2月2日(土)、夕方。
「……と」
電車の乗り換えのために2歩ほど歩いて……みちろーは、立ち止まった。
高校に進学してから、こっちには一度も戻らなかった。
夏休みはもちろん、春休みにさえ補習という名の授業が存在するが……正月ですら、理由をつけて学生寮にそのまま居座って、自分で食事を作った。
まあ、戻るも何も……ここにはもう、みちろーが戻るべき、家もなかったからだ。
みちろーが高校を進学すると同時に売りに出されたあの家に、買い手がついたのかどうか、ほとんど興味もない……そのはずで。
「尚斗ん家に行くなら、こっち…か」
自分自身を納得させるように、そう呟いて。
だが、その呟きはかえって『自分の家』がここにはあるという感傷的な何かをみちろーに呼び起こす。
慌てて、吐き捨てるように否定の言葉を、呟く。
「ねえよ、そんなもん…」
高校進学と同時にサッカーはやめた……が、だからといって中学時代に鍛え込んだ身体がネガティブな形で変化することはなく。
身長175センチ、68キロ。
筋トレによって目に見える筋肉をごてごてつけた、がっしりという体型ではなく、バランス能力が極めて高い、インナーマッスルが発達した……アフリカや欧米系のサッカー選手に多い、ある意味日本人離れした体型。
状況を見る目に優れ、鋭い、決定的なパスを供給する司令塔というだけでなく、DFに対してあたり負けすることのない攻撃的MFとして、この地区のサッカー関係者からは、将来を期待され、実際進学に関してはサッカー推薦の話もあったが……それは別のお話。
昔の自分の家の最寄り駅である路線の乗り換えではなく、尚斗の家からの最寄り駅へと向かう路線に乗り換えるため、みちろーは方向を変えて歩き出す。
この近辺で理解される表現を借りれば、女子校路線と男子校路線の違い……まあ、ごく一部で、天国列車と地獄列車という失礼な表現が為されるときもあるが、当の男子校に通う生徒の間で使われる表現だったり。(笑)
もちろん、女子校の最寄り駅で降りて、そのまま尚斗の家に向かうという選択肢もあるし、さほど距離は変わらないのだが……それだと、否応なしに麻理絵の家の前というか、近くを通ることになり、みちろーは無意識にそれを避けようとしたのかも知れない。
電車はすいていたが、みちろーは座席に座らず、乗車口のドアにもたれるようにして窓の外を眺めていた。
「……」
進路の希望については、以前から電話で話していたこともあり……父との会話は、それほど長くもならず。
あと半年もすれば、みちろーには弟か妹が誕生するらしい。
そう表現していいのかどうかはわからないが、一応はみちろーの親権を持つのが父親である以上、多分、そう表現しなければいけないのだろう。
父も母も、着々と新しい家庭を築くというか、すでに新しい人生を歩き始めている。
それは、やむを得ないと言うことではなく……むしろ、正しいことのはずで。
ただ、父も母も……自分の歩もうとする新しい人生の中に、みちろーの居場所を作ろうとはしてくれなかった。
それが、思い込みではないことが……すこし、ほんの少しだけ…17歳の少年にとっては、正面から受け止めかねただけのこと。
「……」
ぷあーん。
電車が、北に向けて大きく進路を曲げてゆく。
いわゆる女子校路線とはほぼ垂直の方向……東北東に向かって進んだ後、男子校路線はこの大きなカーブを経て、女子校路線とはほぼ並行にしばらくの間北に向かって伸びていくのだ。
進行方向に向かって左の窓から、オレンジ色の夕日が見えた。
なんとはなしに、みちろーは夕日の下に目をこらす。
かつての、自分の家があるあたり……もちろん、目視できるはずもなく、みちろーは視線を夕日へと。
陽が昇り、沈んでいく……それは、例外なく全てのモノに対して言えること。
なのに、自分の両親の関係がうまくいってないことにみちろーが気づいたのは、もう陽が沈もうとしている直前のことだった。
子供だったから……と言い訳するのはたやすいし、自分が何かを出来たわけでもないと思うのはもっと簡単で。
『次はー、……、……』
アナウンスに救われ、みちろーはようやくに夕日から目を背けることが出来た。
電車を降り、駅を出る……そこから尚斗の家に向かって、西へ。
尚斗と会って……という決意に揺らぎはなかったが、この時、みちろーはとても大事なことを失念していたのだった。(笑)
がらら…。
やや控えめに開けられるドアの音。
確かめるでもなく、結花はそちらを振り返って言った。
「お帰りなさい、夏樹様……もう、ほとんど誰も残ってませんよ」
「…ただいま、結花ちゃん」
と、ここでようやく結花はそちらを振り返り。
「御用事は済んだんですか?」
「うん…用事と言っても、『ごめんなさい』って謝るだけだったから」
「……」
もの問いたげな結花の視線に気づいて、夏樹はちょっと微笑んだ。
「ん、ちょっとね…有崎君に会いたいって女の子がいたんだけどね…ほら、用事があるって断られちゃったから…」
「……そうですか、有崎さんに会いたいって人が…」
「……」
「……えっ!?」
ばさっ、ばさささっ。
結花の手から、書類やら台本やら、その他様々なものがこぼれて床にばらまかれる。
「な、夏樹様…その……なんで、わざわざ…」
あたふたする結花の姿が可愛くて、夏樹は微笑みながら…『有崎君が、結花ちゃんをからかう気持ち、わかるなあ…』などと、考えていたり。(笑)
まあ、そもそも他人に対して一切隙を見せなかった結花が、こんな姿を見せるようになったのも、おそらくは彼のおかげ……と、感謝しつつ。
「え、でも、会いたいってだけの話だったし…」
「だからって…」
ここで、もう一押し(笑)…と。
「そうね、ちゃんと結花ちゃんに断るべきだったわね…ごめんなさい」
「……」
あれ……と、夏樹は表情には出さなかったが…戸惑った。
ここは、『な、何言ってるんですか!?』などと慌てふためく結花の姿が見られると思っていたのだが……何か、間違えたのだろうか、などと。
そんな夏樹をじっと見つめ……結花はおそるおそる、切り出した。
「あの、夏樹様…ひょっとして、御自覚、ありません?」
「自覚って…何の?」
結花の目が少し泳ぎ。
「……」
泳いで泳いで、ついにドーバー海峡を泳ぎ切るかというところで、何らかの覚悟を決めたのか。
「あの…『有崎さんに会いたい』って女の人に、『有崎さんを会わせる』事に対して、夏樹様は何も心に引っかかるものとか、感じませんでしたか?」
「うん、だから先に結花ちゃんに断るべきだったなあって…ごめんね」
「いえ、私はともかく」
と、結花は慌てた様子もなく首を振り、夏樹をまっすぐに見つめて。
「夏樹様ご自身は、何も感じなかったんですか?」
「……えっと、結花ちゃんは…何が言いたいのかな?」
「……」
「……」
10秒…20秒…結花は、夏樹から目をそらさぬまま、それを口にした。
「いえ、夏樹様がそう仰るなら、私は別に…」
「……」
「今更、私が口出しすることでもありませんから」
それは一体どういう意味…?
