その1 旅の拠点張家界市の朝・世界遺産「武陵源」張家界森林公園を歩く

世界遺産 中国仙境・山水画街道を行く


 
(旅のプロローグ)                 今回の仙境巡りの旅で訪れたエリア                
 またしても中国の旅に出かけることになってしまった。きっかけは毎月定期的に東京のY旅行社から送られてくる世界各地の旅行ツアーのガイドブックを見ている内に、とても興味を引く中国ツアーに目が釘付けになってしまった。
 山水画(水墨画)のような世界が広がる中国の仙境といわれる4箇所の風景区(いずれも世界遺産に登録)を10月上旬〜下旬まで15日間かけて歩き回るという内容のツアーにである。
 ページのツアータイトルの下には、中国には、まるで仙人が住まうような幽玄の世界がいくつもある。 「奇岩珍石、雲海雪天の仙境地で古来から水墨画に描かれた、世界遺産の黄山」。 「奇峰怪石、幽谷清水の山水の絶景、世界遺産の張家界、武陵源」。 「ウーロン茶の故里、九曲の渓流と奇岩奇峰が織りなす山水の絶景、世界遺産の武夷山」。 これらを一挙に訪れてしまう贅沢極まりない旅と書かれている。
                         
                                       今回の旅で訪れる世界遺産の黄山

 このツアーを企画している東京のY旅行社との出会いは、5年ほど前にインターネットの検索でユニークな中国ツアーがないか探していたところ、大手旅行会社では絶対に実施しないような「こだわりの中国ツアー」を数多く紹介しているWebサイトを発見し、その中から、ある一つのツアーに参加したのが、このY旅行社との付き合いの始まりだった。
 それ以来、欠かすことなく毎月、世界中の豊富なツアーが満載された月刊誌がY旅行社から自宅に届くようになったのである。
 2年前にはNPO法人の会員仲間3人と、このY旅行社のツアーガイドブックの中から「三国志の史跡めぐりの旅」15日間コースにも参加して、旅の様子をこのHPにアップしたところでもある。                                今回の旅で訪れる世界遺産の武陵源、「張家界」

 この十数年さまざまな旅行会社の中国ツアーに参加し旅行回数も30数回を数えるに至ったが、充実した満足感を味わえた旅行会社は「W航空サービス」と、この「Y旅行社」の2社だけである。
 宣伝料を貰っているわけではないが、この2社の旅に対する企業コンセプトがすばらしい。
 一例を挙げると「バックリベート稼ぎのための土産店には立ち寄らない」「自由行動と称して別途料金が必要なオプショナルツアーをしない」「入出国書類作成料・航空燃料付加運賃・海外空港利用税などは徴収しない」等々、数え上げればきりが無い。何よりもありがたいのは、一人旅が多い私にとって、「一人参加申し込みしても割り増し追加料金を払う必要がない」ことで、顧客本位の質の高いツアーを提供してくれるのである。にもかかわらずリーズナブルなツアーツアー料金で、私のお気に入りY旅行社なのだ。                                                              
                                                       今回の旅で訪れる世界遺産の武夷山

 旅の期間中うんざりするぐらい、バックリベート稼ぎに土産物店に強制連行し、更にはいろんな名目をつけてツアー代金に上別途費用を上乗せ徴収し、最終的にはそれほど安くないツアー代金なのに、毎日のように新聞等で激安を売り物にツアー募集している阪急交通社とは段違いなのである。
 もとへ、前置きが長くなってしまった!今回参加する「仙境巡り」の旅行コースでは、黄山を含め何箇所かは過去の旅で、すでに訪問しているのだが、今回は山水画の世界を徹底的にウオーキングするという魅力にひかれてしまった!ダイエット効果抜群で旅を終えて、札幌に帰って来るころには、腹がへっこみ美しい体型になっていることだろう!。

 今回の旅行日数は中国国内は15日間だが、東京発着なので都内に前後泊しなければならないのに加え、東京の友人との飲み会にも出席するので、日本国内の3日間を加え全旅行日数は18日間になってしまった。

