「なんで、アンタがライバルなんだろうね?」
「遠回しに、人を馬鹿にするのはやめろ」
尚斗の抗議に、紗智は、例のへらっとした笑いを浮かべて。
「勉強・スポーツ・素行……アンタが、みちろーにどれかで上回れるって言うの?」
「この、溢れんばかりの人間性なんかはどうだ?」
「はあ?」
何それ……みたいな冷たい表情で、紗智が尚斗を見る。
「いや、何でもない」
「……謙虚なところは認めてあげてもいいわ」
「謙虚も何も、『俺、人間的に優れてるんだ』なんて、臆面もなく言う奴とは絶対に知り合いたくねえよ、俺は」
「あはは、確かにそうね…」
紗智は笑い……癖のある髪の毛を、ちょっと指先で弄った。
最初は、そういうヘアスタイルなのかと思ったが……癖っ毛との妥協の産物であることを、こっそりと麻理絵が教えてくれていた。
「まあ、結局、成績ダメ、スポーツダメ、とにかくこれといった取り柄無しってことよね、アンタ」
「泣くぞ、こら」
「と、すると答えは1つよ」
尚斗の抗議は無視して、紗智はぴっと、人差し指を立てて。
「不可能なことを1つずつ取り除いていって…最後に残された物は、それがどんなにあり得ないようなことに見えても、真実なのよ」
「ほー」
「つまり、みちろーは、麻理絵があんたに惚れてるって思い込んでいたのね」
「みちろーと付き合ってるじゃないか」
「ついに完全勝利したってことね」
「ほほう」
怒るでもなく、尚斗は小さく頷き。
「で、みちろーは、自分より強い奴に会いにいったのか」
「自分の可能性に夢を見るのは若者の特権だから」
「紗智の気持ちにも気付かず、恋人の麻理絵に何の断りもなく…か?」
紗智は、ちょっと尚斗を見つめ。
「みちろーよりは、鋭いかな」
「まあ、お前がみちろーの前でも、同じような態度を取ってたならな」
「……アタシ、猫かぶるの得意だから」
「自慢すんなよ、そんなこと」
「親の前、先生の前……私のかぶる猫は血統書付き」
尚斗は紗智を見つめて。
「今、麻理絵の前って言いかけたか?」
「あ、今のは本当に鋭い」
特に狼狽も見せず、紗智は笑った……いつもの、力の抜けた笑い。
「そうね、そういう意味では、アンタと話してると結構楽だわ」
「猫かぶる必要もないってか」
「あはは、怒らないの……ほめてんだからさ」
「紗智にほめられるのは初めてのような気がする」
そう、皮肉で返すと。
「だって、初めてだもの」
素で返された。
「へいへい」
「そんなに、ぶーたれないの。周りを見てみなさいよ」
「あ?」
言われた通り、周りを見てみたが。
「……?」
「アタシみたいな美少女と、仲良く話してるなんてアンタだけ」
「誰が美少女だっつーの」
「アタシ」
臆面もなく、自分を指さす紗智。
「……可愛いのは認めるが、美少女って言うのはちょっと違うと思う」
「ふむ、可愛いのは認めるんだ」
「言っとくが、俺の評価は甘いぞ。男子校の連中にはよくそう言われてる」
「へえ」
紗智は笑って。
「通り過ぎた女の人に、点数とかつけるわけ?」
「中学校の、卒業アルバムとかもな……ページを開いて、50,32,80,65……とかな」
「馬鹿っていうか、ホント子供ね、男って」
「……女子はやんねーの?」
「写真で何がわかるって言うのよ……実際に見て、接してからの話でしょ、評価付けは」
「……結局、評価はするのかよ」
「何点?」
「は?」
「いや、アタシの点数」
「そういう顔だけの点数ってのは、第一印象っでぱっとつけるもんなんだよ…時間が経てば、色々評価が狂っていくからな」
「言えないような点数?」
「心配するな、補習はない」
「なんで、アンタがつける点数を心配しなきゃいけないのよ」
「だったら、聞くな」
「それもそうね」
「猫か、お前は」
気まぐれな猫。
それが、尚斗にとって紗智の印象である。
ただ、この気まぐれな猫は……今ちょっとばかり傷ついており、人恋しいようだと尚斗はなんとなく理解していた。
「紗智は…」
「ん?」
「年をとったら、お見合いおばさんになるのかなあ」
「ぶふっ」
尚斗の呟きに、麻理絵が思いっきりふいた。
咳き込むような笑いの発作を終えると、麻理絵はちょっと尚斗をにらんで。
「もう、いきなり何?」
「いや、麻理絵とくっつけとかさ……なんか、情熱の注ぎどころを間違ってる気がするんだよな」
「あー」
麻理絵は、同意すべきか、それとも友人の弁護をすべきか、判断がつけられないといった様子で、苦笑いを浮かべ。
「……そうかもね」
