「よ・よけてくださいっ!」
 背後からの声に大輔は眉をひそめた。ここは誰のものでもない学校の階段である。きっちりと右側を歩いている自分が道をあけてやるいわれはあるまい。
 そう思って来るならどーんときやがれっとばかりに大輔が傲然と胸を張った瞬間のことである。
 どーん。
 ごろごろごろずででーん。
「ふみゃー・・・。」
 ・・・本当にどーんときやがったな・・・。
 大輔の身体がちょうどクッションになったおかげか、少女は大したダメージもなくゆっくりと立ち上がった。一方大輔と言えば階段と廊下のツープラトンに少女の体重と加速度まで加わったせいで身動きも取れずじっと少女を眺めていた。
 そんな大輔の視線を非難と判断したのか、少女は慌てて大輔の元に駆け寄りがくがくと身体を揺さぶった。
「すいませんすいません、大丈夫ですか怪我はありませんか?」
 そうやって揺さぶられるたびに激痛が大輔の身体をはしるのだが、あまりの痛みにそれを伝える術がない。
「すいませんすいません、謝るから許してください。」
「・・・っ、がっ・・。」
「すいませんすいませんすいませんすいません・・・・・」
 がくがくがく・・・。
「がはっ。」
 胸の奥に何かが詰まっていたような感覚から解放されて、大輔は大きく息を吸い込んだ。「わかったから、放せ!俺の身体を揺さぶるな!」
「は、はいいぃっ!」
 少女はおびえたように大輔の身体から手を放した。大輔は痛みをこらえながらゆっくりと身体をおこし、自分の身体の各部位を調べていく。
 まだ鈍い痛みこそあるものの、感覚は戻ってるし、痺れたりしているところもない。
 ・・・ふん、打ち身だけだな。まあ、目に見えないぐらいのひびなら入ってるかもしれんが問題なさそうだ。・・・
「あ、あのう・・・。」
「ん、多分大丈夫だ。気にするな。」
「で・でもー・・」
「なんだよ、『肩の骨が外れてしもたあ』とか言いながらぐるぐる腕でもまわさないといけないのか?」
「い・いえ・・別に新喜劇はどうでもいいんですけど・・・。」
 少女は恥ずかしそうに指先をこすりあわせ、何か言いにくそうにしている。別に怪我もなかったし、さっき死ぬほど謝って貰ったしこれ以上何かあるというのだろうか?
「じ・実はですねえ・・・制服の背中が思いっ切り破れてます。」
「うそおっ!」
 俺が慌てて肩越しに背中をのぞき込んで確認すると、ちょっとごまかしようのないぐらいに大きな裂け目が広がっていた。
「えーと・・・ごめんなさい。」
 少女は気の毒なぐらい身体をすくめて、その大きな瞳で眼鏡のフレーム越しに上目遣いで俺の方をちらちらとのぞき込んでいる。
「代わりにわたしの制服を・・・」
「そんなもん着れるかっ!」
「やっぱり、ちょっとサイズが合わないですよね・・。」
 少女は眉根を寄せて考え込んでいる。
「サイズ云々より、俺のまっとうな人権まで傷モノにする気か!」
「それじゃあ今日一日私が黒子のようになってあなたの背中をガードすると言うことではどうでしょう?」
「気のせいかもしれないが、そうするとこの制服は今度こそご臨終になってしまいそうな気がするんだが・・・」
 かなり嫌みをきかせたつもりなのだが、この少女は納得したように頷いている。
「そうだ、私の友達に裁縫が得意な女の子がいるんです。その子に応急処置をして貰いましょう。」
「・・・初めて建設的な意見が出てきたな。・・・・まあ、それが最善策か・・。」
「じゃあ、保健室で待っててください。」
 そう言い残してすたたたと走り去って・・・
「ふみゃあっ!」
 ・・・・転んだようである。
 どうやら見えないところに擦り傷があったらしく、保健室のドアを眺めながら保健の先生に消毒して貰っているとゆっくりと目の前のドアが開けられた。
「失礼します・・。」
 先程の眼鏡の少女が現れ、その次に現れた少女は俺を見るなり素っ頓狂な声をあげた。
「あれえ?お兄ちゃん。」
「・・・なんだよ・・君子の友達だったのか。」
「えっ?君子のお兄さんだったんですか。・・それは重ね重ね失礼しました・・。」
 深々と頭を下げる少女の脇をすり抜けるようにして、君子が椅子にかけてあった制服を広げて顔をしかめた。
 背中から斬りつけられたような見事な状態にぽつりと一言。
「・・・ご臨終です。」
 結局今日一日は体操服ですごした。
 