 
 大型の旅行ケースに18日分の着替え、「カップ天ぷらそば」に「魚缶詰」、更にペットボトル2本に詰め替えた「晩酌用のウイスキー」などを詰め込もうとしたが入りきらない、リュックサックを持ってきてこれにも詰め込んだ。かなりの荷物になってしまった。
 旅行ケースの重量を量ってみると27キロにもなっている。航空会社の荷物の制限重量は20キロまでで、オーバーすると追加料金を請求されることもあるということなので、何度も出し入れ詰め替えをしたが、何度、量り直しても24キロまでしか下がらない。あきらめた!4キロほど重量オーバーだが航空会社のお目こぼしに期待して荷造りを終え旅の準備は整った。

(旅の始まり、成田空港〜日航機内)


 前日から泊まっていた成田空港敷地内にあるレストハウスで朝をむかえた。チェックアウトを7時に済ませ、ホテルの送迎バスに乗り込み成田空港第2ターミナルにむかった。5〜6分でターミナル玄関前にバスは到着する。3階出発ロビーでの集合時間は午前8時になっているのだが、まだかなり時間がある、ロビー2階のコンビニでおにぎりを買い休息場所で朝食をとるとちょうどよい時間となった。
 背中にリュックを背負い、大型のキャスター付き旅行ケースを曳きながら3階出発ロビーの指定場所に行くと、Y旅行社の目印を掲げた25〜26歳ぐらいにしか見えない若い添乗員のY女史が佇んでいた。 ツアーの参加者名簿をもらうと、総勢15名(女性6名男性9名)で夫婦が3組いる。さりげなく参加者を観察すると現役世代は一人もいないようで、私を除いて全員が65歳〜75歳くらいのようだ。
 中国への乗り入れは日本航空である。Y女史より航空券をもらい日本航空カウンターへ搭乗手続きにむかった。久しぶりの日本航空利用だ! 手続きカウンターで航空券を見せ、重量オーバーの旅行ケースを恐る恐る重量計の上に乗せると、目の前の表示計は24.2キロの重量が表示された。
 カウンター職員が「重量オーバーです!追加料金をお支払い下さい!」と言うのではないかと胸をドキドキさせながら、職員の顔を窺い見ると何と!うれしいことに「貴重品が入っておりませんか?」の一言で何事もないように荷物を流し搭乗券を渡してくれた。日本航空は太っ腹だ!よかったぁ〜。


 定刻の10時に「15日間に渡る中国仙境巡りの旅」最初の目的地、中国南部広東省の省都広州にむけ飛び立った。 今日の予定は広州で入国手続きして市内観光後、再び広州空港から20時20分発のフライトで湖南省の張家界市にむかうのである。   日航機内サービス                        
 座席の目の前にある液晶TVのメニューをいじくりまわしているうちに機内サービスが始まった。
 久しぶりの日本航空でのフライトである。ここ数回、中国へのフライトは中国北方航空、中国南方航空など中国の航空会社ばかりだったので、日本航空に乗ると段違いでサーービスの快適さが実感できる。
 客室乗務員の接客態度や飲食物の機内サービスに歴然とした差があるのである。まず客室乗務員の笑顔が違う!中国側は何を頼んでも問いかけても無表情で応対するのに対し、日航は自然な笑顔をふりまきながらイヤな顔一つせず応対してくれる。日航側は中国側に比べ高年齢の客室乗務員が多いが、そのハンディは笑顔と品格で補って余りある、しかも色白で色っぽい!。


 昼食前の飲み物サービスのワゴンが私の座席近くに来た!大手3社の缶ビールが全て揃っている!さすがだ! 私はサッポロビールのエビスビールとアサヒのプレミアムビール2缶を同時に注文した。大半の人が控え目に1缶しか注文しない中、私だけ「2缶下さい」と平然と乗務員に言った!。にっこり笑顔で平然と2缶渡してくれるではないか!冷え具合も抜群だ!。これが中国航空だとアルコール度数の低い地ビール1種類しかなくて、おまけに冷やしていない温いビールを渡される。
 昼食サービスは2種類のメニューからフィッシュを選び、さらに飲み物の追加として白ワインのミニ瓶を、これまた2本まとめて貰った。
 わずか4時間ほどの短距離フライトなのに全てのアルコール類を用意して、何度でもおかわりにイヤな顔ひとつせず応じてくれるのである。
 食事も申し分なしにおいしい!私の胸に感動が広がった!私はすぐ何にでも感激してしまう性分である。 旅を終え帰国したら旅行記をホームページにアップする時、日本航空の宣伝をしてやろうと心に決めた。
 今日本航空は赤字決算で苦戦している、これだけの機内サービスをしていたら赤字になるのは無理もない! 何とかこのサービスを維持しながらがんばってほしいものだ。