と、結局友人を売り渡した。
「デートしろとか言って、確認のために後までをつけてくるか、普通」
「わ、すごい…私さっきから、探してるけど全然わからないもん」
「後ろに注意しすぎ」
「え?」
「前だよ前。俺らの先回りして、見守ってんだ、あの馬鹿」
「……ということは?」
麻理絵はちょっと考えて。
「いきなり、違う場所に行けば…」
「俺1人ならな」
「どういう意味?」
「俺は、麻理絵を連れて行かなきゃいけないってこと……どう考えても、紗智をまけるとは思えん」
「う、遠回しに馬鹿にされてる?」
「直接的がいいか?」
「な、尚にーちゃんの意地悪」
麻理絵が拗ねた。
「32点」
「ふむ、赤点ではない、と」
「ウチの学校、平均点とは関係無しに50点以下は赤点だから」
「ふっ、また男の勲章が1つ増えちまったか」
「は?」
「赤点は、男のロマンであり、勲章なんだよ」
「馬鹿言わないの。そもそもデートってのはねえ…」
くどくどと、説教を始めた紗智を手で制し。
「そのデート観は紗智のモンだろ?」
「は?」
「紗智と麻理絵のデート観が一致するとは思えんし、その必要もないよな?」
「言い訳は男らしくない」
麻理絵に話を振った。
「麻理絵、昨日のデートもどき、何点だ?」
「えっと、75点ぐらい?」
「むう、80点は堅いと思ったんだが」
「私に意地悪言ったから、マイナス5点」
紗智を振り返り。
「……と、言うわけだが?」
紗智は仏頂面で尚斗を見つめ。
「……何が言いたいの?」
「人それぞれじゃねえの?」
「じゃあ、アンタは相手に合わせてデートコースを選べるとでも?」
「そこまでうぬぼれてないし、経験もねえがな」
「だったら…」
「じゃあ、今度は紗智が尚斗君とデートしたら?」
「は?」「はぁ?」
紗智と尚斗、2人は同時に麻理絵を見て……お互いを見た。
「んだこら?てめえ、よく考えたら、自分が嫌がってるもん、麻理絵に押しつけようとしてるのか、あぁ?」
「私の趣味には合わないけど、麻理絵とはお似合いだって言ってるの」
「……勝手に決めないでよ」
控えめに麻理絵。
「つーか、考えてみたら、紗智、お前、男が女を楽しませるデートって観点でしか評価してねえよな?」
「は?」
「あれこれ講釈たれる一ノ瀬紗智様は、さぞかし、相手の男を満足させるデートが出来るってわけだ」
「な、ななな何言ってるのよ。だいたい、デートってのは、男の方が女をリードして…」
「……昭和の価値観だろ、それ」
「うっさいわね、真実は永遠なのよ」
「麻理絵、なんかこいつ、えらそうなこと言ってたけど、メッキがペリペリはげてきた気がしねえか…?」
「えっと、ノーコメントで」
苦笑しつつ、麻理絵。
「ふっふっふっ」
「いきなり笑い出すなよ、気味悪いな」
「そこまで馬鹿にされたら後には退けないわね…やってやるわよ、やってやろうじゃないの」
紗智は、びっと尚斗を指さして。
「今度の日曜、待ち合わせは10時、にゃんぱち像の前。細かいことはまた後で」
そう宣言して、その場を後にした。
「……麻理絵、ちょっとばかり話が違うんだが」
「え、何が?」
「いや、結局また俺の休みはつぶれるって事に…」
「おかげで私の休みは無事だったよ、尚斗君」
「……麻理絵さん?」
「頑張ってね」
麻理絵はにこっと笑った。
「いや…なんつーか…」
自動販売機で買った、ホットコーヒーを一口飲んで。
「アグレッシブな、デートだったな…」
「どっちかっていうと、のんびりまったりはは嫌いな方でしょアンタ」
「そりゃ、間違っちゃいないけどな…」
尚斗は、もう一本を紗智に渡してやり。
「デートというより、連れと遊び回ったってのがぴったりくる」
ボーリング、ビリヤード、ゲーセン……。
「うっさいわね」
「ま、いいんじゃね……そういう気分だったって事だろ?」
「その言い方、なんかむかつく」
「たとえば俺が麻理絵に惚れてたら」
「惚れてないの?」
「いきなり話の腰を折るな……つーか、惚れてないな、やっぱり」
「ほも?」
「お前の中で、麻理絵はどんなアイドルなんだよ」
「みちろーが選んだから」
「……」
尚斗は、沈黙をごまかすように、コーヒーを飲んだ。
「だって、あの、みちろーが選んだ相手だもの、麻理絵は」
尚斗は再びコーヒーを飲む。
「頭が良くて、サッカー部のスターで……そんなみちろーを狙ってた女の子は、1人や2人なんてものじゃなく、上級生も狙ってた」
「……想像つかねえ」
「みちろーは、麻理絵しか見てなかった」
