その6 湖南省.長沙から中国六大古都の一つ浙江省.杭州むけて   

世界遺産 中国仙境・山水画街道を行く



(旅の6日目 長沙市内自由行動〜南宋の古都・杭州へ)

 
 旅6日目の朝を湖南省の省都で毛沢東の故郷としても有名な長沙市中心部のホテルで迎えた。 昨夜は久しぶりの日本食と日本酒にありつき充足感いっぱいで眠りに着き、酔いの手伝いもあり途中あまり目覚めることも無く熟睡できた。 5時半に起床し洗面後、6時のニュースを見るべくTVのスイッチを入れた。
 前編でも触れたが4日前に北朝鮮が行った核実験についてのニュースの詳細を知りたくてならないのである。
 すべての局にチャネルをあわせたが、やっぱりどの局も北朝鮮核実験のことは一切報道していない。
 明日は杭州の4つ星ホテルに宿泊予定である、そのホテルではNHKの衛星放送が視聴できるらしい、それまでイラつくが我慢しなければならないようだ。


 今日のスケジュールは夕刻6時40分発の航空機で浙江省の古都「杭州」への移動がメインとなっている。 杭州はあのマルコポーロが滞在し「世界で最も美しい街」と称えたことでも有名だ。
 フライト時刻まで時間にゆとりがあるため、午前中は各自が好きな時間を過ごすことになった。
今日の観光といえば昼食後に湖南省博物館でミイラ見学をすることぐらいである。
 朝食を済ませ、自由行動で長沙市内をうろつくために必要な地図を買うため、ホテル裏の下町に足をむけることにした。             ホテルや高層マンションが林立する五一大路  日曜日の長沙の朝である!ホテルを出て5分も歩くと、下町らしい野菜.果物.肉.惣菜などを売る露天が立ち並ぶ一角に出た。 
 露天に近いような食堂が軒を連ね、どの店もぶっかけどんぶりで朝食をする人々で賑わっている。
 メニューはどの店も、どんぶりに麺あるいは米飯を盛り、その上から肉汁をかけただけのもので、一杯2元〜3元(30〜45円)の値段だ。 交差点角の日本のキヨスクのようなミニ売店で目的の市内地図を4元(60円)で購入すると一旦ホテルの部屋に戻った。


 さっそく部屋で買ったばかりの地図を広げ、午前中の自由行動で散策する長沙市内  日系ショッピングセンターへむかって歩きだす
のコースを考えた。 昨日は終日バスに乗り切りでほとんど歩いていない! 
 毎日油っこい中華料理を食べ、おまけに水分補給で昼から飲み始めるビール、これではカロリー過多で豚のようになってしまう。  
 これ以上の体重増は許されない!日本を出る時、イヤになるくらいウオーキングして「必ず、均整の取れた美しい体型になって戻ってくる」と決意して中国入りしたのである。
今朝、洗面所で体重計に乗ったら目を疑った!
 
 減量どころか増えているではないか!あれだけ武陵源の山中を連日歩き回りカロリーを消費したはずなのに!どうしたことか???

 これでは均整の取れた身体で戻ってくるのを待っている女房、友人、知人に合わせる顔がない! 今日の午前の自由行動は徹底して歩こうと思い決めた。
 まず昨日、長沙入りしたときバスの車窓から見えた「日系ショッピングセンターの平和堂」まで歩いて行くとしたらどれだけ距離があるか地図上でチェックすると、ホテルから5kmほどである、歩いて片道1時間ほどだ。 これなら往復でも10kmである、「平和堂」があるあたりが、長沙で一番の繁華街のようである。            結婚式貸衣装、記念写真の青空ショップ
 「平和堂」まで歩き、周辺の繁華街をブラつき戻ってくるのに3時間、これだとちょうど集合時間の12時になるだろう。この散策プランでいこうと決めた。


 チェックアウトは正午12時までOKとなっている。 荷物はそのまま部屋に置き、身軽にショルダーバックを肩にかけ、9時前にはホテルの部屋を出た。
 TVの天気予報では今日の長沙の最高気温が30度になっている。 10月も中旬なのに暑い1日になりそうだ。
 地図を片手にまず、長沙駅からまっすぐ東西にはしるメイン大通りである「五一大街」に出ることにした。
 この主要道路にホテルやレストラン、店な     日曜午前10時ごろの長沙の繁華街
どが並んでおり、この五一路をまっすぐ西に向かって5キロほど歩くと目的の日系ショッピングセンター「平和堂」があるはずだ。
 すでに気温が上がりだした五一大街をひたすら歩く!路の両脇は再開発が終わり高層ビルやマンションが林立している。
 6年前に来た時の面影を探したがどこにも残っていない。とにかく中国の工事は人海戦術でやってしまうから超早い。


