来須はそれを解放した。
 とたんに来須の身体を取り巻くように青い光が揺らめきだす。そうすると自然の語らいが来須の耳に聞こえてくる様になる。
 人であることを超越し、万物の精霊の力を利用することができるようになった証でもある。
 ガタッ!
 教室の入り口の方からの物音を耳にして来須はそちらを振り返った。
「な、なんだその青い光は?」
 そこには顔をこわばらせた茜の姿があり、何か熱にうなされたようにぶつぶつと独り言を呟いている。
「・・・そういえば昔、ママンから聞いたことがある。その青い光はまさか・・・」
 茜は額から大量の汗を流しながらも、ゆっくりと来須から遠ざかろうとしているようだった。
「チェレンコフ光!」
 ぶっぶー。(チェレンコウフだったか?)
 どうやら茜も冷静さを取り戻したようで、首を振りながら『ふん、何かのトリックに違いない』などと呟きながら立ち去っていく。
 確かにそんな危険な勘違いは来須にとっても不本意ではある。人間ではないことは事実だが、体内に核融合炉を持った覚えはこれっぽっちもない。
 だが・・・と来須は思う。
「確かに俺は人間という枠を踏み出した存在には違いない・・・。」
 セピア色に染まる夕暮れの教室に、来須の寂しげな呟きが響いた。
 
 万物の精霊の力を借りることができる・・・それはつまりそういう生き物に好かれると言うことでもある。
 しゃぎゃー!
 次から次へと自分めがけて近づいてくる幻獣に、さすがの来須も少し辟易していた。しかも建物の陰に隠れてブータをはじめとした猫軍団が幻獣に立ち向かう姿が張りつめた緊張感を破壊する。
「来須先輩、今援護に行きます!」
 ちゅどーん!
『滝川、脱出しました!』
 ・・・何しに出てきたんだあいつは。
「にゃ、にゃあー」
 悲痛な叫び声にそちらを振り向けば、一匹の猫が幻獣の攻撃を受けて吹き飛んでいた。
「・・・おのれ。」
 おいおい、滝川より猫が大事かよ。(笑)
 そんな突っ込みをものともせず、来須は戦場を駆け抜けながら幻獣めがけて射撃を繰り返す。
 ・・・こうしていつものように戦闘が終わる。
 休日の今市公園。
 来須の周りで猫が数匹ひなたぼっこをしている。別に来須が呼んでいるわけではなく、向こうから寄ってきているにすぎない。その数が時間が経つにつれて増えていっているのだが、来須はほうっておいた。
 と、そのとき微かに地面が揺れ、猫の大群が来須めがけて突っ込んでくる。
「くっ・・・。」
 春の日差し、それと猫のむせかえるような臭いに囲まれて来須は失神した。
 
「・・・あー、来須!」
「・・・はい。」
 困ったような本田の声に対して、来須はゆっくりと立ち上がると教室を出ていった。それについていくように猫の大群が教室を出ていく光景はまるでハーメルンの笛吹きである。
「・・・なんかまた増えてない?」
 授業をさぼっていた新井木のあきれたような声に来須は黙って頷いた。来須自身も、このままでは熊本中の猫たちがやってきてムツゴロウ王国を築いてしまいそうなのでどうにかしなければと思ってはいるのだが打開策がない。
 幻獣との戦闘においては、精霊の力を借りると言うよりも引き連れている猫たちが幻獣に立ち向かっていくのでとても楽・・・じゃなくてはっきり言って邪魔なのだ。
 しかもこの集団、幻獣よりも強くてその戦闘力はおよそスキュラ5匹分。(笑)
 まさに小隊の猫のエンブレムにふさわしい戦力である。
 ・・・違ウ、ナニカ違ウ。
「ハーメルンの笛吹ね・・・ところで来須君知ってる?」
 猫の間をぬうようにやってきた芳野は穏やかに微笑んでいた。だが、その笑顔から発せられた言葉はとことんまで黒かったのだが。
「猫ってほとんど泳げないのよ。」
 
 そして来須は今日も猫とともに歩む。
 
 
                     完
 
 んー・・・ま、いっか。(笑)
 来須が猫と戯れるとか考えたんですけど・・・ちょっとそれは。ブータの提案で停学処分にされるとかリプレイとしてはあれですが難しい。
 しかし、このキャラったらはじめてプレイしたときに『俺はお前の友だ!』とか言った次の瞬間には『新井木はわたさん!』とか言って喧嘩売られました。何のことかさっぱりわからなかったので喜んで受け入れてしまったのがあの時の敗因かと。(笑)

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