「男って生き物は、わりとロマンチストなんだそうだ」
「だったら、なんでっ?」
尚斗はコーヒーを飲み干し。
「そりゃあ、みちろーに聞かなきゃわかんねえだろ」
そういって、ゴミ箱に向かって空き缶を投げた。
かんっ、からからから…。
「ちっ」
缶を拾って、ゴミ箱に入れる。
「つーか、みちろーにきいてもわかんねえかもな、本当のところは」
「……」
「両親の離婚、なんつー現実から目を背けるために、麻理絵を利用したと思い込んで、自分が許せなくなった…なんて、事もありそうだし」
「……」
「白か黒か、で割り切れるもんじゃねえだろ、そういうのって…」
「悲しいこと言うのね」
「色々と想像はするけどな、自分を、まして他人を理解した……なんて、言いたくないんだよ俺は」
「悲しいと言うより寂しくない、それって?」
そう言って、今度は紗智がコーヒーを飲み干し。
「とうっ」
がこっ。
「……やるじゃん」
「まあね」
と、紗智は小さくガッツポーズし。
「そういや、アンタが幼なじみを放置した5年で、麻理絵とみちろーには色々あったわけだけど……考えてみれば、アンタにも5年の月日は流れたって事よね」
「いや、俺は何もしてこなかった」
「ふーん」
紗智は曖昧に頷き。
「で、アンタが麻理絵に惚れてたら?」
「……それで、麻理絵とみちろーの奴がつきあい始めたら、まあ、多少複雑な気持ちにはなったと思う」
「……」
紗智はちょっと思い詰めたような表情を浮かべて。
「それは、麻理絵に対して?それとも、みちろーに対して?」
「まあ、どっちもだろうが……」
そして尚斗は、視線を空へ。
「これまでと同じようにいられないことに対して……じゃねえかなあ」
「……そう」
「俺が言うのも何だけど、多分、麻理絵にとって……みちろーや、俺と過ごした時間に対する思い入れって言うか……俺には想像のつかないぐらい、大事なものだったのかな」
「……ホント、アンタが言うな、よね」
「中学に上がれば、新しい知り合いも出来て……小学校と比べりゃ、帰りも遅いしな」
「……」
「麻理絵にはなかったのかな、そういうの」
ぽつりと。
「中学、高校と……麻理絵に、そういうことが全くなかったとは思えないんだよな……だとしたら、麻理絵は、現実ってモンを拒絶してるって事じゃないのか」
「……結構、考えてるんだ」
「あんまり考えると、知恵熱が出るんで、たまに、だけどな」
「あはは」
おもしろくもないのに、無理矢理笑ったという感じだった。
「で、どうだったの、デートの点数は?」
「50点」「50点」
紗智と尚斗はお互いを見て。
「意外と高評価だな」「へえ、50点もくれるんだ」
と、漏らした。
「…えっと、心が寂しくなりそうなデートだったのかな?」
困ったように麻理絵が呟いた。
「ボーリングは俺の圧勝だった」
「ビリヤードはアタシの圧勝だったわよ」
「デートじゃなくて、勝負だよ…それ」
「そういう意見もある」
「まあ、恋人としては見られないのは確かね」
「見てもらう必要があるとは思えん」
「同感ね」
麻理絵は、尚斗と紗智の2人の顔を交互に見て……おそらくは石灰水に通すと真っ白に濁ってしまいそうな深いため息をついた。
「言葉だけ聞いてると、険悪なのにね」
「どういう意味よ?」「どういう意味だよ?」
「2人とも、トイレで鏡でも見てきたら」
そう言って、麻理絵はぷいっと横を向いた。
「ふむ、見てこいと言うなら見てこよう」
「そうね」
「…なんかあったか?」
「いえ、別に……そっちは?」
「わかんねえ…一応、顔は洗ってみたが」
「と、すると…」
紗智は少し考え。
「あれは嫉妬ね」
えらく断定的な物言いだった。
「紗智へのか?」
「あ、アタシはノーマルよっ」
「ホモ本を愛読してるくせに」
「ボーイズラブっ!一緒にしないで」
「いや、そうじゃなくて、紗智は麻理絵の数少ない友人だろ……それが、他の相手とつるんでたら…という意味だったんだが」
「あ、あぁ…そういう意味」
「……さすがに、それ以外の意味は持たせたくねえなあ」
「ふむ、アンタのそれは麻理絵に対する独占欲ね」
「お前はきっと、検事に向いてる」
「ありがと、最高のほめ言葉だわ」
「……10年前はかろうじてそうだったが、10年後はどうかな」
「時の流れって、残酷よね」
『つーか、デートにこだわるやめて3人で遊ぼうぜ…足りないなら、宮坂の奴も呼ぶし』という提案に対し、『宮坂君はちょっと』『馬鹿は嫌』という答えを経て、尚斗、麻理絵、紗智の3人で遊びに来ているわけだが。
