「・・・ふっ、俺達は捨てごまか。」
男は忌々しげに新聞を投げ捨てると、その行為を見ていた男が軽くたしなめた。
「熊本はおろか九州全体が捨てごまさ。今更怒るような事じゃない。」
八代平野の苦い勝利・・・勝利と呼ぶにはかなりの悶着があるようだが、1400万の幻獣を48万の人類が一旦は撤退させたのだがら勝利と呼んでも差し支えは無いと思われる。例えその戦死者が30万人を数えたとしてもである。
九州防衛における熊本の要塞化。
それは決して九州の他の地域を蔑ろにしているわけでは無く、それだけの余力が今の日本には残されていないだけの話である。
新装備や兵力が熊本に集中されると、他はそれだけ割を食う羽目になる。どの地域を防衛ラインに決定するかという話はさておき、兵力の集中という事だけは正しい判断であった。
かつて、越後、三河、、土佐、薩摩の強兵と呼ばれた時代があったが、大体東北と九州はいつの時代も強兵と呼ばれていたが、この男達はそんな強兵の子孫(そう言う概念が通用するかどうかは疑わしいが?)である。
古来中国では精兵は訓練によって生み出され、強兵は実践によって生み出されると言われた。
そして今、確かに九州は数多くの強兵が生み出される状況におかれている。
「さて、今日のおつとめはどこだい?」
まるで今眠りから覚めたような緊張感のない台詞を呟いたのは、髪をぱりと短く切りそろえたがっしりとした体格で長身の男である。年の頃は25・6というところだろうか。
「出水だ・・・熊本の盾としての立場はつらいねえ。」
そう応えたのは、前述の男とは対照的なほっそりとした体つきで身長は平均並、長く伸ばした髪の毛を後ろで縛ってそのまま垂らしている。年齢はこれもまた30手前と言った風に見える。
絶望的な状況におかれている鹿児島師団の中で、この2人だけはとも生き生きとした表情をくずさしていない。
ちなみに出水とは熊本の水俣から15キロぐらい南にある地域で、その間には海岸線沿いにしか平野部が無い。故に戦車兵の移動は不便で、大概はヘリ部隊が動員される。
通常武装ヘリきたかぜは2人で操縦するのだが、この男達・・・長身の方が伊集院隼人(いじゅういん・はやと)もう一方が入来剛(いりき・つよし)はそれぞれ1人で操縦する。鹿児島師団の中でも変わり種の2人であった。
「幻獣の規模は?」
「どうも熊本からの出張のようだ・・・かなりの戦力らしい。」
剛にそう教えられて、隼人は忌々しげに舌打ちした。
「チッ・・・熊本の奴らは何やってやがる。」
「人類が熊本に戦力を集中したように、幻獣も熊本に集まってるのさ。」
「九州はどこも劣勢ってわけだ。」
「ま、熊本の奴らが一発逆転を狙って何か画策してるという話らしいがな。」
そう呟いた剛は、隼人に軽く頭をこづかれた。
「やべえ情報に首突っ込むなって言っただろ!」
「・・・熊本に知り合いがいてな。」
「いつか殺されるぞ、お前。」
「幻獣に殺されるよりはましだと思うがな・・・ってなにしやがる!」
尻を蹴り飛ばされ、剛は隼人をにらみ付けた。
「さて、出勤だぜ。今日はお前がまず囮の役だからな。」
「・・・はいはい。了解しました。」
幻獣の実体化が始まると、武装ヘリの集団がそれぞれ浮上を始める。
『海側に幻獣を誘い込め。』
通信機からの指示を聞き、隼人は眉をひそめた。
「うちの大将が馬鹿なこと言ってるぜ。」
「ほっとけ、馬鹿は死ななきゃ直らねえよ。」
そう呟くが速いか、剛の乗るヘリがミノすけの集団目がけて突っ込んでいく。だが、幻獣の攻撃範囲の手前で右に進路を変えて山肌の方へ向かって逃げ始めた。その途中にいたゴブリンを行きがけの駄賃として機銃で始末しながらである。
剛の低空飛行に比べて、隼人のヘリは高空(ヘリとしては)で待機している。そしてミノすけの集団が剛のヘリを追って方向転換したところで背後から狙い撃つ。すると集団の秩序が乱れ始めて、それぞれが勝手な動きを繰り返す。
