吉田精肉店

まとめ


無界のとある場所


「おいゼヴァス、耳寄りな情報だぜ。」

ザーゴンか・・・

「どうしたザーゴン、大悪魔どもがどうかしたのか?」

「とんでもないことになったぜヘレバルス様に聞いたんだが、
アンノーンゲートがまた開いたらしい。」

ザーゴンはやけに興奮している。

我輩にとってもうれしくないことではない。

ハウレスが勝手に消耗してくれるのだからな。

「フン、それで今度はどうして開いたんだ。」

「それが・・・あけたのはハウレス様じゃないらしい。」

「なんだと!?」

それほどまでの魔力を持つものが存在するのか?

「ではアルミューレか!?」

「アルミューレ”さま”だ。
だがあの方でもでもないらしい。

ハウレス様はえらくご立腹なされていて、

禁断のアジ・ダカーハを放ったらしい。」

「あの化け物どもをか!?」

「ああ、おもしろくなってきただろ?」


「・・・・・」

もっとも我輩に一人だけ心当たりがあった、カイン。

どちらが先に頂点につくか競い合った仲だ。

我輩たちは反乱分子として目をつけられてきたから今回の反応もうなづける。

出てけばやがて殺されるかもしれない、

しかし外にはあるのだ。

我輩が欲してやまぬもの

”力”が!!




ロット軍基地


「侵略は順調に進んでいるかね?」

私はその声を聞くとぞくっとした、機械なのに。

そういうプログラムをされているのかな。

「あのう、第八軍団が壊滅しました。」

「なるほど、検索してみよう。

・・・・第八軍団というと戦闘力が平均900のジャンク軍団か。
隊長は・・・デビルマグナス、データ不明、
いつの間にか軍団にまぎれたところを
比較的高い戦闘値を見込んで隊長を委任。

・・・だが実戦データを見ればわれわれの軍団が、
失敗作といえども負けるはずがないのだが、
ノーヴィス君。」

「廃棄された機体のブラックボックスを確認したところ、
画像にはラクシらしきものが写っていました。」

「・・・ラクシか、この星にも生息しているのか?

だがラクシ程度がわれわれに勝てるとは思えないが?
・・・まあ、セフィラムのほかにも骨のあるやつがいるようで
私はうれしいよ。」

そういうとゴットは去っていった。



無数のアジ・ダカーハの群れにそいつは混じっていた。

「くっくっく、まさかここに悪魔が来るとは、
俺様デビルマグナスの時代が来たようだ。」



戦いはまだ始まったばかりだ。




ノーヴィスとゼヴァス



無界を出て三日がたった。


アンノーンゲートが開いたのはどうやら町外れらしくいまのところとかげや蛇などしかこの世界



住人は見かけなかった。


ザーゴンが出て行くのをとめたが聞く耳など持たなかった。


あいつはそれなりにいいやつではあるが、大悪魔の犬なところが癪に障る。


といっても大体の中級悪魔などそんなものか。


カインが無界を出る前に言っていた。俺は力を手に入れる方法を見つけた。と。


今思えばつくづく甘いやつだと思うぜ、我輩は仮にも競争相手だ。


まあやつのおかげで手がかりが手に入った。


エルンを千人石に変えても得られない力がな。


高熱エネルギー体確認・・・、例のあれか・・・。


見る限り一体、北北西に感じ取れるエネルギー体に酷似しているがエネルギー量がこちらの



うが高い。


推定戦闘値1800・・・。


始末・・・いや捕獲してデータを採集。


ゴット様・・・報告・・。


ノーヴィス戦闘開始します。



「おお、ついに住人とご対面か。機械生物かめずらしいな。


まあいい。我輩の地獄の目で石にしてやるよ。」


ノーヴィスの肩が光り宙に浮いた。


「オイそこの爬虫類、脳まで退化しているのか。機械が・・・・、


石になどなるかーーーーー。」


ノーヴィスがマシンガンを地獄の目を放っているゼヴァスに向けた。



やったか・・・・生体反応・・・以前健在、


・・・反応は・・・・後ろ!!!


「お前こそ、歯車錆びてんじゃないのか?」


ノーヴィスの前にばらばらの石が落ちていた。


それの元の形を解析するにそれは間違いなく”木”だった。



びびってやがるぜこのポンコツ野郎・・・。
だが今までこのような意思を持たないものを石にこんなに早くできたことなんてなかったな。



石を盾にしながらゼヴァスはノーヴィスに近づいた。


そしてとかげを石にした刀でノーヴィスの腕を切断した。


しかしつめたい声がゼヴァスの鼓膜を振動させたのだ。


「かかったな!!」


ノーヴィスはゼヴァスに向けて銃を放った。


「貴様お前もただでは済まんぞ!!」


「ゴット様が修理してくださる!!かまわぬ!!」



「そこら辺にしておけ、ハウレス様がこの世界に来るぞ!」


そういうとその男はゼヴァスとノーヴィスをはじいた。


ヘレバルス!!




ヘレバルス



ゴット様・・・報告・・・新手です・・・。


戦闘値は推定・・・3000。


ゴット様・・・なんですと?


了解いたしました・・・。帰還します。



「おい貴様のせいで獲物が逃げてしまうぞ!!!」
「狩りか?俺にとても狩りには見えなかったがな。
ザーゴン君に言われただろう。
君には単独行動はまだ早い。」

ふざけやがって大悪魔め!!!

「おいおいあまり見つめないでくれよ、狩りの前に石になりましたじゃ。笑い事にもならないぜ。
それともそっちの気が・・。」

「黙れ!!」

ふざけやがって!!
向こうへとゼヴァスは歩き出した。
「どこへいく?」
「知らん!!!」
「やれやれ・・・」

くそ、あまりにも頭に来たのでらしくないことをしてしまった。
だがひとつ気になることがある。
来るのか?やつが?
ハウレスが!!


ここの話はクロニクルさんが書きました。

無界。最奥地・デビルズサンクチュアリ

「なるほど・・・では、すでに何人もの悪魔が、ヘヴンへと飛び立っていると?」

暗い空間に、声だけが響き渡る。姿はどこにもない・・・ザーゴンは膝を突き、その声と会話し
ていた・・・

「はい、アジ・ダカーハも、匂いを追って、すでに外へ。私もヘヴンへ行く許可を」
「・・・良いだろう。ただし!」

突然、ザーゴンの背筋に寒気が走った。真後ろに・・・何かがいる。

「そう簡単にはいかんな。貴様に・・・友を殺す覚悟はあるか?」
「・・・・・・どういう意味でしょう?」

震える声で、ザーゴンは答えた。

「アンノーンゲートを最初に開けたものを見つけ出し殺す。それが貴様達の任務のはずだ。し
かし、お前の友人は、一体何のために外に出たのかな?」

冷たく響く声が暗い空間にこだまする・・・何もない空間。自分の背後の圧倒的な存在感を除い
ては。

「力を求めることは、間違ってはいない。むしろ正しいことだろう。しかし・・・しかしだ。身の程を
知らずに、ただ力だけを求める行為は、間違っているのではないか?」

背後の存在から、さっきまでとは違う感情が読み取れた・・・怒りか?それとも・・・

「私への反乱、大いに結構だ。お前の友人は、さぞ自らに自信があると見える。悪魔の中に
は、私への反感を持っているものが数多く存在する・・・貴様の友もそのうちの一人だ」

ザーゴンはその一言一言が、自分に重くのしかかってくることを感じた。そして、次に言われる
であろう言葉を自分の中で想像し、恐怖した。

「より強い力で、より高い地位を手に入れる。ごく自然なことだ。だがそれは・・・無界の中に限
ってのことだ。度を越えた欲望はいずれ、歪みを生むだろう・・・無界という囲いを越えてしまっ
た欲望は、消さなければならない」

「わ、私に何をしろと?」

背後の存在が、ふっと笑った・・・・・・

「初めにゲートを開いたものも、お前の友も、無界を超えて力を求めた・・・すでに無界には興
味がないという証拠だろう?ならば、外で何が起きても文句は言えん・・・初めにゲートを開いた
ものは、私が消そう・・・だが、あくまで標的は一つ」

「・・・・・・やはり・・・・・・」

「外へ出ることを許可しよう。ただし・・・・・・友の命と引き換えだ」

ゼヴァスを殺せ。友であるお前の手で、な。

  
ハウレス様が俺に言った言葉がずっと耳に響いている・・・・・・確かに、ゼヴァスを止められな
かったのは俺だ。だが、それは友だから、なのか?それとも・・・・・・

そう考えているうちに、ゲートの前へと来てしまった。鈍い光がぼんやりと射してくる・・・・・・

「・・・・・・行こう。とにかくまずは、ゼヴァスに会わないと・・・・・・」

決意した俺は、ゲートの向こうへと一歩を踏み出した・・・・・・



その頃、デビルズサンクチュアリでは・・・・・・

「ふっ、行ったか・・・・・・では、私も行こう。グレゴリュフ。後は任せたぞ」
「・・・・・・グルゥゥ。行って、こい・・・・・・」

(ふっ、木偶の坊でも、留守番くらいは出来るだろう。それすら出来なければ、存在する必要も
ないか・・・・・・)

闇に溶け込んでいるグレゴリュフの視線に背を向け、邪悪な気配を発しながら、悪魔達を統べ
る神は暗黒の空間から出て行った・・・・・・

それを見据えていたグレゴリュフの目にも、その神の姿は見えていなかった・・・・・・

暗黒の空間の中で、完全に闇に溶け込んでいた、その神は、翼を広げ、静かに飛び立った。


一方・・・・・・外の世界では・・・・・・

ゼヴァスは再び襲ってきたノーヴィスに苦戦していた・・・・・・

正確な射撃で、木々の合間から確実に死角を狙ってくる・・・・・・地形に慣れていないせいか相
手の位置すらもよく分からない。

「くっ!どこだ?このままじゃ・・・・・・」

その時、自分のすぐ横の木に銃弾が当たった。高さは自分の顔の高さであった・・・・・・

「まずい・・・・・・なんとかしないと」

そういえば、とゼヴァスはふと今まで逃げてきた道を振り返った。逸れた銃弾は、すべて自分
の顔の高さに当たっている・・・・・・奴は俺の頭を狙っているのか?

その時、名案が浮かんだ。チャンスはもう一度。奴が発砲した瞬間。

(落ち着け、聞き取るんだ、微かな銃声を・・・・・・)

そして、遠くの方で、微かに空気が揺れた感じがした!すかさずわずかに頭だけを逸らした!
狙い通り!銃弾は俺の頬をかすめて、木に当たった!

銃弾が飛んできたのは・・・・・・正面!

ゼヴァスはその辺り一帯を、次々と石に変えていった!これで、ほんの少しでも物が動くことは
ない。動くとするならば・・・・・・奴しかいない!

その時、わずかに影が揺れた!

