三国志街道を行く




貧しい黄土高原の景観

日本の京都・奈良市との姉妹都市である西安(長安)市内の観光を終えると、西安から東へ約500キロ離れた九つの古代王朝の都があった河南省の「洛陽」まで走ることになっている。
 かなりの長距離移動である!バスの運ちゃんを2名に増員し途中で交代しながら運転するということで、私達を乗せたバスは一路洛陽ににむけ高速道を走り出した!

 走り出して間もなく車窓の外は、黄土高原の貧しい農村風景と、黄色く赤茶けた禿げ山と、とうきび畑が延々と続くようになってきた。
 時たま小高い丘や丘陵の斜面に洞窟らしきものが点々と散見される!黄土地帯特有の「ヤオトン」といわれる住居だ! 乾いて硬く日干し煉瓦のようになった崖の斜面に横穴を掘り「洞窟住宅」にしているのだ! 夏涼しく冬暖かい特徴ある住居だが、いかにも貧しい感じがする。

まさか高速道路を自転車が走る?

 突 然、車窓から高速道路上に農民が延々としゃがみこんでいるのが目に入ってきた! しゃがみこんだ農民の前には「りんご」と「ざくろ」を上手にピラミッド型に積み上げ陳列し、高速道を走る車相手に商売をしているではないか!高速道路上で露店商売をしているではないか!勿論違法のはずだ。
 その農民の目の前をクラクションを鳴らしながら、車がびゅんびゅん通り過ぎて行く。なかには他の農民より少しでも売り上げを増やそうとして、高速道の中央近くまで進出して果物を並べ、前方から走ってくる車に手を振る農民までいる。
 
危険を通り越して死を覚悟の必死の商売だ!その必死さの成果は多少あるようで急ブレーキで停車し買い物をする車も散見され、それなりに商売になっているようである。  おかしなことに並べられた果物のそばに自転車を置いている者もいる、どこから何で自転車が?どのように進入したのか?自転車の荷台に商売用の果物を積んで高速道路上を走ってきたのだろうか??

 いま、中国では急速に自動車が普及しだし、その初期のモータリゼーションの初まりに、国民の交通ルール・モラルがついていけないようである、高速道路なのに歩いている者、自転車をこいでいる者、耕運機、リヤカーを押している者など、これが本当に高速道なのかと目を疑いたくなるような、日本では見ることの出来ない光景が時たま目に飛び込んでくる。

 人口300万人ぐらいの地方都市ではやっと繁華街に信号機が数個設置されるようになったが、だれ一人信号機に従って道路を横断する者などいない!赤信号であろうが青信号であろうが関係ないのだ!平気で無視して歩いている。
 かなりの車が行き交う交差点でも、クラクションを鳴らす車と車の間をぬって実に器用に道路や交差点を渡って行く。道路が渡れなくてウロチョロしているのは外国人だけだ!

古都洛陽にむけバスはひた走る

 黄土高原の痩せた土地で見渡す限りとうきび畑がつづく農村地帯の高速道を、バスはクラクションを鳴らしながら前方を走るトラックを次々追い越しひた走る! バスの中では私の介添え人の札幌から同行した0氏がひたすら居眠りしている。(何しろよく食べ、よく飲み、よく眠る、中国に来て体重が4〜5キロはすでに太ったようだ!SSNのクラブ活動で鍛えた体型が完璧にくずれだしている)
 同じく仲間のM氏は車窓から見える貧しい農村の情景をジーとながめ感慨にひたっている、終戦直後の貧しい時代を思い出しているのだろうか?
 M氏は中国に来てから名所旧跡の観光よりも、庶民の日常生活や習慣に興味があるようで、自由行動での街歩きや路地裏散策になると俄然張り切ってくる。

 やがて中国で揚子江(現在は長江と呼ぶ)と並んでの大河「黄河」が見えてきた!文字どうり黄色く濁って流れる黄河を、窓越しに見ながら高速道を走っていると、河南省と書かれた大きな城門のようなゲートをくぐり抜けた!(河南省は黄河の南にあるのでそう呼ばれる。)
 この河南省は黄河文明発祥の地であり史跡の宝庫でもある、古くは中原と呼ばれいくつもの王国・王朝が興亡をくりひろげた地帯で、中国の歴史上、常に登場する有名な城市(都市)の大半がこの河南省に位置している。
 しばらく黄河を見ながら走り、やがて夕方7時ごろ「洛陽」の街にバスは入った!この洛陽は中国でも最も古い城市(都市)の一つで、約3000年前から王朝の都として栄え、日本でいう奈良みたいな所だが、現在は人口130万人の小さな古都で牡丹で有名な街だ!(中国の国花は牡丹である)

 洛陽でのまずい夕食

 ホテルにチェックインせず夕食レストランに直行となった、今晩の夕食は洛陽の名物料理のスープを主体とした「水席料理」である!さまざまなスープが次から次と出てくる、これはいける、これはイマイチなどと言いながら味わっていると、突然私達全員の箸の手が止まった!皆が変な表情をしている。ごっさりパクチー(変な味の葉っぱ、コリアンダとも言う)が入った料理を食べたのだ!

 私はこのパクチー(東南アジアでよく料理に使われる、異様な臭みのある味の香菜の一種)が大の苦手で思わずナプキンに吐き出した!
 全員が叫んだ!「まず〜い」、同行のM氏などは「まずくて死にそうだ!」「これは人間の食べる物でない!」とまで言う、私も同感である。

 しかし驚いたことに、この異様な味のパクチーを我々団体の中で、ただ一人仲間のO氏だけが「何で皆さん食べないの?」「マアマアいける味ですよ」と言いながら平気で食べている。
 別のパクチーが入った料理にも手をつけ「これもマアマア」とか「これは美味い」と言いながら次から次えと箸をすすめるではないか!我々全員があきれれてO氏の食べっぷりを見ている中で、M氏が私の耳元につぶやいた、「M氏の舌はおかしい、狂ってる、」と!                       

その16へつづく