仕組まれた暴利の土産物店
昨日の広元市の繁華街での買い物を日本の物価と比較すると、高い物で五分の一安い物で十分の一、平均すると日本の物価の七分の一ぐらいだろう。
この価格差を利用して中国の日本人相手の観光売店業者は、日本人に対して物品等の販売を現地価格(中国人が日常買う価格を隠して)の5倍ぐらいに吹っかけて売るのが当たり前になってしまっている。
これでは売店業者の丸儲けではないかと思うかもしれない、ところが、利益の半分以上は中国側の旅行社と添乗員(ガイド)にリベートとして支払わされる仕組みになっているのだ。
以前、中国で一番有名な観光地「桂林」に何度か訪れたとき、親しくなった日本人相手のみやげ店の店主と、酒を飲みながら歓談する機会があった。その時の雑談で店主がぼやいて言ったのである「”俺の店では売り上げの6割を旅行会社とガイドに払っている”」「”だからその分土産品に利益を上乗せして売らないと赤字になってしまう”」と!
更に店主が言うことには、「中国の旅行社のガイドの大半は、旅行社から給料を貰っていないよ!」「基本給なしの歩合給が大半さ!」と平然と言った。
観光売店からガイドに支払われるバックマージンが彼らの給料代わりの収入なのだ!だから中国人ガイドは必死になって、何箇所も観光売店に日本人を連れ込もうとするのである。
日本人が買えば買うほどガイドの給与収入が増えるというのである。こんな話を聞かされながら飲んだことがある。
こんな経験から、私が初めて中国に行く人には、観光地売店、レストランの臨時売店、日本語を話す店員のいる売店等での買い物は、三分の一の値切り交渉から始めて、最低でも半額にさせて買いなさいと、アドバイスするようにしている。
日本人が中国で騙されて買う代表的な物品は、掛け軸・漢方薬・お茶・シルク製品などで、私も今思うと、最初の数回の旅行では恥ずかしいぐらい掛け軸を何本も騙されて買った。 友人親戚等の新築祝いのプレゼントに使うべく、1本2〜3万円で買った手書きの山水画を何本も肩に掛けて、意気揚々と日本に帰ったが、よく調べてみると何と!全て印刷品でせいぜい価値は2000円ぐらいと言われ愕然としたことがあった。 みやげ物を買いたい人は街中に出てデパートやスーパーで買うのが利口な買い方だ!言葉なんて出来なくても身振り手振りで十分通じるので心配ない。
蜀の桟道「名月峡古桟道」
出発時間の朝8時となった、ホテル前のスーパーで1本1元(13円)のミネラルウオーターを買うとバスに乗り込んだ! 今日の予定は300キロほど走り四川省を出て陝西省の漢中市まで移動するコースだ。
その途中で寄り道しながら、最初の観光は古代に四川省の成都と陝西省の長安を結ぶ道で、秦領山脈の深い渓谷に作られた「蜀の桟道」である。
その中でも最も険しい道だった「名月峡古桟道」の観光で、古代の人々はこの桟道をつたって旅をしたのである。
今から2000年も昔に断崖絶壁に穴を開け木材の支柱を差し込み作られた桟道が、風雨にさらされ朽ちた姿で今でも残っており、補修された部分の断崖の桟道を恐る恐る歩き、さらには崖下の川に降りて特別にチャーターした船から断崖の桟道を見上げるかたちで観光したが、垂直に近い崖に何十キロも続く桟道に先人の労苦がしのばれた。それにしても古代人はすごいことをしたものだ!
中国名物ニーハオトイレ
次の目的地に向けさらにバスを走らせていると、おんぼろトラックの荷台に中古のコンバインを積み、何十台もの車列で道路ふさぐ様にノロノロ走っている刈入れキャラバン隊がバスの前方に出現した。この車列を次々に追い越すと、バスは間もなくトイレ休息のためガソリンスタンド脇の道路で停車した。
すると!東京から参加している同じ会社の同僚3人組(三国志おたく、皆20才代)の一人K君が、われ先にとバスから飛び降り、日本から持参してきているトイレットロール紙を小脇に抱えると(中国のトイレット紙は粗悪品が多くすぐ破れる、更にホテル以外のレストランや公衆トイレには紙が無い、そんな事情でトイレットロール紙を持参してきている!)スタンド脇の公衆トイレに駆け込んで行った。
我々もK君につづきトイレに行くべくバスを降りた、そこには先ほど追い越したコンバイン部隊の先着隊がずらりと道端に停車している。トラック荷台のコンバインを見るとこれが何と!全部日本製ではないか!「井関」「クボタ」「ヤンマー」の商標が貼られている。
私達が公衆トイレに入っていくと、通路をはさんで左側が仕切り無しの壁に向い放尿する小便コーナー、右側が床にぽっかり穴の開いたドア無し大便コーナー、中国のどこにもある標準的で掃除がされていない極めて不衛生なトイレだ!(これに慣れなければ中国旅行は無理)
私が通路左側の壁に向って小便を済ませ、トイレを出ようと通路の方に振り返ると、何と先ほど、トイレットロールを手に持ちバスから一番先に飛び降り、トイレに駆け込んで行ったK君が、目のまん前の大便コーナーで尻を出してしゃがみこんでいる!
何しろドアそのもが無いのである!みごとに下半身丸見えである!しかも何と、私とバッチリ視線が合ってしまった!! 仕切りもドアもない大便トイレである。
あられもない姿にドギマギしてしまい笑うわけにもいかず、「お先に」と思わず頭を下げ礼をしたら、彼も私に視線を合わせ、腰を落としたまま恥ずかしそうに頭を下げた、なにもトイレで挨拶する必要もないのだが!
危ない中国のアイスキャンデー
トイレをすませ柔軟体操をしてバスに戻り席に着いてると、先ほどトイレで堂々と尻を出して大便していたK君が、げっそりした青白い表情でバスに戻ってきた。
私が「先ほどは失礼、ところで、どうしたの?」と聞くと、彼は話し出した、昨日から下痢が始まり今日は特にひどい、ちょっとでも何か食べると、すぐ腹が鳴り出し便意が我慢できないと言う!中国に来て大便ではホテル以外のトイレは使いたくなかったが、それどころの話ではないと、切なそうに言うではないか! さらにK君が言った!「佐藤さんの忠告を聞けばよかった、たぶんアイスキャンデーが原因だと思う」と!
じつは一昨日、私はK君達「三国志オタク3人組」が街頭の露店で買ったアイスキャンデーを、立ち食いしているのを見て注意をしたのだった。 「中国のアイスキャンデーは生水を飲むのと同じで下痢をする可能性が高いよ!今まで僕も含めて何人も強烈な下痢に見舞われた人を見てきたよ!」 「危ないよ!」 この私の忠告に対し彼等は「イヤー大丈夫ですよ!僕たち人一倍胃腸は丈夫ですから」と答えながら、”このキャンデー結構いけるじゃないか”と話していたのだ! 私の忠告を完全無視である! 案の定、言った通りやられてしまったのだ! 他の二人もK君ほどでないが腹の調子がすぐれないと言っている。 K君はこのあとも下痢が続き二日間絶食に近い状態でかなり痩せてしまい、あらためて中国のアイスキャンデーの恐ろしさを実感したのだ!