「……なんか、麻理絵の笑顔を見たのは久しぶりな気がする」
「そうか、友人として、反省しろよ」
「反省するのは、まずアンタだから」
紗智は一旦口を閉じ…ぽつりと付け足した。
「そしてみちろー……その後でアタシ、の順番」
「もしそうなら、そこに麻理絵が入ってないのは変だろ」
「麻理絵は被害者」
「10対0で?」
「アンタ成績悪いくせに、そういう小洒落た言い回しは好きよね」
「紗智、尚斗くん、こっちこっちー」
ベンチに腰掛けた2人に向かって、麻理絵が手を振りながら呼びかけてきた。
「さっちゃんや、姫様がお呼びですぞ」
「さっちゃん言うな」
「さて、可愛い孫娘のためにもう一踏ん張りしますか、ばあさんや」
「そっち系統のお笑いは、アタシスルーするから」
と、立ち上がり……尚斗の足に軽く蹴りを入れてから紗智は麻理絵の向かって駆けていく。
「痛ってえな…」
と、尚斗はゆっくりと。
数歩歩んだところで、尚斗はふっと後ろを振り返る。
さっきまで自分と紗智が座っていたベンチに、みちろーが座っているのではないか……そんな幻想にとらわれたからだが。
もちろん、ベンチには誰も座っていなかった。
「尚斗くーん」
「置いていくわよ、尚斗」
「ああ、今行く…」
「こんの、裏切り者がぁっ!」
テイクバック、インパクト、フォロースルー、体重ののせ方、腰の回転に至るまで、申し分のない打撃を食らって、尚斗は吹っ飛んだ。
ちなみに、痛みは感じなかった。
「お、お…?」
目の前に星が飛ぶ……というか、視界がぐわんぐわん揺れる。
身体が思うように動かない。
自分に向かって、何か言葉が投げかけれられているのだけはわかったが、そもそも意識と感覚が切り離された状態というか……。
「ぐおおおっ」
まず痛みが、そして意識が戻り、最後に身体の自由が戻ってきた。
頬を押さえ、呻いている最中も、何か言われていたようだが、今度は別の意味でそれどころではない……が、尚斗もまた、狂気と暴力の渦巻く(笑)男子校の生徒の1人である。
未だ痛みが治まる気配はないが、打撃の衝撃によって奪われていた感覚の回復を悟ると同時に、勢いよく立ち上がり。
「何しやがる、クソ野郎っ!」
体重とは別に、怒りを拳にのせて、目標の遙か後方を打ち抜く感じで叩き付けた。
「ぶべらっ」
まさか、ここまで迅速に反撃が始まるとは思っていなかったのか、どこかの漫画の悪役っぽい悲鳴を上げて、男子生徒が綺麗に吹っ飛ぶ。
「てめえもっ」
打ち抜いた右手を引っ込める動作で、隣にいた男子生徒の後頭部を押さえ、膝で突き上げた。
「ぐがっ」
だがしかし、1対複数の場で、動きの大きい大技……特に、足を地面から離すジャンプ系の技は禁物である。
「とりゃ」
背後からタックルを食らい、別の人間に右腕を抱え込まれた時点で、試合終了である。
まあ、尚斗のミスもあったが、不意打ちの被害を2名でとどめたところは、男子校の生徒としての面目躍如というところか。
「てめっ」
「このっ」
「いい気になってんじゃねえぞ」
などという怒声と共に、ストンピングの嵐を受け、速やかに尚斗の意識は途切れた。
カッ。
暗闇の中、いきなりまぶしいライトを突きつけられた……尚斗としては、そんな感じだった。
「有崎尚斗、キミは昨日遊園地において、一ノ瀬紗智、椎名麻理絵の両名とデートした?間違いないね」
「う、え?」
「聞いたことに素直に答えんかっ!?」
怒声。
ライト。
頭ががくがくと揺さぶられる感覚。
「あ、ああ…そうだ」
勢いに押され……というか、判断能力の欠如した状態をつけ込まれて、同意する。
「…有罪」
「有罪」
「ギルティ」
「お、俺は別に…」
と、ここでようやく尚斗の頭が回転を始め。
「てめえら、何の真似だっ!?」
立ち上がろうとしたが、身体をがっしりと固定されている。
「……俺は悲しいよ、有崎」
などと、本当に悲しそうな表情の宮坂が、尚斗の顔に突きつけられていたライトを脇にどかした。
「そうか、俺は今怒りで一杯なんだが、とりあえず説明を聞こうか?」
「多少の統計的違いはあるが、この世の男と女は、1対1だ」
「は?」
宮坂は、尚斗の肩をがっしりつかみ。
「てめえ1人で2人相手にしたら、男が1人余るに決まってるだろうがっ!」
「……」
「ふっ、ようやく己の罪深さに気付いたようだな…」
尚斗は、宮坂から視線を外し……周囲の男子生徒に視線を向けた。
威圧するような強面の下にちらほらと見え隠れする、犬の素顔。
