「・・・でさ、あの人って影にはいるとなんか青白く光ってるんだよ!あんなの絶対人間じゃないよ!」
 ハンガー内でおしゃべりしていた新井木の言葉を聞きとがめて、私は彼女を問いただしてみた。
「・・・『あの人』って誰のこと?」
「速水君ですよ、速水君。あれからなんか怖いし・・・。」
 ・・・何ヲ馬鹿ナコトヲ言ッテルノ?
 のどまででかかった言葉をぐっと飲み込んだ。考え方を変えればいいのだ、彼に近づく他の女がいなくなる。決して悪いことではない。
 それから少しぼんやりしていたのか、気がつくとプレハブ校舎の屋上で私は校舎はずれを眺めていた。
 そこには速水君が立っていて、心なしかいつもより元気がなさそうに見えた。
 みんな彼が近づくと顔を背けるようにしてその場から離れていく。多分そのことが影響しているのかもしれない。
 私は足早に階段を駆け下りると、彼の目の前に立っていた。
「こんにちわ、速水君。」
 私がにっこり笑ってそう挨拶すると彼もまた笑った。
 ・・・何が絢爛舞踏よ、速水君は速水君なんだから・・・
「・・・どうしたの?」
 突然思いもない言葉をかけられて私は慌てた。一体どうしたというのだろう?
「どうしたって・・・何が?」
「なんか顔色悪いし・・・・体が震えてるから熱でもあるんじゃ・・・?」
 震えて・・・?何で私が震えたりするの・・・?
 しかし、私の体は彼の言うとおり気持ちを裏切るように細かく震え続けている。
「・・・変ね?じゃあ一応薬でももらってこようかしら?」
「うん、そうした方がいいよ。」
 軽く右手をあげて彼から離れた。
 するとさっきまで震えていた指先や膝はその痙攣にもにた震えをぴたりと止める。背筋に走る痛みは過剰な緊張のためだろうか。
「・・・私、彼が怖いの?」
 
 死を誘う絢爛舞踏・・・人の身でありながら人であることを超越した存在。
 過去4人の絢爛舞踏は全員行方不明となっている。もちろん理由ははっきりしていない・・・少なくとも公には。
「・・・でも・・」
 誰もいない部屋の中で私は呟いた。
「彼はどこにも行かないよね?・・・だって約束したんだもの。」
 くすっ。
 誰かの笑い声を聞いた様な気がして、私は慌ててそう広くもない自分の部屋を見回した。そんなはずはないのに、耳障りな笑い声が断続的に聞こえてくる。
 ・・・私は狂ってしまったのだろうか?
 真っ暗な闇の中を正体不明の何かに追いかけられるような恐怖にかられた私の視線が、部屋のある地点でぴたりと止まった。
「なんだ・・・」
 ・・・私ハ、狂ッテナンカイナイ。・・・
 鏡の中には口元を奇妙に歪めながら笑っているもう一人の私がいた。
 
 今日は昨日にもまして彼の元気がない。
 でも、大丈夫よ。
 速水君は速水君だってすぐにみんなに証明してあげるから・・・
「速水君。」
「どうした・・・・の?」
 私の両手が赤く染まっていく。
 ほら、ちゃんと赤い血が流れているじゃない。
 遠巻きに眺めていたみんながこっちへ駆け寄ってきた。
「速水君、みんなわかってくれたわよ。」
 そうささやくと、彼もまた満足げな微笑みを返してくれた。
 これで、あの日常が帰ってくる。
 柔らかに笑う彼の隣には私がいて・・・一緒に整備したり、日曜には遊びに行ったりする幸せな日々が・・・・
 
 
                 必殺仕事人13話・完
 
 
 やべっ、全然しゃれになってない!これじゃあサスペンスホラーだよ。
 とはいうものの、絢爛舞踏賞を取ってから原さんに刺されるかどうか試したことのある人は手を挙げて!(笑)
 と言うわけで、やっぱり原さんが最強です。絢爛舞踏なんか目じゃないぜ!
 原さんならシャ−プペンシルで竜も撃破できるぜ!(笑)
 ま、これはこれとして・・・これは最終回への伏線です。(笑)このままではあまりにあまりゆえ地獄行きって感じですし。(笑)

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