三国志街道を行く



プロローグ

 1年ぶりに私にとって30回目の区切りとなる中国旅行へ出立の朝が来た。13年前、家族4人揃って初めての海外旅行で中国に行った時、なぜか私だけが中国病という厄介な奇病に罹ってしまった。 
 旅を終え帰札するや、すぐ中国語を学ぶ決意をして、会社の勤務を終えての夜、帰宅前に中国語会話教室に通いながら言葉を学び、この13年間趣味のゴルフやマージャン等を全てやめて、小遣いの全てを中国旅行に費やしてきた。
 毎年2〜3回の旅を続けているうちに、とうとう今回で30回目となってしまった。人生の区切りである定年を迎え収入も無くなる、これでもって最後の中国旅行にする決意で出かけることにした。
                                  
 旅の同行人であるO・M両氏と千歳空港で待ち合わせをして、羽田空港経由で前泊することになっている成田空港の格安エアポートホテルに向かった(素泊まりで一人当たり3500円である)。
  ホテルにチェックイン後、夕食は明日の出発を前に三人で壮行の宴をするべく空港のレストランまで出かけた。3人とも結構アルコールはいける口である!これからの15日間にわたる旅の話に盛り上がるが、明日は早朝の出立なので早めに切り上げホテルに戻り就寝することにした。

成田空港で

 いよいよ、三国志の史跡巡りを中心にした15日間の中国歴史旅行出発の朝が来た!
ホテルを7時に出立し成田空港のコンビニで朝食のおにぎりを買い、待合ベンチで3人仲良く食事して、8時に旅行社が指定した三国志の旅参加者の集合場所に行った。
 すごい参加人数だ!今まで何度も最低催行人数の10名に満たず中止になっていたツアーとは思えないほどの人数だ!男性14名女性7名総勢21名+添乗員のH女子である、この旅行社の平均海外ツアー催行人数は12〜14名であるので今回の参加者は異常に多い!

 添乗員のH女子が佐藤様ちょっとよろしいでしょうか!と、突然私に声を掛けて来た! 皆の集合場所より少し離れた場所に案内された。何事かと緊張すると、彼女いわく今回の旅の参加者の部屋割りについて、二人相部屋希望者と一人部屋希望者(シングル追加料金必要)の組み合わせの関係で、ツインの1部屋のみが1名で使用出来ることになった。
 しいては、佐藤様は二人相部屋希望だったが、そのツインの1部屋を佐藤様一人でご使用していただきたいと言う、本来なら1名部屋を希望するとシングル料5万円の追加が必要なのだが要りません、そのかわり他の参加者には内緒でいてほしい、追加料金を負担して1名部屋を希望したことにして下さいと言うではないか!願ってもない申し出に即OKの返事をする、ラッキー!!他人のいびきや寝言を気にしないですむ。

 なぜ、こんなありがたい申し出に私が指名されたのか?考えると、昨年この旅行社を利用してちょっとしたトラブルがあったことを思い出した、その時のお詫びのつもりだろうか?O氏とM氏は二人相部屋希望を申請していたのでその通りなったが、旅仲間の両氏だけには正直に私だけ追加料金を出さずに一人部屋になった理由を話した。

 各人が搭乗手続きを済ませ、10時30分JALで広州に向け飛び立った。機内サービスのアルコールを飲み昼食をしながら各座席に付いている液晶TVを見ている内に、14時30分新しく完成したばかりの巨大な広州空港に着陸した。
 この広州で入国手続き後国内線に乗換え、この日の最終目的地である四川省の省都の成都に向け飛び立ち、30分遅れの19時に無事到着した。中国側の添乗員2名が出迎えてくれていた。

 一人は、今回の全旅程の中国側総元請の西安の国際旅遊社の所属、日本に留学経験がありぎこちないが日本語を話すことが出来る、今日から15日間最終日まで我々と同行することになっている。
 もう一人は、今日から3日間成都近郊を担当する成都の孫請け旅行社の所属でこの人も日本語を話す、中国旅行の場合、行く先々で旅行社とガイドが変わる仕組みだ!