無秩序な攻撃の流れ弾にあたるのはつまらないので、剛は斜線妨害を受ける山肌にヘリを飛び込ませて一息つく。そして通信機のスイッチをオン。
『伊集院に入来!何をやっとるか!』
「あー隊長、何の遮蔽物もない平野部でまともに戦えると思いますか、どーぞ。」
馬鹿丁寧な剛の口調に、隊長がかんしゃくを起こす姿が目に見えるようだった。もちろん、他のヘリは2人を見習って山間部の戦いを始めている。
いくらヘリの利点が機動力にあると言っても敵の射線をかわし続けるのは無理がある。だったら敵の射線を制限し続けるしかない。
何よりも九州防衛における第一の目標は時間稼ぎなのだ。
「そのことをあの馬鹿はわかっちゃいないのさ。」
剛はそううそぶいて、ヘリを再び山肌から浮上させた。その上空では隼人がしっかりと背後を守ってくれている。
出来るだけ一撃で倒せるような小型幻獣を狙って倒していく。
敗北続きの鹿児島において、この2人の所属するヘリ部隊だけは未だ死亡者が1人も出ていない。敵を一掃するような派手な戦果こそないが、連戦に連戦を重ねた彼らは鹿児島を守る最後の強兵集団であった。
ぱん、ぱぁーん。
乾いた音が二回続けて隊長室に鳴り響いた。
真っ赤になった自らの頬を確かめようともせずに、隼人と剛は隊長に向かって冷ややかな視線を向ける。
「幻獣を逃がしてばっかりで人類に未来はあるのか?言ってみろ!」
あんたが死ねば多少は人類の未来とやらが明るくなるかもしれませんが・・・とは2人とも口には出さない。もちろん表情にも。
「こんな戦いを繰り返していても、いつかは弾薬も食料も尽きる時が来る。そうなる前に幻獣どもを全滅させておかねばならんのだ!」
少なくともこの隊長がこの国を愛していることは確かだった。2人はそれがわかっているから何も反論しない。
「我々は本当の意味で勝たねばならんのだ!お前達ならわかるだろう?」
「勝とうとすれば負けます。我々が負けたら幻獣どもは後背の危険を感じなくなり、宮崎や熊本になだれ込むことになるでしょう。」
隼人が重々しく口を開いた。その後を受けて剛が話し出す。
「我々の敗北は九州の敗北を加速させます。九州の敗北はこの国の敗北を導きます。今我々に出来ることは時間稼ぎだけしかありません。」
「わかっている・・・俺にだってわかっているんだそんなことは!」
隊長はがっくりとうなだれて椅子に腰掛けた。
「俺は・・・俺達の代でこの戦争を終わらせたい・・・それだけなんだ。」
呻くように呟く隊長を、2人は多少の憐憫の情を持って見つめた。
「もういい、2人とも出て行け。」
「はっ!(*2)」
2人は踵を返して隊長室を後にした。
「顔・・・真っ赤ですよ2人とも。」
隊長室を出たところで、2人は女性事務官につかまった。
「ま、隊長ほどじゃないさ。」
隼人はそう呟くと、自分の頬を触って顔をしかめた。
「あのおっさんはおっさんで立派な愛国者だからな。あれよりひどい上司はどこにでもごろごろしてるさ。」
剛は肩をすくめ、隊長室のドアを見た。そんな2人を見て女性事務官は寂しそうに微笑んだ。
「でもまあ、こうしていられるも時間の問題でしょうけど・・・。」
「?」
「鹿児島の本部からさっき・・・これから隊長に報告するところです。」
目を伏せながら彼女は隊長室へと入っていった。
顔を見合わせる2人。
そして2人は肩を並べて歩き出す。
「宮崎と福岡もやばいらしいな。」
「本土との連絡を完全に絶つつもりだな・・・そうすれば熊本要塞も無力化される。」
「とすると・・・大分での戦いがこれからの九州の命運を分けるな。」
「鹿児島と同じく、山地に囲まれた防衛しやすい地形だ。」
腕組みをしてそう呟いた剛の肩を隼人はつつく。
「負けてる俺達が言う台詞じゃない。」
「なーに、これからさ。」
にやりと白い歯を見せた剛に、隼人もまた白い歯を見せて笑った。
「ああ、これからだ。」