その疑問が、夏樹の口から発せられることはなく。
「私も、今日はちょっと用事があるのでもうしばらくしてから帰るつもりですが…夏樹様はどうなさるんですか?」
「あ…特には…だけど」
「……大した用じゃないです」
「そう…かな?」
「……」
結花は夏樹を見つめ……夏樹もまた結花を見つめる。
「演劇部には関係ない、個人的な用事って事です」
「……」
「まさか夏樹様、有崎さんの言う用事が、私と関係してるとでも思ってますか?」
「ううん…あの、結花ちゃん…私、何か結花ちゃんの気に障るようなこと言ったの…かな?」
「……いえ、そんなことは」
「そう…」
どこか気まずい沈黙に、夏樹はちょっと目をそらし。
「じゃあ、結花ちゃん…私は先に」
「はい、お疲れ様でした、夏樹様」
と、頭を下げる結花の口調と態度が、やはりいつもとは違う気がして。
「……」
「…夏樹様?」
「あ、ううん…さようなら、結花ちゃん」
「……」
部室を後にして……夏樹には珍しいことだが、校内をぶらついていた。
運転手の唐沢さんには、少し時間がかかるかも知れないから……と、断りを入れてあるから、それは大きな問題ではないのだが。
いや、待たせずにさっさと帰ってやれよ……というのは所詮、庶民の感覚なのか。
『あの、夏樹様…ひょっとして、御自覚、ありません?』
結花が、投げかけた言葉。
それを思い出しながら……夏樹は、ぽつりと呟く。
「自覚も何も……それ以前の問題なのに」
ふっと足を止め……もう一度呟く夏樹。
「それ以前の問題なのに…」
淡いオレンジから、夕暮れの蒼に移りゆく西の空……窓ガラス越しにそれを眺める夏樹の表情は、普段のそれを知る人間なら思わず息を飲んでしまいそうなほどに生気が感じられなかった。
日は沈み、街灯が灯り、家の窓から明かりが漏れて。
「……」
有崎家を視界に収めた範囲内を、うろうろと歩き回る1つの影。
尚斗と会って……という決意に今も揺らぎはないのだが、尚斗の母親と顔を合わせる事に対して、みちろーは覚悟を決められずにいたのである。
みちろーにとって、尚斗の母親の存在は、好きとか嫌いとかいう感情を越えたものであり……言うなれば自然災害や超常現象に対する、恐怖のようなもの(笑)である。
みちろーは、初めて会ったときから、極力尚斗の母親には近づかないように心がけてきたわけだが……。
「こら」
「……っっ!?」
「素直に驚いてやろうと待ち構えたのに、いつまで家の周りをうろうろしてるつもりだよ、みちろー」
「あ、あ…ぁ…」
高校生らしからぬ、泣きそうな表情から……尚斗は、何となくそれを察して。
「あー……母さんならいねえよ……つーか、今夜は帰ってこねえから、心配すんな」
「そ、そ、そうなの…か…」
はぁーとため息をついて、その場にへたり込むみちろー。
「……なんだかなぁ」
「わ、悪いとは思ってる…だけど…俺、どうしてもあの人は…」
「……ほら、手出せ、みちろー」
「ん、ああ…」
みちろーは尚斗の手を借りて立ち上がり……ふっと、首をかしげた。
「俺がやってきたことに驚かないのか?」
「だから、素直に驚いてやろうと思ってたんだよ、最初は」
「……」
「今週、こっちに来るって言ってたじゃねえか、お前」
「それだけで…」
「わかるっての……つーか、さっさと上がれ」
と、尚斗がみちろーを家の中に上がらせた頃。
ぴるるる〜♪
「……もしもし?」
『青山だ、そう警戒するな』
「そんな気がしたから、電話に出たんですけどね」
と、結花は夜空を見上げて。
「一応つっこんでおきますが…」
『ふむ?』
「なんで、私の番号知ってますか?」
『秋谷は知ってるだろう?』
「秋谷先輩は、勝手に教えたりしない人です」
『有崎も知ってるよな?』
「……覚えてるかどうか、あやしいもんですよ、あの人」
と、結花はため息をついて。
「さすがに回りくどさが鼻につくんですが。有崎さんだけじゃなく、秋谷先輩とも親しいのがわかってるから、話をしたかったんです」
『……なるほど、だとするとそっちの話か』
「……」
『それはそうと、さっきの質問に対する答えだが……資本主義経済においてはだな』
「はい?」
『需要があれば、供給はどうにかなるもんなんだよ、入谷』
「また、心にずしりと響く言葉ですね……」
『つまり、気にしたら負けということだ、入谷』
あ、この人は今、何か自分に教えようとしたな……そう思ったが、結花はそれがなんなのかを深く考えようとはせず。
「いや、まあ……どうでもいいんですけどね、今更」
と、ちびっこは再度ため息をついてから。
「今、家路をたどってる所なんですが……電話をかけてくるって事は、約束を忘れてるわけじゃないって思って間違いないんですよね?」
『ああ、そのことなんだが…』
「…何か都合が…っと」
前方から近づいてきた車のライトに気づいて、ちびっこは道の端に寄った。
車もまた、速度をおとしてちびっこの脇をゆっくりと通り過ぎ……。
「……青山さんも、誘拐とか上手そうですね」
「冷静なのは良いことだ」
「……とりあえず、どこからつっこめばいいですかね」
「まず、シートベルトを締めてくれ」
青山の指示通り、結花は助手席でシートベルトを締めた。
「…青」
「国際ライセンスは持ってる」
「日本では、無免許運転って言います、それは」
「年齢と名前が一致しない、合法の免許証も何枚か持ってるが」
「……」
「一番重要なのは、車を運転する技術があるかどうかだろう」
「ツッコミどころが増えていく一方なんですが…」
こめかみに手をやり、二度三度と首を振る結花へ。
「俺が言うのも何だが、この世界は理不尽に満ちている……1つや2つぐらいの理不尽には目をつぶる度量がないと、生きていくのが大変だろう」
「……この状況だと、まったく説得力がないんですけど」
「入谷に何かあると、有崎と秋谷が怒る」
「……は?」
「俺と親しい関係…などと勘違いされると、色々と巻き込まれる危険性があるんでな」
「……」
「俺を脅すため、有崎を誘拐した馬鹿な連中もいたんだ」
「……えーと、それは、青山家の…」
「まあ、それだけじゃないが」
「…それ、どーなったんですか?」
「はっはっはっ…」
まあ、青山としては笑うしかなかったのだろうが……結花がそれ以上追求できなくなるぐらい、ひどく乾いた笑いだった。(笑)
「お帰りなさいませ、大輔様」
下げた頭を上げてすぐ、メイドの視線が横にずれ。
「まあ…」
ぱちぱちっと、瞬きを繰り返し。
「まあ、まあ、まあ…」
と、口元に手を当てたメイドに、結花はこの相手とは合わないというか……あまり近寄りたくないタイプだと悟った。
「大輔様、この可愛らしい女の子は私へのお土産ですか?」
「……お土産って…」
ぼそりと呟かれた結花の言葉を聞いているのかいないのか、青山が淡々とそれを打ち消した。
「有崎の知り合いで、俺の客だ」
「有崎様のお知り合いということは…」
メイドはちょっと考え。
「可愛い服を着せて、写真を撮るぐらいまでなら何の問題ないって事ですね」
「ほぼ確実に、本人が嫌がると思うが」