「あ、早川先輩。」
 ずざっ。
 素早くサイドステップをきざんで、背中を壁に押しつけた俺を早苗が何か変わったものを見るように眺めている。
「反復横飛びが好きなんですか?」
「いや、ごめん。早苗ちゃんの声を聞くとつい反射的に・・・。」
 食堂でうどんを背中から食べさせて貰い、自転車でガチンコ勝負を挑まれ・・・・まあ、大概の人間は俺と同じ反応を示すのではないだろうか?
「・・・でも凄いですよね。私なんか運動神経が途中でぷっつりと切れてるからそういう素早い動きができるのって尊敬します。」
 ・・・尊敬されても困るのだが。
「しかし失礼なこと聞くようだけど、これまでに事故とかに遭わなかったの?」
 この芸術の域にまで達したどじっぷりは危険なことこの上ないのでは、とこんな質問をしてしまったのだが早苗の答えはそれを上回るものであった。
「それがですね・・・私が失敗するとまわりの誰かがいつも被害を被るんです。だから私いつか人を殺しちゃうんじゃないかと心配で心配で・・。」
「じゃ、そう言うことで・・」
「ああっ、冗談です、冗談ですってば。」
 しゅたっと右手をあげてその場を去ろうとした俺を、早苗の小さな手が押しとどめる。
 ・・・あまり冗談に聞こえないから質が悪い。
 きーんこーんかーん・・・
「あ、予鈴だ。」
「じゃあ、私はこれで・・・」
 すたたたた・・・ぽてっ。
「どうしたらああやって何もないところで転べるんだろう?」
 ある意味凄い才能なのかもしれなかった。
 
「先輩、先輩見てください!」
 壁に張り付いたまま俺が振り返ると息をきらせて早苗が走り寄ってきた。珍しく転ばない。
「じゃーん。」
 早苗の両手に握られていたのは見事な焼きそばパン。しかも2つ。早苗にしては素晴らしい戦果と言えよう。
「おおっ、やったじゃないか早苗ちゃん。」
「せっかく2つ買えたんだからちょっと実験してみようと思うんですよ。それで先輩にもちょっと手伝って貰おうかと・・。」
「・・・・実験?」
「はいっ!」
 数分後。
 理科室の机の上に二枚の白い紙皿が置かれている。それぞれの皿の上にはかつて焼きそばパンであったものが乗せられていた。焼きそばパンの焼きそばとパンをバラバラにしたモノである。
 とりあえず焼きそばを一口。
 ・・・・まずい。
 屋台とかの安っぽい焼きそばを水で薄めた様な感じである。それではとパンをかじってみると何とも味気ない。
「何故この組み合わせであの味に・・・?」
「中国4000年の謎ですねえ・・・。」
 ・・・絶対違う。
 気を取り直して普通の焼きそばパンを半分にして早苗と食べてみた。すると以前食べたときのようにおいしいとは感じない自分に気がつく。どうやら早苗も同じ感想を抱いているようである。
 これが大人になるということなのかもしれない。
 