(旅の始まり、広州到着〜張家界)


 食事を終え、ほろ酔い気分で座席のTVで映画を見ているうちに午後1時半には広州空港に着いた。この広州で中国への入国手続きして市内観光にむかうべく入国ゲートに並んだのだが、旅の仲間に迷惑をかける事態となってしまった。 
 各自がそれぞれ入国ゲートで検閲を受けたあと、旅行荷物受け取りターンテーブル前に再集合とのことだったので、私達はそれぞれ黒山のようにごった返す入国ゲートに並んだ。
 広州空港は中国の南玄関口である、国際便がつぎつぎ到着して入国ゲートはつねに黒山のような人である。 私は十数列あるゲートの中から一番奥の列で並んでいる人数の比較的少ない列に並んだのだが、これが運の悪いことに旅仲間に迷惑をかけることになってしまった。

 順調に検閲が進み私の列の前が残り十数名になったところで進行がストップしてしまった。顔中ひげだらけの中東系らしき3人組の男のところで検査官が入国ストップをかけてしまったのだ。 
 別な検査官もやってきて3名の検査官がパスポートを厳密に検査しながら聴き取りしている。私の並んだゲートだけが遅々として進まなくなってしまった!20分ほども待ったが流れは止まったままである。
 他のゲートの列は順調に流れていくではないか!私は焦った!。さらに私の列の目の前には東南アジア系らしき女性が二人並んでいる。なんとなくこれも時間がかかりそうだ!
思い切って、流れがスムーズな隣りの列に並び替わることにして、あと十数名までに進んだ列を抜け、隣りの列の最後尾に並び替えた。 
                                広州の西漢南越王墓博物館

 何と!これが間違いの元だった!列を並び替えた途端!あれほど動かなかった元の列が、流れ出したのである。あわてたがもう遅い!いまさら元の列に戻るわけにもいかない。
 イラつく気持ちを抑え、最後尾から何とか半分ぐらい進んだところで何と!またしても流れがストップしてしまった。今度は列の前方にいる東南アジア系グループの検閲にイライラするくらい時間をかけているのである。
 くやしいことに他の列の欧米人や日本人はフリーパスに近いくらいのスピードで、どんどん検閲を終え入国していくではないか!なぜ私が並ぶ列だけが運の悪いことに入国検閲に時間のかかる国の人たちが多いのだ!。 焦った!私の旅仲間14名はとっくにゲートを抜けて行ってしまった。

 流れは遅々として進まない!もうとっくに1時間以上並んでいる。疲れても来た。添乗員のY女史が何度もゲートの向こう側に様子を見に来るのだが、私の並んだ列だけが流れがほとんど進まないのである。
 再度、列を並び替わる勇気も消えてしまった!ひたすら待つこと1時間40分!やっと入国できた。 旅行ケース受け取りのターンテーブル前では、1時間半近くも私を待っていた旅仲間が、冷たい視線を私に送ってきた。「何をトロイことをしているのだ!」というような視線だ。
 私のせいで予定時間が2時間近く遅れてしまったため、広州市内観光のスケジュールを変更しなければならなくなった!。
                           2200年ほど昔の前漢時代・南越国の石室王墓
 市内観光に向かうバスの中で中国側スルーガイドの自己紹介が始まった!。
 中国側総元請け旅行会社の「西安国際旅行社」日本部の李さんで40代前半の女性である。
 これから15日間ずっと私達と行動を共にするのだが、日本語がかなり片言で少々こころもとない。
 さらに広州の現地ガイドも乗り込み、車窓から見える広東省の省都人口700万人を超える広州市内の説明を始めた。
 今日の広州の気温は30度ということで街行く人々は皆半袖である。

