「瀬戸口師匠、どうやったら女の子とつきあえるんですか？」

　瀬戸口はしばらく滝川の顔を見つめていたが、やがてその熱意に押し切られたかのように口を開いた。

「急にどうした？。」

「いや、俺ってパイロットだからいつ死んでもおかしくないし・・・だから。」

　それを聞いて瀬戸口はおかしそうに笑い出す。

「お前さん、実にシンプルだな。まあ、彼女なんていなくても人生は楽しいぜ。」

「じゃあ、彼女ができたら？」

「そりゃ、楽しいのなんのって。（笑）」

　屈託無く笑い続ける瀬戸口に対して、今日も美女からのお呼びがかかる。

「隆之くーん。」

「おっと、今日の授業はここまでだな・・・。」

　そう呟いて前髪をかき上げる瀬戸口の姿が、滝川にはやけにまぶしく見えた。

　

「田辺って隣の女子校出身だろ？誰か紹介してくれない？」

「え、あのその・・・私、友達いなかったから・・・ごめんなさい。」

　そう呟いて去っていく田辺の後ろ姿を見送りながら、発言力５００を浪費した滝川は次なる手段を考えていた。

「・・・そうだよなあ、大体友情評価はおろか、愛情評価の上位４名までが男キャラと言うところに制作者の黒い意図を感じるよなあ・・・。」

　などとしゃれにならない呟きを発しながら、滝川は女子校の廊下を歩く。至る所に女の子がいるのに自分の側にはいないということが何か理不尽に思える。

　どしん。

「きゃっ。」

「おっと、大丈夫か？」

「うー・・・よそ見はめーなの・・・。」

　・・・そりゃお互い様だろ。

　滝川は黙ってののみを助け起こした。子供相手にムキになっても仕方がない。

　僅か９歳で軍隊に所属する羽目になった少女に軽い同情を覚えなくもないが、今滝川が求めているのは彼女である。

　『源氏物語』などという単語が少しばかり頭をよぎったが、自分がそれだけ長生きできるかどうか自信がないので即座に考えを破棄した。

　・・・芝村は芝村だし、壬生屋は口うるせーし、森は口きいてくれないし・・・・

　自分勝手な思考を巡らせ、滝川の脳裏に１人の女性が浮上した。

　

「えーと、あのね、滝川君。」

　芳野の顔に困惑の表情がありありと浮かんでいた。もう、全身から『どうやって滝川を傷つけないようにして断ろうか』という雰囲気が漂いまくっているのだが、いかんせん相手が悪い。

　相手は滝川陽平である。

　雰囲気を察しろと言う方が間違っている。馬に確定申告の方法を教えようとするようなものだ。

　仕方なく芳野はまだましと思える手段を使用した。

「ごめんなさい。先生ね、他に好きな人がいるの。」

　

「速水！芳野先生を賭けて勝負だ！」

「え、ええ？」

　状況の把握できていない速水に対して滝川は語り続ける。

「おっと、何も言わないでくれ。人間、時として友情よりも重いものがあるんだ。わかってくれ。」

「いや、わかってくれも何も・・・。」

　ますます状況が混乱していくのを感じて、速水は話をしようとするのだが滝川はそれを許さない。

「問答無用！」

　滝川の右拳がうなりをあげて速水に襲いかかった。

　次の瞬間、光る液体を飛ばしながら飛んでいく滝川。その目から流れる涙が見事な虹を描き出す。

　熊本の空はどこまでも青かった。

　

「・・・だめか、駄目なのか？やっぱり俺はお姉さま専用キャラとして来須先輩あたりとラブラブにならなければいけないのか？」

「・・・断る。」

　突然現れた来須がそう言い残して走り去る。そしてその後を追う新井木の姿。

　そんなすべてを失った滝川を温かく見守る３人の人影。

　彼らは微笑んだまま右手に靴下をぶら下げていた。

　

　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 完

　

　ああーやる気ねえ。（笑）

　覗きネタで書こうと思ったらイベントがちゃんとあるし、刈谷と新井木の陰謀でスカウトにされて瞬殺されるし、田辺には１００万円で売られるし、中村には騙されるし・・・ひょっとしてこいつって不幸なのか？（笑）

　確かに、滝川としっくりくるカップリングってあんまり思いつかないな。

　・・・・仕方ない、君にはどシリアスな外伝で頑張ってもらうから。（笑）