「そこだぁ!!」

すかさずゼヴァスは走って飛び掛った!しかし、そこには、電流を発しながら壊れている、ノー
ヴィスがいた。

「ここにいたか」

ザーゴンの冷たい声が響いた・・・・・・



深い森の中で、ゼヴァスとザーゴンは対峙していた。特に何をしているわけでもないのに、不思
議な緊張感に包まれていた・・・・・・

「ザーゴン、お前までここに来ていたのか。丁度いい、手を貸してくれ。この妙な機械生物が、
追ってくるんだ」

壊れているノーヴィスを蹴飛ばしながらゼヴァスは言った。

「・・・・・・ゼヴァス、この機械生物と、ここにきてから何回会った?」

足元のノーヴィスを見ながらザーゴンが言った。どことなく冷ややかな口調だ。

「会ったのはこいつだけだ。だが、途中でヘレバルスにも会ったぞ」
「ヘレバルスにも、か。ここに来る途中。2体の機械生物を見た。俺には気づかなかったようだ
が、お前を探していたわけじゃなさそうだ」

ザーゴンが、ノーヴィスの頭を踏みつけた。電流が弾け、わずかに光っていたノーヴィスの目
が、完全に消えた。

「ということは、ヘレバルスと、お前と我輩。アジ・ダカーハもか。その4体を探しているんどろう
な。さしずめ、支配領土に踏み込まれたことへの反撃ってとこだろうが・・・・・・」

「いや、もう二人いる。もう一人はアジ・ダカーハの群れに紛れてる、見たことのない奴だ。それ
から、最初にゲートを開いた奴もいる」

「つまり、現在、ここには6体の悪魔がいるってことか」
「あぁ、そして・・・・・・もうすぐ5体になる」

ザーゴンはゼヴァスに巨大な剣を向けた。

「何の真似だ?」

突然のことにも、あまり動じた様子はなく、ゼヴァスは言った。

「・・・・・・ゼヴァス。お前はどうしてここに来た?」
「無界では手に入らない力を手に入れ、ハウレス、アルミューレを倒し。悪魔の頂点に立つた
めだ」

無感情にゼヴァスは言い放った。

「・・・・・・ゼヴァス。最初にゲートを開いた奴を見つけ出し始末する。幸い、ゲートが開いたこと
を知る悪魔はわずか。だから、そいつを殺すことが俺たちの任務だ」

「何が言いたいザーゴン」
「ハウレス様の命令だ。俺はお前を殺さなければいけなくなった・・・・・・だけど、まだ間に合う。
ゼヴァス。最初にゲートを開いた奴を知っているな?それを教えろ。そうすれば、俺たちに協力
したということで、ハウレス様には俺からとりなしてやる」

ゼヴァスは少し黙った後、すっと、ザーゴンを見据えた。

「お断りだ。石になりたくなかったら、さっさと失せろ」

「馬鹿野朗!」

ザーゴンは剣を振った。ゼヴァスは宙返りしてよけると。木の上から視線をザーゴンに移し
た!

「馬鹿はお前だザーゴン!今の立場でお前は満足か!?」
「だからといって、お前のやり方が正しいとは思えない!」

ザーゴンは剣を構えた・・・・・・

(これで、いいのですか?ハウレス様!)

友と友の戦いが始まる・・・・・・



「なぜお前はそこまで大悪魔を憎む!!
ゼヴァス!!!」
ザーゴンはまだゼヴァスをとめようと叫ぶ。
「我輩たちを争わせるからだ!!
もう我輩はエルンを殺したくはない!!
だから我輩は大悪魔や邪神どもを皆殺しにして平和を手に入れる。
そのために必要なのだ力が!」
「お前に何があったのか俺にも話してくれなかったよな。
だからお前に何があったかは知らない、だがこれ以上進むというのであれば俺を殺せ!!」
「我輩が間違っているとでも言うのかザーゴン!」
「そのとおりだ。」
冷たい声がした。
ザーゴンは震えるような声で言った。
「グ・・・グレゴリュフ・・・様?
あなたは無界で待機しているはずでは?」
グレゴリュフと呼ばれた巨大な悪魔は青い目でゼヴァスをねめつけながら言った。
「こいつのような勘違い野朗を許せないのだよ私は。
そして私自身更なる闇がほしくてね・・。
・・でザーゴン君だっけ。
四回・・・。
これが何を意味するかわかるかね?」
「わかりません。」
「カマトトぶるはよしたまえ。君がそこの裏切り者を殺せた回数だ。
そして1260回。
これは私が君たちを殺せる数だ!!」
グレゴリュフの体が闇に変化しザーゴンとゼヴァスにぶつかった。

「さてザーゴン君、今度からさっさと仕事をこなすことだ。
私は、アジ・ダカーハを追ってみることにする。」
闇がスン止めされて助かったザーゴンはグレゴリュフをにらんだ。
「そんな目はよしたまえ。君の気持ちだってわかる。
まああの裏切り君がそう簡単にやられたと思えんがね。」



ゼヴァスが自らを石化させて防御し落ちた場所はロットの工場だった。
幸か不幸かそこはアジ・ダカーハが向かっている場所であった。



なぜ我輩は戦っているのか・・・?
ある日抱いた疑問だ。

我輩はある村を攻めていた。
我輩はエルンの戦士に深く傷つけられ死を覚悟した。
何とか勝ったものの。
我輩は帰る途中意識を失った。

目が覚めるとベッドだった。
エルンの少女が我輩を介護してくれたのだ。
血塗られたこの翼を!
悪意に満ちたこの目を!
我輩は逃げようとした。
殺そうとした。
何もできなかった。
残虐な悪魔?
反吐が出る。
そんな”名誉”は我輩にふさわしくない。
地獄の眼をつぶし消え去りたい屈辱にさいなまれた。
我輩は敵に同情されてしまったのだ!
このゼヴァスが!!
この翼がいえた暁には貴様らを消し屈辱を消し悪魔の栄光を取り戻してやる!!
そうおもった。
だが・・・、
村はグレゴリュフによって攻められ村は全滅・・・。
我輩は救出された。
それが何だというのだ?
復讐?名誉挽回?誇り?
それが何だというのだ?
我輩は自分をごまかしていた。
ただそれだけだ。
我輩は今までずっと自分をごまかしていた。
機械のごとく上の命令で無差別にエルンを殺す、自分は残虐だと疑問から逃げていた。
その日我輩は誓った。
ハウレスを殺し無界の王者になってエルンとの決着をつける。
それが我輩の宿命だ。
それが世話になった村への復讐であり・・・・、
恩がえしでもあるのだ。

ノーフィス

だがその夢もかならずじまい・・・
力が及ばない。
グレゴリュフに破れ・・。
友を捨て・・・。
たどり着いたのは敵地・・。
まあいいだろう。
悪魔に救いなどあろうはずがない・・。

「・・・起きたか?」
機械的な声に我輩は驚き眼を覚ました・・。
そして目の前を見て驚いた。
「おまえは・・・?」
「私であったことがあるのか?”悪魔”?
もしかしたら私の兄弟機ノーヴィスかもしれないな。
あいつの調子はどうだったかい。」
我輩はつぶされるノーヴィスの頭を思い出し首を振った。
「そうか・・・。
おかしいなちょっと思考に異常を感じるんだ。
感情がないってお前にはわからないかもしれないな。」
「ふっ。悪魔に感情にも何もあったものかよ。」
といいつつも我輩は笑っていた。
あの機械もなぜか笑っているように見えた。
「ところで我輩を捕まえてどうするつもりか?
できることならさっさと殺してもらいたいが?」
「実を言うとね協力してもらいたい。
うちのリーダーがどうしてもこの戦いを止めたいといっていてね。」
「そんな話信じるかよ。
・・・ていいたい所だけどもう我輩もやつらのところには戻れない・・。
いいだろう協力してやるよ。」
「ありがとう私はノーフィス。
サードフォース(第三勢力)の副隊長さ。」

その頃にもアジ・ダカーハは迫っていた。
「まずは新兵器をつぶさせてもらおうかねええ」
デビルマグナスはもう完全に群れに順応していた。


第七話襲撃

今日のデクスト〜♪
ロット工場
待機室
ここで数機のデクスト型が出撃を待っていた。
「なあチャ〜リ〜(注デクストの個体識別名称です)。
オイルうめえよなあ?」
「うまいかどうかより動けるかどうかのほうが大事だぜジョン(注これもデクスト
の個体識べ・・・名前です。)。」
「ところでマイケル(しつこいようですが(略)
悪魔がついにせめて来るらしいぜ。」
「へえ楽しみだなあ。」
「戦いに飢えた狼ってか?」
「いや悪魔って三つ願いかなえてくれるんだろ?」
「でも魂とられるってよ。」
「ロットにそんなモン無い〜丸儲け〜。」
「・・・・・(あきれてものも言えない。」
「ところで来る悪魔って何匹?」
「いくらこようとも俺ら千台も配備されてるしニーズヘグ隊長は最強だし〜。」
「50,000体・・・。」
「五・・・・五万?寝返ろうかな?」

アジ・ダカーハたちはこれでも進むことに専念してきた。
もしヘブンのすべてを食らおうと食うことに専念すればその数は億を越えていただろう。
デビルマグナスはその異常なまでの増殖力を畏怖していた。
たった数百体からここまで三日で増殖したのだ。

第八話渇望

永遠にも思えた眠りから醒めその獣は自ら赴くまま行動した。
永遠に満たされない腹を抱えながらも
喰らう事をやめず
自らをより巨大に強大に進化させていく。
無界から出た”彼”にとって
ヘヴンは文字通り天国であり楽園であった。
無界は彼にとって喰い飽きたものであったし
”彼”にとっては少なすぎるご飯だった。
”神”が何を考えていようが関係はない、
”彼”はヘヴンのすべてを喰らうつもりだったし
”神”すらも”彼”にとってはデザートのようなものだった。
”アジ・ダカーハ”は”デビルマグナス”という頭脳を手に入れ
ただの単細胞ではなくなった。
それはさながらひとつの生物・・・。
すべてを喰らい尽くす魔性の存在。
まず前菜の締めに選んだのはロットの工場であった。

「来たか・・。」
ノーフィスは衛星からの熱源反応を確認しながらつぶやいた。
あまりにも予想外な数の上、基地にいるビッグ・3は自分ひとり。
弟の復讐を誓ったはずなのにすぐに弟のところへ・・。
いや機械には天国も地獄もないだろう。
ただの鉄へと帰るだけ・・・。
どっちつかずと言う都合のいい立場などあるはずがないということか・・。
前線ではデクストの第一陣と通称”イーター”の交戦が始まっている。
今のところこちらの被害は軽微だ。
敵は着実に減っている。
あの機体が間に合えば・・・。

とりあえずゼヴァス君にはここに待機してもらおう。
このノーフィスが必ず持ちこたえて見せる。

「チャ〜リ〜あいつらやりあがる。
まとまらせるな。
あいつらの実測戦闘値は2しかないがなにぶん数が。」
デクストたちは機動性を利用しアジ・ダカーハたちをかく乱していた。
だが・・・。
「オイあいつらの行動。
本能による意味の無い動きかと思っていたが。
俺たちを包囲しようと動いている。
やばいぞ。」


「いいぞ、いい子達だついにやつら袋のねずみだ、さあ坊やたちご飯だよ。」
デビルマグナスは高笑いを浮かべた。
「ウギャアアア。」
あちこちでアジ・ダカーハの悲鳴が聞こえる。
「どうしたんだ?坊やたち?」

「待たせたな。みんな、一人では行かせない。
このノーフィスがついているぞ!」
ノーフィスは工場側の薄い部分を集中攻撃して殲滅させていた。

第九話魔剣

まただ・・・。
レーヴァティンがうずいている。
ぼくがこの剣を持ったのは造られて間もないころ。
この剣は試作された後だれももてないことが発覚し専用機を作る計画が進められた。
しかし量産はされなかった。
ぼくもレーヴァティンも・・。
レーヴァティンがこのようにうずくのかだれにも説明はできていない。
でもぼくはなんとなくわかる。
警告してるんだ。
なにを?
カタストロフだ。
運命の上にありえない因縁が
矛盾の連鎖反応を起こし
破壊と死と破滅を呼び寄せる。
ぼくはみてしまった。
もうひとつのせかいを・・・。
でもそれは大いなる悪夢のほんの始まりだった。
サードフォースはぼくの償いだ。
レーヴァティンは教えてくれる。
悪魔の襲来を仲間の危機を。
行こう、なすすべのない運命を選択してしまった自分をあざ笑いに。

