旧満州・中国東北三省を行く


もうどうにも止まらない!土産を買いまくる

超美人の売り子がいる茶芸店

 この度の中国東北地方(旧満州)巡りの旅も終わりに近づき、明日は帰国である。ツアー最後のショッピングタイムということで、中国茶の茶芸店に連れ込まれた。 茶芸店といっても中国茶を飲ませる喫茶店みたいなものである。
 玄関から店内に入ると10名ほどが座れるテーブルがある個室に案内された。 すでに私達が来るのを待機していた小姐がテーブル席の中央に座っており、私達は彼女を中心に取り囲むように席に着いた。

瀋陽駅前(赤レンガは東京駅を模した奉天駅)
 この試飲販売する30代前半の年齢の小姐の顔を見て驚いた!エライ美人なのである。オーバーな言い方になるが、これほどの美人めったにお目にかかれない!まるで女優のようだ!年齢的にも脂がのりきりその色香たるや、いい年をして胸がときめいてくるほどだ。
 はずかしながらシニア年代になってもまだ煩悩の火が消えない自分に呆れる。

 さらに驚くことには、小姐が話す日本語たるや流暢を通り越して日本人が目の前にいるようではないか。思わず私は小姐に聞いてしまった!「貴女は日本人でないのか?」すると彼女は嬉しそうに「中国人です」と答えながら、日本語で書かれた中国茶のパンフレットを配りだした。
 今回の中国旅行では、私は旅仲間に対し旅行会社や現地ガイドに案内される土産物店のぼったくり値段の仕組みを、ことあるごとに説明をしてきた。
 いかに日本人観光客が連れ込まれる土産物店の価格が、街中のスーパーやデパートに比べ、少なくても2倍、物よっては3倍ぐらいに大幅上乗せされているカラクリを話してきたのだ。
人口700万都市瀋陽で一番賑やかな中街

 私は旅仲間に対し、どうしても中国土産がほしければ、この茶芸店を出て博物館を見学したあとは、瀋陽最大の繁華街で2時間あまりの自由行動になっているので、そこにはデパートもショッピングセンターもあり、何でも安く買える、もし皆さんが希望するなら案内してあげると言ったところ、全員が是非お願いしますということで、このあと私がショッピングに案内することになっていたのだ。

とんでもない暴利のお茶

 そんな私のアドバイスもあり、今日まで毎日ウンザリするほど連れ込まれた土産店では、旅仲間は小額品の買い物だけに止め、はやる気持ちを押さえ今日まで我慢をしてきたのだ。 
 ところがである何と!超美人小姐による最初の一品目の緑茶の実演試飲を終え、売り込みが始まると旅仲間の雰囲気が微妙に変化しだした。
 小姐がテーブルの積み上げられた50グラム入り缶を手に取り、「通常は3缶日本円で1万円だが今回特別に4缶で1万円にします、お安くお徳ですよ」と言うや、仲間の女性一人が「このお茶本当においしい、8缶お願いします」と言いつつ2万円を財布から取り出した。  
 すると何と!他の5人にも伝染してしいまい各自が4缶、8缶と言い出しつつ財布から万札を取り出すではないか!。

おしゃれな若者でいっぱいの中街
 とうとう日本人だけが持つ悲しい遺伝子(土産買い行動)が働きだしたのだ! 私が目配せしながら首を横にふり、買うなとサインを送るのだがもう止まらない!
 次はウーロン茶、次はジャスミン茶と次々に実演販売がすすむ!その都度、だれかかれかが買う!。私は見ていて腹が立ってきた。日本円の1万円の価値の大きさが分かっていないのである。 中国と日本では貨幣価値が大きく違う!日本との物価を換算すると6〜7倍違うのだ。日本の1万円は中国で使う場合6〜7万円に相当するのである。

 今、この茶芸店で1缶50グラム入りのお茶を4缶1万円といことは、実質的には6〜7万円で買っていることであり、1缶あたり1万5千円以上で買っているのと同じなのだ。 いくら美味しいお茶といえど50グラム1万5千円もするお茶なんて、あまりにも暴利で悪くどいで値段ではないか!。
 日本との物価差が6〜7倍あるといったが、ちなみに中国のスーパーでは「白米10kグラム20元(300円)、瓶ビール3元(45円)、ミネラルウオーター500m?1・5元(25円)、で売っていたのだ。食堂ではチャーハン3元(45円)、中国風ラーメン3元(45円)、で食べれるのである。日本との物価差は間違いなく6〜7倍はあるのだ。
おしゃれな若者で日本と変わらない

 私が必死になって目くばせで「高いから買うな!」と合図するのだが、もう働き出した遺伝子は止まらない!
 今日まで買い物を自制してきた反動なのだろうか?
お茶を買い終わると、次はスーパーで1袋2元(30円)で売っていたお茶うけの菓子を、4袋1000円で8倍に吹っかけたものまで、次々買いまくるありさま。美人はやっぱり得だ!