川内(せんだい)戦区・・・平野部の少ない鹿児島においては数少ない平野部の1つである。
ただでさえ数少ない戦車兵は有効に使わねば・・・というわけか、この戦区には残存する戦車兵のほとんどがかき集められていた。
ここ鹿児島においては、既に大隅(鹿児島の東半分)は幻獣戦力に蹂躙されており、人類は薩摩(西半分)においてなんとか全滅していないという状況にまで追いつめられている。
「あーやだやだ。平野の戦いは嫌いなんだよ。」
「まあ、好き嫌いを言える状況でないことは百も承知だがな。」
と、文句をこぼしながらヘリの整備をするのは隼人と剛である。
「幻獣の長距離レーザーにまとめて狙われるとどうしようもないからな・・・。」
「まあ、妙な幻獣がでてこないことを祈るさ・・・。」
おそらく鹿児島においてこれだけの戦力が集中するのは最後のことであろう。
平野部に一直線に配置された戦車兵。おそらく突出する幻獣に向かって火線を集中させるつもりであろうが、向こうの数と勢いがこちらの計算内であるかどうかはあやしいものである。もともとにおいて戦力に差がありすぎるのだ。
「ま、俺達ヘリ部隊はあちらさんの足止めだな。」
隼人が剛の肩をぽんと叩いた。
「俺のヘリが落とされたら後始末は頼むぜ。」
「ゾンビになったお前さんのヘリと一戦交えるのも悪くないと思うがな。」
「よせよ、冗談じゃない。」
周りのヘリが次々とエンジンを始動させ始めている。
2人は軽く頷きあって、お互いのヘリに乗り込んだ。
「と、とんでもねえな・・・。」
空から見ると、幻獣の規模がけた外れだったことを思い知らされた。幻獣の大軍がまるで津波のように押し寄せてきている。
「そのかわり・・・攻撃が外れることはなさそうだ。」
『違いない。』
隼人は剛に、剛は隼人に軽く手を振ってお互い左右に散った。運が良ければまた顔を合わすこともあるだろう。
「さて、最低でも3回は補給に戻らせて貰うぜ・・・」
鹿児島師団壊滅となったこの日の戦いで、2人は補給に戻ること7回を数え最後まで友軍の撤退を援護すべく戦い続けた。
この日、合わせて総数41匹の幻獣を撃墜した2人は、補給すべく味方がいなくなったことを確認すると、北に向かって撤退したという。
敗戦の中での記録であり、詳しい事実については2人から直接聞く他はないのだが、2人はただ笑って何も答えない。
先に述べた戦果は、あくまで確認されている事実のみである。
「おい、鹿児島が陥落したぞ。」
バン、と乱暴にドアを開いて少年は叫んだ。だが、次の瞬間に投げつけられた時計を顔面にくらって鼻血を吹き出しながら昏倒する。
「女の子の部屋にノックも無しに入ってこないで!」
顔を真っ赤にした少女がシーツを纏い、仁王立ちして少年を見下ろした。
「なんだよ・・・今さら裸の1つや2つ。」
「2つぅ?わ、私以外の裸を見たことがあるのね?」
「ちょ、ちょっと待て!無茶苦茶言うな!」
と朝っぱらから賑やかなこの2人。
こう見えても宮崎を守る立場の学徒兵であり、やっと軍隊に慣れたという程度の殻をおしりにつけたままのひよっこである。
この少年と少女の名前はそれぞれ延岡雅史(のべおか・まさし)、日向紀子(ひゅうが・のりこ)と言う。
「で、鹿児島の状況は?」
「本部が壊滅したらしいよ。各地の残存戦力は順次撤退中だって。」
「・・・残る人たちがいるんでしょう?」
「まあね、薩摩人のねばり強さは筋金入りだから。」
「だろうと思った。そうでなきゃこんな朝っぱらから雅史がやってくるわけないものね。」
「そういうこと。」
紀子はため息をついて雅史の顔を見つめた。
「今度は生きて戻れるかしら?」
「死なないと勲章がもらえないからなあ、俺達みたいな補給部隊は。」
頭の後ろで手を組んでじっと天井を眺める雅史を見て、紀子は微笑んだ。
「じゃあ、行こうか。」
「そうだね。」
そして2人は本部に赴いた。