「でて来い!
頭脳部が存在していることはわかっている。
しかも一人だ。
単純命令しか出せないことは今わかった。
回り込むなんていかにも単純な命令だな。
その上見たところこいつらには喰う本能しかないと見える。
食欲を常に優先していることは敵を殺すより死体を喰うことの優先を見ればすぐわかる。
それに反する行動をとっているということは頭が要るってことだ!
自分を守らせようたって無駄だぞ。
私の感度を甘く見るな!」

銀色の悪魔が姿を現した。
「久しぶりだな。
皆さん。
仲間であったのはしばらくの間だけ、
時空を旅してきた俺様には悪魔のほうが懐かしいのさ。」
「デビル・・・マグナス。
裏切ったのか?」
「いや違うさ坊やたちといるほうが気分がいいのでね。」
「では坊やたちと行く末をともにしてはいかがでしょうか?」
デビルマグナスの後ろに一人のロットがいた。
「ニーズヘグ・・・隊長・・・?」
「すまない、レーヴァティンが教えてくれなければ間に合わなかったよ。」
「くそがああああああああああああ。」
デビルマグナスはニーズヘグに飛び掛った。
ニーズヘグはひらりとかわした。
「坊やたち、やっておしまい!!!!!!」

すべてのアジ・ダカーハがニーズヘグに飛び掛った。
「安らか眠りを・・・坊やたち。」
ニーズヘグはレーヴァティンをアジ・ダカーハの最後列まで投げた。
「はあ?何やってんの、安らかな眠りにつくのはお前たちじゃねえか。
何得物を見当はずれなところへ投げてんだよ?」
「子守唄は何がいいかい?空間圧縮!!!」
レーヴァティンがニーズヘグを軸に回転する。
そのかいてんの円がやがて小さくなり、残ったのはニーズヘグだけだった。
それを見たデビルマグナスは恐れながら言った。
「坊やたちはどこへ?」
「いるべき場所へさ。」
ニーズヘグは笑いながら答えた。
「いるべき場所・・・・?」
「おかしいな?わからないのかい?
悪魔のいるべき場所といったら地獄しかないはずだよ?」

第十話悪魔

ええ〜わたくしデビルマグナス。
ただいま人生最大の危機です。
俺の時代が来たーてことで調子こいてオカマっぽくなっていたのもつかの間ニーズヘグって人
が着たんです。
強すぎマジありえない。
反則だよー。
マジ降伏っす。
ええとあれだね命あってのものだね。

「却下。」
ギャーこの人却下だって冷血〜。
あ、機械だもんね。
って感心してる場合じゃないだろう。
「あのうあいつを許してやってくれませんか。」
お、(都合の)いいやつ発見。
ってだれ?
「ゼヴァス?」
「ノーフィス?この悪魔はだれでしょうか?」
ゼヴァス君かあ、よっしおっちゃんが今後出世したら礼をしてあげるよ。
「ニーズヘグ、あんたは冷酷を装ってはいるが、
アジ・ダカーハを殺したように見せて無界へ返しただけでしょう。
無界の空気がした。
あいつらはまた眠りにつくでしょう。
しかしこの子は元は無界のものじゃない。
それにあんたは何か負い目を感じてるのじゃないでしょうか?」
この子て?
「負い目だと?
ぼくがなぜそんなものを?」
「その剣・・・。レーヴァティンといいましたね。
なぜそんなものができるかは知らないが、その剣は魔力を帯びている。
そんなものは無界の外でははじめてみた。
そしてあんたらは悪魔について何か知っていた。
”つまりこの悪魔戦争の原因を知っているな?”」
悪魔戦争?
「いいでしょう、君もこの子も仲間として認めます。
争ってなんていられません。
・・・こんにちは。
すごい魔力ですね。
大悪魔というやつでしょうか?」
冷たい声がした。
「なるほど・・・。
かなりできるようだ。
アジ・ダカーハを破り、闇と同化した我を察知するとは・・・。
この大悪魔長グレゴリュフの相手にふさわしいわ!!」

ちょ、一難さってまた一難また変な人来た。


第十一話恐怖

「ひいふうみいよう、
四対一か・・・。」
「怖気づいたのかい?」
ニーズヘグは嘲り気味に言った。
「君は虫を恐れたことがあるかい?
私にとって君たちなど虫以下だよ。
さっさとかかって来たまえ。
・・・・そうか、私が悪かった。
ハンデだ、私は右手しか使わない。
これでいいだろう?」
ノーフィスは怒った。
「これで対等だというのか?なめやがっって!!!」
「対等?
馬鹿なことを言うのはよしたまえ、
君は虫をいじめるとき全身を使うのかい?
手しか使っていないというから虫と対等だというのか?」
ノーフィスはグレゴリュフに突っ込んでいった。
グレゴリュフは右手を使ってはらった。
ノーフィスは地面にたたきつけられた。
「さて次は誰かね?」
「まだ私の相手をしてくれないか?」
ノーフィスがグレゴリュフの後ろに回っていた。
「いつの間に?」
ノーフィスはグレゴリュフに銃を乱射し、銃の煙が立ち込めている。
「これでどうだ、まだハンデとかふざけたことを言ってられるか。」
煙りから出てきたグレゴリュフは口から血を流していた。
確実にダメージは与えられている。
チッ、グレゴリュフは舌打ちした。
「ダークネスミスト。」
グレゴリュフの体の一部が闇に変化しノーフィスの視界を奪った。
目標消失・・。
発見できません。
「くそ・・・。」
「シャドウ・クロウ!」
グレゴリュフの右手が闇と同化した。
「くっくっく、死ね!!」
やや肥大化したつめがノーフィスを貫いた。
・・・・ように見えた。
ニーズヘグがノーフィスを抱きかかえつめをかわした。
「君は先立ちすぎですよ。ノーフィス。
・・・グレゴリュフさん
ぼく達を甘く見ないでください。
僕は悪魔もロットとも戦うつもりはありません。
でも戦うというのら潰しますよ?
全力で!!!」
「ふんいくら群れようと、貴様以外はただの雑魚だ!
頭をつぶせば終わりだ!」
ぷっつん。
「ぼくを潰すって?君がかい?
馬鹿も休み休み言え、
貴様が俺に勝てるわけがない!!
肉片も残さん!!
死ね!!!悪魔!!!」
「そうでなくては面白くはない。
ディメンションオブザダーク!!!」
五本の黒い塔が回りに立った。
「ほう、あくまで右手にこだわるかい!!!
よかったな!!負けたときの言い訳ができて!!!」
「これをかわした時にほざけ!!」
五本の塔が四人を包んで、収束した。
「どうだーーー!!!
虫けらども!!!
俺は役立たずなどではない!!!
大悪魔長!!
その名にふさわしい男だ!!!
グレゴリュフ!!!
無界の頂点には俺が着く!!!
ヴィシュヌめ!!!ヴィシュヌめ!!!
見ているか?あーはっはっはっは!!!
俺は闇を吸いここまで強くなったのだ!!!」
「かわしたよ、グレゴリュフさん。
猿芝居に付き合ってくださってありがとう。君はさっきのでだいぶ消費したね?
それが狙いだったよ。
ぼくが本当に頭に来て頭も回らず大技をかわせないとでも?」
「そうか。そうか。
何か不自然だと思ったら、
そんな小賢しいことをしていたのか・・。
だが残念だったな。
闇は無限だ!!!」
「小賢しいのが虫だろう!!!
ゼヴァス君デビルマグナス君、やつをひきつけて
ぼくがレーヴァティンで貫く。」
「そんなにうまくいくか、即興だぞ。」
「坊やたちがいれば・・。」
「小賢しいことは思いついたか?
では行くぞダークネスレイン!!」
闇が雨状に変化し降り注いだ。
「地獄の目!!」
ゼヴァスは雨を石に変化させた。
「いてっいてっ、ゼヴァス君逆効果。」
「闇の雨に打たれたいというのなら我輩はとめんがマグちゃん?」
(マグちゃんて・・。)
雨に打たれた部分は腐り始めている。
「な?」
「すいません。」
「もう右手以外も使わせてもらうぞ!
所詮俺は木偶の坊さ!
虫けらごと気に躍起になっちまう。
イーヴルアロウ!!!」
グレゴリュフの両手に闇が集中する。
集中した闇がゼヴァスに向かってはなたられる。
「危ない!!ゼヴァス君」
「大丈夫だ地獄の目を持ってすれば!!」
矢は石化した。
「よしいくぞ!!」
二人はグレゴリュフに近づいた。
「あぶない!!」
石の矢がゼヴァスに迫っている。
デビルマグナスはそれを身を挺して受け止めた。

「いまだ!!」
ニーズヘグはグレゴリュフに突っ込んだ。
しかしニーズヘグははじかれた。
そしてはじかれたニーズヘグを黒い針が追撃している。
「くそ!何てことだ。」
「無駄な犠牲・・・。だがやつは所詮浮浪者・・・。どうでもいいだろう?
それよりどうする?
今俺は闇以外をすべてはじくヘレティック・フィールド、
はじかれたものを追撃するデス・ニードル、
近づくことすら困難にするダークネスレインによって守られている。
もはや全身が使えるようになったからな。」
「糞やろうめ・・。」


ああ・・・らしくねええことしちまった・・。
でもいいだろう?
やっと”仲間”が見つかったんだ・・・。
そのためにさまよっていたのかもしれない・・。
願いはかなったんだ・・・。
ゼヴァス君・・・優遇してあげなくてごめんね。
ああ・・・ゼヴァス君の声がする・・・。
悪魔の次には天使に会うのかな・・・?
三つの光が・・・。
ひとつになった。

「あんたは?」
「ナイスだぜ俺の中で生きろ。
俺はフリートドリブ。
今さっき生まれたんだ。
守るために、
君の仲間を!!」
第十二話造反

「完成したのか、ついに・・・。
わが軍最終決戦用兵器
metro-6-78 が・・・。」
ノーフィスは間に合ったか・・と胸をなでおろした。
「ゼヴァス君・・。」
フリートドリブはつぶやいた。
「なんだ?」
「俺はロット軍の頂点に立つ、そのときは秘書にしてやるよ。」
「ハァ?」
「オイ、でくの坊!!!よくもやってくれたな!!
俺の仇をとってやる!!!
みんな見ていてくれ!!!」
「でくの坊ってのは俺様のことかーーーー」
グレゴリュフは憤った。
「死ねええ、ダークネスレイン。」
ドリブはファンシールドでダークネスレインを弾き飛ばした!!
「おのれ!!ヘレティック・フィールド!!!」
ドリブははじかれた!!!
「ハッハッハ、死ね!!デス・ニードル発動!!!」
黒い矢がドリブを襲う!!
「残念だったなもうネタが割れた時点で終わりなんだよ!!」
ファンシールドでデス・ニードルをはじき返した!!
「闇は跳ね返さないんだったよな!!」
デス・ニードルがグレゴリュフを貫いた。
「ぐはああああ。」
雨とヘレティックフィールドが消えた。
「どうだい?三下野郎?
これがマグナスの分だ!!」
グレゴリュフはどす黒い血をはいた。
「おのれ・・・・こんなやつらに遅れをとりおって、考えもなしに無界から出るからだ・・・。
・・・だまれ・・・、更なる闇がほしかったのだ俺は・・・。
無界でおとなしくしてればいいといったのだは私は・・。
・・・そんな考えだからヴィシュヌになめられるのだ・・・。」
グレゴリュフの目が青から赤になったり紫になったり変化をしている。
「どうした?
混乱したのか?」
グレゴリュフの目が青くなった。
「仕方ない・・・あの手を使うぞ、よしいい位置にいるな。
貴様の言った作戦通りだ。
・・・・よかった、最後の手段を残しておいて。」
「負け惜しみか?」
ノーフィスが言う。
それに答えたのはゼヴァスだった。
「そうではない、グレゴリュフ様は最後の手段を残していた。これはいただいておく。」
ゼヴァスの手にはレーヴァティンが握られており、
ニーズヘグは倒れていた。
「おまえ!!!?」
ドリブとノーフィスは戸惑っている。
ゼヴァスはグレゴリュフのそばにより言った。
「さあさっさとけりをつけましょう。」
  第十三話応報