 送迎者用の駐車場まで行くと、まわりのマイクロバスや乗用車を圧倒するかのように、大型の外国人専用観光バスが待っていた。中国ではまだまだ観光用の大型バスはめずらしくマイクロバスが大半である。成都市内まで約1時間近く走り20時半頃、夕食会場のレストランである有名な「陳麻婆川菜店」に着いた。

麻婆豆腐の発祥の店

 この店は日本でもポピュラーな中華料理である麻婆豆腐を考案して売り出した元祖のレストランで伝説の店である!激辛の四川料理では成都市内では最も有名なレストランで地元の人はもちろん成都観光の外国人も必ず立ち寄る人気店となっている。 
 
 3つの円卓テーブル別れて座ったところで、添乗員のH女子より各テーブルにビール2本とコーラ2本をサービスで付ける、追加の飲み物料金は ビール・コーラ共それぞれ1本10元(日本円換算134円)で支払いは直接ウエートレス渡してほしいむね説明があり、チャイナ服姿のウエートレス(中国語でウエートレスを小姐(シャオジエ)と言う)が早速ビールを持ってきた!
 私の今までの数十回の旅の経験からビールの栓を抜きビールをコップに注がれる前に、私が小姐に中国語で聞いた「そのビールは冷えているか?」小姐いわく「冷えてます」と言う! 私が確認のためビールを手に取り触れてみると不安が的中した、”温かい”のだ!まるっきり野外に出しておいた常温状態の”ぬる燗”である。

温いビール

 O氏もM氏も皆ビール瓶に手を触れ”温かい”と言う、 私がまた小姐に言った!「このビールは冷えていない!日本人は温かいビールは飲まないので、もっと冷たいビールに取り替えてほしい」と!小姐あわてて店の奥に行きしばらくして困った顔して私達の席に戻ってきて、「このビールではどうか」と言う、触れてみると先ほどのビールと同じである!私が言った「さきほどのビールと同じではないか!生温るいダメだ!」
 私が中国語で厳しい表情で店の小姐とやりとりしているのを、旅仲間皆がだまって見ている、皆んな中国語が解らないはずだが、首を振ってうなずいている!何を言っているのか雰囲気で判断しているようだ!すばらしい想像力・理解力だ!

 しかし、この店が外国人も来る一流レストランなのか!おかしい?こんな生温いビールを出していて今まで中国人客は別として外国人客からクレームが出ていない訳がない!なぜ改善されないのか?職務怠慢であり反省が足りない!今後この店に来る外国人客のためにも教育をしてやろうと思っていると、小姐とのやりとりを、とぼけて見ていた中国人ガイドが、私達の席に来て言った!「氷を持ってくるのでコップに氷を入れてビールを注ぎ冷やしながら飲んで下さい」よろしいでしょうか?と!

 私達日本人全員あきれてキョトンとしている。ビールをコーラやジュースと同じ飲料レベルで考えているようだ!もう何も言う気がしなくなった、中国のビールは日本と比べアルコール度数が低い、日本のビールが5%〜5・5%なのに対し中国は2・5%〜3・3%と気の抜けたような味のビールだ!ただでさえ気の抜けた味の温るいビールに氷を入れて飲んだら、どんな味になるか?想像しないでも分かる、しかたないので暖かいビールで安着祝いの乾杯をしたが、全員しかめ面でおもわず”マズイ”の声が出る!

 料理がどんどん運ばれてくる、やはり元祖麻婆豆腐に皆が手をつける!超辛い!中途半端な辛さでない、10品ぐらい料理が運ばれたが味の評価はまちまちで今一歩といったところである!
 食事もたけなわを過ぎると、レストランの店員が我々日本人だけの席に来て四川省名物の物品販売を始めた、そのしつこいこと、外国人観光客が多い店なので特に日本人には現地価格の5倍ぐらいにふっかけた値段で販売し今まで味をしめているのだろう! この利益はレストラン・販売員・中国の現地ガイドの3者があとで山分けする仕組みになっている。(中国の外国人観光客では日本人が一番のカモになっている)

同じ観光客でも欧米の外国人は相手にせず、日本人だにけ狙い撃ちで土産を売り込みに来るのは理由がある!
 何しろ日本人は買う!買って!買って!買いまくる、世界一お土産を買う、悲しい遺伝子を持った民族なのだ!中国の観光業界では、金銭音痴で買いまくる日本人を狙えが合言葉になっている。店員が必死に安い!安い!と片言日本語で売り込むのだが、我々旅仲間全員誰一人買わない完全無視している。

 今回の私達の旅の参加者の大半は海外旅行慣れしていて、旅の初日に買い物をして15日間持って歩くようなバカな事はしないし、すでに中国に何度も来てる人が多く、このような店で買うととんでもなく値段が高いということが皆わっかている、したがって誰も見向きもしない。
 店員はいつも買う日本人が今回の客は全然買わないので困惑の表情をしていた。
なんだかんだで、中国第一日目の夜は過ぎ、今夜の宿泊四つ星ホテルである成都の民山飯店へ・・・・・・・        

その2へつづく