「鹿児島北部で未だゲリラ的な抵抗を続けようとするヘリ部隊がある。延岡・日向両名はこの物資をそこまで無事に送り届けてくるように。いいか、死んでも届けろ。」
いつもと同じ笑えない冗談に励まされ、2人はトラックへと向かう。
紀子はこっそりと倉庫から拝借してきたバズーカと機銃をトラックに積み込みながら呟いた。
「直線距離でおよそ80キロ・・・援護は無し。で、どうするの?」
「宮崎自動車道路を使う。まあ、ある程度は幻獣実体化の情報も入るし、何とかなるよ。」
「県境まではね・・・。」
「そこからは・・・紀子に任せるよ。俺は運転手だから。」
「まあね、期待してて。」
紀子は雅史に向かってにっこりと微笑んだ。
「で、今回の武器は?」
「んーと・・・バズーカが2本と対戦車用の機銃・・・もう、トラックの後部に固定しといたから。」
そう言ってにっこりと微笑む紀子を見て雅史は顔を引きつらせた。
「それってトラックに凄い反動が来るんだけど・・・」
「雅史のこと信用してる。そのかわりミノちゃんの5匹ぐらいまでは余裕で何とか出来るよ。」
何気なくそういう紀子に、雅史は手のひらで自分の顔を覆う。そしてぽつりと呟いた。
「・・・まったく、俺以外に言うんじゃないぞ。誰も信用しないから。」
「えへへ・・・雅史にわかってもらえれば私はそれで充分だもの。」
「ば、馬鹿言ってないで用意しろ。出発するぞ。」
「了解。」
エンジンが点火され、物資を積み込んだトラックがゆっくりと動き出す。往復200キロに及ぶ激走が始まろうとしている。
「紀子・・・そろそろ後ろに行け。」
霧島山(鹿児島と宮崎の県境にある火山)を左手に眺めながら、雅史は呟いた。紀子は黙って頷く。
既に幻獣の実体化はおろか、所在を知らせてくれるものはない。宮崎における70キロの道のりよりも、鹿児島に入ってからの30キロの方が危険なことこの上ない。
「たまには幻獣と会わないまま任務を完了したいねえ・・・」
通信機からの紀子の呟きが漏れてくる。
「今回も無理みたい。」
雅史がそう呟くと、紀子のため息が聞こえてくる。
「規模は?」
「確認できる範囲ではゾンビが3機・・・後はゴブリンとナーガみたい。」
「ふーん・・・じゃあ、かわいそうだからゾンビだけ片づけていきましょ。雅史、回りこんで。」
「揺れるぞ、ベルトしめたか?」
「誰に口聞いてるの?」
「へいへい。」
雅史が大きくハンドルを右に切る。
元々道路の上を平穏に走るためのトラックではない。少々の悪路なら平気で走ることができる様になっている。ただ、装甲という概念が無いから一撃で確実に死亡する。
幻獣達の群から遠ざかるように運転すると、機動力のあるきたかぜゾンビが群から突出する。そのまま真っ直ぐ走らせていれば、紀子の射線上に追いついてくるはずだ。雅史にしてみればとにかく敵の射線に捕らわれないようにする事だけを考えていればいい。
「塵は塵に、灰は灰に・・・」
「紀子・・・ふざけるのはやめとけ。」
「素面で戦争なんか出来ないわよ!」
紀子がそう叫んだ瞬間、ミラーに赤い光が見えた。
「雅史、ちょっと左。」
トラックが尻を振ると同時にもう1つ赤い光。どうやら雅史がどのぐらい移動するかがわかっていたらしい。
と、同時に雅史は速度を落とした。もちろん、左右に蛇行させながらである。ぐんぐんと距離を詰めてくるきたかぜゾンビに向かって紀子が機銃を向けた。
「さて、大サービス!」
機銃での掃射はトラックが大きく震えるほどの振動を与えたが、雅史は涼しい顔でハンドルの微調整とアクセルワークだけでそれを押さえ込んだ。
「雅史、終わったよ。」
「じゃあ、逃げるか。」
「逃げるってのやめてよね・・・転進って言ってよ。」
「仰せの通りに・・・」
「ほう、若いな・・・学徒兵か。」
隼人が感心したように補給トラックの運転手である雅史を見て呟いた。
「捨てごまかな。」
と、呟いたのは剛。
「だが、物資が届いたのは事実だ。ありがたいね。」
