どんよりとした曇り空を見上げて、萌は微かに微笑む。
「・・・今日は、いい天気。」
 薄暗い教室の片隅でせっせと内職にはげんでいた田辺は、萌の呟きを耳にして手元を滑らせた。
「あっ!」
「・・・何を・・・してるの?」
 萌は不思議そうに田辺の手元をのぞき込んだ。
 机の上には白い紙が数枚散乱しているが、それだけでは何をしているかちょっと想像がつかない。
「あ、これですか。これはてるてる坊主を作ってるんです。私、何もかも苦手なんですけどこれだけは得意で、どんな悪天候も一発で快晴になるんです。一つ作ると1円の手間賃がもらえるんです。」
 ・・・ちなみに店での売値は100円だ。
 萌の表情に暗い影がおちた。
「・・・快晴になるの?」
「ええ、ほぼ100%。」
 本当にこれだけは自信があるのだろう、田辺が胸を張りながらそう答えると萌は静かに首を振った。
「・・・いや。」
「いやって言われましても・・・」
 そんな会話をかわしていると、今にも泣き出しそうだった空から大粒の雨が落ちてきた。
「あ、ちょうどいいですね。えい。」
 田辺がてるてる坊主を窓際につるすと、雨はからりとあがって雲一つない上天気に変わった。
 どうです?と胸を張る田辺の脇をすり抜けて、萌はてるてる坊主を逆さにぶら下げた。と、途端に雷混じりの集中豪雨に見まわれた。
「・・・くす。いいわね、これ。」
「石津さん・・・私のこと嫌いなんですか?」
 萌はふるふると首を振った。
「嫌いなのは・・・太陽の光・・・だから・・・心配しないで。」
「あの、私今テントで暮らしてるんでこの天気はちょっと嫌なんですが・・・。」
 雷が光って、萌の横顔に深い陰影が刻まれる。
「い、いや、こんな天気だと洗濯物も乾かないじゃないですか。石津さんのお仕事の妨げにもなるし・・・」
「・・・そうね・・・私も雨が好きって・・・わけじゃないもの。」
 萌は少しだけ微笑むと、右手の人差し指を宙に躍らせて何かの文字を描き出すような仕草をした。田辺はそれをきょとんとした表情で見守っている。
 突然雨がぴたりとやんだ。
 しかし、空は真っ黒で一片の明かりも差さないほどの分厚い雲に覆われている。
「これで・・・いい?」
「え?今のって・・・」
 田辺の視線が窓際につるされているてるてる坊主に向く。てるてる坊主はきちんと真上を向いていた。
「・・・あまり・・・考えない方がいいわ。」
 萌はそう呟いて静かに教室を出ていった。
 その後、田辺がてるてる坊主をどう動かしても天気はぴくりとも変化しなかった。
 
 
                       完
 
 
 どうしてもギャグになりませんわこの人。(笑)しかも、私自身お気に入りのキャラだけにちょっとね。
 詳しい設定は知りませんが、やっぱり萌は『しーのーびこーむ!シャランラアッ!』の人なんでしょうか?(笑)
 ・・・これがわかる人は若い人にはあまりいませんよね。

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