「……なるほど」
こいつらは、仲間同士でありながら敵であり、自分の敵でありながら下僕なのか。
「とりあえず、俺を自由にしてくれよ」
「……」
宮坂および、周囲の男子生徒が牽制し合うような視線を巡らせた。
「あれ?」
と、尚斗は大きく首をかしげ。
「こんな風に座らされてると、健康に問題が出るかも知れないな…俺の健康を心配してくれる、俺の一番大事な友人は、一体誰になるんだろう?」
男子生徒が、尚斗に殺到した……正確には、尚斗の身体を拘束するロープの結び目に。
さすがに、宮坂だけはそれにつられなかったが。
「おい、馬鹿やめろ…」
「……弱みを見せた方が負けるに来まってんじゃねえか」
足下の生徒を蹴飛ばし……尚斗は、身体のあちこちで主張する痛みに顔をしかめながらその場を後にした。
「あら、随分な男前」
「ど、どーしたの尚斗君?」
「いや、麻理絵と紗智があんまり可愛いんでな」
「な、なになになに、いきなり?」
と、麻理絵は顔を真っ赤にして狼狽し。
「……なるほど、そういうこと」
と、紗智はすぐに事情を察したようで。
「一生に1度の経験ってとこね」
「ま、否定はしない」
「ど、どういうこと?どういうこと?どういうことなの?」
麻理絵の視線は、尚斗と紗智を往復する。
「そういうことなら、アタシもちょっと骨を折ってあげる」
「それはありがたいが…」
「あら、心配してくれるの?」
「そりゃするだろ。男なら普通に」
「あはは。だいじょーぶ、だいじょぶ……男の1人や2人、手玉にとれなくて女は名乗れないから」
「……不安だ」
「だからなんなの?ふたりだけで、話を完結させないでよう…」
「両手に花ね」
「……花が言うなよ」
「あはは」
紗智はちょっと笑い、尚斗の横顔をじっと見つめた。
「なんだよ」
「尚斗のね、麻理絵を見る目が……なんかいいなって」
「……惚れてはいないと思うんだが」
自分でも気がつかないうちに、そうなりかけてるのかなあ…と、首をかしげる尚斗。
紗智は紗智でなにやらやったようだが、男子生徒のやっかみを恐れずに、またまた3人で遊びに出かけた。
ちなみに、姫様は今ふれあい広場で、犬と戯れるに夢中というか、ご満悦のご様子。
「……そうね」
紗智は、尚斗から麻理絵に視線を向け。
「娘を見守る、父親って感じかしら」
「そこは、妹でお願いしたい」
「あはは」
紗智が笑った。
「妹でいいの?」
「……恋愛云々の好きってのとは、違う気がする」
「ステップアップ」
「無理にせんでも」
「そういうのって、ステップアップしたときには手遅れって事に」
「……」
尚斗は紗智を見つめ。
「手遅れだったのか?」
「んー、どうだろ」
尚斗ではなく、麻理絵を見つめたまま。
「……なんか、ぐずぐずしてて、ここはマネージャーのアタシが、一肌脱ぎましょう……っと、やっちゃったんだけどね」
「そっか…」
「何だろ、あの時はもう、みちろーのこと好きだったのか……とか、考えても、良くわかんないって言うか」
「そういうのは、いきなりらしいからな」
「そう、ある日いきなり気付いちゃう」
「……」
「というわけで、尚斗……ある日いきなり気付いちゃう前に、さっさと麻理絵をよりを戻してはどうかね」
「本末転倒だろ」
と、ここでようやく尚斗は麻理絵に視線を戻した。
「きゃー、ふかふか、可愛い〜」
などと、姫様は飽きもせず犬と戯れている。
「だからさ、自分が誰を好きなのかいきなり気付いちゃうってことは、ある日いきなり、自分が誰かを好きじゃないってことや、自分が誰かを嫌いだって気付くこともあるわけじゃない」
「そう…なるのか?」
そう思うと、尚斗は微妙に暗い気持ちになった。
「太陽が一番高いのは正午で、水温は1時、気温は2時に一番高くなるわけよね……だから、人の気持ちってやつが変わるものだとすると、人間って、一番好きだったり、嫌いだったりする自分自身の感情を知ることが出来ないのかも知れないわね」
「なんか、憂鬱になる話だな」
「憂鬱って漢字、書ける?」
「いきなり、飛びすぎだろ」
「あはは、憂鬱と薔薇はクイズでは定番なのに、書けないんだ」
へらっと、力の抜けた笑み。
「薔薇はともかく、憂鬱は覚えてるぞ」
と、上体を折って、尚斗は足下に指先で『鬱』と書いた。
「おお、すごいすごい」
ぱちぱちぱち。
「……馬鹿にされてるとしか思えねえ」
「で、『憂』は?」
「……」
「……」
「……えーと…確か…あれ?」