「君子、早苗ちゃんってあんまり友達いないのか?」
「ほえっ、そんなことないよ。・・・なんかあったの?」
 君子は一旦箸を置いて大輔の顔をじっと見つめている。自分の友人に関する話だけにちょっと興味がわいたのかもしれない。
「いやな・・最近早苗ちゃんがなんか休み時間の度に二年生の教室のあたりをうろうろしてるんだよ・・。別に知り合いがいそうでもないし、・・それって変だろ?」
「最近教室であまり見かけないと思ったら・・・。」
 君子の眉が何やら思案気によせられた。
「うーん・・写真の被写体でも探してるのかな・・?」
「写真ねえ・・・一度見せて貰ったけど、早苗ちゃんって変わった写真ばかり撮ってるよなあ・・。なんか変なモノでもあるのかなあ・・。」
 夕食もそっちのけで兄妹二人して腕を組んで考え込む。両親が家にいないだけにできることだ。ふと君子が口元をへの字にして顔を上げた。
「変わったモノ・・・・まさかね。」
「なんだよ、何か思い当たることでもあるのか?」
「うん、早苗ってちょっと変わってるから・・・でも私の気のせいだよ多分・・。」
 そう言って笑う君子の態度に何か引っかかるものを感じたが、とりあえず夕食が冷めてしまう前に食べてしまうことにした。
 昨夜の会話のことはすっかり忘れ、俺は学校の廊下をのほほんと歩いていた。
 カシャアッ、カシャカシャアッ。
 何か変な音がする。
 俺は無意識に窓の外に視線を向けた。別に何かの工事をしているでもない、いつも通りのグラウンドがそこにはある。
 俺が再び廊下を歩き出そうとするとまた音がする。今度は方向が特定できた。背後からだ。
 くるっ。
「わっ、みつかちゃった。」
 俺は無言で早苗との距離を詰めてがっしりとその細い両肩を掴んだ。
「・・・俺のどこが変な人間ちゅ−んじゃ!?」
「そのリアクションはちょっと普通じゃないです・・。」
 ちょっとショックである。
 俺という存在は水道管の裏側や猫の尻尾の先と同じぐらい変わっているというのだろうか?俺を撮るぐらいなら校舎の中を水着で歩き回る丘野さんの方がよっぽど変わり者だと思うのだがいかがなものであろう。
 しかも音の方向からして撮られたのは俺の背中である。ひょっとしたら自分では見えないだけに今まで気がつかなかったのだが、俺は背中に関して磨けば光る逸材だったのかもしれないとでも言うのか。
 ・・・・なんか悔しいぞ。
「撮るなら正面から撮って貰おう!いや、それは片手落ちだな、早苗ちゃんも一緒だ。」
 俺が変わり者というなら早苗だって変わり者だ。
 一緒に写真に収まれば早苗も写真を公表する事はあるまいと思って、俺は早苗の肩を抱くようにしてファインダーに収まった。
 その夜。
「君子・・・俺って変わってる?」
「うーん・・・少し。」
 
 たらーっ。
「むう、見事だ。これほどの逸材とは気がつかなかった・・・。」
 ふと気まぐれのように寄った図書室で君子と出会った。聞けば早苗と一緒にレポートに使う資料を探しているとのこと。
 そして大輔と君子は熟睡かましていた早苗の姿を発見したのである。
 おそらく口があまいのだろう、横向きになった顔の口元から静かに静かによだれが垂れている。机の上にはそのよだれの池が綺麗な円を描き、今もじわじわと大きく成長しつつある。
「・・・もう少し眺めていたい気もするんだが、起こしてやるべきかな?」
「・・・できればお兄ちゃんは見なかったことにしてあげた方が。」
「まあ・・・そうだな・・・。」
 大輔は名残惜しそうに早苗を一瞥して、その場を後にした。そしてタイミングを見計らって二人に声をかける。
「おや、早苗ちゃんに君子じゃないか。」
「ああ、お兄ちゃん。(棒読み)」
「わっわっわっ・・ちょっと待ってください。」
 慌ててハンカチで口元と机を拭う早苗の姿に、君子と大輔は必死になって笑いをこらえていた。
 その日の帰り道。
 大輔は君子と二人して歩いて帰っていた。というか、君子が商店街で買い物した荷物持ちというのが正確な状況である。
「うーん・・・困ったねお兄ちゃん。」
「なんだ、お金でも足りないのか?」
「どうも私の勘違いじゃなくて、早苗はお兄ちゃんのこと好きみたいなの。」
「・・・転校か。」
 手に提げたスーパーのビニール袋を急に重く感じた。あまり考えたくない事だけに、二人の間ではあまり話題にすることが無かったのだが・・・。
「・・・別にお兄ちゃんにどうこうしろっていうんじゃなくて、ただ・・・ちょっと転校のこと切り出すのが難しいなって。」
「悪かったな君子・・・。」
「ううん、やっぱり私はみんなに話せなかったと思うの。でも早苗には早めに伝えた方がいいのかな?そうしたらあきらめもつくかもしれないし・・。」
 やや俯き加減に君子が呟くのを俺は混ぜ返した。
「ん?早苗ちゃんはあきらめなきゃいけないのか?」
「えっ?・・・・・本気?」
「・・・まだわからん。ただかなり興味はあるよ。それと、早苗ちゃんは障害があると闘志を燃やすタイプだと思うが・・。」
 大輔は右手から左手に袋を持ち替え、肩に担いだ。そんな大輔の様子を君子は疑い深げにじっと見つめていたが、やがてため息をついた。
「案外お似合いのカップルかもね。お互い変わり者だし・・・。」
「君子・・・それが友達に対する言いぐさか?」
「友達だからはっきり言えるんだよ。ねっ、お兄ちゃん。」
 