「大輔様、可愛い服を着て嫌がる女の子なんてこの世に存在しません」
ぐっと、握り込んだ拳を突き上げんばかりに力説するメイド……名前はまだない。(笑)
「あなたも、そう思うで…」
と、自分に向かって伸ばされた手をかいくぐって、ちびっこは鋭くステップイン。
「……ったく」
ぱんぱんと、掃除が行き届いているせいか、チリひとつついていないスカートを手ではたき、ちびっこが青山を見た。
「問題ないですよね?」
そして青山は、倒れたメイドにちらりと視線を向けて。
「ああ。まったく、何の問題もないな」
「と、いうか……なんですか、この人?」
「……とりあえず、この家の騒動に巻き込まれた被害者と言っておこうか」
「被害者ですか…」
「それまで生きるとか死ぬとか考えてこなかった人間が、二度ほど殺されかければ…まあ、死生観が変わる事もあるだろう」
「はあ、死生観ですか…」
と、結花はメイドに目を……いや、メイドの服装と、カチューシャタイプの、頭に装着された某動物の模造耳に目をやって……ため息をついた。
「死生観……なんですか…ね?」
「まあ、それは放っておけ……お互い、忙しい身だ」
「そうですね……といいたいところですが、毛布ぐらい掛けてあげましょうよ」
「……青山さんが二十歳になったら、青山家のトップになってグループ全体を統括する……なんて話を同級生の子は言ってましたが」
「俺にその気はないし、じじいはじじいで、それが俺に向かないことを理解はしてた」
「あ、いや…そういう話じゃなくて」
と、ちびっこはちょっと目を伏せ。
「このプレハブの建物といい……邪魔者扱いされてるみたいですね」
「連中と、顔をつきあわせずに生活できるのは、むしろ好都合なんだが」
結花は、ちょっと青山の顔を見つめ。
「……強いんですね」
「違うな」
「……?」
「入谷なら薄々感づいていると思うが、俺にはいわゆる人間的な感情が欠けているし、それ故に本質的に他人を理解もできない。といっても、正直なところ、俺にとって、連中は虫と同じだからな……入谷だって、トンボや蝶の前で着替えをすることに抵抗があるか?」
「……」
「それは、強いとか、弱いとかの問題とは別だろう」
「そうですか…」
目の前の少年が、そう思い込もうとしているのではなく、何を努力するでもなくそう思っていることがわかって……結花は、不快には思わなかったが、少し寒気を覚えた。
「入谷の聞きたいことに対して、答えられることは答えてやる……が、自分で考えて自分で決めろ。俺の話はただ単に情報として聞いて、俺に理解を求めようとするな」
大抵の人間が鼻白むであろう青山の言葉に、結花はむしろ、ほのかな暖かみすら感じて……それ故に、気がかりだったことを口にした。
「……今更ですが」
「なんだ?」
「私、青山さんに対して代価を払えないと思います」
「ああ、そのことか……俺も、入谷に対して質問をする」
「……私が答えることぐらいは、既に知ってるんじゃないですか?」
「さっきも言ったが、本質的に他人を理解できない俺にとって、他人の考え方や、物事のとらえ方そのものが、重要な情報になり得るからな」
「……」
少し言葉が足らなかったか……と、青山が付け足した。
「無味乾燥の情報というのは滅多にない。有崎が語れば有崎の色が出るし、秋谷が語れば秋谷の色が出る……俺にとって、入谷の色がでた情報を手に入れることは重要だ」
「そうですか…」
と、一応は頷いた結花に青山がさらに一言。
「他人の思惑を裏切りたいなら、自分の思考にこだわりすぎないことだ」
結花は一旦開きかけた口を閉じ……何かを振り払うように首を振って、青山を見た。
「青山さんが、有崎さんと知り合ったのは…中学の時ですね?」
「ああ」
「青山さんと秋谷先輩以外に……親しい人はいなかったんですか、有崎さんには」
「……」
「……あの?」
「入谷、先に聞いておく……秋谷に、幼なじみがいたのを知っているか?」
「有崎さんじゃなくて、秋谷先輩の幼なじみですか……」
いいえ、と結花は首を振った。
「そうか…」
と、青山は少し考え……。
「……入谷の思っているとおり、有崎と友好的な関係を長く保ちたいという人間はいなかったと考えてくれて問題ない」
青山の微妙な言い回しに感じるものがあったのか……結花はちょっと頷いて。
「それはつまり……最初はともかく、時間が経てば、みんな有崎さんから離れていった……そういうことですよね?」
「それは、俺に確認する意味があるのか?」
青山にちょっと視線を向け……結花は再び俯いた。
「……個人的には認めたくないですから」
「なのに、それを認めるためにここにきた?」
「そうですね」
結花は小さく頷き……そして、もう一度呟いた。
「そうですね、認めるためですよ」
青山の口元が微かに歪み。
「有崎の中学時代は色々とイレギュラーな期間だと思うが……とりあえず、これまで有崎が何をやらかしてきたか、色々教えてもらいたいということでいいのか?」
「秋谷先輩は……人付き合いに関して、ものすごく極端な人だと思うんです」
「……?」
おそらくは故意に、青山は首をかしげて見せた。
しかし、結花はそれに気づいていながら、淡々と自分の話を進めていく。
「赤の他人か、親友か……赤の他人か、恋人か……0か100、そのどちらかのつきあいしかできない気がします」
「ふむ」
「……不器用って言うか、純粋すぎる人なんでしょうね」
「好意的に過ぎる気もするが、おおむね間違ってはいない気がするな」
「……有崎さんも、根っこは同じだと思います…うまく言えないんですが」
そう前置きしてから、結花は言葉を続けた。
「ただ、0か100か……秋谷先輩は、それを自分で選びますが、有崎さんは、それを相手に選ばせる…って言うんですかね、来るモノは拒まず、去る者は追わず……他人に執着しないってのとはちょっと違うと思うんですが」
「……」
「有崎さんは困っている人に対してだけ………お節介でしか、人とつながってないような部分を感じます」
「……じじいから聞かされた話だが」
「は?」
これは故意ではなく、いきなり何の話か……という表情で、結花が青山を見る。
お返しというわけでもないのだろうが、青山は気にせず話を進めた。
「昔、青山家が……まあ、大名家だった頃の話らしいが、当時の殿様が家臣の妻の美しさに目を奪われた事があったそうだ」
「権力に任せて、奪いでもしましたか?」
「だったら、まだマシなんだろうが……殿様のそれに気づいた周囲が、妻を差し出させたそうだ。家臣は腹を切ったのか切らされたのか…そこまでされたら、知らない振りも出来ず、鷹揚に受け取るしかなかったそうだが」
「……正直、おぞましいですね」
「上に立つ者というか、権力なり何なり、力を持つ存在というのは、自分の気持ちを外に出すだけで罪だと……まあ、代々青山家に語り継がれてきた教訓というわけだ」
結花は、何も言わず……ただ真意を探るように、青山を見つめた。
「知っているかも知れないが、俺はこの青山家で生まれ育ったわけじゃない……まあ、ここに来て5年半というところだ」