「あははは、『憂』の字のほうが簡単なのに、そっちが書けないんだ、あはははは…」
「うるせえ」
がしがしっと、書き連ねた文字を足で踏み消した。
「アンタ、ほんっとに、頭悪いのね」
「成績良かったら、多分他の学校行ってる」
「家から近いから…じゃなくて?」
「それも無いことはないが、せめて、共学だろ」
「あははは、おーとーこーのーこー」
「ふつうだ、普通」
「そっかー、普通かー」
「ウチの連中見りゃわかんだろ。よどんだ男子校に、お前が望むようなボーイズラブやら、嘆美な世界は無縁だっつーの」
「それは残念」
「……」
「残念がらんでいい」
「いや、だってぇー…」
「……」
視線を感じて、尚斗と紗智はくるりと振り向き。
「楽しそうだね」
「いや、さっきまでの麻理絵程じゃねえよ」
「堪能したの?」
「うん、あの子達みんなすごい可愛い、ここに住みたい」
手のひらで顔を覆い、ぶんぶんと首を振る麻理絵。
「世話もしろよ」
「するする、いっしょにいられるなら、ずっとする」
「紗智、麻理絵は進学じゃなくて就職希望だってさ」
「ここ、高卒で募集してるかしら…調べてみるわ」
「きゃー、可愛い、今日もやっぱり可愛い〜♪」
「た、確かに可愛いのは認めるけど、さすがに2日連続は…」
お腹いっぱい、という感じに紗智がため息をつく。
「まあ、姫様のリクエストそのものが珍しいからな」
尚斗はため息をつきながら。
「ただ、明日もここだぞ」
「え、まさか、いくらなんでも3日連続は…」
「やるよ、麻理絵ならやる」
「……せっかくの3連休なのに」
と、紗智がちょっと落ち込んだ。
「下手すりゃ、来週も危ないな」
「マジ?」
「麻理絵のやつ、自分から何かを言い出すことは滅多にないけどな…何か言いだしたときは相当しつこいぞ」
「……」
「……少なくとも、俺が知ってる麻理絵はそうだ」
「そうなんだ…」
紗智は、犬と戯れる麻理絵に視線を向け……ぽつりと、それを口にした。
「みちろー、帰ってくるわよ」
「……永続的に?」
「……一時的に」
「だったら、あんま関係ねえな」
「……」
「で、麻理絵はそれ、知ってるのか?」
紗智は黙って首を横に振った。
「……」
「……麻理絵が、私に教えてくれたとは思わなかったんだね」
「ん、ああ…まあな」
「私のお母さんと、みちろーのお母さんが友達なの…進路のことについて相談したいって、だから、両親に会いに…」
「別に、勘ぐっちゃいねーよ」
「……」
「裏でこそこそと動き回る奴に、麻理絵は心をゆるさねえから」
「……そっか」
そう言って、紗智は空を見上げ。
「……なんでかな?」
「何が?」
「アンタ自身じゃなくて、麻理絵が判断基準だったことがちょっと悲しかったなって」
「うっ、うぅっ…」
甲子園で敗れた高校球児のように、男子生徒が涙ぐんでいた。
ある生徒は、女子校校舎を見上げながら『蛍の光』を歌い続け。
ある生徒は、校庭の土をかき集め。
ある生徒は、机に落書きをし。
ある生徒は、大きな声で言えない場所に侵入し、公表できない何かを(以下略)
「おら、てめえらぁっ、さっさと動けっ!」
一体、今の今まで何をやっていたのか……竹刀を持った、男子校教師が、生徒達の尻をひっぱたく。
2月14日、それは別れの日である。
「いやだ、嫌だ嫌だ嫌だぁっ!」
「俺は卒業までここで過ごすんだっ!」
「アイルビーバックっ!」
明けない夜がないように、醒めない夢もない。
流れる涙をぬぐおうともせず、男子生徒はそれぞれ荷物を抱えて、仮校舎となる男子校のプレハブ校舎まで、行軍を開始する……いや、させられる。
「尚斗君」
「お、麻理絵」
「はい、忘れないうちに」
「おう」
と、麻理絵からチョコを受け取る。
「渡せるときに、渡しておかないと、また5年位は会えないような気もするし」
「随分と根に持たれてるが、麻理絵も俺に会いに来なかったのは確かだぞ」
「……」
「目ぇ、逸らすな、こら」
「……尚斗君には、デリカシーがない」
「でりかしー?なんだそれ、うまいのか?」
「……」
「……なんだよ?」
「じゃあ、またね」
「ああ、またな」
「……」
二度目の沈黙でようやく気がついたが、少なくとも、麻理絵からみちろーガ帰ってくることについて何も聞いていないだけに、尚斗は敢えてとぼけることにした。
「……だから、何だよ?」
「……もう、いい」
ため息をつき、麻理絵はぶつぶつと呟いた。
「おっと…」
このままだと置いて行かれてしまう事に気付き。