 だらだら歩きでは効果的にエネルギーを消化されない! 手を振り一定のリズムで足早に歩くこと30分、汗が吹き出てきた。路上では結婚式の記念撮影を受け付ける青空ショップがあちこちで店を開いている。        関西を中心に店舗展開する平和堂の長沙店
 それにしても暑い!バックからタオルを取り出し、片手に地図、片手にタオルを持ち、汗を拭いながら更に歩くこと30分、やっと目的の「平和堂」が見えてきた。
 一帯は長沙のショッピング街になっており、日曜日でもあるせいかすでに大勢の若者が闊歩している。
 
 時刻は午前10時である、開店したばかりの平和堂の店内に入った。1階は化粧品や婦人用品の専門店街、2階から上が紳士・家庭用品の売り場で基本的にデパート様式になっている。 店内レイアウトや商品構成は日本とほとんど変わらないのだが、日本に比べて店員の数がやたら多い!日本の3倍   平和堂地階のスーパー、日本とかわらない
はいるだろう。
 しかし、なぜ滋賀県を中心に関西エリアで総合スーパーの店舗展開している「平和堂」が、中国内陸部のローカル都市といってもよい長沙市に出店したのだろう?。
 
 開店したばかり時間にもかかわらず若者がどんどん入ってくる!善戦しているようだ。同じ日本人としてうれしいではないか。
 地階に降りてみると、日本のヨーカ堂やダイエーなどのスーパーではないかと見間違うぐらいのスーパーマーケットが出現した。 
 中国としてはめずらしく明るい店内にレジ台がずらりと並んでいる。 ただこの時間帯では食品を買う人が少ないせいなのか、1,2階の売り場にくらべ客が閑散としているのが気になる。 中に足を踏み入れると、青果、精肉、水産コーナーと日本と変わらぬレイアウトになっている。さすが日系だけあって日本のノウハウを全て採用しているようだ。
 
 店内一番奥の水産コーナーに来ると何と!平台に魚を並べた対面販売コーナーがあるではないか! 中国のスーパーで魚を取り扱いしている自体が非情に珍しいのに、日本でも最近は個人商店以外見かけなくなった「鮮魚の対面販売」をしているのである。

 平台のむこうに3名の女性店員が立ち並び魚をさばいている。
 30回を超える中国入りで初めて見る場面である! めずらしいのでカメラを取り出しシャッターを押そうとしたら、私の挙動を密かに監視していた男性ガードマンが飛んできた。 中国語で非常な剣幕で怒鳴りだした!早口で大声を上げている。 これはマズイことになったと思い、とぼけることにした! わざと日本語で「私は日本人です、中国語聞いても解りません!」と言うや、一瞬ガードマンが息を呑んだ。外国人だと気づいたようで、困ったような顔をしてカメラを指差し英語で「NO!NO」と言うではないか。 何とかとぼけてガードマンをやりすごし店外に出ることにした。
                                  平和堂近くの歩行者天国

 街頭は益々若者達で溢れ出した!さまざまな専門店やデパートが軒を連ねている。
 デパート前の通りに靴磨きがひまそうに客待ちしてる。中国に来てずいぶん歩き回り、革のウオーキングシューズも汚れてしまっている。 無言で靴磨きの椅子に座り片足を台の上に乗せた!中年のオバちゃん、手際よくあっという間にピカピカにした。 幾らだ?と聞くと「1元 15円」と言うでないか!メチャ安い、安すぎるぐらいだ。
ぶらぶら歩みを進めると歩行者天国に出た。
 突然中年男が声をかけてきた!何事だと立ちどまると、その男ポケットから腕時計を取り出した。さりげなく見ると何と超高級腕時計の「ローレックス」でないか!勿論粗雑なコピー品に決まってる!何しろ世界に名だたる偽物王国だ。

相手にせず「不要 ブーヤオ!」と言いつつ、首を振り立ち去ろうとするのだが、しつこく80元(1200円)にするから買えと言いながら、私のうしろを着いてくる。 完全無視でデパートに飛び込んだらやっとあきらめ去っていった。
                                歩行者天国近くの日本食レストラン

 デパート内を一巡し歩行者天国に戻り交差点手前まで来ると何と!大きな日本語の「火の国ラーメン」看板を掲げた店があるではないか!
 玄関先に行くと目立つ看板のせいなのか、待ち合わせ場所としてよく利用されているようで、若者がたむろしている。店内を覗いてみると看板はラーメン屋だが、日本料理店で牛丼から寿司まで何でもあるようだ。
 