 グラウンドの隅でごそごそとしゃがみ込んでいる早苗の姿はどこか場違いであった。
「早苗ちゃん・・・何をしてるの?」
「ああ、早川先輩。蟻の巣を探してるんです。このパンくずを運んでいる蟻を辿っていけばわかる筈なんですよ。」
「ほう。・・・で、見つけたらどうするの?」
「どうって・・・もちろん写真を撮るんですよ。」
 右手にはカメラ、左手はブイサインでにっこり笑顔である。相変わらず良くわからない被写体探しであるが、大輔自身もまた狙われたことがあるだけに胸中は複雑である。
「・・・そういや、この前二人で撮った写真はどうなったの?」
「ぎくっ。」
 ・・・口で言ってどうする。
「あのうー・・あれはですねえ、失敗しました・・。」
「あ、そうなんだ・・。」
 ま、そういうこともあるだろうと大輔は納得した。元々きちんと撮れた写真より失敗作の方が多いと聞いていたので別に驚くほどのことじゃない。早苗の変な写真コレクションに含まれずにすんで、どこかほっとしているぐらいである。
 蟻というのは結構なわばりが狭い。どこにでもここにでも家の中までも入ってくるから活動範囲が広いように感じるが、それは単に数が多いだけの話である。
 大輔と早苗はほどなく蟻の巣を発見し、早苗は早速カメラを片手にぱしゃぱしゃやっていた。大輔はと言うと、早苗の姿を眺めながら頭の中では蟻の巣に水を注ぎ込んだり、熱湯を注ぎ込んだりしていろいろ危ない想像をしていた。
 ガソリンまいて火をつけたらどうなるのだろう、とちょっと想像が常軌を逸し始めた頃早苗が顔を上げた。
「先輩、もう少ししたら一緒に帰りましょうね。」
「・・・えっ?ああ、いいよ。」
 ・・・・・・・・・・
「先輩は今日歩きですか・・・じゃあ、私は押して帰ります。」
「・・・まあ、誰も見てないだろうから二人乗りして帰ろうか?」
 と、大輔は早苗の方を振り向いた。なにやら早苗が必死に何かを伝えようとしていることに気がついた時にはもう手遅れだったのだが・・。
「早川君、最近視力でも落ちたの?」
「おや、麻生先生。相変わらず格好いい車ですねえ。今度乗せてくださいね。」
「あら、ごめんなさい。生憎二人乗りは禁止されてるの。・・・ちゃんと押して帰りなさい、わかった?」
 軽くエンジンを吹かして、麻生先生の乗った真っ赤な車がタイヤを鳴らしながら走り去っていった。見かけによらず乱暴な運転である。・・・まあ、せっかくのスポーツカーをちんたら走らせて性能を腐らせるよりはましかもしれない。
「じゃあ、早苗ちゃん後ろに乗って。」
「・・・・振り落とさないでくださいね。」
「そんなことは・・・」
 と大輔がペダルに力をいれた瞬間、背後で悲鳴が上がった。
「ふみゃあっ!」
 それと同時に早苗の腕がきつく大輔の腰にまわされた。横座りだから安定が悪いのかもしれない。大輔は非常に気をつかってゆったりと自転車を走らせた。
「・・・変なこと聞きますけど、先輩はどんな女の人が好きなんですか?」
「そうだなあ・・・明るくて活発な娘が好きかな。」
 などと背筋がくすぐったくなるような会話を交えつつ、大輔と早苗はゆっくりと帰っていった。
 