時をさかのぼって、無界。
ゼヴァスが旅たつ前。
「グレゴリュフ様?いますか?」
「だれだ?・・・ゼヴァスか。
えらく改まっているな。どうした?」
「あなたに頼みがあってきたのです。」
「ほう?
貴様も闇の眷属に?
あれほどわれらを憎んでいた貴様がか?」
「へヴンについては聞いていますね?」
「新しい領域のことか?」
「我輩はそこで一芝居します。
ヘヴンの住人たちに取り入り、あなた様に情報を与えます。
貴方は無界で居座りアジ・ダカーハを少しづつ闇で掌握しヘヴンをのっとります。
その後は貴方の気の向くままに・・・。」
「だがしかしなぜ貴様が私に?」
「我輩が貴方を憎んでいたのは事実ではございますが、
このままではハウレスに復讐ができません。
貴方様の闇を手に入れさらに強大になるという野望と我輩の願いが一致するからです。
それに・・・。
わが憎しみは悪魔への裏切りの確固たる証拠になるでしょう。」
「ふんいいだろう。」
(駒は多いほうがいい)

「どうしたんだ?ゼヴァス君?」
「貴様・・・・。」
ドリブは困惑しノーフィスは怒っている。
「我輩はこんな野郎なんだ。すまんな。」
グサリ

グレゴリュフは血を吐きながらその身を貫くレーヴァティンを見た。
「貴様・・・?」
「・・・・・・お前は裏切られて・・・・・死ね!!!
我輩は知っているぞ!!
あのときの真実を!!
我輩が戦いに疑問を抱いたあの日!!
お前はあの村を襲うとき、我輩をだしにしたな?
あの村は悪魔とエルンのハーフの村だった!
故に邪神たちも狙わなかったのだ!!
だが闇を欲した貴様はその村を破壊するために我輩を利用した。
そして全責任を我輩に押し付けたのだ。」

「・・・・そのあと我輩は、こんなとこまで来てしまったよ・・。
憎しみ、世界への憎しみ、友に捨てられ、もう何もない。
野望すらも薄れてきた。
お前のせいだ、ノーフィス、なぜ我輩を殺さなかった。
我輩はこの狂った野望、かなわぬ野望の道程でのたれじぬはずだった。
・・・ありがとう・・・ノーフィス。
我輩はこの一撃ですべてを捨てることができた・・・。
マグナス、ドリブ、ニーズヘグ。
我輩の望みはお前たちと一緒だ。
戦いを・・・破壊を・・・死を・・苦しみを・・・止める!!」

「くそがああああ、血!血!血!
この私が滅びるなどということはあってはならないイイイイイイイイイイイイイイイ。
グレゴリュフ最終奥義暗黒回帰!!」
グレゴリュフが闇に変化し三つに分かれた。
「死のはさみ!!!絶望の蟹!!!闇死鳥!!
やつらを倒せ!!」
「行くぜみんな分離!!!」
ドリブは三つの戦艦に分離した。

ドリブと闇の生物が戦っている間。
「すいません、お返ししますニーズヘグさん。
話をすぐに信じてくださった感謝しています。」
「僕はね、君の目を見てすぐに信じたよ、
レーヴァティンも君に答えただろ。」
ドリブが帰ってきた。
「みんな闇は倒したが、本体は逃げてしまったようだ。」




アンノーンゲート。
「・・・・おのれ糞どもめ・・・・。
こうなったら、無界の門を空けたやつを探し出し門を閉じ無界だけでもいただく・・・。」
「よんだかい?」
そこに一人の悪魔が現れた。
「貴様は・・・カインとかいったか。
お前があけたのか?
俺はゼヴァスの裏切りによって傷ついた。
どうだ?無界の半分をやる。門を閉じろ。」
「やだね・・・。
いまさら上級悪魔程度の言うことなんて聞くものか、
俺はねえ、ついに闇の神の眷属となったのだよ。
ヴィシュヌもゴットも俺は倒すね。
にしても・・・ゼヴァス・・。
あんたをやるようになったとはお互い高みに上ったもんだ。」
「糞が!シャドウクロウ!!」
「アンノーン・フィールド!!
あんたの真似だが、何以外をはじくのかはわかんないぜ。」
闇は消えた。
「もう、闇を完全に失ったようだな、
だんだんとお前さんが薄れていくようだぜ。
冥土の土産に教えてやる。
俺が神になるためにつけた俺の新しい名前。
終末戦争(アルマゲドン)。」
「お・・覚えて置け・・。」
「?」
「貴様は神になったつもりでいきがっているが・・・。
貴様は神の操り人形に過ぎん。
闇に生きた俺にはわかる・・・。」
破壊神カタストロフの鼓動が・・・・・。
グレゴリュフは完全に夜の闇と同化していった・・・。

第十四話真実

レーヴァティン、暖炉の火に照らされてそれは光っていた。
「ニーズヘグさん話って何ですか?」
ゼヴァスは問う。
「君は無界のものだからか、レーヴァティンをうまく扱えた。
だからこの刀の秘密をはなそうと思う。」
「秘密?」
ニーズヘグは語りだした。

この刀が無界の門を開くことは知っていただろう。
それがこの能力を持つと知ったのはつい最近のことだ。
ぼくはいつものように敵を排除していた・・・。
そのときだ、レーヴァティンが今までにない熱量を持ち空間を切り裂いた。
そこでぼくは見た。
もうひとつの世界を・・・。
無界、悪魔の領域。
悪魔はエルンと呼ばれる種族との雌雄を決めようとしているところであった。
ぼくは悪魔に気づかれぬうちにその門を閉じた。
そこまでは問題がなかった。
ぼくはある新型と仲がよかった。
ドリブとぼくとそいつは同時期に生まれた兄弟みたいなものだったんだ。
ぼくはそいつに無界のことにを話したらそいつはそこに興味を持ったらしい。
一度そいつの前で門を開いた。
いろいろな悪魔。
首がたくさんあるものや巨大な悪魔、しかし彼はそれらに興味を持たなかった。
しかしある悪魔を見ると彼はそいつに向かって話しかけたのだ。
「来い、力だ。力がほしいだろう、扉を開け!お前にはできる!!」
そうそいつを追って大量の悪魔がやってきた。
ぼくは責任を感じた。
ぼくは見た知ったのだ、こいつらとわれわれが戦えば双方ともに滅ぶと。
ぼくは決めた。
第三の止める力を作ると。
ぼくはある二人に協力を求めた。
そしてドリブの開発工場を本拠地にして悪魔を迎え撃つことにしたのだ。

「ある二人とは?」
「君もご存知のノーフィスと・・・・。」
「わたしだ・・・・。」
ものすごいオーラとつめたい声がした。
どこかで知っているような。
「悪魔?」
「悪魔で悪いか?ゼヴァス君とやら、君も悪魔だろう?
わたしは鎧魔。ビック・3。サードフォースの創始者最後の一人だ。」

第十五話説得

我輩は今ドリブとノーフィスとともにアンノーンゲートに向かっている。
我輩たちは悪魔を説得するため、ニーズヘグと鎧魔はロットを説得するため向かっている。
果たしてこんな作戦がうまくいくのか?こんなメンバーであるし・・・。

「・・・・・交渉が決裂したらどうします?」
我輩の放ったこの疑問に対し奴が放った答えはこれだ。
「ヴィシュヌでも何でもぶっ殺しちゃえば?グレゴリュフにも勝ったゼヴァス君なんだし?」
あれは卑怯な手も使っての辛勝じゃないかあれでヴィシュヌに勝てるなんて狂気の沙汰だ。
ハウレスやアルミューレですら次元が違うのに・・・それが合わさった超パワーとは・・・。
説得を聞いてくれるかすら怪しい。
あの鎧魔と言う男一体何なんだ?
ニーズヘグ隊長も最古参の仲間だというのに警戒している様子だった。
「ニーズヘグさん、無理だと思いますがレーヴァティンを貸してくれませんか、とても上級な悪魔
にはかないそうもないもので。」
ニーズヘグは困ったような顔を鉄の上ですら判るように作って答えた。
「馬鹿いうなよ、ぼくにあれがなかったら、丸腰だよ・・・。
・・・仕方ないな、レーヴァティンほどではないけど、このデビルキラーを持ってけ。
ぼくも厄介な問題を抱えてるんだすまんな。」
デビルキラーの読めない刻印を見ながら、ニーズヘグにとっての厄介な問題を考えた。
明らかに厄介な問題とは説得するべきゴットではなく鎧魔のようだった。


アンノーンゲート前。
ザーゴンは悩んでいた。
俺はまだハウレス様との約束を果たしていない。
殺されるかもしれない。
いやそれならまだいい・・。
ゼヴァスを殺して生き延びようなんていう考えはない・・。
だがまたあってしまったら、俺は戦いを選ぶかもしれない。
自分のふがいなさ、そして敵への殺意の欠如は明らかに無礼。
奴は意思を持って外へ出た。
だが俺はハウレス様の恐怖に操られた人形だ。
どちらが勝つかなど・・・・。
「なーに深刻な顔してんのよー。」
ヘレバルス様だ。
わざと陽気に振舞い励ましてくれている。
「どうやらグレゴリュフがやられたらしい。
あいつはやなやつだったけど、いなくなるとさびしいもんだなあ。」
「グレゴリュフ様が!!!!?」
「ああ、まあ奴との戦いでは一度も奴は俺に触れることができなかったがな。」
「・・・・あのグレゴリュフ様がですか?
・・・・ってあなたグレゴリュフ様と一度も戦ったことないでしょ・・・。」
「そうでしたー。」
(だめだこのひと。)

  第十六話復讐

ザーゴンは星を見ていた。
こんなに醜い自分にも夜空は美しい姿を見せる。
それが惨めさをいっそう深くするのである。
「どうしたんだい、ザーゴン君?」
ヘレバルスが声をかけてくれた。
「ゼヴァスやカインみたいに俺も無界から出て行けば俺は苦しまなくてすんだのでしょうか?」
「それはわからない、君が出て行けば俺は一人残されてしまうわけだろう。それに君もハウレス
様の敵になってしまうよ。」
「ですよね。」
ザーゴンはため息を吐いた。
白くなった吐息は美しくザーゴンをいっそう深い闇におとした。


「見えてきたプテよ。」
プテロットのとめきちが知らせてくれた。
「まあ、我輩はわかっているがね。」
ドリブはお気楽で見ていられない。
ノーフィスはどうというと何かおかしかった。
「おいどうしたのだ?」
「プログラムエラー、質問には答えかねます。」
人工知能は集中しているようで、応答を自動に任せているようだ。
向こうを見ると誰かが手を振っているようだ。

