俺の目の前で瀬戸口の上体が揺れた。
「・・・大丈夫ね?」
 その体を支えてやりながらそう尋ねると、瀬戸口はこめかみのあたりを押さえながら軽く頭を振った。
「ああ、なんとか。・・・なんか急に疲労を感じてな・・。」
「きっと仕事のしすぎばい。」
 ・・・そりゃそうだろう、さっきから5回連続で呪ってやったからな。
「この焼きそばパンでも食べて元気を出す・・・かあー、残念やがおいは『プレゼント』の提案を持ってないとよ。」
 と、そこで一旦言葉を切って瀬戸口の顔をのぞき込んだ。
「けど、『交換する』の提案はあるけん、『瀬戸口の靴下』とでも交換するばい。どうせ使い道ないだろ。」
「本当にいいのか?」
「何を水くさいことを、仲間じゃないか。」
 と、首尾良く手に入れた『瀬戸口の靴下』を多目的アタッシュケースの中に納めた。残るは後一つ。
 ゴロゴロゴロ・・・
 遠くで春の雷が鳴り始めていた。まもなく雨になるだろう。
 
「フフフ・・、やはりきましたか。」
「残るは岩田、おまえの靴下だけばい。」
 岩田は唇の端を軽くつり上げるようにして微笑むと、前髪を優雅な動作でかき上げた。
「素直に渡すと思いますか?」
「いや、思わんね。」
 二人の間に静寂が訪れた。お互いの視線をからみつかせたままたっぷりと3分ほども黙っていただろうか。
「フフフ・・・、一つ聞いていいですか?」
「何だ?」
「タイガーの靴下をどうやって手に入れました?」
 挑戦的な岩田の視線をはねのけるようにして俺は胸を張って・・・実際には腹が揺れただけだったが、答えた。
「やつは『田辺さんの手作り弁当』で堕ちたばい。」
 それを聞いて岩田はまるで(ぴー)の様にけたたましく笑い始めた。
「そうですか、そのために田辺さんに近づいて告白までしましたか・・・」
 岩田は笑うのをやめて、真剣な表情で俺の方をにらみつけてきた。
「立派です・・・ご立派ですよ。・・・もはや人であることを放棄しましたね。」
 口ではそういいながらも、体からたちのぼる闘気は隠しようもない。
「この靴下が欲しくば、私の屍を乗り越えてから・・・・」
 急に恍惚の表情を浮かべて岩田は崩れ落ちる。そんな岩田の姿を見下ろしながら、俺は伝説の『一年靴下』を懐にしまい込んだ。
「風下に立ったがおまえの不覚ばい・・・。」
 
「すべてはこれで終わる。」
 岩田の靴下をアタッシュケースに収めた瞬間、まばゆいばかりの青白い光があたりを包んだ。その中で自分の視力が奪われていない異常に気がついたのはその一瞬後である。
 目の前で猫のブータが二本足で立っていた。しかもなんかしゃべってる。
「・・・靴下の核融合反応か?」
 (注・多分違う)
「最も新しい伝説よ・・・汝はこれから人類決戦存在として・・・」
「ちょっ、ちょっと待つばいっ!」
 まずい、なんか話が勝手に進んでる。
「俺はただの整備兵ね、絢爛舞踏賞なんかとった覚えはなかよ!」
「絢爛舞踏賞はただの目安にすぎない。大事なのは人でありながら人を越える存在となることなのだ・・・。」
 ブータはわかったかな?という風にウインクする。
「靴下を集めるための汝の手口はもはや人間とは思えぬもの。そしてその功績はもはやこの世界では受け止められぬ・・・。」
 背後からすさまじいプレッシャーを受け始めたができることなら振り返りたくはない。
「さあ、決戦だ新しき伝説よ。」
 平然と話すブータの首のあたりをつかんでがくがくと揺さぶりながら俺は必死に訴えた。
「む、無理ばい!おいは士魂号はおろか、ウォードレスも着られん体ね。素手で竜に立ち向かうのは絶対に無理ばい!」
「そんなことはないっ!」
 空気を切り裂くような叫びに誘われ、俺はプレハブ校舎の屋上を見上げた。そこには正体がばれないようにか、ご丁寧に仮面まで付けているがあの暑苦しいまでの顔の表面積から正体はばればれの男が立っていた。。
「ひ、他人ごとと思って勝手なことを!」
「心配はいらん。おまえの存在はいつまでもみんなの心の中で生き続けるだろう・・。」
「やっぱり負けると思ってんじゃねえかっ!」
 などと叫んでいた俺の横に現れた影。
「こんのバカ弟子があぁっ!」
 そいつにいきなり横面を張り飛ばされる。
 俺のことを弟子と呼んでいいのはこの世にただ一人。
「師匠!」
 通称、味のれんのおやじが俺を鬼のような形相で見下ろしている。怒りのためかその肩がかすかに震えているようだ。
「素手だと?貴様の靴下はただの飾りか?・・・そうではあるまい。我らにとって靴下こそ誇り、誇りこそ靴下。靴下に不可能はない!」
 瞬間、それに同意するように俺の懐にしまったはずの『伝説の一年靴下』が青白い光を発し始める。
 師匠はそれを指さして静かに語りだした。
「見よ、靴下はおまえを信頼しておる。なのにおまえは靴下を信頼できぬと言うのか?もしそうなら、おまえは儂の弟子でもなんでもない。ただのチキン野郎だ!」
「・・・・目が覚めたばい。」
 ゆっくりと立ち上がる俺の姿を見て師匠の目から一筋の涙がこぼれ落ちる。
「ゆけい!おまえは儂の生涯唯一、最高の弟子じゃ。」
「じゃ、行って来るけん。」
 軽く右手を挙げて、俺は竜に向かって走り始めた。左手で懐の靴下をしっかりと握りしめたまま・・・
 
 そして世界は救われた。
 一人の少年の功績によって地下に潜ったソックス協会も日の目を見ることができてめでたしめでたしということである。
 
 
                     完
 
 前半はほとんどリプレイですね。(笑)
 後半は某ガンダムと某熱血もの。(笑)
 ついでに私は方言がわかりません。あまり突っ込まないでください。(笑)
 もう、ノリだけで書いちゃいました。
 

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