて、ジャンが呟いた。
「マリアねーさんに聞かれなくて良かった…」
「うん……見られてないから…」
と、リーナが目をつぶってちょっとだけ首を傾けてから数瞬後、少年の唇がリーナの唇を通して心に触れてきた……
完
久しぶりだったもんで、『このキャラはどういうしゃべり方を…』などとポヤッチオを引っ張り出してプレイするうちに目的と手段を取り違えたり。(笑)
それにしても最近荒んでいるせいか、心がふんわりするような話を思いつかないですな……今の精神状態だと、多分フォルカーの流浪のお話なんかはすらすら出てきそうなんですけどね。
なんか、キレのある変化球を投げようとして思いっきりすっぽ抜けたようなお話です……リーナファンの方には申し訳ないです。
本来なら、みんなに背中を押されているって事を書いたうえで、みんなの協力で一命を取り留めるゲームのエンディングという流れが一番無難なんですが……イベントをそのまま追ったらパロディの意味無いですし。
しかし、イベントの中で語られるリーナの物語って…(苦笑)
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