 私がこの後の自由行動で皆をショッピングセンターに連れて行くことになっていることを、完全に忘れ去っているようだ。 お茶だけで5万円もの大枚の買い物をした者までいる始末。私はあきれ果て何も言う気がしなくなった!。
 たっぷり時間が過ぎたころ、中国人現地ガイドが現れ、相好を崩しニコニコ顔で出発の時間ですと言った。そりゃそうだろう、売り上げの半分以上のリベートが入るはず、表情も崩れようというものだ!。  

またしても展示品を売る博物館

 今回の旅、最後の観光は遼寧省博物館である。新しく完成したばかりの館内はこれまで見てきた博物館同様に閑散としている。
 中国に来ると各都市での博物館巡りは定番コースで、今回の旅でも大連、ハルピン、長春、瀋陽と全ての都市で博物館に入場してきた。
 どこの博物館にも流暢に日本語を話す館員がいたが、ここでも若い男性館員が現れそくさくと、各展示コーナーを説明を終えるや、例によって陳列ケースに貴重品が陳列されている別室に案内された。
 陳列品の説明が終えると案の定、この陳列品をケース付で売ってもよいと言い出したではないか!。大連の博物館では1セット80万円だったが、ここでは何と150万円だと言う!。
 この話が始まった途端、私達全員が館員の説明を最後まで聞かず、笑いながら途中でゾロゾロ展示室から抜け出した。館員があわてて私達の後を追う!。・・・

自由行動でショッピング

 これで今日の全ての観光は終わった!夕食は6時半から中国で知らない人はいないと言われるほど超有名な「老辺餃子館」で瀋陽名物の餃子を食べることになっている。それまで2時間あまりの時間が自由行動となっている。私達を乗せたバスは市内最大の繁華街である中街にむかった。夕食レストランの「老辺餃子館」はこの繁華街「中街」の一角にあり、私達はこの店先でいったん自由解散して6時半にこの店の2階個室に再集合することとなった。 

中街の巨大なショッピングセンター「大家庭」
 この中街で旅仲間の希望でショッピングに連れて行く約束だったが、先ほどの茶芸店であれほど買いまくったのだから、もう土産も必要無いだろうと黙って一人で繁華街中心部にむかって歩き出した。後ろを振り返ると旅仲間がゾロゾロ私の後ろを付いて来る。・・・
 しかし、それにしても人が多い!しかも今日は土曜日である、よくこれだけの人が、どこから湧いてくるのだろう?。
 
 中国は街も人もおしゃれになった。特に歩いている若者は日本となんら変わらないファッションだ。 この中街の繁華街を見るかぎり、日本の新宿や池袋並にあか抜けて小奇麗な街並みである。中心部に来ると「大家庭」という店名の巨大なショッピングセンターが見えてきた。
 店内には衣料、日用品の全ての生活用品が揃っており、特に地下には食品街と瀋陽最大のスーパーがある。
 中国土産を買うならば、中国の物価の安さを実感しながら良心的に買い物できる最高のスポットだ。後ろを付いてきた旅仲間とは、この店先で別れることにすると、各自がそれぞれ店内に散って行った。
夜になると夜店であふれる瀋陽駅近くの太源街

 ブラブラしていると紳士用品売り場でおしゃれな皮革のベストが目に入った!780元(1万2千円弱)の値札が付いている。近寄り手に取り眺めていると、小姐が寄って来て熱心に売り込みを始めた。
 私を中国人と思い込んでいるようで、早口で商品の説明を始めた。部分的しか聴き取れないので無視して、中国語で「試着してもいいか」と聞いてみると、OKと答えるので試着すると「すばらしい!良くお似合いです」ですと言うではないか。 
 中国ではめずらしいことに、この店の店員はきちんとしたお世辞が言えるようにサービス訓練を受けているようだ。

 デザインが気に入ったので買うつもりで「買いたいのだが高い!少し値引きしてもらえますか?」と聞いたところで、彼女の表情が変わった!。私の発音が中国人とは違うイントネーションに、中国人でないとやっと気づいたようである。
 びっくりした表情で「韓国人ですか?」と聞いてくるではないか。「イヤ日本人です」と答えるとやっと納得したようで、ゆっくりした言葉使いで「この店は定価販売で値引きできません」といいつつ不安な表情で私の顔を見るではないか。
 私が「そうですか、しかたありません、それを買います」と言ったところ、シィエシィエ(謝謝)を言いながら嬉しそうに売上伝票を書き始めた。
 札幌に帰ったら、今年の冬のファッションはこの革ベストでバッチリ決めるのだ!勿論中国で買ってきたなんていわないつもりだ!。

中国で最も有名な餃子店

中国で最も有名な餃子館、ここで夕食を

 再集合の時間が近づいてきた。再集合場所は今晩の夕食レストランである「老辺餃子館」である。 このレストランは170年余りの歴史があり、当時の皇帝が当代随一と言わしめたほど、餃子にかけては中国ナンバー1の超有名店だ。餃子の種類だけでも20種ほどあり、聞いた話では東京にも支店があるとのことだ。

