「・・私きっと忘れない、あなたのこと覚えているから・・。」
長い長い夢はそうして覚めた。
私は未だに『あなた』の顔を思い出すことができない。
目を覚ますと白い部屋の中にいた。自分の身体の周りの機械や点滴にぴんとこない。
「そうか、私あの時・・。」
目の前に迫った車の映像の記憶が鮮やかに蘇る。
頬にあたるひんやりとした空気が冷房であることに気が付くまでしばらくかかった。
無意識に自分の腕にあるはずの時計を見ようとして私はびっくりした。自分の記憶とはあまりにかけ離れた細い腕。浮き出ている血管が不健康そうに見えることこの上ない。違和感を感じながら指先で自分の顔をなぞってみる。
がさついた肌。
ベッドから下りようとして身体がよろけた。
・・聞いたことがある。長く寝たきりを続けていると、筋力の衰えや平衡感覚の失調でこんな風になるそうだ。
私は枕元のブザーを見つけてそれを押した。
みんなが喜んでくれている。
先生や看護婦さん、連絡を貰って慌てて駆けつけてくれた両親。
・・でも、誰か足りない。
「お母さん・・今日って何日なの?」
涙を流さんばかりに喜んでいる母が笑って答えた。
終業式の日だ・・。
じゃあ、行かなきゃいけないよね・・。
「お母さん、私臨海公園に行かなきゃ・・。」
きょとんとして聞き返す母。
あれ?・・・どうして行かなきゃいけないんだろ?
でも、行かないと・・。
私を待っていたのは精密検査だった。
私は約束が守れなかった。
「みんな、久しぶり。」
夏休みの間にすっかり私は回復して9月のはじめには学校に行けるようになった。
「生きてたんだ・・。」
「あの子誰?」
様々な声が私にかけられる。怪我をしたのはクラスが変わっての4月だったから無理もない。
誰かを捜すように無意識に視線を左右へと動かす。自分でも誰を捜しているのかわからない。でも、多分見ればわかると思う。・・・多分だけど。
「おお、生き返ったか藤川。」
「木地本君は死んでないのね・・。」
「お・おいおい・・。」
困ったように頭をかく木地本君。私はそんな彼の様子を見て笑った。でも、木地本君前より元気がないみたい・・。
「私が死んでる間に何かあったの?何か暗いよ?」
「ああ、友達が1人転校しちゃったんだ・・。」
私の周りにいた女の子が何人か頷いている。
「早川君と木地本君仲良かったもんね。なんかあやしい感じ。」
「ちょっと待ってくれよ・・俺は女の子を追っかけるのが・・・」
早川君?
友達に言われて初めて私は自分の頬に流れる涙に気が付いた。
早川君。早川大輔君。
私の知らない人の筈なのに・・。
一学期分丸々休んだ私は結局留年した。仕方のない話だけど・・。
あれから2年。
私は3年生になり、今日は一学期の終業式。
この2年の間、私は終業式の日はいつも学校をさぼっている。2学期も3学期も、いつも私は臨海公園に足を運んでいた。
理由はわからない。
でも約束したから・・。そうとしか言えない思い。
潮の香りがする。
目を閉じると頭の上に何かが落ちてきた。
まさか、鳥の糞?
慌てて手を頭の上にやると固いものに指先が触れた。
からん。
乾いた金属音に私は足下に目をやった。
無くしたと思った私のペンダント。これを拾おうとして私は事故にあった。・・でも、そっくりなだけかもしれない・・。
「すいませーん。」
「これ、あなたのですか?」
私の方を見たまま彼は動きを止めた。最初に浮かんだ表情は驚きと喜び。そしてさびそうな笑顔。
「・・いや、預かりものなんだ・・。」
手のひらの上のペンダントに水滴が落ちる。
雨?
私は雲1つ無い空を見上げた。
じゃあ、私が泣いているんだ。だとするとこの人の名前は・・。
「・・・早川君?」
「さつきちゃん・・・」
この人はなんで私の名前を知っているんだろう?
次から次へと落ちてゆく熱い涙。
霞んでいく自分の視界。
霞んでいく視界。
私はこんな光景を前に見たことがある。どうして忘れていたんだろう?
笑わなきゃ、早川君に変に思われるよね。
私はペンダントを自分の首にかけた。
「確かに受け取ったよ早川君。」
「さつきちゃん。」
止まっていた季節が動き出したような気がした。
いろいろお話ししたいことがある。でも、今はしばらくこのままでいたい。
あの時触れることもできなかった2人は今初めて堅く抱きしめあった。
確か設定では上履きの色が1年はみどり、2年はピンク、3年は青。オフィシャルガイドのさつきの上履きはピンク。よし、君は2年、決定。
というわけでさつきです。(笑)なんというか高いレベルにはあるんですがお気に入りとなるとさつき、桃子、・・・になるんですな。脇役好きですから自分。
季節キャラが上位を占めてレギュラーは最下位争い。(俺順位)あ、君子もポイント高いです。(笑)
なんか、これはっ!というイベントが単発なので自分としては入れなかったわけです。
さつきの性格からしてこの文章は変かもしれませんが、実際の性格は描かれていないわけですからいいですよね?肉体から解放された魂としてあの明るさだったのかもしれないし・・・。すいません、あの性格だと話がむちゃくちゃになるんです。
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