「……それまで、どこにいたんですか?」
青山は、ちょっと結花を見つめて。
「海外の、まあ、ちゃんとした名前すらないスラム街の一角だ」
聞き慣れない言葉を耳にした……という感じに、結花が呟く。
「スラ…ム…ですか」
「不思議そうな顔をされても困る」
「いえ…今ひとつ、ピンとこなくて」
「……だろうな」
と、青山は口元を歪めて笑う。
「いえ、スラム街がどうということではなく…話のつながり、という意味ですが」
「じじいが死んだ今となっては、俺はどこの馬の骨とも知れない……というやつだ」
「……」
「そんな俺を、じじいは連れ回していろんな相手に紹介したわけだが……当然それは、いろんな人間にいろんな憶測を生ませる……自分の気持ちを外に向けて出すだけで罪と言い聞かされて育ったはずの青山家の人間が、じじいのそんな行動をまともに受け取るのは滑稽でしかないと俺は思うが」
「……そういう話じゃ、ないですよね?」
青山はちょっと笑い。
「たとえば秋谷が、入谷を遊びに行こうと誘ってきたとする」
青山の言葉は、結花の耳には届いたが、心まで届いてこなかったらしく。
「はぁ?」
どんな状況ですか、それ……と、半開きの口元と視線で青山に問いかける。
「入谷には大事な用事がある…が、秋谷はどうしても入谷と一緒に遊びに行きたい」
「……」
「秋谷が、譲らなかったらとしたら……」
青山が言葉を切り……そして、結花は、青山の言わんとすることを理解した。
「まあ、逆らえませんね……私には」
淡々と……その口調と『私には』の一語が、かえって結花の怒りを表していて。
「そういう考え方もある……と、提示しただけだが」
「そうですね…でも、不愉快なことには変わりないです」
す、と顔を上げ……結花は、怒りを消して青山の目をじっと見つめた。
「青山さんにお聞きします…あの2人、なんで別れたと考えますか?」
「随分と、そこにこだわるな」
結花の表情にいぶかるようなモノが浮かんだ…が、それはすぐに消えて。
「有崎さんが秋谷先輩を受け入れたというなら、秋谷先輩が望む限り、その関係はずっと継続したはずです」
「……と、言うと?」
「秋谷先輩にとって、今も有崎さんは赤の他人じゃありません……だとすると、不自然なんですよ。不自然って事は、私の考え方が間違っているか、今の状況が間違っているかって事でしょう」
「人間の心は複雑らしいが」
「そうですね、私もそう思います……でも、秋谷先輩と有崎さんは、複雑じゃないですよね……好悪に対して単純すぎる人ですよ、むしろ」
「なるほど…」
青山はちょっと頷き……口元に笑みをたたえて。
「1つ訂正しておく」
「なんですか?」
「秋谷は有崎に惚れているというか、惚れているが故に冷静な判断力が……まあ、はっきり言うと、秋谷は基本的に激情家なんだが」
「……激しい人ではあると思いますけど、激情家って言うのはどうでしょうか?」
「……入谷の言葉を借りれば、0か100の関係を自ら選ぶ秋谷の世界はきわめて狭い。そのきわめて狭い世界に手を出してくるモノ……それは、秋谷にとっては自分自身を攻撃されるに等しく、激烈な反撃に出る」
「……」
「それとは別に、自分の世界の外にあるモノに対して……これは極めて理性的な反応を示す」
「……なるほど」
と、一応結花は頷いた。
「……まあ、有崎とつきあい始めてから、そのあたりは多少境界が曖昧になったきらいはあるが」
多少のばつの悪さを覚えているのか、結花がそっぽを向きながら。
「……趣味の悪い好奇心という自覚はあるんですが、あの2人……どういう風に、つきあい始めたんですか?」
「ストーカーの執念が実を結んだ…という感じか」
「……」
「身の回りの現実というモノに対して幻滅を繰り返したせいか、中学に上がった頃の秋谷はかなり精神的に荒んでいてな……噂ぐらいは聞いたかも知れないが、小学校の時に教師を再起不能にしたとか、街に繰り出して柄の悪い手合いをのして回ってたのも、精神的な荒廃が現れていた証明だろう」
珍しく穏やかな微笑みを浮かべて、青山が言葉を続けた。
「秋谷にとって、有崎という存在は救いそのものだったと言えるだろうな」
「……なんか、一番興味深い部分をすっ飛ばされた感じですが」
「……有崎が本当に自分にとっての救いなのかどうか、それを確かめるのに秋谷はひたすら有崎をストーキングし続けた。まあ、本人は否定するだろうが、そういうことだ」
「……」
「入谷も、最初から有崎を信用したわけじゃあるまい……いろんな情報が積み重なった結果、今こうしてここにいるわけだろう?」
「話したくないなら話したくないって言いましょうよ…」
「それを話したら、次に入谷と会ったときに秋谷が気づく……獣じみた洞察力で、全てを白状させられるぞ?」
結花はちょっと黙り込み。
「……聞かない方が無難ですか」
「そうだな……まあ、入谷が死にたくなったら、秋谷と有崎との初めてのデートの様子なんかを話してやろう」
「それは……すごく興味わくんですけど、秋谷先輩がそのぐらい取り乱す内容なんですね」
「取り乱すも何も……はっはっは…」
と、笑った後で……青山が結花を見た。
「入谷、笑ったり馬鹿にしたりはしないから、思ってることをいってみろ」
「……」
「有崎と秋谷…あの2人が別れたことが不自然だと思って……何を考えた?」
「……あの2人」
「……」
「別れたんじゃなくて……無自覚の内に、そう仕向けられた……別れさせられたんじゃないでしょうか?」
あまりに馬鹿馬鹿しいと思える内容に、結花は瞬間目を伏せたが……青山は、笑わなかった。
「ほら、これも食えよみちろー」
「いや、もう…無理」
と、尚斗の方に皿を押しやって。
「つーか、作りすぎだろ…」
「家の周りでうろうろと、いつまでも入ってこなかったからだ」
「っていうか、風呂に入ってる間に料理の数が増えてるじゃねえかっ」
「できたての方が美味い」
当然だろ、みたいに言われて……みちろーは、ちょっと笑った。
「……かわらねえなあ、尚斗は」
「……」
尚斗はちょっと頭をかき。
「今のは、ほめ言葉ってわけじゃなさそうだな…」
「別に、今だけってわけじゃない」
そういって、箸を置き……みちろーは、それを口にした。
「変わらないな、尚斗の家は」
「……」
「俺の住んでた家ってもうないんだ……知ってたか?」
「そうなのか?」
みちろーがお茶を一口飲んだ。
「生まれ育った町なのに、居場所がないってのは変な感じだ」
「別に、いつでも泊めてやるよ」
尚斗が手を拭きながら振り返り、言葉を続けた。
「前もって連絡さえくれたらな」
「そっか……」
「おじさんもおばさんも、もうここにはいないのか?」
「ああ……2人とも別の街で、別の相手を見つけて、新しい家族ってやつを築いてるさ」
「……」
「俺は、どっちでも邪魔者というか……一応、父親に引き取られたって格好になってるらしい」
「そうか…」
みちろーが、ちょっと笑い。