「確かに・・・。」
「すいません、思っていたよりも遅くなってしまって・・・。」
軽く頭を下げた雅史に向かって、2人は手を振った。
「何、正直期待していなかったからな・・・来てくれて本当に驚いた。幻獣と出会わなかったのか?」
「ええ、運良く。」
涼しげな顔で答えた雅史の隣で、紀子は興味深そうにあたりをきょろきょろと見渡している。
「学徒兵か・・・どうする?少し休んでいくか?」
「いえ、すぐに帰ります。まだまだ補給を必要としている部隊が多いですから。」
「県境まで護衛しようか?」
そう言った剛を見て紀子はにこっと微笑んだ。
「大丈夫です。私達って運が強いから。」
そう言って2人は足早にトラックに乗り込む。
ほぼ空っぽになった後部の荷台に座った紀子は、ぶんぶんと手を振りながら鹿児島のエース達に別れを告げる。
「じゃあ、みなさん頑張ってくださいね!」
あまりに無邪気なその笑顔に、その場に居合わせた男達は苦笑した。だが、その中でただ2人笑わない男達。
剛が隼人を肘でつついた。
「おい、気づいたか隼人。」
「ああ、荷台に転がっていた弾のないバズーカだろ・・・あの女の子には硝煙の匂いがこびりついてるしな。」
「あの後部の機銃は伊達じゃないって事だ。」
そんな会話がかわされていることなどつゆ知らず、2人は一路宮崎を目指す。
「雅史、帰りはのんびりしようね。」
紀子の呟きに、雅史は前方を見ながら呟く。
「そう言うわけにもいかないみたいだよ。」
「むうー・・・帰りは弾を使い切ってもいいんだからね。いっつもいっつも逃げてると精神衛生上良くないし。」
「はあ、また遠回りか・・・」
ため息混じりにそう呟きながらも、雅史はハンドルを大きく左に向けた。推定数10程の幻獣の小部隊がそこにいる。
「あはっ、弾も一杯残ってるし・・・このぐらいなら全滅させれるね。」
「どれから狙う?」
「もちろん、大物から。」
そう呟く紀子の瞳は生き生きと輝いていた。
そして彼ら2人が宮崎に帰り着いた頃。
「何事?」
紀子は未だ黒い煙をあげ続ける宮崎本部を前にして、呆然と辺りを見回していた。
「んー・・・やられちゃったかな。帰りは通信機を切ってたし。」
鹿児島が陥落したと同時に、大隅地方から都城を通って宮崎を幻獣の大軍が襲ったのである。
宮崎の残存兵力は日向戦区に結集しつつあり、そこを新たな本部として再び幻獣と戦い続けようとしていたのだが、もちろん2人にそんなことはわからない。
「宮崎が陥落したとなったら・・・熊本か、大分に行かないとな。」
雅史が腕組みしながら呟いている頃、紀子と言えば倉庫の中の忘れられた物資をかき集めていた。もちろん、武器ばっかりである。
「紀子・・・何してるの?」
そんな姿に気がついて、雅史が声をかけると紀子は白い歯を見せてにやあっと笑った。
「私、もったいないこと嫌いなの。」
「・・・と、おっしゃいますと?」
「トラックに積み込めない分の武器はこの辺りで使っていくからね、いいわね雅史!」
雅史はうんざりしたような表情で倉庫の中の物資を眺めた。この物資を上手く使い終わる頃には多分勲章が貰えるだろうな、などと考えていた。
結局2人は一週間遅れて日向戦区の宮崎本部にたどり着くことになる。
その間、どれだけの幻獣を葬ってきたかは2人以外誰も知らない。
九州のエースパイロット列伝1・完
あっはっは・・・もう個人的な趣味が爆裂してます。それ以前に『がんぱれ』の外伝の意味があるんでしょうか?(笑)
でもやっぱり、鹿児島や宮崎が陥落した影にはきっと彼らのような熱いキャラがいると思うんですよ。
とりあえず士魂号やウォードレスの装備は熊本特有の装備だから・・・やっぱりヘリと戦車ぐらいしかないんでしょうね。
さて、大分戦線は地元の吉井さんに任せることにしますか。(笑)
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