「お〜い。こっちだよ〜。」
ヘレバルスは手を振っていた。
「さっきからどうしたのです。」
ザーゴンはたずねた。
「ゼヴァスが着たんだ。」
「何ですって!?」
ついに覚悟を決めなくてはならないのか・・・・。
でもなんでこの人こんなにお気楽なんだ。
本当に大悪魔か?
「ゼヴァスちゃん、おっ久しぶり〜。」
いまだ親友であるかのようにヘレバルスはいった。
「お久しぶりです、ヘレバルス様、・・・・ザーゴン。
ヴィシュヌ様に会わせて頂けないでしょうか?」
えらく丁寧だな・・以前では考えられない・・・。
「ごめん、ゼヴァスちゃん、それには答えられない?かわりに遊んでいくか?」
ひどい違和感を感じた。
その機械生物・・。
以前と似た殺気。
「・・・・殺す。」
ノーフィスの剣がザーゴンに振りかざされた。
これで死ねる・・・。
だがノーフィスは弾き飛ばされた。
「何をするのだ!!ノーフィス?」
ゼヴァス・・・、君という奴は。
ノーフィスは立ち上がりながら答えた。
「復讐だ・・・。ノーヴィスの復讐だ!!!
弟はこいつに殺された。ブラックボックスで確認した!!!
こいつだけは・・・こいつだけは・・・・。
殺す!!!!!」
いいだろうこれが神の定めた運命ならば受け入れよう。
さようならゼヴァス・・・・。

第十七話実力

ゴット軍中心部、アンタッチャブル・ゾーン。
「おかしいプテ。」
「どうしたプテ?」
「気温が下がってるプテ、ゆっ雪が降り始めたプテ!?」
雪は強まり吹雪となった。
「あ〜れ〜飛んでいってしまう。飛んでいっつぁいまうプテ〜。」
吹雪の中から白い悪魔が現れた・・・。
「ここか・・・。」
(もうすぐだ・・・。)
「鎧魔、あそこだ・・。」
「あの森林の向こうか?」
(いいだろう挨拶代わりだ・・・。)
鎧魔が消えたかと思うとすべての木を伐採し終わっていた。
「これで見やすくなったろう?」

「・・・・ノーフィス・・・。」
「貴様だけは殺すぞ!!ザーゴン!!」
再びノーフィスがザーゴンに切りかかった。
しかしノーフィスの剣は空を舞った。
「・・・せっかく、会えたのだ。ゼヴァスに・・・、考えてみれば君に義理などない・・・。
これは戦争なのだ・・・。ノーヴィスは俺に殺されたのではない・・。
時代に呑まれただけだ・・。」
「ほざいたな外道!!それでこそ殺し甲斐がある!!!」
ノーフィスはザーゴンに飛び掛った。
「やめろ!!!」
ゼヴァスは二人を止めようと走り出した。
しかしヘレバルスにさえぎられた。
「なぜとめる?この闘いは自然なものだろう?
考えが違う、種族が違う。この対立。
よっぽど君らがグレゴリュフと戦ったことのほうが不思議だよ・・。」
「貴様・・・。」
ゼヴァスはヘレバルスをにらんだ。
「いいねえ、その眼、それだよ。俺が君をほっておいたのもそれがあるからなんだ。
ふざけてみたりしてきたけれど、やはり戦いを超える娯楽などない。
来なさい。君とそのロットで。
本当のヘレバルスを見せてあげよう。」
ヘレバルスは剣を抜き構え始めた。
「木刀だとふざけやがって!!」
「王覇妖屯術”むどう”」
ヘレバルスは構えたあと、まったく動かなくなった。
「オイ何のつもりだ。」
「無動、つまり動かないってことだよ。」
「なめやがって!!!」
ゼヴァスは飛び掛った。
「無道とはお前の勝利への道、つまり勝ち目はない・・。」
ヘレバルスはもう一本の刀を抜きゼヴァスを切った。
木刀なのでダメージはなかったが力が抜けた。
「無導とはお前を助けるもの、すなわち何もない。」
ゼヴァスは第二撃で吹っ飛ばされた。
「大丈夫か、ゼヴァス君・・・。」
「・・・ああ、どうやら完全に時間稼ぎの技のようだ。」


「分身か?」
大量のノーフィスに対してザーゴンが聞いた。
「そんなちゃちなもんじゃぁない。
これ貴様の脳へ直接送信しているのだ!」
「つまり通信技術の応用か?」
「そういうことだ!!疑問は解けたろう?死ね!!!」
しかしまた攻撃は外れた。
「機械とは実に電気を帯びやすいものだな。
四つのパワーのひとつ電気磁力を貴様に与えた。
つまり似たもの同士は反発するってことさ。」
「貴様と私が似てるだと?」
ノーフィスは声を荒げて答えた。
「俺の能力、ヘヴンで目覚めたものだが・・・、
俺は機械化すると同時に磁力を帯び、
相手に磁力を持たせることができる。
お互い手の内は明かした。これで平等だろ?
そして・・・。」
「そして?」
「お前も戦いながら、気になってしょうがないのだろゼヴァスのことが!!!」

  第十八話鎧魔


大量のロットがこちらを見ている。
気配はそれ以上に感じられる。
そして中央に座する圧倒的存在感!!!
機械仕掛けの神!
造物主殺し!
宇宙の帝王!
”ゴット”!

「ニーズヘグ将軍、彼は誰かね?」
ゴットは静かにそれでいて、威圧的に、たずねた。
「ぼ・・、わたくしは、このたび現れましたラクシ。
いや悪魔というべきでしょうか、との交戦は、
双方の不利益であると判断し開戦を踏みとどまっていきたいと。
彼は悪魔側の意思を伝えに来たものです。」
「それで悪魔側の返答は?」
「・・・・ろしだ・・・・・つども。・・・」
「うん?聞こえんなあ?」
「皆殺しだ!!!くず鉄ども!!!
ヘヴンはこのヴィシュヌがいただく!!!」
ニーズヘグの前に悪魔などいなかった。
それはまごう事なき神!
悪魔をすべる究極の王、ヴィシュヌ!
「ご苦労だった。隊長、鎧魔のときは世話になった。
実に面白かったよ。
サードフォースという茶番劇は!!
お初にお目にかかる機械仕掛けの神よ・・。
ただの雑魚ならヘヴンだけいただこうと思っていたが、
神よ、その強さとカリスマは敬意に値する。
神よ・・・、私はあなたにひとつだけ望む、戦ってくれ!!」
「悪魔の神よ・・・。
私も貴方のような方にあえてうれしい。
つまらない日常に存在理由すら喪失しかけていた・・。
だが・・・、今は運命に感謝しているぞ!!!」

・・・・・そして異次元の戦いが始まった。

第十九話決着

目と魔剣
「ザーゴン・・・・、ノーフィスやめてくれ・・・。」
ゼヴァスの悲痛の声がむなしく響いた。
「さあ、早く俺を倒さないとやばいぜ?」
ゼヴァスは地獄の目でにらんだ。
「オイ・・・・、勘弁してくれ反則だぜ・・・・。」
ヘレバルスは剣を地面にぶつけて煙幕を作った。
「煙陣幕、っと、まあ反則して勝てるなら安いもんだな。」
ヘレバルスは笑っている。
ゼヴァスはヘレバルスを無視しザーゴンに向かって走り出した。
しかしヘレバルスはすぐに追いかけてきた。
「まあそうするわな、でも残念それも反則だ、お仕置きが必要だな?」
すぐにゼヴァスに追いつきゼヴァスの腹を剣で突いた。
「王覇滅殺剣!!!!」
無数の突きがゼヴァスを襲った。
ゼヴァスの視界は心は消えていった。
それを見ていた三人は、戦いをやめゼヴァスに近づいた。


魔皇と神帝
「すごいオーラプテ・・・、やばいプテ・・・。」
とめきちは最大のピンチを迎えていた。
「助太刀しますゴット様!!!」
数機のロットが銃を構えた。
「ほう、親衛隊か?」
ゴットは少し目をそらした。
「くらえ!」
無数の銃がヴィシュヌにあたった。
「ククククククク、これがクラッカーという奴か?
歓迎してくれてるようだな。ありがとう。
でも雑魚に用はない!!!」
ヴィシュヌは無傷だった。
一瞬だった。
親衛隊はすべて破壊された。
「なるほど魔を包む鎧、つまり鎧魔というわけか?」
「そうだ、私はうれしいよ。
ゴット、そうだ、お礼ついでに一撃だけ攻撃していいぞ。
ほら?一撃だ絶対よけもしないし防御もしないぞ。」
ゴットは沈黙している。
「どうしたんだ?気が変わってサービスタイムが終わっちまうかもしれないぞ?」
「そうだな、お言葉に甘えるとするか?」
ゴットの体からまばゆいい光が放たれた。
光はヴィシュヌの全視界を奪った。

光が消えるとゴットはいなかった。
「閃光弾か!!!逃げたか?見損なったぞ!!!ゴット!!!」
天井には大きな穴があいている。
「上か!!!」
ヴィシュヌは逃がすまいと高速で飛んだ。
「いない・・・。」
「こっちだ、食らえギガ粒子砲!!!」
ヴィシュヌが出て行った天井の穴の真下、つまりゴットはまだ中にいたのだ!!
ヴィシュヌはギガ粒子の直撃を食らった。
「一撃を食らわしてあげる?おいおいなめてるのはそっちではないかな?」
ヴィシュヌがいたところには大きな炎が燃えている。
「そうであった。すまないゴット・・・。ここからが本番だ。
エッジオブメギド!!!」
「そう来なくてはつまらん!!!
エナジーセイバー!!!」
二つの高エネルギーの衝突により巨大な爆発が起こった。

瓦礫の山の中で二人はたっている。
「ハハハ、こんなに力を消耗したのはいつ以来か?」
「ものすごく楽しいぞ、貴様のようなやつがいたとはなヴィシュヌ。」
二人は、眼で行くぞ。と伝えた。
であったばかりの二人であったが、古来よりの仇敵同士、親友同士のようになっていた。
ヴィシュヌがエッジオブメギドを構えたそのときである。
”邪魔者”が現れた。
ヴィシュヌは腹に違和感を感じた。
それを見るとヴィシュヌは笑いながらいった。
「これはこれは隊長殿、いまさら副隊長の私に何の用かな?」
「ニーズヘグ、私の邪魔をするな。」
しかし邪魔者は”神”の忠告に耳を傾けずいった。
「鎧魔!!!貴様を倒せば、この戦争は終わりだ!」
「それはそれは異なことを、隊長殿は何よりも悪魔との戦いを止めようと必死だったのではあり

せんか?」
ヴィシュヌはニーズヘグをからかうようにいった。
「それはただの建前だ!!!
戦争を終わらすのはいつの時代も対話ではなく暴力だ!!!」
ヴィシュヌは自分に刺さっているレーヴァティンを優しく抜くといった。
「ほう、隊長殿がはじめてまともなことを言いなさったな。
でもなぁ?ニーズヘグ?貴様に私を屈服させるほどの力があるのか!!!!」
ヴィシュヌはニーズヘグをつまむと吹っ飛ばした。

「さてどうするか?」
「そうだな、奴のせいで興が醒めたわ。
今度はしもべどもも楽しませてやろう、
次にあったときに決着をつけようではないかヴィシュヌよ、貴様に会えたことは”隊長さん”に感
謝しているがね。
アーハッハッハ!!」
「ふん、私はいつでもいいが、
まあ、でくの坊たちもうずうずしているだろう!!
では今度またあおう。」
ヴィシュヌは炎に包まれ消えていった。
一人残されたゴットは瓦礫に向かって言った。
「いいのかね、隊長は向こうの辺でしょぼくれてるよ、とめきち?」
飛んでいく最後の生き残りを見ながらゴットは
いつも以上に快調な歯車の回り具合を一人楽しんだ。


天にその声は響いた。
”力を求めるものよ!!
ヘヴンに入ることを許可する。
階級は問わん、心行くまで闘争を楽しめ。
司令官はヘレバルスに命ずる!!!
私の”悪魔戦争”の始まりだ!!!”