「まあ、2人ともそのせいで俺に対する負い目ってやつを感じてるみたいで……大学を卒業するぐらいまでは、1人ぐらしの生活費に困ることはないだろうけどな」
「……」
「……」
みちろーの顔から笑みが消え。
「尚斗、俺はずっとお前のことが嫌いだったよ」
「そうか」
「……」
「……」
「……それだけかよ」
「と、言われてもな」
平然と、尚斗。
「怒れよっ!」
テーブルに拳を叩き付けて、みちろー。
「それとも、怒る価値もないっていうのか、俺にはっ!」
「久しぶりに会いに来て、わざわざそんなことを口にしなきゃならんお前の方が俺にとってはよっぽど気がかりだよ、みちろー」
「……だからっ…」
そう言ったきり、俯いてしまったみちろーに、尚斗は優しい目を向けて。
「もう、戻ってくるつもりはないって事か…」
「戻る所なんか……」
「そりゃそーだ。わざわざ遠くの学校なんかに進学しやがって」
「……なんで、会いに来てやらなかったんだ?」
どこか、なじるようなみちろーの目を受け止めて。
「俺は、自分から麻理絵やみちろーに会いにいったことはねえよ……そのことについて、なじられるのは仕方ないと思ってる」
「だったら、余計にっ」
「お前の両親にも、麻理絵の両親にも、俺は嫌われてたからな…まあ、それだけじゃないが」
「麻理絵は、麻理絵は他の誰よりも、ただ…お前と一緒にいたかっただけだっ」
「……そういうことか」
「なにが…」
尚斗は立ち上がって、みちろーの髪の毛をつかんで壁に向かって叩き付けた。
「……っ」
「よーするにお前は、麻理絵の優しさにつけ込んだと思い込んでて……なのに、誰もそれを責めてくれないのが不満なんだな」
「……っ…っ…」
「……って、聞いてるか、みちろー?」
わざわざ背中から壁にぶつけたのに、と尚斗はため息をつく。
「そんなに痛くしたつもりはないんだが…」
青山の沈黙をどう受け取ったのか……結花は、尚斗との会話の端々で感じた違和感……先日のボランティア公演の時もそうだが、世羽子との待ち合わせの際に困っている人間に次々と出会ったことや、その他諸々を言い訳じみた口調で延々と垂れ流し続けたのだが。
「……ですから…馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、あまりにも不自然って言うか…」
「入谷」
止まらない言い訳を止めてくれるきっかけ……それを待ち望んでいたはずなのに、結花はばつの悪そうな表情で青山を見た。
「……わ、笑ってもいいですよ…変なこと言って悪かったですね」
と、目をそらした結花の耳に、意外な言葉が飛び込んでくる。
「今のことは他の誰にも言うな…」
「……え?」
と、青山を見る。
「有崎はともかく、秋谷がそれを耳にしたら……それが正しいにせよ、間違っているにせよ、暴発しかねん」
「……」
「秋谷の持つ誇り高さが、それを許容できると思うか?その上、それを仕掛けた相手がわかっていない状況だと、秋谷の怒りは、秋谷自身に向けられる」
「……あぁ、それは…何となくわかります」
いや、わかるんですが……と曖昧に頷きながら、結花は疑問を口にした。
「あの、そもそも、青山さんが『そいつは、有崎を入谷との約束の時間に遅刻させつつ、12時には遅刻させたくなかった。まあ、それが偶然でないとしたら、そういうことだな』などと、私に示唆を与えたと思うんですが?」
「……」
青山は結花に視線を向け。
「……別の意味で、とらえて欲しかったんだが」
と、ため息をついた。
「……」
「……どうかしたか?」
「説明してくれるつもりはないんですよね?」
「説明も何も……入谷が、何をどうしたいのか……が、先だろう」
「……」
「さっき入谷が言った、『0か100』……それを、入谷自身が選択してからの…」
「……私、0か100かを選ぶつもりなんてないですよ」
「……」
「そもそも、なんで、『0か100』じゃなきゃいけないんですか……50じゃダメなんですか、13じゃダメなんですか、78じゃ、29じゃ、40じゃ、60じゃ、89じゃ…なんでダメなんですか」
そもそも俺が言ったことじゃないんだが……などと反論せず、青山はどこか観察するように結花を見続けた。
「0か100かで選ぶなら、100ですよ。でも嫌なんですよ、そういうの……有崎さん個人じゃなくて、0か100かという付き合いのどちらかを選択させる周囲の環境って言うか、いろんなモノがとにかく嫌なんですよ」
「……?」
「他の誰にも相手されないから、一緒にいるとか…一緒にいると、みんなが離れていくとか……青山さんが言ってることも、言いたいこともわかりますよ……でも、何が気に入らないかって、その最初の前提が…嫌で嫌で仕方ないです」
「……ふむ」
「『いたる所に、欺瞞と猫かぶりと人殺しと毒殺と偽りの誓いと裏切りがある』……そんなこの世界において、むしろ有崎さんは賞賛されるべき存在じゃないんですか?」
ばんっと、机に手のひらを叩き付け。
「有崎さんの周りから人が離れていくのが、『普通じゃないから』なんてふざけた理由だとしたら……そもそも普通っていうのは……そんなもの、私は選びたくないです……でも、それじゃ多分ダメなんですよ……」
悔しそうに唇を噛み……結花が涙をこぼす。
「私は…私は……有崎さんを……特別なモノじゃなくて普通だって……みんなに…そう思ってもらいたい……おかしいですか?」
「……」
「卒業して、就職して……近くにいれば遊びに行きますけど…遠くにいればそれも出来ない……でも、毎年年賀状は出すんですよ……知り合いに何かあったら、電話もしますよ……何かの用事に近くまで来たら、連絡入れて、時間の都合がつけば会うんです……私は、そんなつきあいを……0でも100でもなく、その間の…何かを選びたい…それだけです」
「『いたるところに欺瞞と猫かぶりと人殺しと毒殺と偽りの誓いと裏切りがある』」
青山は、そこで一旦言葉を切り……良く通る声で、暗唱を続けた。
「『ただ1つの純粋な場所は、汚れなく人間性に宿る我らの愛だけだ』……か」
「……何が言いたいんですか?」
「ふむ、その反応から察するに自覚はあるのか」
「……」
「入谷のその選択だが、橘に対する負い目が多分に影響してはいないか?」
「ないとは言いません」
「……橘が有崎に耐えられるか、気にならないか?」
「……冷たいようですが、橘先輩の問題ですね」
どこか無理をした感じに結花は言い、青山に向かって別の言葉を投げた。
「有崎さんと橘先輩が付き合うと、青山さんには都合が悪いって事ですか?」
「ふむ、中途半端な理解は、むしろ危険か…」
そう前置きして、青山はさらりとそれを口にした。
「俺が入谷を知ったのは、ここにやってきてからじゃなく3年前だ」
「は?」
瞬間、気の抜けた声を出しはしたが……結花はすぐに立ち直り、『3年前』という言葉の意味を理解した。
「秋谷先輩の件ですか…」
「秋谷は世間知らずだからな……タイミングとか条件とかも含めて、他にどんな特待生がいるのかぐらいは当然調べた」
「……」
