「おら、がちゃついてないで席に着け…」
教室の床に水滴をぽとぽとと落としつつ、出席簿を開く本田。
「ったく、これだから雨の日は……っと、芝村は休みか?珍しいことも……」
「許せ、どうしても手の放せない状況だったのだ」
大事そうに段ボールを抱えたままずぶぬれの状態で教室の入り口に現れたのは、芝村舞、その人である。
「ああーん、俺の受業に遅刻するたあいい度胸……ってなんだそれ?」
本田は脇に構えたマシンガンを下ろし、舞が両手で抱えている段ボールの箱に視線を向けた。
「……だ」
舞の頬が微かに染まる。
「は?」
「ね、ね、ねねね猫だと言っておる!」
「……猫ぉ?」
「わ、笑うなっ!し、芝村は弱者を守る一族だからだ、決して私が、ねね猫みたいなふかふかしたモノが好きというわけではないぞ!」
と、舞が顔を真っ赤にして叫んだ瞬間、段ボールが開いて子猫5匹の愛らしい鳴き声の大合唱が教室に響いた。
「わー、猫さんだぁーっ!」
「めちゃ可愛いやんかっ!」
「……産まれたばかりのようですね」
「さてさて、どの子が雌かな?」
「不潔です!」
「……芝村は通常通り出席と」
などと、受業はそっちのけで子猫に群がる少年少女達。
「……」
5121小隊のマスコットキャラとしての存在価値が微妙に揺らぎ始めるのを感じたのか、ブータが髭をピクピク振るわせながら左右を見渡す。
「子猫には3時間おきにミルクをあげねばならんと聞いたことが……」
「みんなで飼いましょうか?」
「いやあ、うちのデブ猫とはえらい違いだな…」
「あははっ、アレは猫と言うより……」
髭だけではなく、耳までをも小刻みに振るわせ始めるブータ。
そして助けを求めるために、天使のように優しい心を持った1人の少女に視線を向け、精一杯の甘えた声を出す。
「ナァオウッ!」
「……」
ブータから視線を逸らし、たたたっと小走りで子猫たちに走り寄っていく萌を見て、ブータは口を開けたまま身体を硬直させた。
自らの敗北を悟り、背中を丸めたまま教室の外に出ていくブータ。
そして、雨に濡れるのもかまわず屋上で1人呟く……
『……滅びてしまえ、こんな世界』
完
夏コミ用にネームはきったのですが……どうもテンポがよろしくない。
とはいえ、文章用のネタでも無いことは確か。(笑)
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