第二十話対話

・・・・・・また一人消えそうだよ・・・。
赤い宝石が伝えている。
「またか、グレゴリュフの次はだれなんだ?」
白い悪魔が聞いた。
「君の友達のあの子・・・、ゼヴァス君だっけ?」
カインはそれを聞いて少し動揺しているようだった。
「らしくないな、アルマゲドン?悪魔を全滅されるんじゃなかったのか?」
黒いロットが様子を見ながら言った。
「・・・糞が・・・・。」
「どうして?」
赤い宝石がたずねた。
「?」
二人は宝石の言葉に耳を傾けた。
「彼もグレゴリュフも、力を欲しなければ、死ななかった。
僕にはそれがわからない?」
「聞いてみたらどうだね?」
カインは言った。
「わかった、いってみるよ、君たちにより協力するために役に立つかもしれない。」

光が去った後、ラグナロクはカインに聞いた。
「いいのか。いかせて?」
「あれは何度も勝手に出て行っている。
そのたびに成長してるじゃないか。
破壊神”カタストロフ”は。
それに・・・。」
もしかしたらゼヴァスを・・・。
俺に残された最後の良心か・・・。


悪魔との対話

ベットに横たわる悪魔を一人のロットと、悪魔が心配そうに見ている。
・・・ああ、ニーズヘグはうまくやってくれただろうか、いやだめだろうな・・・。
せめて我輩が・・・。
君はゼヴァス君だね?
?お前は天使か死神か?
神だよ。
・・・・神か、なら我輩に力をくれ。
もういらないのではなかったのかい?
愚かだった。
理不尽な暴力に対して我輩はあまりにも無力だった・・・。
君も理不尽な暴力がほしいの?
いや・・・せめてもう一度守るための命を・・・。
・・・そしてまた死ぬの?
かも知れない・・。
このまま楽になったほうがいいよ。
・・・心残りだ・・・。
ザーゴンとノーフィスかい?
・・・・ああ。
我輩も可能性はあった・・・。
ノーヴィスを殺しノーフィスにねらわれる可能性も・・・。
そのほうがいかに良いか?
妙に自己献身的じゃないか?
ひとつだけ頼みがあるノーフィスを説得する時間をくれ・・・。
いいよ・・。
だけど君は素敵ではなくなったね、
破壊の欲望を持っていたらどれだけ僕が君に貢献できるか・・・。
なぜなのグレゴリュフに復讐して満足したの?
そんなちっぽけなの?
もう良いよ!君からは僕の目標が何かわかるもんか!


ロットとの対話

憎い・・・。ザーゴン・・・、ノーヴィスの墓標に奴の首を・・・。
このどへたれ!めのまえにいるじゃん。
さっさとやってしまえ!
だれだ?
神だよ。
ふざけているのか?
「どうした?」
「てめえに心配される筋合いはねえ悪魔!!」
怒鳴っちゃってばっかみたい、ゼヴァス君がおきちゃうじゃない。
ゼヴァスは生きてるのか?
うれしいの?
うれしいさ。
おまえがやったのか?
そうだよ。
じゃあこっちの質問に答えてよ?
どうしてザーゴンをすぐに殺さないの?
弟の仇でしょ?
ゼヴァスの・・・親友・・・だからだ。
ゼヴァスに嫌われたくないの?
・・・・・ああ。
ザーゴンも同じだよ。
あいつを許せるの?
わからない・・・、時々おかしくなる、
あいつを殺したいのが私の本心なのか。
そうでなくてはノーフィスは浮かばれない・・。
ノーヴィスとゼヴァス大事なほうをとれば良いじゃない?
そんな簡単に言うな!!!!
君が難しくしてるじゃないか?
僕の望みはみなが望む破壊・・・。
真の答え。
教えてあげるよ、お前が死ね!
そうすればノーヴィスにも会えるし無駄なことに頭使う必要もない。
あはははは。

神との対話

何をそんなに喜んでいるの?
この波動、音に聞く破壊精神か・・・。
そうだよ・・・。
次元を旅し、自らの望む答え、
捜し歩いた・・。
無界、ヘヴン・・・あらゆる世界。
ロットと悪魔を合わせれば答えが見つかるってね。
未熟で不明確だったけど、まともに会話できるくらいに進化できたよ。
それでか?ずいぶんおしゃべりなのは?
そうだね。悪魔の神様。
ゴットにあえてうれしい?
そうだ。
私は彼に会いすべてを彼との戦いに向けたい。
勝ちたい?
いや純粋な戦いへの渇望だ。
勝ち負けなど関係ない。
思えば今まで下らぬ勝利、ちゃちな成功、つまらぬ結果に
一喜一憂していた私が愚かであった。
ヘヴンはどうでもいいの?
ヘヴンはおろか、無界、悪魔どもにすら興味はわかない。
奴との勝負という究極の過程・・・。
それこそが・・・。
望み。


ゴットさん。
何のようだ。
ヴィシュヌさんに出会ってどう思った?
ヴィシュヌか・・・。
ついに生まれて出でた意味を見つけたというところだ。
どういうこと?
ガ・シレルという田舎で生まれた私・・・。
敵を倒せと命じられた。
私の疑問はこうだ。
敵とは何か?
愚か者どもはこう答えたよ。
強きものだとね。
私を生み出したものなら私より強いに違いない。
そう思ったよ、純粋だった私はね。
でもね私は裏切られた。
弱い・・弱すぎる・・・。
それからというものこのそらで敵を探していた。
いたの?
いたよ、すばらしい好敵手がね。




わからない・・・・なぜ僕に彼らはなにを導き出してくれるのか。
きっと
これからわかるんだ。
この悪魔戦争で。

第二十一話脱出

ヴィシュヌがゴットに宣戦をたたきつけ、”悪魔戦争”が開始してから約一年がたつ。
私はここに開戦から今までのことを記そうと思う。
すべてのことについて詳細に記すことはできない。
だが、彼らとであったことで私の運命は大きく動き出した。


倒れている悪魔の周りに三人の男が立っていた。
フリートドリブ、ノーフィス、ザーゴンという名の男たちである。
目的も考え方も望みも違う彼らだがその心は一人の男への憎悪として統一されていた。
大悪魔ヘレバルスである。
私は、倒れている男が助かるのを知っていた。
否、助けれるのだ。
私は決意した。


懐かしい感じのする赤い塊がドリブの憎悪の心に割っていった。
永遠の渇望の象徴”アジ・ダカーハ”である。
「坊やたち・・・・・・・。」
ドリブ、否、その心のうちのデビルマグナスが反応した。
そして、その上に乗る男、私に気づいた。
「さあ、乗って一緒に逃げよう。」
だが彼は不審がっていた。
そうだろう、見知らぬ悪魔だからな。
「私の正体など、ヘレバルスから逃げた後で聞けばよい、ゼヴァスを助けたいのだろ?」
ドリブはその言葉に反応し、一匹のアジ・ダカーハにゼヴァスをつれて乗った。
彼の前ではアジ・ダカーハも子犬のようにおとなしかった。
後ろのノーフィスもそれに続いた。
ヘレバルスはというと、傍観していた。
かつての部下への自分の仕打ちや安否について思うところがあるのだろう。
しかし世の中には不思議なこともあるものだ。
ノーフィスが仇敵であるザーゴンと一緒に乗ったのである。
「何を考えている?」
「お前もゼヴァスの安否が気になるだろう?おまえの安否を気にするのはそれからだ。」
こうしてわれわれは逃げ帰った。
もっとも彼らは失敗し私は成功した。

私はグレゴン。
闇の化身グレゴリュフの父。
私はここで更なる闇を生み出すのだ。
第二十二話記録

グレゴンの残した手記が見つかった。
ところどころ字が乱雑で読めない。



無界もいい天気だ。
・・・・・息子たちが無邪気に遊んでいるのを見ると、
申し訳なくなってくる。
・・・私の作り出した兵器がエルンの家族を奪っている・・・。
グレゴリュフの無邪気な顔が私を責め立てるような気さえした・・・。


・・・・・よくも・・・・ゆるさん。
殺してやる!皆殺しだエルンの畜生ども!
よくも私のかわいい息子たちを!


あはははは奴らへに復讐が成功した。
ヴァルダッドが陥落した。
新しいグレゴリュフはすばらしい!
私の狂気も少しは落ち着いてきた・・・。

あらゆる兵器を作り果ては生命まで作り出した私だが
つくってないものがまだひとつある・・・。
それは・・・だ。
無界のエルンの学問ではとても・・・。



ついに私の時代が来た!
ヘヴンの発見だ。
機械生物・・・。
これで・・・。

グレゴリュフが死んだ?
不思議だ前ほど悲しんで・・・いない?


ついにヘヴンに入りゼヴァスという悪魔を治療することを条件に
ロット側に下り研究を続けた。


・・・・そして人生最高の日はおとずれた。

私がいつものように・・・スの開発を続けていた。
そして大いなる福音を聞いたのだ。
偉大な悪魔の声を!!

「グレゴン・・・。」
「まさか・・・・様!!!?」
「下級な悪魔が俺様の名を軽々しく口にするんじゃねえ!!」
ア・・・・様はえらくご立腹なされている様子であった。
「申し訳ありませんでした!」
「気にするな、貴様をとって食おうというわけではない・・・・。
無界最強の俺がみすぼらしくなってしまった。
奴に肉体を奪われ、
俺はただ黙って見守るのみ。
嫌気が差してきたのだ。
奴とはいつか雌雄を決しようとしていたが
今がそのときだ!!
その・・・新しい体をよこせ!!!」



すばらしい。
無界最強の精神とヘヴン最強の体。
究極の悪魔を模倣した最終兵器。
ついに”神”をつくりだした。


行くのだわがもう一人の息子”クリス”よ!!

第二十三話見舞

ヘレバルスとの戦いから三ヶ月我輩の傷もだいぶ癒えてきた。
「ほう、治ってくれたようだね、やっと私も研究に打ち込めそうでうれしいよ。」
こいつはグレゴン、我輩を助けてくれた男だ。しかし得体の知れないの研究を続けて怪しい。
そうそう旧サードフォースは三巨頭のうち二人を失い、ロット軍に吸収された。
グレゴンはそのときも悪魔である我ら三人を保護するようにいってくれたのである。
しかし・・・。
「ゼヴァス!!!」
彼はザーゴン、我輩の身を案じてついてくれた親友だ、しかし・・。
「よかった、俺はどうなることかと、もう安心してノーフィスと戦えるよ。」
「すまん、ザーゴン、その話をしないでくれ・・・。」
「君困るよ、患者の調子を悪くするようなこというのは。」
「すまない。」
どうすれば、ノーフィスとザーゴン、二人の因縁を救うことができるのだろうか?
「どうだね、少し散歩でもしながら話し合うというのは?」
「いいんですか?」
「ああ、なまった筋肉をならすためにね、もっとも飛ぶのはよしたまえ、逃げるのかって思われ

打ち落とされても私は知らないよ。」
グレゴンはにやりと笑った。
お言葉に甘えて我輩はベッドから立ち上がって廊下へ出ようとした。
ゴチ。
いたたた。
何か見えない壁に当たったような感じがした?
「どうした、ゼヴァス君そこからは外へ出られないよ。」
「大丈夫か?」
改めて見直すとそこには壁があった。
あれ?おかしいな?