「おい、早川。送別会の主役がどこに抜け出そうって言うんだ?」
「トイレだトイレ。」
 ・・・持つべきモノは友人だな。
 青葉台高校に通う最後の日は味気ない終業式で終わるはずだったのだが、木地本達がこうして送別会を開いてくれた。あの日自分が転校することを告げても、周囲の人間はたいしたリアクションもなくてちょっと拍子抜けしたと同時に寂しい気分を味わったもんだったが、こうなってみるとちょっと気持ちが身にしみる。
 早苗ちゃんは早苗ちゃんで君子の事の方が気になったみたいで、大した反応も見せずにそのまま俺に背を向けて歩いていってしまったし。君子の勘違いだったというわけか。
 こつん。
 大輔は教室を出たところで足で蹴飛ばしてしまったものを拾い上げた。
 誰かの生徒手帳、しかも女子生徒の手帳のようだ。
「えーと・・これは下世話な気持ちじゃなくて、持ち主を知るために見るんだな、うん。」
 と、やましい気持ちをごまかすために大輔はぶつぶつと呟きながら生徒手帳を開いた。「・・・・・・」
 大輔は見てはいけないモノを見てしまったかのように、慌てて手帳を閉じるとため息をついた。
「・・・さて、どこにいるのかな?」
 
 大輔は屋上で佇んでいた早苗に声をかけた。
「早苗ちゃん!」
「・・・ああ、先輩。どうしたんですか?」
 振り返っていつも通りの笑顔を見せてくれる早苗。制服の袖が濡れていた。
「はい、落とし物・・・入ってくれば良かったのに。」
「・・・・どんな顔すればいいのかわかんなかったんです。」
「普通にしてればいいじゃないか?」
「それができそうにないんです・・・ほら、また・・。」
 早苗は恥ずかしそうに後ろを向いて目元を制服の袖で拭っているようだ。
「別に誰も見てないから遠慮することはないぞ・・。」
「先輩が見てます。私、先輩の前では明るくて活発な女の子でいたいです。」
 ・・・・・・・ああ。
 大輔は所在なげに頭をかいた。
「・・・早苗ちゃんには滅多なことが言えないな。んじゃ今度さ、生徒手帳の中の写真焼き増ししてくれない?」
「みっ、見たんですか!?」
 早苗が涙を拭くのも忘れて大輔の方を振り返った。
「どこが失敗なの?」
「いや、その・・・私の宝物です。」
 もじもじと顔を赤らめる早苗の頭をぽんぽんと軽く撫でるようにして叩いてやった。
「俺が卒業してこの街に戻ってくるまで待てる?」
「えっ?・・・大丈夫です・・・多分。」
「・・・気が変わったら手紙で教えてくれればいいよ。」
「そ、そうじゃないんです。」
 早苗は自分の言葉がどう受け取られたか気がついて慌てて首を横に振った。
「多分っていうのは・・・私が待ちきれなくて会いに行くかもしれないって事です。」
 
 潮の香りが懐かしい。
 さすがに駅前は開発が進み、以前のままとはいかないものの、自分の記憶の中の景色とほとんど変わらない。
「そこの人、よけてください。」
 あまりの懐かしさに動けなかった。いや、動かなかったのかもしれない。
「ふみゃー。すいません・・。」
「・・・相変わらずだなあ、早苗ちゃんは。」
「えっ?」
 自分の腰のあたりをさすっていた早苗が大輔の方を振り向いた。
「あ、あーっ!」
 早苗の大きな声があたりに響きわたる。
 優しい風が、潮の香りとともに春の匂いを運んで吹き始めていた。
 
                  完
 

 
 ああ、こういう文章って凄い楽だなあ。内容的には最低かもしれないけど・・。まあ、つまるところ個人の価値判断によると言えば単なる逃げ道ですね。(笑)
 とにかく会話ばっかりで話を進めてみましたが、なんというか背骨のない文章になってしまいました。とりあえず泣き言はこのぐらいにして・・・
 眼鏡娘です!このゲーム唯一(?)の眼鏡さんです。多分これ以外のいくつかの文章を読んでくださった方なら私がこのキャラに対してどういう感情を抱いているか文章からわかると思います。
 私の場合、眼鏡をかけているというのが必要十分条件(笑)ではないです。
 眼鏡娘の未来を考える私としては、眼鏡さんの登場率の低下が最近は悩みの種です。現実世界での眼鏡着用率、もしくは視力矯正を必要とする割合は上がってるのになあ・・。どうして登場率が下がっていくのかしら・・・。やはり、コンタクト連合の陰謀が日本を席巻しているのだなあ。私も地下に潜って明るい未来のために戦わねばいけないのか?(注・私の知る限りそんな地下組織は存在しません)
 ・・・なんの話をしているんだ俺。なんか昔の文章を読み返してみると、必ず眼鏡さんのあとがきでエキサイトしてる自分を発見してげんなりです。(笑) 
 よし、もうすぐラスト。・・・いや、こっちの話です。(笑)

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