三国志の英雄関羽を祀った関帝廟
古都洛陽市の四星ホテル牡丹城賓館で快適な旅行１１日目の朝をむかえた。この洛陽近郊には中国３大石窟である龍門石窟があるが、残念ながらこの旅では見学コースに入っていない。
ホテルを出て一番目の見学は「洛陽博物館」である、バスが博物館の庭に到着するとそこには、なぜかきび団子で有名な日本の桃太郎の大きな像があった。
ガイドの説明では日本の岡山市とこの洛陽市は姉妹提携都市を結んでおり、その縁で桃太郎の故郷である岡山市から寄贈されたとのことだった。
館内に入り、史跡の宝庫である河南省で発掘された、青銅器と唐三彩の陶磁器をじっくり時間をかけて見学後、我々皆が楽しみにしていた今日のハイライト「関帝廟」の見学にむかった。
「関帝廟」とは三国志に登場する蜀の英傑「関羽雲長」の首が埋葬されているところなのだ！
三国志に登場する数多くの武将の中でも、関羽の一途な忠義心は多くの人々の心をとらえ、信用ができると人ということから今日では、商売繁盛の神として庶民信仰されるようになったのだ。
中国各地はもとより東南アジアの華僑の住んでいる街や日本の中華街にも多くの関羽を祀った「関帝廟」があるが、この洛陽の関林が元祖・総本山なのである。
関羽のトレードマークの大きなな青龍刀が、掲げられた山門をくぐり、儀門〜拝殿〜大殿へと入ると、巨大な関羽の塑像を真ん中にして左右に周倉・関平などの側近武将が並んでいる、さらに奥に進み関羽の首を埋葬した小山のような首塚にお参りして午前中の観光は終えた。
洛陽から南陽へのバス車中で
昼食後、４００キロ先の諸葛孔明ゆかりの地である「南陽市」まで長距離移動すべくバスに乗り込んだ！ 昨日の走行が５００キロだったので、今日の走行を含めると９００キロも走ったことになる、中国に来てからすでに走行距離は３０００キロを超えただろう！ずいぶん走ったものだ！
バスは昨日までの変化に富んだ黄土高原の風景から、単調な小麦畑が続く河南省の平原をひた走る。 バスの車内では同行のＯ氏はひたすら夢の世界、同じく同行のＭ氏は車外の単調な風景にあきたのか、東京から参加した都庁を定年退職した６０台後半の老夫婦と親しく、人生談義をしている。
なにげなく聞き耳を立ててみると、老夫婦の旦那が都庁での仕事は暇で毎日本ばかり読んでいたが、結構大きな額の退職金をもらったこと。
さらには老夫婦の旅自慢話になり、退職後は毎年１年に３回の海外旅行をしており、今回の旅行で３４回目の海外旅行となること。そんなことで世界中ほとんどの国に行った！この中国の旅が終わったらすぐ「イラン」に旅することが決まっている、というようなことを会話している。
地方公務員を定年退職した優雅な老夫婦の生活ぶりを、何気なく聞きながら、うらやましい気持ちを通り越して、少し嫉ましい複雑な感情が湧き上ってくる。
今夜はソーメンパーティだ！
夕方、やっとバスは南陽市内に入った。迷いながらやっとホテルに行く道に乗り入れた途端、バスの天井からガァガァーと大きな音が聞こえた！ 何と！電線がバスに覆いかぶさってきた！
今まで大型バスが通ったことのない道に乗り入れたため、バスの天井が低めに張られた電線を引っ掛け切断してしまったのだ！
バスに覆いかぶさった電線から、薄暗い夕闇に火花がパチパチ散り煙が上がる！バスはバックして切り離そうとするのだが電線がバスの天井の突起物に絡みつき、無理に動かそうとすると、とうとう付近の商店街の電灯が消え始めたではないか！ 商店からは人々が飛び出してきてバスを取り囲んだ！ しばらく前後にバスを動かし悪戦苦闘したがどうにもならず、私達はバスから降りるとスーツケースをガラガラ押しながらホテルまで歩き出した。
ホテルにチェックイン後、今日の夕食はこの三国志の旅を企画した日本側旅行社が、私達に対する最大の心遣いで、日本食の「冷やしソーメン」をご馳走してくれるパーティとなっている。
添乗員のＨ女子が日本出立時から旅行ケースに入れ、はるばる今日まで中国国内を持ち歩いてきた「揖保の糸ソーメン」と「桃屋のつゆ」を、ホテルの厨房を借りて彼女自ら茹でて私達にご馳走してくれるのだ！
彼女が厨房で２０人分の冷やしソーメンを作っている間、今夜はパーティということで盛り上がろうと、全員がビールで乾杯となったが、またしても温かいビールが出てきた！それまでの私達の賑やかな談笑が消え一瞬静寂がおとずれた！
この雰囲気を察知した私達の中国人添乗員が、突然レストランの店長を叱り出した！「なぜ冷たく冷やしたビールがないのか！」と文句を言ってるではないか！
これを聞いて、私はついに感情がプッツンしてしまった！ 中国人添乗員のところに行くと怒りをぶつけて彼に言った！。
「レストランは悪くない」「悪いのは君だ」！「今まで旅してきた各地のレストランで何度もこのような場面があった」「君が事前にレストランに電話で冷やしたビールを用意しておくようにと、一言いえばこのようなことがなくて済むことじゃないか」！「いままで何度もこのようなことがあったのに君は何の努力もしなっかた」！「君が持っている携帯を使って事前にレストランに冷やしておけと電話しようと思えばできるのに、なぜ電話をしないのだ？職務怠慢だ」！と怒りに任せて捲くし立てた。
しかし、私のきびしい叱りを受けても、この添乗員も私が知っている数多くの中国人同様に絶対に謝らない、どんなにミスを犯しても「すみません」の言葉が出てこないのだ！中国人特有の異常な自尊心の高さのせいなのか？私の叱りの言葉をだまって聞いているだけなのである。
中国語で「対不起」ドイブチィ、日本語で「すみません」と言う言葉があるが、私はこの１０年来数多くの中国人と付き合ったが、この「すみません」の言葉を聞いた事が一度もない！
こんなやりとりのあと、Ｈ女子がボールに入った「冷やしソーメン」を各テーブルに置き始めた。丁寧なことに、事前に凍らせておいたミネラルウォーターの氷までボールに入っていてキチンと冷えているではないか！ 私達全員から感動の歓声が上がる！何しろ連日３０度を超える天気の中を旅してきたのだ！冷たいソーメンは何よりもありがたくうれしい。
重たい乾麺を日本から今日まで持ち歩いてきたＨ女子に心から感謝だ。レストランの従業員や中国人客の好奇の視線をあびつつ、レストラン中に響き渡るズルズルの音を鳴らしなが温かいビールと冷たいソーメンでの南陽市の夜は過ぎた。