我輩はとある人物に相談するため、基地を抜け出した。
夜空を飛びながら、前線の明かりを目指した。
夜空に浮かぶ三つの月とちりばねられた宝石のような星星は美しかったが我輩の興味を誘う

はいたらなかった。
ゼヴァスが近づいたことを向こうも気づいたようだ。
緑色の姿。ヘレバルスだ。
「どうしたゼヴァス君、また戦りに来たのかい?」
「今日は相談があってきました、一人で出てきていいのですか?あなたは司令官でしょ?」
「相談てのは後ろの二人の事かな?」
いつの間にかゼヴァスの後ろにはノーフィスとザーゴンがいた。
「おい貴様のせいでばれちまったぞ、ポンコツ!」
「てめえがついてこなければヘマなどしなかったよ!!」
「やれやれ、相当仲が悪いようだね。」
「そんなもんじゃないですよ、憎み合っています。」
「じゃあさ、たたかえば?」
「そんな!!!」
「誰も彼らが戦えって言ってないよ、俺とゼヴァス君対彼らで。」
その場にいた全員がこいつ何いってんのとおもったことは言うまでもない。

第二十四話能力


ある意味それは才能であろう。お互いに意見のかみ合わない三人に同じことを思わせたのだ

ら。
気まずい沈黙・・。
最初に口を開いたのは唯一悪魔でないもの、ノーフィスだった。
「こんな、くそったれヤローと組めるかよ。それに敵であるあんたの言うことなんて聞く必要はな
いッ。」
「まぁ、そう思うのも問題ないがねぇ、俺は彼らの元上官だ、彼らのことを思ってだからねえ。」
ヘレバルスはノーフィスの言葉に応えるとゼヴァスを抱いて飛んだ。
「ザーゴン、てぇぬくなよ、”俺たち”はおまえらを殺す気でいくからな。」
「そんな・・・。」
「そうだ。俺だけ能力が割れていないからいっておいてやる、俺の能力は重力吸収と重力増加
だ。」
ヘレバルスは軽々とゼヴァスを持ちながら谷の向こうへ消えていった。

「あんた一体何を考えている?」
ゼヴァスはずっと頭に抱いていた疑問をいった。
谷底に着くとヘレバルスは、ゼヴァスを降ろしいった。
「もう大丈夫なのか?」
「?」
思わぬ発言にゼヴァスは面食らった。
「あのときは調子に乗ってすまなかった、君をそこまで傷つけるとは・・・。」
「・・・・。」
「あの二人・・・・。あの二人は本当にお互いに憎み合っているのか?
この前みたときとは異質なものを感じた・・・。」
「・・・。」
ゼヴァスは未だ沈黙している。
「あのときはね、戦いにおける決着のみが彼ら二人への救済だった。
しかし・・・、傷ついた君をみたとき彼らは変わった。
俺は償う、君にな。君は自ら選択し我を通した。
俺は君を心底尊敬している。ヴィシュヌ様や俺に逆らおうとも自分の正義を最後まで・・・。
そこでだ、君の親愛なる親友たちを救おう。」
「こんなことが救いになると・・・。」
「奴らは一度真剣に話し合うべきだ、これは試練だ。
そして・・・、君がさしのべた最後の蜘蛛の糸!」
「でも・・。」
「俺が信頼できないというのなら君に俺の背中を預ける、いつでも殺すがいい。」
「そんなことが・・・。」
「できる!君の新しい能力はすでに大悪魔クラスだ。」
・・・・新しい能力?

「いってしまった。」
ザーゴンは二人を見ながら独り言のようにつぶやいた。
「離れるぞ。」
「追うぞではないのか?ロット?」
「それは貴様を始末した後でだ、悪魔。」
「・・それはいいアイディアだ。まねさせてもらうよ・・・。」
ノーフィスは吹っ飛ばされた。
「おいおい、すでに俺たちは近親憎悪に陥ってるんだぜ、N極どうし。」
ザーゴンは地面と”反発”してノーフィスに追いついた。
しかし目の前にいる”はず”のノーフィスの声が後ろから聞こえた。
「そういえばてめえのくそくだらねえ能力のことを忘れてたぜ、
だがまさか私の能力のことを忘れたわけではないだろうな?」
「誤情報送信ッ。」
ザーゴンがいうか言い終わらないうちにザーゴンは大岩に向かって吹っ飛ばされた。
「グフッ。」
「ずいぶんとまァお間抜けな声を出してくれたなァ。これでお別れだ、ノーヴィスの怒りを知
れ!」
ノーフィスのブレードが振り下ろされた。
しかしザーゴンに当たったのは石だった。
「地獄の目・・・?」
思わずノーフィスは後ろを振り向いたがそこにその目を持つ親友はおらず夜の闇が広がるだ

だった。
ふと・・・大岩が割れた。
目の前に二人の悪魔が現れた。
顔を元に戻したノーフィスはつぶやいた。
「クレヤボンス・・・。」
ゼヴァスが答えた。
「その通りこれが、ヘルズクレアボンス(地獄の透視)だ!!」

  第二十五話狼狗

ゼヴァスとヘレバルスはまっすぐに二人を見据えていた。
まず口を開いたのはヘレバルスだった。
「何をしている、おまえたちの相手は俺たちだぞ?」
ヘレバルスの迫力に二人は威圧された。
「我輩も殺す気でいくと、おまえたちは聞いたと思ったがね。」
ゼヴァスの意外な発言にザーゴンは背中に冷たいものを感じた。
そのときだった!!無数の悪魔とロットが周囲を囲んだ。
突然のことに驚いてるザーゴンにノーフィスがささやいた。
「さっさと逃げるぞ腰抜け・・・。」
そうかこいつの能力・・。


「理不尽、これが戦争か・・。」」
ノーフィスがつぶやいている。
「弟は殺され、親友と戦わなければいけない。そして殺したいやつと組めだと!?」
「・・・・俺は・・・・。」
「どうした・・・?」
「俺はやつを・・・ゼヴァスを殺せといわれていた・・・。」
「とんでもないくそ野郎だな、近づいたのもそのためか・・・。」
「そうさ、おまえのいうとおりさ。ゼヴァスにいわれたことがある、おまえは命惜しさに大悪魔の

い犬になっているとね。」
こいつ・・・。
ノーフィスは今までにザーゴンの立場で考えたことなど無かった。
殺せといわれたものの看病をして殺すチャンスなどいくらでもあったはず。
本気でゼヴァスを心配しているようにしか見えなかった。
「私は将来のために貴様を殺した方がいいのか、ヘレバルスとかいう悪魔はどうしたものか。」
「安心しろ、ヘレバルスはほかの悪魔のように外道ではない。
破滅的な戦いは好んでいない。
俺は外道だがな・・。」
「一つ聞きたい?なぜ死のうとする?」
「?」
「いきたいから自分を押し殺して飼い犬に成り下がっていたのではないのか?」
「もう飽きたのだ、ロットいや・・・ノーフィス。」
「ザーゴン・・・・。」
「さあ・・・。」
「ふざけるな!!!それでノーヴィスが報われるのか?ノーヴィスを殺したのはおまえではな
い!!!この悪魔戦争だ!!!
貴様が飼い犬生活に飽きて命を捨てるならその命、私によこせ!
このふざけた悪魔戦争をぶち殺すために使ってやる!!!」

「さて逃げるのは終わりかな?」
ヘレバルスがいった。
ヘレバルスが構えた。王覇滅殺剣だ。
ノーフィスにめがけてその必殺剣を放った。
あまりのスピードにノーフィスは対応できなかった。
重力を吸う。
ヘレバルスが木刀を使っているのには意味があった。
生命を介在してその重さを吸い取り自分のものにできる能力。
”むどう”とは軽くなった相手をとばすという技であった。
これはその逆。
自ら軽くなり超高速の一撃を繰り返す。
軽量になった彼の体を筋肉は容易に運ぶのだ。
それは決まった。
だが・・・。
違和感。
ノーフィスいや岩にヘレバルスはくっついて離れない。
ザーゴンとノーフィスの能力の連携・・・・。
「ヘレバルス!!」
「どこを見ている・・・。」
背筋がぞくっとした。
「俺を見てなきゃ意味がないんじゃないのか〜?」
「くそ・・・。」
「俺は・・・ハウレス様に貴様を殺せといわれた・・・。」
ゼヴァスはこれを覚悟していた・・・。
ザーゴンを連れてきたときから。
「だが・・・それは飼い犬だった頃の話だ、オオカミとなった俺はハウレスをかみ殺す!!!」

第二十六話誕生

ドクン。心臓の鼓動か・・・。
悪魔の胎動が始まった。
キテイル・・・・。
あ・・・くま。


ヘレバルス交戦から九ヶ月後。
つまり悪魔戦争開始から一年後。
ヘヴンウッド基地。
ここはゼヴァスとノーフィスが出会った場所。
そして今も彼らはここにいる。
俺は救出に着た・・。
”坊やたち”をつれて・・・。


上空5000メートル。
「元帥、悪魔の反応がするプテ・・・。」
「師匠か?」
あきれたようにとめきちがいう。
「いい加減敵の司令官を師匠呼ばわりする辞めるプテ・・・。
向こうもいい迷惑プテよ・・。」
「だーはっは、自分はあの方の戦術に感動したのだー。
自分はまだ未熟であったわー。師匠と戦うレベルが上がるプテー。
あ・・・。」
思わず素が出てしまい、アシュタロンは赤面できるのなら赤面した。
「アシュタロン元帥、素直になるプテ。敵はヘレバルスさんじゃねープテ。
あれはおいちゃんがあの基地にいたときに見た、アジ・ダカーハ通称”イーター”プテ。」
「ガーン。」
「がっかりすんじゃープテ。まだ仕事は終わってねープテ。
だいたい口で効果音出すんじゃねープテ。」
「すみませんプt」
言いかけて音がつぶれた。

ココハドコダ・・・。
オレハ・・・?
「お早うクリス。」
くりすトハオレノコトカ・・・。オマエハダレダ。
「俺はアルミューレだ。」
A・・・R・・・MU・・・・・R・E?
「よくできた・・・。ではストレッチにいこうか。」
「わかりました。」
そしてそれは音もなく旅だった。
アジ・ダカーハの襲来によってそれ気づくものは誰もいなかった・・・。
ついに第三の神が動き出したのだ。

第二十七話魔王
それは解き放たれた。
地上など下郎の利用するもの・・・。
このクリスは天に君臨すべきなのだ。
俺はアルミューレに利用されている。
それでいい・・。
まだ独り立ちは無理だ。
だが・・・計画はできている・・。
俺が魔王となるための・・・。


