「約束の品だ・・・。」
中村は紙包みを遠坂の手に握らせた。
遠坂は小さく頷いただけで、中を確認しようともしない。それでいいのか、と言うような中村の視線を感じたのか、遠坂は微笑んだ。
「あなたの仕事に間違いなどあろうはずがありませんから・・・」
「誉め言葉・・・なんやろうねえ。」
「もちろんです・・・・と、そうでした。ミスターから次の指令がきています。」
遠坂の言葉を聞いて、中村ははっきりとわかるように眉をひそめた。
「昨日の今日だぞ・・・いくらなんでも・・・」
と、言いかけた中村を制するように遠坂が言葉を付け足した。
「拒否する権利は与えようとの事でしたが・・・」
「・・・わかった、受けるばい。」
言葉こそ柔らかいが脅迫以外の何物でもない。もちろん遠坂には何のことかさっぱりわからないだろうが・・・。
ゆっくりと遠ざかる中村の後ろ姿を眺めながら、遠坂はため息をついた。
今からこの紙包みをミスターと自分を中継する男に渡さなければならない。正直あの男に会うのは疲れるのだ。
遠坂はもう一度ため息を吐いて一歩歩き出した。
どっ!
背中への鈍い衝撃に一瞬遅れて、焼けた鉄を押しつけられたような感覚に遠坂は声にならない悲鳴を上げた。
後ろを振り返ろうとしたが、それすらもままならない。
そんな遠坂の耳に聞こえてきたのは低い押し殺したような声。
「ミスターって誰?」
「・・・」
「死にたいの?それとも声が出ないの?」
「フッ、裏切り者の汚名に甘んじるぐらいなら・・・」
遠坂は黙って目を閉じた。
そして残った力を振り絞って背中をナイフに押しつけるようにして身体をねじる。その動きの意図を理解しなかったわけではないが、素子はそのまま何もしなかった。
傷口を深くえぐられて遠坂は昏倒した。
その満足そうな微笑みを浮かべた顔に手を伸ばして、素子は遠坂の目をそっと閉じてやった。
そして中村が歩いていった方を眺めたまま、素子はぽつりと呟く。
「私は・・・きっとあなたを解放してあげる。」
原さんセカンドマーチ第2話・完
ああっ、前作と方向性が全く違いますっ!
これはどうしたことだろう。(笑)
風雲録を告げる原さんセカンドマーチ、原さんはミスターの魔の手から中村君を救い出すことが出来るのか?
作者は暖かくそれを見守っていこうと思います。
熊本市立図書館に戻る
/
次の章へ→