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奈良と剣豪の里を結ぶ柳生街道を行く

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歴史街道の目次


奈良と剣豪の里を結ぶ
 柳生街道を行くプロローグ


地図をクリックすると詳細コース地図になります。
  奈良県「柳生の里」と奈良をつなぐ柳生街道をガイドブックを片手に歩いてみることにした。
 奈良から柳生の里に至るには、奈良公園の春日大社裏山の原生林の谷あいを東へとると、清流が流れる石畳のひなびた小道がある。これがいわゆる滝坂道とも呼ばれる道で、旧柳生街道はここより始まるのである。
 柳生の荘は「柳生石舟斎」が開いた柳生新陰流の剣豪の里だ。
徳川将軍家の兵法指南役として柳生藩1万石の大名になった息子の「宗矩」や「柳生十兵衛」、あだ討ちの「荒木又右衛門」など名だたる剣豪を輩出した山里として全国的にも知られたところだ。
 若き「宮本武蔵」も剣の修行のためこの里を訪れ柳生道場で指南を受けている。 彼ら幾多の剣豪が行き来した苔むした旧柳生街道を、江戸時代の剣豪に思いを馳せ、歩いてみることにした。
         

             柳生街道てくてく歩きコース

        黒字ー交通機関利用コース 赤字ーてくてく歩きコース
 JR奈良駅より奈良バス乗車→柳生上バス停下車、スタート→柳生藩家老屋敷→
 柳生一族の墓→正木坂道場→大柳生集落→街道一の古刹円成寺→峠の茶屋→春日山
 石窟仏→石畳の滝坂道→奈良市高畑町→奈良公園→JR奈良駅前。



         歩行距離約18キロ 歩いた歩数31000歩


JR奈良駅より奈良バスで
       柳生の里へ

作家山岡荘八が住んでいた柳生藩家老屋敷

 奈良駅前の宿泊していたホテルを出立するとJR奈良駅バスターミナル発8時26分の柳生方面行きバスに乗り込んだ。
奈良市街を抜けるとすぐ山道となり約50分の乗車で柳生の里「柳生上」のバス亭に着いた。
 天候は快晴である、今日はここから柳生街道を歩きながら終点奈良駅前まで史跡をたどり、この街道を往来した江戸時代の剣豪に思いを馳せ、のどかな山里を歩いていくのである。国土地理院発行の2500分の1の地図と磁石も持った用意万全だ。          高台にある柳生藩陣屋跡
         
 
 バス亭から田んぼの道を南に少し歩き出すと、石垣に沿って長い石段があり、そのつきあたりに柳生藩家老屋敷が見えてきた。   この住居は国家老小山田主鈴の旧宅でその後、時代小説作家の「山岡荘八」が昭和55年まで住み多くの小説が執筆されたところだ。

 さっと中を覘きこみ、再び街道に戻り木立の中の坂道を登っていくと、視界が広がり集落と広場があるところに出た。広場には柳生藩の陣屋跡があり、かっての建物の形に石の土台が組まれ、当時の間取りが再現されている。高台からは山間の狭い盆地に柳生上ののどかな田園風景が広がっている。

柳生藩菩提寺「芳徳禅寺」

芳徳禅寺の裏手にある柳生一族累代の墓

 柳生陣屋の高台を下りると、対峙するように小高い山があり、その山道を登って行くと、今度は柳生藩菩提寺の「芳徳禅寺」に出た。
 臨済宗の寺院で「柳生宗矩」が父「石舟斎」の菩提を弔うために建立したものだ。その後、柳生家の菩提寺となり本堂裏手には宗矩の墓石を中心に「石舟斎・十兵衛」など柳生一族の墓石が80基あまり整然と並んでおり圧巻である。芳徳禅寺の庫裏の資料室で柳生新陰流や柳生藩の資料を見学して、参道を少し下ると柳生新影流の正木坂道場があった。

多くの剣士が育っていった正木坂道場
 
 かって柳生十兵衛が1万3600人の門弟を鍛えた道場で陣屋内にあったものを、この寺の境内に移築したのである。
 かって徳川将軍家指南役の柳生流道場として、どれだけ数多くの剣士がこの正木坂道場で修業を積んだことか。
 宮本武蔵や荒木又衛門もここで修行したのだ。中を覗き込んだが今日は誰も剣術の稽古はしていなく、静寂さが漂っていた。
 この道場境内の小高い丘からも眼下にのどかな農村風景の柳生の里が遠望できた。

鬱蒼たる山道の柳生街道へ

鬱蒼たる杉林の中を通る柳生街道

 柳生上の剣豪の里での史跡めぐりを終え、国道からそれて、いよいよ奈良まで続く柳生街道へ入りこんだ。
 なだらかな上り坂がつづき、あたりはうっそうと杉の木が茂る。道は比較的整備されており歩きやすい道だ。
 しばらく歩くと道路わきの大きな岩に彫られた石仏が見えてきた、ガイドブックを開くと六体地蔵と説明が書いてある。

 さらに歩いていくと、なだらかな杉林の道がかなり険しい石ころだらけの道に変化してきた。2時間ほど峠を上り下りをくり返し進んでいくとやがて木立の道の視界が」開け、のどかな山里の歩きやすい街道になり、田植えの真っ最中の田園風景がしばらくつづくようになった。
いたるところに道案内の標識が立っており、地図を見ないでも道に迷うことはない。