「じゃあな、麻理絵。時間が合えば、また遊びに行こうぜ」
「……はい」
どこか疲れた表情で、麻理絵は頷いた。
大雪の前に崩れさった木造校舎は、なんというか、年月を経たうえでのぼろさだった。
そして今、男子生徒の前にあるのは、できたてほやほやのプレハブ校舎。
「……何故だろう」
男子生徒の1人が呟く。
「新築なのは頭で理解してるのに、『ぼろい』という表現しか浮かんでこねえぞ」
「そりゃ、ぼろいからだろ」
虚飾を削り取った上に残る、機能美……という言葉からもさらに遠く。
「ちなみに、これって仮校舎だよな……新校舎って、いつ完成するんだ?」
「ん、この規模の建物だろ…」
と、父親が建築技師らしい男子生徒が目を閉じて。
「基礎も含めて、1年ぐらいじゃね?ま、早くても半年…の場合、金がかかる」
「……」
「……」
「俺たち、卒業までこれかっ!?」
2年は狼狽し、1年は安堵のため息を漏らす。
「冗談じゃねえぞ、プレハブにも色々あるが、こんな簡易タイプの省コストプレハブは、夏は暑く冬は寒いの(以下略)」
当然女子校と違って、冷暖房は無し。
その後、男子校は暴動が起き……教師共々、怪我人が続出した。
灯油販売の車が鳴らす音楽が、氷のかけらのような星が寒そうに瞬く空へと吸い込まれていく。
立春を十日あまりも過ぎているのに、寒さは今がピークという感じだ。
いや、心が寒いからなのか。
「明日から、あれかよ…」
言葉にすると、余計何かが肩にのしかかってくるようで。
「ん?」
家の近く。
目をこらして、人影のようなモノを凝視する……と、あっちが気付いたのか。
こちらに近づいてきて、右手をあげた。
「やほー」
「え、紗智か?」
「あら、声でわかる?」
辺りは暗く、数メートルほどしか離れていないが、顔は判別できない。
「つーか、紗智は影で俺ってわかったのかよ」
「まあねん」
と、妙な調子をつけて紗智。
「待ってた」
「待ってたって、こんなクソ寒い中を?」
「そ、こんなクソ寒い中を」
「いつから?」
「放課後から…と言いたいけど、5時ぐらいから」
「そりゃまた、なんで」
「みちろー、今日だったから」
「……なるほど」
「麻理絵に、何も言ってあげなかったんだって?」
「麻理絵だけに、何か言うのはフェアじゃねえだろ」
「……」
「麻理絵と同じように、みちろーも俺の幼なじみなんだよ」
「……尚斗には会わずに帰ったけどね」
「会いたくなかったんだろ…いや、時間がなかったか」
「何か伝えたいことがあるなら、アタシの方から伝えてもいいけど」
「……やめとく」
紗智が一歩近づいた。
「『やめとく』ってことは、言いたいことはあるって事よね?」
「言いたいことは直接言う」
「帰っちゃったわよ」
「会いたくなかったんだろ…いや、時間がなかったか」
「アタシ、そういうお笑いも嫌い」
「ふざけてるんじゃなくてな……みちろーが俺に会いたくないって言うなら、無理矢理会おうとはしたくねえし、会いたくないって思ってる奴に、何か言おうとも思わねえってだけの話」
「……?」
「言いたいことってのは……言葉ってのは、ちゃんと、向かい合って……身体だけじゃなく気持ちも向かい合って、交わすモンだろ」
「……」
「別に、俺も、みちろーも…お互いにお互いを大事に思ってないとかそういう話じゃなくてな…その、なんだ……1人になりたいときってのはちょっと違うな…」
「もういい」
「ん?」
「無理に、言葉にしなくてもいいよ」
多分、紗智は例の笑いを浮かべて。
「なんとなく。なんとなくだけど、尚斗の言いたいことはわかった気がするから…」
「……」
「帰ってきたとこ、悪いんだけどさ…ちょっと歩かない?」
「そりゃ、俺はいいが…」
尚斗は、紗智の顔が見えるぐらいまで近づき。
「寒くないか、大丈夫か?」
「へーき」
「…ならいいが」
てくてくてく。
「このあたり、土地勘あるのか?」
「麻理絵ん家の近くじゃん」
「それもそうか」
「……そこは、『何故俺の家を知っていた』ってツッコむところじゃない?」
「麻理絵に聞けばすぐだろ?」
「……尚斗はデリカシーがない」
「……1日に2度も言われるほどか?」
「相手さえいれば、3回も4回も言われると思うわよ」
あはは、と紗智は笑い。
「あ、ここの公園でいいや」
「ここ、なんもねえぞ」
「ブランコ遊びって年でもないでしょ」
「そりゃそうだが…」
「お互いの顔が見えるぐらいの明かりがあればいいの」
と、紗智は公園の中の街灯の下へと駆けていき。