 午後4時も過ぎたころ市内中心部の「博物館」玄関前にバスは横付けされた。 20年ほど前、建築工事中偶然にも2200年ほど昔の前漢時代の南越国の石室王墓が発見され、中からは1000点以上もの埋葬品が出土した。この墓と出土品を展示しているのが、この「西漢南越王墓博物館」なのである。展示品の中でも最も有名なのが玉衣で、1191枚の玉片と赤いシルクの糸で作られた鎧のような衣で石室に埋葬された王の全身がこれで覆われていた。
                             発掘された王の前身が玉衣で覆われていた
1時間ほどかけて日本語ぺらぺらの館員の説明で石室と展示品を見終えたところで、館員が例によって土産物を陳列している部屋に私達を案内をしようとした。
 すると添乗員のY女史が毅然として館員にむかって言った!「土産物コーナーは見る必要ありません、トイレを使わせていただいたらすぐ出発します!」何と!すばらしい言葉でないか!Y旅行社の基本理念通り、土産物店での無駄な時間つぶしとリベート稼ぎを毅然とした態度で断っているのである。
 これなら年齢は若いが15日間安心して全てを任せられる。
 時刻も17時半を過ぎ、バスは博物館から夕食会場のレストランにむかった。
 私は席につくや、真っ先にレストランの小姐に聞いた!「冷たいビールあるか?」「あります!」という答えに値段も聞かず1本持って来いと注文してしまった。

 ビールが来た!触ってみるとキッチリ冷えているではないか!安心した、さすが広州人口700万の大都会だけある。 乾杯で会食が始まったところで広州の現地ガイドがビール代金の請求に席に来た。
 値段を聞くと1本25元(日本円換算だと375円)だと言うではないか!おかしい異常に高いビール代金だ! 私は現地ガイドに中国で言った!「こんな高いビール代金おかしいではないか!飲み物のメニュー表を持ってきて見せろ」と!。 すると日本人の私から突然中国語が飛び出し、しかもメニュー表を見せろと言い出したから、現地ガイドの表情が驚きと困惑に変わり慌てだした。

 何と!ガイドが困惑の表情でメニュー表が無いと言うではないか! 私が追打ちをかけ「メニュー表を置いていないレストランなんかあるわけない!早く持って来い!」と言うと!彼は苦しまぎれに言った!「メニュー表のビールの料金は1本10元(150円)と書かれているが、サービス料と税金がかかるので1本25元になるのです」??・・・・(中国のレストランに日本のような飲食税なんて存在しない)
 ピンハネがバレてしまい苦しまぎれに下手な言い訳を言い出した!。旅仲間がやりとりを見ているが、中国語で会話しているので、何をもめているのだろうという表情をしている。
 真っ赤な顔をして苦しい答弁をするガイドを見ていて、かわいそうになってきた!「納得しないが分かった!」と、ひとこと言ってやると、ほっとしたした表情で自分の席へ戻っていった。


 夕食のあと広州20時20分発のフライトで世界遺産「武陵源」がある張家界市へむかうのだが、時間がたっぷりあるということで夕食をしながら、ツアー参加者の自己紹介となった。
 聞いていると、私など足元にも及ばないほど世界中旅している人ばかりだ。 60歳代後半の共に教諭だったという夫婦は、1週間前にシルクロードから帰ってきたばかりで、今回の「仙境巡りの旅」が終えるとアフリカのチェニジアに行くことが、すでに決まっていると言う。 何と、夫婦二人揃っての海外旅行は50回を越え、世界63カ国を旅したと、平然述べるではないか。
 夫婦で学校教諭を定年退職すると世界中旅ができるらしい! 民間企業出身者からみれば、何ともうらやましい話ではないか! 私達の税金で優雅に1年に5〜6回ペースで海外旅行に出かけている教員夫婦に、うらやましさを通り越して、嫉妬の気持ちが湧いてくる。                            
                                  夜の帳に包まれる張家界空港

 夕食も終え次の目的地「張家界市」にむけ、再び広州飛行場から飛び立った。機内は相変わらずの超満員で定刻より1時間ほど遅れ張家界市に到着した。
バスで市内中心部ホテルにチェックインすると午後11時を過ぎている。ホテル裏の大通りは夜店街になっており大音響の音楽が部屋の中にまで流れ込んでくる中、シャワーを浴び眠りに着いたら12時を過ぎていた。


   旅その2 「世界遺産・武陵源を歩く」へ つづく


これから15日間、中国国内でどれだけの小遣いを使ったかメモを取ることにしてみた。

             (旅の初日の出費)

      夕食レストランでのビール代金    1本25元(375円)
      空港内売店でのミネラルウオーター 1本10元(150円)
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                           合計  35元(525円)