街道脇の岩に彫られた六地蔵画像をクリックすると拡大します のどかな田園風景の柳生の里画像をクリックすると拡大します いたるところにある道案内標識画像をクリックすると拡大します



柳生街道随一の名刹円成寺

 道路標識に従い田園風景が広がる街道から再び山道に入りしばらく歩むと、やがて柳生街道随一の名刹である円成寺が見えてきた。
 山奥の寺としてはそれなりの歴史のある寺で、桧皮葺きの楼門、舞台付寝殿造りの本堂は共に重要文化財で、境内の奥まったところにある小さな春日堂・白山堂は日本最古の春日造り社殿として国宝に指定されている。
 境内に入り、ぐるっと一巡後、一服をかねて本堂の軒下の階段に腰かけ、昼食用に奈良駅近くのコンビニで買ってきたおにぎりを食べることにした。さすがに疲れが出てきてしばし立ち上がる気にならない。

 一服から立ち上がり境内から再び柳生街道へ入っていこうとすると茶店がある。店頭にある冷蔵庫の缶ビールが目に入ってしまった!どうにも我慢ならず店内に飛び込んでしまった。

江戸時代からつづく峠の茶屋

 古刹円成寺境内での一服を終えると、再び木立が茂る鬱蒼たる山道に入った。登り下りしながら歩んでいると前方を二人組みの女性が歩いている。脇を通り抜けようとすると突然、私に「この道で奈良にいけるですよね?」と声を掛けてきた!これが縁となり、彼女達と一緒にしばし一緒に歩むこととなった。大阪からこの柳生街道を歩くためにやって来たOLで、私も街道歩きが目的で札幌からやって来たと言うと、びっくりして俄然話が盛り上がった。
 やがて山道は丘陵地に茶畑が広がる道に変わり、しばらく進むと再び山道とななった。するとカーブを曲がった先に、時代劇映画のセットのような、江戸時代から続く「峠の茶屋」が出現した。
江戸時代からつづく峠の茶屋ここで一服する私

 
 この茶屋で私は名物「冷やし生姜湯」を注文することにした。
すると途中で道連れとなった大阪の二人組のOLがビールを2本注文すると何と!その1本を私にご馳走してくれるではないか!
 実はビールがすごく飲みたかったのである!しかし先ほどの円成寺の茶店で缶ビールを2缶も飲んでいたので我慢していたのだ。
自他共に認める飲兵衛である!遠慮せずいただくことにした!まさに「旅は道ずれ世は情け!」ではないか!
 峠道の上り下りで、かなり汗をかいたので旨い!実に旨い!最高の美味さだった。ビール党の私はこんな調子だから、プリン体過剰で痛風になってしまったのだ。

春日山の情緒ある滝坂道

荒木又衛門が試し切りしたといわれる首切り地蔵

 一服後、ここで二人組みOLと分かれ、一足早く先へ行くことにした。茶屋を過ぎ峠道を下りていくと、やがて柳生街道の中で最も情緒があると言われ、あちらこちらに石仏と石畳が続く春日山原生林をはしる「滝坂道」と呼ばれる渓谷の道となった。
 荒木又衛門が試し切りしたと言われる、物騒な名前の「首切り地蔵」の説明板が道端に立っている、やっぱり歴史の道なのだ。

 この滝坂道は石畳の道として名高く、奈良公園裏手の春日山原生林の谷あいを縫うようにつづくひなびた道だ。江戸時代に奈良奉行が作ったとも言われ、鬱蒼たる森林の中の道は清流が流れ、あちこちに石仏や小さな滝が散見される。 ウオーキングには最適の気持ちのよい道である。

奈良公園の裏手春日山原生林をはしる石畳の滝坂道

 崖を見上げるようにしながら清流沿いの道を進んで行くと、岩肌に3体の石仏が刻まれているのが見えてきた。
 説明板には朝日を拝むように東を向いているので「朝日観音」と書かれており、中央が弥勒菩薩・左右が地蔵菩薩ということであった。
 このあたりまでくると家族連れのハイカーとすれ違うようになってきた。やはりこの道は人気があるようだ。 
 このまま進むと、あとわずかで奈良公園の春日大社の裏手の道に出るはずである。

崖に彫られた朝日観音像画像をクリックすると拡大します 春日大社裏手柳生街道入り口画像をクリックすると拡大します 情緒ある石畳の滝坂道画像をクリックすると拡大します

 やがて原生林をぬけると目の前が明るくなり奈良市高畑町の住宅街が現れた。道なりに歩みを進めて行くと、左手に「新薬師寺」が現れ、さらに進むと「志賀直哉の旧居」がある。ここから道を右にとり森林の中に入り春日大社方面にぬける「ささやきの小径」に足を踏み入れた。鹿がたむろしている広大な奈良公園を抜けていくと、宿泊している奈良駅前のビジネスホテルは間もなくだ。
 午前8時半にJR奈良駅前をスタートして午後3時半に奈良駅に戻った。万歩計を見ると3万1000歩になっており、見学・休息を含めて7時間の所用時間だった。

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