 時計を見るとすでに11時を過ぎている。ホテルに戻りチェックアウトを済ませ、12時までにロビーに集合せねばならぬ。これからホテルまで歩くと1時間はかかる、ヤバイことに間に合わない! 当初計画を変更してタクシーに飛び乗った。 ホテル出発時、今日の自由行動は徹底して歩き、美しい体型になるんだという固い決意はどこかえ消し飛んでしまった。
 自分ながら意思の弱いのには呆れるばかりだ。
タクシーに乗ったが、交通渋滞が始まっておりホテルに着くと11時40分になってしまった。


 自由行動を終えた私達を乗せたバスは「湖南省博        湖南省博物館
物館
」へむかって出発した。すでに昼食時間となっているが先に博物館見学をすると言う。昼食は午後3時近くになるとのことだ。
 間もなく巨大な建物の博物館に着いた。この「湖南省博物館」を有名にさせている物がある、世界を驚かせた古代の発掘物が陳列されているのである。
 それは、今から30年ほど前、長沙近郊の馬王推郷の古墳で発掘が行われた。
 発掘調査がすすむとそれは2100年以上昔の「前漢時代の墓」と判明したのだが、ここで世界中の人々を驚かせた。 中から約3000点の副葬品と保存状態が非常によい「女性の遺体」が出てきたのだ。     2100年前の女性遺体
 その遺体は、四肢が完全に残っているばかりか、皮膚には弾力が残っていて関節が動くほどだったのである。
日本の新聞にも写真入で大きくニュース掲載もされ、古代史ファンをびっくりさせ。

 その女性遺体(長沙国総理夫人)がさまざまな古代の副葬品とともに展示公開されているのだ。 この博物館には以前にも一度きているのだが、いつの間にか新築され巨大な博物館に生まれ変わっている。
 
 ガイドの案内と共に各展示室を見て歩くのだが、日曜日ということもあり、黒山のような見学者で身動きがとれぬほどである。
 最初はガイドの後ろを着いて歩いていたが、以前にも見学したこともあり途中で飽きてきた。
 添乗員のY女史にお願いして、各自が館内を自由に見学し午後2時半に出口に集合ということになった。 私は足早に各展示ルームを見て歩くと館の外に出ることにした。

 秋なのに長沙の午後の暑い光が降り注いだ!時刻は13時半で集合時間までまだ1時間もある。 そういえば日本え郵送する「絵葉書き」がバックの中に入っているのを忘れていた、この2日間バックに入ったままである。 博物館の敷地から商店街が軒を連ねる大通りに出て、緑色の郵便ポストを探して歩き出した。         ぞくぞくと学生達が博物館前に並びだした


 5分ほど歩いた街角にポストを発見し投函したのだが、すぐそばの街頭で焼いも売りがいい匂いを発散させている。
すでに14時近いのにまだ昼食前で腹がへっていたので、ワゴンから大き目の1個を取り上げ値段を聞くと1.8元(27円)である。
 いつも思うのだが中国の食料品は本当にメチャ安い。立ち食いしながら博物館入り口脇の駐車場に戻り、縁石に腰を下ろしてパクパク口を動かしていると、おんぼろバスが次々と入ってきた。 バスから同じポロシャツを着た学生達が続々と降り立ち博物館の入り口に向かって並びだした。
 今日は日曜日である!学校は休みのはずだが引率の教師らしき人もいる。ポロシャツの背中の文字を見ると専門学校名が書いてある。全校生の課外学習なのだろうか?半端な数の学生でない、順番待ちしながら次々と館内に入館して行く。 教育熱心な中国の一コマをかいま見て、日本の学生達の現状を思うと、あまりにもの差に・・・・・
                                   空港近くの食堂街ここで昼食

 2時30分の集合時間がきた、私達を乗せたバスは長沙空港近くの昼食レストランにむかって走り出し、やがて大きな土家菜(トウチャ族の郷土料理)の看板を掲げた食堂が軒を連ねる一角にバスは停まった。
 レストランというよりは食堂である。時刻は間もなく午後3時になろうとしており店内には客の一人もいない中、腹を空かせた私達はすでに用意されていた料理にがっついた。

 ところがである何と!私達が食事をしている室内の片隅で店の服務員が麻雀を始めだした。これは冗談ではない本当の話なのだ。 唖然とする私達を尻目に平然と遊びに高じることができる彼女達の精 私達が食事をしている室内で始め出した
神構造に畏敬の念が湧いてくる。
 嫌になるぐらいあちこちで麻雀に高じる人たちを見てきたが、今度は客がいる同じ店内でしかも服務員が始め出したのである!日本なら精神病院行きものだ。