「特待生と言うより、奨学金に近いと言うか……まあ、家庭の事情とやらで…」
「やめてください」
硬い表情と口調で、結花がそれ以上の説明を拒絶した。
「ふむ……入谷が6年前、秋谷が3年前」
「もう1人いますよ」
「もう1人しかいない、というべきか……まあ、香神に関しては秋谷のそばにいるから注目はしたが、一応授業料免除のみの特待生扱いだな」
「……」
「この学校の経理データをのぞいたが……秋谷、香神、入谷の3人に対して、授業料免除以上の金は出ていない……入谷も薄々気づいているだろうが、それ以外は藤本先生個人から出ている金だろう」
「……そうですか」
結花の視線が下へ。
「酷な言い方になるが…特待生3人はもちろん学業優秀なんだが、学校の宣伝になる対象かどうかを問えば……入谷には、その資質はないな。俺個人としては、組織運営能力の方が、社会的に貴重だとは思うんだが」
「………」
「まあ、ついでに言えば……能力の問題ではなく、性格的な面で、秋谷がスポーツなりその他の部門で、名をなすような事はないと思う」
結花はちょっと顔を上げ。
「……香神先輩は、違うって事ですか?」
「……どんな形であれ、音楽に関わっているなら、香神が再び名をなす可能性は少なくないだろう。俺も、香神の将来には多少興味がある」
「……」
「……有崎が秀峰の受験に失敗した話は聞いたか?」
青山の問いに答えず、結花はじっと何かを考えていて。
「まあ、どのみち有崎は、秀峰に入学することは出来なかったんだが」
「……どういう意味です?」
と、結花が顔を上げる。
「っていうか、最初からそうですけど、わざと理解しにくいように、話を選んでませんか?」
「話につながりを持たせすぎると、判断が偏る」
「……」
「……まあ、交通事故とやらに巻き込まれるまでもなく、有崎の秀峰の受験を妨害しようとしていた存在が、そばにいた」
「……そばに?」
時計の秒針がきっちり1周。
「ま、まさか…青山さん…」
「言っておくが、交通事故は、俺が意図したモノじゃないぞ」
結花は青山をしばらく見つめ……やがて、二度、三度と首を振った。
「……なんか、おかしいと思ってたんですよ……有崎さんと親しいにしても、わざわざ一緒に受験に向かうような人かなあって。救急車で運ばれた有崎さんに付き添って、自分の受験も棒に振るってのも、ちょっと納得できない感じが…」
「……なるほど、入谷は人物を判断基準におくんだな」
「な、なにを平然と…」
「考えてもみろ、入谷……有崎があんな学校で、やっていけると思うか?」
「……」
結花はもともとこの地方の出身ではないが、中学受験、高校受験の際に、様々な資料に目を通したこともあって、いわゆる進学校の校風や評判などは一通り頭に入っている。
青山の言う『あんな学校』が、尚斗のような生徒を受け入れられるかどうか……それを判断するのに、数秒とかからなかった。
「有崎が、学歴云々を気にするはずもないしな……だとすると、少しでも過ごしやすい環境を選択してやって、何が悪い」
「な、何が悪いって…」
盗人の論理、という言葉が瞬間、結花の頭の中で弾け。
「有崎さん本人の、選択の意志決定を奪ったことそのものが最悪ですよっ!」
ふむ、と青山はちょっと頷き……声をひそめて囁いた。
「秋谷には、言うなよ」
「だったら、最初からっ……」
と、振り上げた結花の手が途中で止まる。
「……え?」
「ふむ、やっと気づいたか…」
「ってことは……有崎さんが人を助けようとして交通事故にあったのって……」
「偶然ではないと考える方が無難だろうな」
「え、あれ……でも、そんな…」
「有崎と秋谷が、別れるように仕向けられた……その思考からは、近い位置にあると思うぞ」
「え、いや…だって…なんのために」
「それを言うなら、何のために有崎と秋谷を別れさせなきゃならん」
「……あれ…」
首を振り……とすんと、結花が椅子に腰を下ろす。
どうやら、思考停止状態に陥ったらしい。
そんな結花を見つめつつ……青山がぽつりと呟く。
「……さて、どうするかな」
「……すみません、ちょっと呆けてました」
「まあ、無理もない……あそこで未だにのびてるメイドは、自分を取り巻く現実を受け入れるまでにかなり時間がかかっただけでなく、犠牲を必要としたからな」
「……そうですか、悪いことしましたかね」
と、結花はメイドの方に視線を向け……首をかしげ、ちょっと慌てたように。
「いや、結構時間経ってますよ…大丈夫なんですか?」
「寝不足も影響してるんだろう」
「寝不足…」
「新しい衣装を作るのに、徹夜でもしたんだろう」
「はあ…まあ、深くはつっこみません…」
と、ため息をついて視線を戻す結花。
「落ち着いたところで、入谷に質問がある」
「はい?」
「有崎の幼なじみ…椎名とほとんど面識がないのはわかってるが、どう思う?」
「望みの答えかどうかわかりませんけど、最初から好意を持てました」
「それは、珍しいのか?」
「……有崎さんの幼なじみってことで、補正がかかってたかも知れませんが」
青山は少し考えて……校門前での、尚斗と麻理絵の5年ぶりの再会の様子を話して聞かせた。
「……秋谷は、それを聞いた上で『一見普通に見えるけど』と言ったが、入谷はそれについてどう思う」
「……羨ましいです」
「羨ましい…というと?」
「秋谷先輩は、何の疑いもなく、有崎さんのことをごく当たり前に受け止めているわけですから」
「……」
「青山さんは、こう言いたいわけですよね……普通じゃない有崎さんに対して、恐れもせず、ごく自然に再会を喜ぶ椎名先輩が、普通のはずがない、と。もしそう見えるなら、そこには何らかの作為があってしかるべきだと」
「俺は椎名について質問したつもりだったんだが……まあ、自分の正義をおかしいと判断する世界そのものが間違っていると思える秋谷は……はっきり言って、かなり問題のある存在だぞ」
「そうですね、それもわかります…私には、自分の正義を信じ込めるだけの強さも、世界そのものを否定出来るだけの勇気も持ち合わせていませんから」
青山は、少し面白そうに。
「秋谷に言わせると、有崎はもてるそうだが」
「……意地悪ですね、青山さん」
「意地の悪い発言だったのは認める……が、椎名について答えをはぐらかそうとしてる理由が聞きたい」
結花は青山をにらむようにして。
「青山さんがそこまで言うなら、おそらく普通じゃない人なんでしょうね……でも、有崎さんや自分自身が、普通じゃないことを自覚した上でそう振る舞っているとしたら……その理由は、椎名先輩自身に聞いてください」
「……」
「私がさっき言ったことは、私の理由です……椎名先輩には椎名先輩の理由があると思いますし。この先、私が有崎さんの存在に耐えられなくなってしまわないとも限りませんからね……幼なじみを続けた椎名先輩に対して、どうこう言える資格が私にはないと思います」
「ふむ、そうか……」
「秋谷先輩の幼なじみって、どういう人だったんですか?」
「ふむ…」
「こういうのも、意地の悪い質問って言うんです……理解しましたか?」
