「・・・本件を指揮権限によって可決します。」
 いつもの事ながら、会議室の中にある種の緊張感が漂っていた。全員一致での可決ならあるいは現れないのかもしれないが・・・。
 自分の隣に座る原の視線が痛い。
 会議の度に自分の意見に逆らい続ける根性は、ある種称賛に値するとはいえ彼女も執念深いことだ・・・。
「さて、行き先についてはこれから衛生官の石津さんと相談しますので・・そうですね、放課後にでもおって連絡します。」
 熊本での幻獣の戦いが人類の圧倒的優勢である今なら・・・こういう娯楽も許されるだろう。
 こんな穏やかな時間が今後再び手にはいるかどうかはわからないのだから・・・。
 
「・・・と言うわけでしてね、みんなでキャンプに行くことになったんですが。」
「・・・嫌。」
 推定1200ルクスの明かりの下だというのに、彼女の顔は影に包まれ、その表情をとらえにくい。
「・・・嫌といわれても・・・何故ですか?」
「太陽の光・・・嫌い・・だから・・呪うわ・・。」
 そんな真剣な顔ですごまれると怖いんですが・・・。
「・・・ふむ、こんな機会は二度と無いかもしれません。何とかなりませんかね?」
 石津はあらぬ方向を見つめながらぽつりと呟く。
「・・わかった・・でも、その日は曇りになるけど・・それでいいなら・・。」
 ・・・あなたは何者ですか?
「・・・そうですか。キャンプの場所ですが海なんかどうで・・」
「嫌。」
 部屋の中が突然暗くなったように感じた。
 ・・・怖い、マジで怖いっす。
「・・じゃあ山の方なら・・?」
「わかった・・場所は手配するから・・。」
「じゃ、よろしくお願いします。私は車の手配等をすませますので・・・何かあったら加藤さんに伝えてください。」
 無言でこくっと頷く石津を確認してから、衛生官詰所を後にした。
 
 ぐるりと周囲を見渡してから、断言口調で問いかけた。
「さて、みなさんそろったようですね?」
「委員長、本田先生がまだですが。」
 ぽややんとした表情で速水が手をあげながら指摘したが、かまわずにもう一度念を押した。
「さて、みなさんそろいましたね?」
「あの?本田先生がまだ・・」
 私は指先で眼鏡の位置を調節しながら速水の方に近づき、その肩をぽんと叩いた。
「あなたは貴重なバカンスに、サブマシンガンと携帯拳銃を何丁も隠し持っている引率者を連れて行くつもりですか?」
 それでもまだ踏ん切りが突かないのか、速水は左右へと忙しく視線を動かしている。
「ふむ。我に任せるがいい・・。」
 横合いから現れた芝村が、困ったように俯いていた速水を物陰の方に連れて行く。
 どごおぉっ!
 ぎくしゃくとした足取りで出てきた速水と芝村に向かって、私はもう一度問いかけた。
「さて、みなさんそろったようですね?」
 速水ががくりっと頷いたのを確認してから、私は出発の号令をかけた。
 
「あの先生のことだから追いかけてくるんじゃないかしら?」
 時々後ろの方を振り返っていた原が、独り言にしては少し大きく呟く。
「・・・心配ありませんよ。あの人には嘘の行き先を教えておきましたから。」
「・・・あの時もそのぐらい上手に騙して欲しかったわ。」
「お互い若かったですから・・・そういうことにしときませんか?」
「便利な言い訳だこと・・。」
 原はそう呟くと、すっと立ち上がって私のそばを離れていった。
 彼女には彼女なりのストレスの発散方法があるのだろう。私はといえばただのんびりとするだけで充分なのだが・・。
 ガッチャアアァンッ!
 ・・・ふむ、私の記憶に誤りがなければこの音はサブマシンガンの弾倉が装填された音ですね・・。
「・・・やってくれるじゃないか、善行。」
 ・・・わ、私の記憶が確かならこの声の正体は・・。
 ゴツッ。
 後頭部に細くてまあるいものが押しつけられた。ちょうど直径二センチ弱の銃口と同じぐらいの大きさと感触。
 ・・・そして、私は静かに両手を上げた。
「おめーは今日一日俺のぱしりだ。ちなみに拒否権はない、わかったか?」
「イ、イエッサー!」
 
                    完
 
 
 ・・・なんか盛り上がりもオチもない話だな。(笑)もともとギャグにしにくいキャラだし・・。とことんまでキャラを壊すか、とことんまでまわりに翻弄されるかの二択しかないような気がする。
 ただこの人が頬を染めたりすると結構お茶目な雰囲気。後は、主人公の異性関係を冷やかしに来るぐらいですか? 

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