「カモン」
と、振り返って、右手をくいくいっと。
「なにが、カモンだ」
これから、ケンカでもするのかよ…と、尚斗はそのまま歩いて近づいた。
「それで…」
何の話だ……という言葉を尚斗は呑みこんだ。
紗智の言うとおり、確かにお互いの顔が見える程度には明るい。
尚斗にまで伝わる緊張を、紗智は実にあっさりと、うち破った。
「アンタに惚れちゃったわ、尚斗」
「……」
「……」
別に、どう返事をしようか悩んでいたわけではなく、紗智の言葉を理解するまで時間がかかっただけの話である。
「……また、いきなりだな」
「前に話したじゃない……いきなり気付くって」
「えーと…いきなり気付いてしまったと?」
「いや、正確に言うと、まだ気付いてはいないんだけど」
「……は?」
こんな時でも、紗智はいつもの、ちょっと力の抜けた笑いを浮かべた。
「多分ね、近いうちに気付いちゃうと思うのよ、アタシの勘では」
紗智の言葉の意味をしばらく考え。
「いや、惚れてないだろ、それっ」
「だからね、尚斗にも、今気付いて欲しいなって」
「話を聞けよ……っていうか、俺に好かれてるとも思ってねえって事じゃないのか、それはっ」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
何の問題もないから、という感じに手を振る紗智。
「すまん、俺は頭が悪いから、何がどうして大丈夫なのか、さっぱり理解できん」
「……手遅れになるのは嫌なのよ」
「手遅れって……紗智も知ってるだろ。他に競争相手なんかいないって……今日だって、麻理絵がくれた義理チョコ一個だけだぜ」
「……」
「つーか、そんな風に考えてくれるのは正直嬉しいけどな、もうちょっと考えろと言うか、もうちょっと自分の気持ちを確かめろというか…とにかく、落ち着いて考えろ」
「……尚斗にはデリカシーがない」
「またかよ」
尚斗は髪の毛をかきむしり。
「なあ、紗智…急いては事をし損じるって知ってるか?」
「ダメだったら、やり直せばいいだけだし」
へらっ。
「いや、おかしいだろ。つーか、なんか間違ってるぞ、お前」
「拙速は巧遅に勝るって知ってる?」
「……」
「あはははは……もっと、勉強しなきゃね、尚斗」
「いや、だーかーらー」
「尚斗、チョコ欲しい?」
「欲しい」
即答だった。
「……」
「あ、いや、今はそういう話じゃなくて…」
「彼女欲しいでしょ、尚斗」
「欲しい」
「あははは。いいわ、その素直さって言うか、ものすごい正直なところ、マジ笑える」
「いや、だからな…」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
ふっと、紗智は真面目な表情を浮かべ。
「アタシ、魔法使えるから」
「……」
「……」
「……はい?」
「ちょっと、耳貸して」
これから、すごい秘密話をするから…という表情と口調につられ、尚斗が顔を寄せた。
「……ん」「……んうっ?」
そして、紗智の唇が、離れた。
「今の、アタシのことしか考えられなくなる魔法だから」
「……」
「はい、チョコもあげる」
と、尚斗の手に包みを握らせて。
「じゃ、帰るね」
と、右手を挙げて別れを告げた紗智の頬は、寒さ以外の何かで赤らんでいた。
「どう、魔法効いてる?」
「効いてるよ、目茶苦茶効いてるよ、コンチキショー」
「あははは、アタシも、アタシもすごい効いてる……寝ても覚めても、尚斗のことばっかり考えてて」
いやあ、まいったわねえ…という感じに首を振る紗智。
「お前、絶対後悔するぞ」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
紗智はへらっと笑って。
「っていうか、すんごい楽しんでるし」
「告白とか付き合うとか、順番無茶苦茶だろこれ…」
頭を抱える尚斗に、紗智は優しい目を向けて。
「それで、どう?気付いちゃいそう?」
「気付いてねえよっ」
「あら、残念」
紗智は空を見上げた。
遠くの空が、少し霞んで見える。
多分、もうそこまで春は来ているはずだった。
完
ちょっと変わった感じのお話に。
いや、チョコキスじゃなかったら、この手の話はわりとよく書いたんですが。
はたして、麻理絵は紗智に出し抜かれたのか、それとも苦笑しながら2人を見守っているのか……敢えて書きません。(笑)
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