「教えてくれないのならここで死ぬ……ぐらいのことを入谷が言えば、話すことについてやぶさかではないが」
「……ひょっとして、青山さんは、秋谷先輩のことが好きなんですか?」
「好意はある、負い目もある……が、入谷がいうような対象としては、どうかな」
「……」
「最初に言ったが、そもそも俺には人間的な感情が欠如しているんでな……そういうことは良くわからん」
「……なるほど、意地の悪い質問に対してはそういう答え方もあるんですね」
「いや、本音なんだが」
「……普通じゃない、を通り越えて、自分が人間じゃないような言いようですね」
青山の口元に笑みが浮かび。
「人間じゃなかったら、何か問題があるのか?」
「さあ、どうですかね……明確に人間じゃないとわかってる存在とコミュニケーションをとったことがありませんから」
「なるほど」
「……ただ、『誰でも良かった』なんて理由で、人を殺す人間が出る世の中ですからね、自分の安全とかそういう意味で、『人間だから』という理由に意味を求めるのは滑稽かも知れません」
「ふむ」
「と、言っても所詮は頭の中で考えただけの意見ですからね……実際、その場にたってみないと、わかりませんとしか言えません」
「なるほど、秋谷が気にかけるわけだ…」
「……」
「入谷の言葉を借りれば、入谷は秋谷にとって100の存在だろう?」
「それ以外の意味があった気がするんですが…」
「言葉は、いろんな意味がのせられて便利だな」
結花は少し考え。
「…あまり考えたくないんですけど」
「入谷と秋谷は、本来この学校にはいなかった……ついでに言えば、椎名は入試テストだけで言うなら合格ラインに達していなかった」
「……」
「少なくとも、入谷、秋谷、椎名の3人に関してはある特定の人物によってあの学校に集められたと考えても良いと思うが」
「……」
「むう、その反応は予想外だったな…何を考えたんだ」
「な、何でもないですっ」
顔を真っ赤にして、結花がぶんぶんと首を振る。
「いや、俺にはない発想から出た考えなら、是非とも聞かせてもらいたいんだが」
「だから、何でもないって言ってるじゃないですかっ」
「……別に意地悪で言ってるわけじゃないんだが」
「……っ」
「……正直、情報不足なのもあるが、相手の意図が見えてこなくてな。だとすると、俺が思いつかない考えのなかに正解というかヒントがありそうな気がする」
「……絶対…笑いませんか?」
「笑わない」
「……絶対…バカにしたりしませんか?」
「約束しよう」
「……自意識過剰とか、いい気になるな…とか…言いませんね?」
「……?」
赤い顔をますます赤くして……結花は俯いたまま、呟いた。
「あ、有崎さんの……相手探し…っていうか…お見合い…」
「……え?」
「わ、笑わないって言ったくせにっ!」
「いや、そうじゃなく…」
殴りかかってきた結花を軽くいなして、青山は考え込む。
「笑わないって、バカにしないって約束したくせに〜っ!!」
恥ずかしくって死んじゃいそう…な感じに、青山に抱えられたまま結花がじたばたと暴れ続けるのだが、それすらも耳に入っていない感じで。
「秋谷と別れさせた意図が見えてこないが……なるほど、新鮮なとらえ方というか…」
「みちろー、1つ頼みがあるんだが…」
半開きの口元から、かすれた声でみちろーが呟く。
「ほんと……良く、生きてたよな…尚斗…」
「……?」
首をかしげた尚斗に、みちろーは目だけを向けて。
「崖から突き落とされたり…増水した川に投げ込まれたりしてたよな…」
「ん、まあな……正義の味方をめざしてたから、そのぐらいは」
「……っ……」
腹を押さえて……笑っているのかと思ったら、みちろーは泣いていた。
「……尚斗だったら……父さんと母さん、別れたりしなくてすんだよなあ…きっと」
「悪いな、俺にはよくわからん」
「……」
「ただ俺は、お前のおじさんも、おばさんも好きだったよ」
「……お前の悪口ばっかり言ってたよ」
「それは、みちろー…お前を心配してたからだ」
「……」
「麻理絵の両親は……自分たちの体裁だけ気にして、俺を悪く言ってた」
「……」
「まあ、母さんが……」
『死んでから』と言いかけて……尚斗はちょっと口をつぐみ。
「そういうのを実感したのは、わりと最近なんだけどな……」
「……で、頼みって何だよ?」
「ん、明日向こうに戻る前に、紗智に会ってけ」
「……紗智って、さっちゃんか?」
「みちろー、お前……」
尚斗は口を閉じ。
「ま、いいか……会って、話せばわかる」
ふたりとも、麻理絵の優しさに触れ続けてきたはずから。
「っていうか、メールなり、電話でやりとりはしてたと、にらんでるんだが……さも、意外そうに答えやがったな」
「……」
「……1つだけ言わせろよ、みちろー」
「…何だよ」
「勉強とかサッカーとか頑張るのもいいけどよ……いや、立派だと思うがな、お前、一度でも両親に向かって本音でぶつかったのか?」
「……」
「麻理絵に対してもそうだろ……」
「うるせえ」
「……」
「お前に……何がわかる」
「なのに、麻理絵にはわかって欲しかったのか?でもお前は、麻理絵じゃなく、紗智に対して弱音を吐いたんだろ?紗智が、都合良く動いてくれるって予想もしてなかったか?違うじゃねえのか?」
「……」
「そこで黙るなよ…」
と、尚斗は苦笑し。
「みちろー、お前が何がどう思おうがな、俺と麻理絵はいつだって、お前が戻ることの出来る場所だよ……二度と戻らねえってお前が決めるのは勝手だがな」
何か言いたげに、みちろーの唇が動いたが……そのまま閉じた。
「逃げ道があるのに、逃げないってのが……お前が求めているもんじゃないのか」
「……一緒にするな」
「……」
「俺は…尚斗や、麻理絵じゃない……誰もが、お前らみたいになれるなんて思うな」
あふれ出る、というより、亀裂からしみ出すような、みちろーの言葉。
「何の躊躇いもなく困ってる人間に手を貸せるお前みたいになりたいって思ったこともあったよ……でも、お前みたいになりたくないって気持ちもあった」
「……」
「憧れて、だから嫌いで……」
みちろーは、口をつぐみ。
「……尚斗、お前にできるのかよ?」
「何を?」
「殴り合ったら普通に負ける……力も、金も、何も自分を支えてくれない立場で…それでもお前は……もめ事に顔をつっこめるのか?」
「……無意味な仮定だと思うがな、俺はやるよ」
「……」
「……」
「……わかってるさ…だから俺は、尚斗が嫌いなんだ…」
みちろーの手がゆっくりと動き……顔を覆った。
「お前は、お節介で……周囲の人園を、とことん惨めにさせる天才だよ、尚斗」
「……」
「……すまん」
「優しいよな、みちろーは」
「どこがっ…」
尚斗はちょっと笑って。
「みちろーに限った事じゃないけど……そういうのは、自分では気づけないことなんだろうけどな」
「入谷に1つ忠告しておくが」
「……なんです?」
「自分が危険に直面したと感じたら、躊躇することなく有崎の名を呼べ」
結花はたっぷり十秒ほど青山の顔を見つめ、間の抜けた声を上げた。
