「謎の美少女仮面参上チェキッ!」
 びしっとポーズを決めて兄の目の前に現れたのはいいのだが、視線が痛かった。
「仮面を付けてるのに美少女ってのは納得がいかないな。その仮面とって見せてよ。」
「むうっ、言ったチェキね。」
 優雅な仕草で目元の仮面を風の中へと投げ捨てる四葉。
「四葉、今日も可愛いね?」
「兄チャマったら可愛いだなんて……何を言うんですか兄チャマ…じゃなくて少年!私の名前は謎の美少女仮面チェキッ!」
 びしっ。
 再びポーズを決める。
 だが、既に仮面はない。
 そして30秒後、四つ葉はやっとそのことに気がついた。
「さすがは兄チャマ…誘導尋問とは恐れ入ったチェキ…」
「まだまだ修行が足りないね、四葉。」
「じゃあ、今日も兄チャマの後を尾行けて修行するチェキ。」
 虫眼鏡片手に、兄の背中に焼けこげを作りながら、四葉は落ち着きなくあちらこちらに視線を向けている。
「四葉はどこか行きたいところがあるかい?」
「それじゃあ、修行にならないチェキ…」
「こんないい天気だからね。」
「もう、兄チャマったらしょうがないチェキね…」
 うんうんと頷きながら、四葉は兄の隣へと移動する。
 そうと決まれば……
 四葉は兄の手を取って走り出す。
 街並みを駆け抜ける2人を包むようにして、柔らかな風が吹き抜けていった。
 
 
                   おしまい

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