 6時半集合だったが10分ほど早くレストランに着いた。集合場所の2階個室に行くべく階段を上がっていくと小姐が目の前に現れ、「予約のお客様ですか?」と聞くので「そうだ」と答えると「何名ですか?」と聞いてくる、「7名」と答えたところ廊下に20余り並んでいる個室の一つに案内された。
 おかしいことに室内には誰もまだ来ていない!私が一番早く着いたようだ。 円形テーブルには7名分のグラスと箸がすでに置かれている。            

やっぱりピンハネされていた!

 誰もいない室内で一人椅子に座って皆を待っていると、テーブルの上に置かれたメニュー表が目に入った。 今日まで私達が食事した全てのレストランで、何故か絶対といってよいほど、テーブルの上にはメニュー表が置かれていることなく隠されていた。 しかし、このレストランでは不思議なことに堂々とテーブルの上に置かれている。 皆が揃うまで退屈なのでメニュー表を開いて眺めていると、焼き餃子1人前(12個)6元(90円)をはじめ、飲み物の料金もある。 瓶ビール8元(120円)鉱泉水(ミネラルウオーター)4元(60円)と書かれている。

 おかしい!この店は超有名店である!あまりにも料金が安すぎる!。今日まで旅行期間中、食事した全てのレストランで、私達は瓶ビール1本におしなべて同一料金で1本20元をガイドの言われるまま、高いと思いつつも仕方なしに払ってきた!。 それもこの店よりもランク下のレストランでだ!。 ところが、この有名レストランでは半値以下の料金なのだ!どうなっているのだろう!私の胸に「やっぱり」という疑念が湧いた。
 すでに集合時間の6時半をとうに過ぎた!おかしいことに誰も現れない。どうしたのだろうとジリジリしながら待っていると突然、部屋のドアが開き劉添乗員が顔の覗かせ大きな声を上げた!。 「あれぇ佐藤さん、何故この部屋にいるの?」「皆さん全員揃って佐藤さんが来ないと騒いでいますよ!」と言うではないか。

 何と!小姐に部屋を間違えて案内されてしまったのだ!。私が中国語を使ったので、予約が入っていた中国人7名グループの一人と勘違いされ、別な部屋に案内されたのだ。これで、メニュー表がテーブルの上に置かれていた訳が分かった!別な部屋だったのだ。
 今日まで案内されたレストランでは、現地ガイドが飲み物料金をごまかして上乗せしているのをバレないように、事前にレストラン側と打ち合わせしてメニュー表を隠してあったのだ!。勿論、日本のH急交通社了解のもとでだ!

今日は私の誕生日だった!

 劉添乗員に皆が待っている部屋に案内された!旅仲間から「佐藤さんどこに行ってたの?心配してたんだよ!」との声が上がった。
 ボーイが飲み物の注文を取りに来た!ビールの値段を聞くとボーイは答えず、現地ガイドが平気な顔をして言った!「ビールは20元(メニュー表では8元)でファンタ類とミネラルウオーターは10元(メニュー表では4元)です」と言うではないか!やっぱりだ!。 
老辺餃子店の餃子、10種類以上出てきた

 私がさきほどの部屋に置かれていたメニュー表で料金をチェックしていたことは知らないのだろう。 ここで「ピンハネごまかし料金」をバラしてやりたい気もしたが、面子を潰されたガイドに何をされるか分からない!知らないふりをしてビールを注文することにした。

 会食と乾杯が始まる前に、
日本側旅行社の添乗員が最後の夕食なので挨拶させてほしいと言い出した。

 すると何と!「今日は佐藤さんの誕生日です!お別れパーティもかねた佐藤さんの誕生パーティをやりましょう!」「誕生祝いのケーキも用意しました」と言いながら、更に紙袋に入ったプレゼントまで渡してくれるではないか!。
 私のパスポートを見て今日が誕生日であることが分かり、先ほどの自由行動の時間帯に誕生ケーキとプレゼントを密かに買ってきたようだ。 
            私に誕生ケーキを取り分けてくれる劉添乗員
        
 今回の旅の激安旅行を売り物にしたH急交通社の派遣添乗員もなかなかやるものだ。
 土産物店巡りばかりやらせられストレスが溜まっていたが、最後に一発逆転で機嫌も直った! 私は意思が軟弱なのだ!すぐ気が変わる、げんきなものだ!。
賑やかにパーティが始まった。 
 出てくる、出てくる、これでもかとばかりに名物の餃子が次々と!。テーブルの上には食べきれない餃子が積み上がる。
明日は朝一番で帰国だ!夕食後は真っ直ぐホテルに帰るか、それとも再び繁華街をぶらつくかどうしよう。

おわり