「……はい?」
「そうだな……多分、5割ほど確率が上がるだろう」
いろんな事をひっくるめて言葉を失っているらしい結花に視線を向け、青山は言葉を足した。
「助けを呼ぶ声に反応するもんだろう、正義の味方って存在は」
「……ああ」
と、結花はどこか曖昧に頷いて。
「ちょっとびっくりしました……時には冗談を口にしたりするんですね、青山さんは」
「恥ずかしいと思う気持ちは多少わからなくもないが、それが嫌なら出来る限り有崎のそばにいろ」
「……」
青山本人がそれを隠そうとしているならば、自分ではとてもそれを見抜けないだろう……ぐらいは結花も理解してはいるのだ。にもかかわらず、結花は青山の顔を、穴が開くほど見つめ続けた。
「入谷に、もう1つ忠告しておく」
「……なんですか?」
「これから先、有崎に関わっていく覚悟も何も……まるで自分が本来有崎とは関わりのない立ち位置にいるように思ってないか?」
「……?」
「証拠はない……以前に、証明も出来ないんだがな」
と、前置きして。
「有崎に対する受験妨害……入谷と椎名、秋谷の3人は確実に集められたとすると…」
「……この冬の大雪を、何年も前から知っていたという、ばかげた前提が必要となりますけど」
「校舎さえ、壊れたらいいわけだからな…」
と、微妙に目をそらしつつ青山。
「斜に構えすぎだと思います…」
「……有崎家はな、約20年前にこの地にやってきた」
「……20年前というと、有崎さんの生まれる前なんですね」
「女子校の中等部・高等部の移転先がこの地域に決定したのも、ほぼ同時期だ。詳細を省くが、今有崎の家がある土地を有崎の父親が手に入れてすぐ、現在の女子校の敷地の買収に動いた…あたりは、かなり急な話だったそうだが」
「……」
「そして、建設してから20年も建ってない校舎を、新しく建て直す工事が始まったのが3年ほど前……秋谷が中等部に編入を決めた頃だな」
「新しい基準に合わせた耐震設計の…って説明でしたけど」
「耐震設計ね……まあ、頑丈な校舎ってことか…確かに、頑丈に越したことはないな」
と、青山が薄く笑う。
「……」
「生徒数の規模からして、空き教室が妙に多い……ぐらいの疑問は、入谷だって持ってたんじゃないのか?」
「少子化の世の中ですからね……高等部の定員増加でもあるのかな、ぐらいには思ってましたよ」
「そうだな…男子校の連中が転がり込めるぐらいに、余裕はあったわけだし」
「……」
結花の表情に動きはない……が、青山から決して視線を外さない。
「宮坂の報告書はどうだった?『以前、秋谷と付き合っていた』なんて記述や、交通事故にあって秀峰の受験が出来なかったなんて説明は、それこそ不自然きわまりないだろう」
「……」
「……これだけでも、入谷の意志とは無関係に、有崎の関係者であることを求められているとは思わないか?」
ここでようやく結花の無表情に亀裂が入った。
「いいかげんにっ」
「そうね」
「え?」
倒れたままのメイドをのぞけば、そこにあるはずのない第三者の声に、反射的に振り向いた結花の額に押し当てられた手のひら。
「……さすがに、我慢できませんか」
「……出来るわけないでしょう」
震える声で呟きつつ……冴子は、気を失った結花の身体を受け止めた。
「……最初から気づいてたのかしら?」
「入谷は、橘のお気に入りですからね……様子を探りに来るとは思ってましたよ」
その瞬間、敵意を越えた殺意が青山の全身に叩き付けられたが……青山は平然とそれを受け止めた。
「……あれは、私に対する嫌みだったって事?」
「あれ、というと…」
青山は、その口元に皮肉な笑みを浮かべて。
「『ただ1つの純粋な場所は、汚れなく人間性に宿る我らの愛だけだ』のことですか?それとも、入谷が口にした『有崎さん本人の、選択の意志決定を奪ったことそのものが最悪ですよっ』という発言のことですか?」
凍てつきそうな冴子の視線にさらされながら、青山はくっくっと笑い。
「九条御子は見捨てても、入谷結花に関しては、そう口にすることすら出来ませんか」
「……わざわざ、それを確かめるためだけに…」
「多少のヒントを与えはしましたが、入谷は自分でたどり着きましたよ……不自然の存在に」
「……」
「……はっきり言ってしまえば、いろんな事が雑すぎますね。これまで、巧妙に、慎重に事を運んできた連中が、この件に関してだけは呆れるぐらいにやってることが杜撰な印象を受けるんですが」
「帰るわ……この子はちゃんと送り届けるからお構いなく」
そう言い捨てて……冴子は結花を抱いたまま……倒れたままのメイド(笑)を避けて、プレハブの建物から出て行った。
そして青山は、椅子の背もたれに身体をあずけて。
「さて、入谷の記憶をどこまで消すのか……注目だな」
「おや…」
玄関に置かれた靴に目をおとし……ふん、と鼻を鳴らして尚斗の父は肩をおとした。
「男か…つまらん」
「……おおざっぱな感想だな」
と、尚斗は父親の鞄を受け取りつつ。
「みちろーだよ」
「ああ、中島君か……なら、挨拶ぐらいは…」
「もう寝た……というか、寝かせた。多分明日の朝まで、起こしても起きない」
「……」
「整体もかねて、マッサージをちょっと」
わきわきと、手のひらを閉じたり開いたりする尚斗に父親はため息をついて。
「……お前のそれは、優しさがないからなぁ」
「母さんよりはあると思うんだが…」
「……悲鳴を聞くのが好きなあの人と比べてもなあ…」
遠い……というか、遠すぎる目で。
「久しぶりにやっとく?」
わきわき。
「明日も早いのだ、息子よ」
「じゃ、やめとくか…」
「酒が飲める、酒が飲める、酒が飲めるぞ〜」
と、コップを傾けて。
「酒が飲めるのはいいんだが…速攻で酔いつぶれられると、妙に居心地が悪いな」
コップの縁を唇で挟んだまま……水無月が器用に呟く。
目の前には鍋と酒……そして、酔いつぶれて眠る美女。
「あたしゃ、ノーマルだ」
と、なんとなく誰もいない空間にツッコミをいれてから…。
「なーんか、心配事でもあんのか…綺羅…」
綺羅の髪を撫でながらの、優しい水無月の呟きは……届くことなく消えた。
完
予想される質問。
『なんか1周目のみちろーのそれと、話が違いすぎませんか?』
ベストアンサーに選ばれた回答。
『仕様です』
……まあ、冗談は置いといて。
あまりこっちに偏ると、笑いやらそっち方面が書けなくなるなあ……とは、わかっているのですが。
26〜28話を読み返して……にやり、と口元を歪めて笑って頂けるのは、深読みが好きなお人かと。
ちびっこが想像したように、主人公の相手探しのために、みんなが女子校に集められたとしたら、ギャルゲーっぽい設定で素敵ですね。(棒読み)
しかし、このルートだとなあ……。
きゃっきゃ、うふふ、捕まえてごらんなさい……な展開を期待されてるはずだし、高任だって、そっちを書く方が楽しい。
ああ、そうか、だったら同時に別のルートを書けばいいじゃない。
……多分、バカの線量計があれば、針が振り切れているような気がする。(笑)
前のページに戻る