 食事を終えバスに乗り込む私達を見送りもせず、麻雀を続ける彼女達を尻目にバスは長沙空港にむかった。 10分ほどで空港に着いた。18時40分発杭州行きの便に乗るのだが、フライトまで2時間半も時間がある。
  添乗員が搭乗手続きしている間、空港ロビーで1時間の自由行動となった。 ロビーで自由行動といっても土産物売店が2店ほどあるだけで、トイレを済ますとすることがなくなってしまった。 搭乗待合室と違い座る椅子ももないので休息もできない、することも無くブラブラしてると、ロビーの隅に電動マッサージ器が5台ほど設置されているコーナーが目に入った。
 コインを入れると動き出す有料マッサージ器なのだが、客が誰もいない。
 私はこれに座って集合時間まで休息していることにした。 コインを投入せずちゃっかり座ってぼんやりロビーを眺めていると、若い学生のような小姐が近づいてきて言った!勿論中国語でだ「このマッサージ器は有料で10元かかります」。 それを聞き、いまさら立ち上がるのもおっくうだ!。 私は小姐に言った!「こまかい金が無い!ただ座っているだけだ」。
 すると、ここで初めて私の中国語のイントネーションで外国人と気づいたようで、「どこの国の人?」と聞いてきた。
                                     夕暮れの長沙空港

 私が「日本人だ!」と応えると、小姐「ちょっと待っててください」と言うや!私の前から立ち去りロビー奥の売店に駆け込んでいった。
 すると手に手帳とボールペンを持って戻ってくるや、手帳を開き開口一番、言った!「中国語の「ニーハオ」は日本語でどのように言いますか?」 日本語の挨拶用語を教えろというのである。 私が「コンニチワ」と発音してやると復唱しながら手帳にローマ字でメモをとるではないか!
 何度か復唱する彼女に私がOKを出してやると、今度は「謝々・シエシエ」は何と言うと聞いてくる。私が「アリガトウ」と答えてやる。こんなやりとりが空港のマッサージコーナーで始まった!若い小姐もう商売そっちのけである。

 ここ数年、中国に来るたびに必ずといっていいほど、日本語を教えてほしいという中国人にぶつかるようになった。この小姐もたまに客として来る日本人のために日本語を学ぼうとするのか?それとも自己啓発のための学習なのか?いずれにしても向上心あふれる姿に感動を覚える。
 
 やがてフライト時間が来た、私達は中国六大古都の一つであり、かって東方見聞録を記した「マルコポーロ」が滞在し、彼が地球上で最も美しい街と賞した「杭州」にむけ飛び発った。
 杭州には定刻どおり19時40分に到着し、あわただしくバスで夕食会場の杭州市内中心部レストランにむかって走り出した。              中国としてはめずらしいピカピカの食器

 市内中心部まで走ること1時間あまり、21時にレストランに着き遅い夕食となった。 さすが浙江省の省都、人口600万人を誇り、世界中から観光客が集まる大都会のレストランだ。
 中国に何度となく訪れている私でもびっくりするくらい、明るく清潔な店内にワックスで磨いたかのようなピカピカの食器。出される料理も洗練された味付けで、さっぱりしていて食べやすい。勿論ビールの冷え具合も抜群だ。
 とくに海鮮チャーハンは日本でも食べたことのないくらい日本人向けの味付けでメチャ美味く、大皿に盛られたチャーハンがあっという間に空になってしまった。
 全員から美味しい!足りない!もっと食べたい!という声が上がった。中国人ガイドと交渉し別途追加料金を払うことで、各テーブルにもう一度大皿に盛られたチャーハンが運ばれてきた。

時刻は22時を過ぎようとしている。杭州のホテルのチェックインはかなり遅くなりそうだ。


旅その7 「マルコポーロが世界で一番美しい街と称えた杭州〜黄山市屯渓へ」へ つづく




     ( 旅 6日目の出費)
        
      ミネラルウォーター 1.5元 × 2本   = 3元   (45円)
      長沙市内地図     4元       =4元  (60円)
      靴磨き         1元          = 1元   (15円)
      長沙市内タクシー代  8.8元      = 8.8元 (132円)
      焼いも 大1本    1.8元       =1.8元  (27円)
      夕食ビール     20元 ×1本   =20元  (300円)
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                   合計        38.6元 (579円)
   
                (6日間の累計出費 462.9元 (6,944円))