「敵の反応があるプテ。」
「こんな上空にか?」
それを聞いていささかアシュタロンは驚いていた。
自分たち航空仕様の機体ならいざ知らず、悪魔にこんな高度の飛行が可能とは思えなかった
からだ。
そしてそれはもう視認できるところまできていた。
「シクシクシク。」
そいつはわざとらしい泣き真似をしている。
やや大型の悪魔に見える。
「何が悲しいんプテか?」
とめきちが芸のないつっこみをした。
ほかのプテロットたちは黙っている。
「何が悲しいってそれはねえ。生まれて初めてであった人たちがもう俺のこと忘れちゃうから
さ。」
要するにぶち殺すぞてめーらでいいのか?
「さっさとかかってこいプテ!」
プテロットたちが叫ぶ。
だがそいつは嫌らしい言い方で答えた。
「かかってこいって?馬鹿なこといっちゃだめだよ。それだと”まだ勝負が始まってないみたいじ
ゃないかぁ”。」
返事をする暇などなかった。
爆音。
すべてのプテロットは墜落していった。
「おや?まだ堕ちないやつがいるねえ。このクリス以外は地面を這いつくばってればいいのに
さぁ。」
「貴様・・・・自分は貴様を絶対に許さないプテ!!!」
アシュタロンは素になった。
あいつだけは死んでもゆるさん。


 第二十八話意地


自分は司令官だ。
その名を受けたとき自分は誉れ高かった。
部下を守る。自分はそれを至上命令だと心に誓っていた。
上司の命に逆らってでも・・・。

ある惑星を侵攻中のことであった。
自分はゴット様に初めて逆らった。
その星の住民たちは強力で力押しの作戦は危険であった。
部下を大量に失うことになる。
しかしゴット様は自分を早くこの第1192星系へ侵攻に参加させる必要があった。
悪魔の登場である。
悪魔の登場によりニーズヘグとノーヴィスという二人の副官を失ったゴット様は、自分を必要と
した。
だが自分は部下のためこの星を去るわけにはいかなかった。
そのために力押しで攻め部下を失う気もなかった。
のろのろとした自分に怒り心頭のゴット様は直接自分のところへこられたのだ。
「貴様・・・、なぜまだ私のところへこないのだ。貴様の力と軍団を持って総攻撃をかければこん
な星などさっさと落とせるはずだ。
なぜそうしないのかね。」
冷静なゴット様が怒っておられる。
それほどの敵が・・・。
「総攻撃は危険です、我が軍の被害も甚大なものになります、今のプテロットたちは疲労してい
てとてもそれに耐えれません。」
それを言い終わらないうちにゴット様はエナジーセイバーで私の腕を切ったのだ。
自分の腕は焼け切れ地面に当たって鈍い音を立てた。
「次は首だ・・・。私のいうことを聞かぬジャンクなど必要ない。」
ゴット様は本気のようだった。
「かまいませぬ。ただ部下たちはどうか・・・。」
「・・・。」
「どうか・・・。」
沈黙・・。
「愚か者め。」
「・・・。」
「貴様は使える・・・。殺しはせんよ、こんな星の侵攻は後回しだ。
貴様のように有能かつ部下に信頼を置かれてるものを置く価値などない。
貴様にもっとふさわしい腕をやろう。
そしてふさわしい地位もだ。
全宇宙の軍団を集中させる必要がある。
”ヘヴン”にな。」


守ったはずの部下たちは今墜ちていった。
怒りが身を支配する。
だが冷静になれ・・。
クリスの繰り出す見えない攻撃。
部下たちは突然爆発して墜落した。
見るに機雷に当たった感じにそっくりだった。
だが空中機雷らしきものは捕捉できない。
見えない機雷でもあるのだろうか?
「さっきから押し黙ってるけど?考え事かい?
青空がこんなに近いと物思う気分になってしまうのかな?」
そらはいつも晴れだ。
青空を見るとうきうきした気分にはなる。
だがこいつの見えない攻撃の方が気になるのだ。
試してみるか・・。一か八かだ。
ゴット様にもらった新しい腕、その先端にある機銃で自分とクリスをつなぐ線を攻撃したのだ。
クリスはよけようともしない。ならば当然クリスに当たるはずの銃弾は、”何か”にぶつかって誘
爆を起こした。
その銃弾が通った道をすかさず前へ進んだ。
クリスの見えない”何か”はもうない。
近づいてくる自分に対してもなにもクリスはしなかった。
いや”しなかったように”見えた。
自分の副椀はクリスが撃ってないようにごまかした右の二番目の砲塔から出た”何か”をはじ
いた。機雷の時から怪しいと思っていたがビンゴのようだ。
こいつの能力は見えなくする能力。
自分のすべての腕がクリスをつかんだ。
「やれやれ、ファントム・イリュージョンを破るとはな。」
まだ余裕をぶっこいているクリスにとどめを刺そうとした。
「無(ゼロ)へと還れ、カトンボ!!!!サーティーンゼロ!!!!!」
すべての砲塔が自分を向いた、気づくと自分は墜ちていった。





  第二十九話本物

魔王クリスの成長にはあのアルミューレですら驚かされた。
特に知能の発達には著しいものがあった。誕生直後から無界の言葉を解しアシュタロンと出会
ったのは数十分後であるにもかかわらず、異常なまでの会話能力の発達を見せた。
戦闘能力においても初戦でアシュタロンを圧倒したほか選別として悪魔とロットの強豪と戦い
手下にしていた。
これはアルミューレの下した命令であったが、ここまで強力なメンバーを集めるとは思っていな
かった。
クリスの知能と戦闘能力を持ってしてできたものである。


そんなクリスの前に一人のロットが現れたのだ。
それは黒い装甲を持ち狂気の兵器を備えこの戦いを起こした最悪の傍観者。
ラグナロク。
「そろそろ危ないんじゃないのか、クリス君。」
ラグナロクはあえて主語をいわなかった。
「ロット、君も死にきたのかい?」
クリスは意に介さずいった。
「おっと君は不思議なことをいう。君は今まで悪魔もロットも殺したことなんかないんじゃないの
かな?ハウレスに感づかれないために?」
私はわかっているぞと念を押す。
 「では君と裏切り者の脱走者は俺のしようとしていることに気づいていると?」
アルミューレが答えた。
「そうです、神よ。組みませんか?神の計画をより確実にするため、そして我々も・・・。」「カタス
トロフの意志か?」
「そうです。そしてアルマゲドンもハウレスよりあなたの方が無界のリーダーにふさわしいと思っ
ています。」
「世辞はいい。」
「それにクリス、我々は同じ本物のロット、ファイナルモデルの兄弟でしょう。」
「何・・。」
「聞いていなかったのですか。ドクターグレゴンから。」
そしてクリスの後ろにいる黒いマントを羽織った四人に対していう。
「おや、どこで見たような方がちらほら見えますね、あの悪魔の仮面をかぶった方なんか私が
憎くて仕方ないようですな。」
「話をそらすな。ファイナルモデルとは何だ。」
「神の時代を終わらせるものだ。それはすなわち造物主殺し。
それをなしてこそロットはロットたり得るのだよ。
私はねえ、本当にあなたたちが何をしようが考えてようがいい。
カタストロフやアルマゲドンもそうだ。
ただ単に存在する理由を満たしたいんだよ。」
「それは・・・。」
クリスが尋ねた。
「ゴットを倒すことだ。」
「フフフ、おもしろいやつだな、アンノーンゲートを開かせたのもそれが目的か。」
「カタストロフが私の目的を満たすにはそうした方がいいとね。」
「どうして俺を頼るのだ。」
「カタストロフにいわせれば見定めたいらしい。」
「見定める?」
「そう、本物をね。」
「フフン。で勝つのは我々だと、ロットでもハウレスでもなくて。」
「いえ、そういう戦争の結果ではございません、カタストロフはゼヴァスという悪魔をえらく嫌って
おります。あやつはある人物の青い理想を受け継いだ青臭い連中とともに破壊の力を戦争を
止めるために使おうとしています。
一方クリスは純粋な破壊の化身、どちらが勝つのか、それでカタストロフの進む道が決まるの
です。」
「いいだろう。戦力アップは俺にもうれしい相談だ。」



第三十話提案

あの工場の北。ヘヴンウッドのうっとうしい木々が生い茂ってる中。
アジ・ダカーハの襲来でつぶされた廃工場があった。

工場の中には未だ数匹のアジ・ダカーハがうろついていた。
迷っているわけではない。
飼い主がそこにいるからだ。
ある意味原始的な悪魔である彼らは知性は低い。
だが本能は優れていた。知性による阻害がないからだ。
だからこそ、そこに差し迫った災難をいち早く察知していた。

飼い主たちはというと話し合っていた。
ノーフィスはしばらく思案した後言った。
「確かに脱出は成功した。けどこれからどうする。
私たちは修学旅行で勝手に抜け出したようなものだよ。
このままでは大きなプログラムには逆らえない。」
ゴホン、ザーゴンは咳をしていた。
どうやら熱っぽいようだ。
ドリブは自分は考えることは苦手であるから議論に参加しなくていいですね、と主張するよう
に、天井のはげかかっている塗装を見ていた。
頼りにならない友人たちを見ていていてもたってもいられなくなったように、ゼヴァスがしゃべり
出した。
「ヴィシュヌをぶっ倒して無界へお帰り願うしかないのか。」
ゼヴァスのオー!グッドアイディアに、
ドリブは感心したように見ている。
ザーゴンは聞いていない。
ノーフィスはあきれた。
「それはパーがチョキに勝つより難しいとおもうよゼヴァス。君ねえ、師匠の悪いとこうつっ
た?」
ドリブはそのアイディアの欠点がまだ見いだせない。
ザーゴンがくしゃみ混じりに言った。
「もっと戦争反対なやつを集めれば・・。」
ゴホ。
「ヘレバルスさんとかかい?」
「隊長、元隊長はどこ言ったのですか?」
ドリブがふと思い出したように言った。
「ニーズヘグさん・・・。」
「私のことはどうでもいいてのか皆、意外と冷たいな。」
冷たい声がした。
そしてそれ同じくらいひどい寒気が。
その寒気が肌が感じたものなのか鎧魔が感じさせる戦慄によるものなのかはどうでもよかっ
た。
「何のようだ・・・ヴィシュヌ・・・。」
ふるえ、意識していないのに・・恐怖。
強さが戦っていないのに手に取るようにわかる。
ありがアリクイや蟻地獄と対したような絶望感。
捕食者に被捕食者がとる行動しかとる道はない。
だが逃げることはできないだろう。

「坊やたちふるえているようだが、寒いのかい?それともおむつがご入り用かな。」
「さっさと用件を話せ!!」
ゼヴァスはにらみつけるように言った。
自分の恐怖をごまかしながら。
「よかったねえ、仲直りできて。」
「言いたいことはそれだけか?我輩たちを始末しに来たのか?」
「ヘレバルスはいい上司だ。仕事のほかに君らの面倒も見ていたとはね。
私はそれを見逃してたのだよ。」
「何が言いたい。」
「おまえらのようなゴミは、始末することがたやすい。
だが何とかリサイクルしてやりたいって言う親心が働いてね。」
ふざけやがってリサイクルしたい親心って何だよ。
「さて頼みといっちゃうなんだがね、消してもらいたいゴミがある。
まあ、私がやってもいいのだがね、ゴットとやる前に気を揉みたくないのでな。
もちろん断ってもいいよ。
だがおすすめはしない。私の仕事と死体が増える。」
ノーとは言わせないといった感じだ。
「いいだろう。」
ノーフィスが言った。
「いいのか?」
ザーゴンが聞いた。
我輩は隊長の決定に従うつもりだと伝えた。

「それはよかった。消してもらいたいゴミの名はクリス。
後いいことを教えてやろう。やつを追えばもう一度あえるぞ。」
「だれに?」
「おいおいとぼけて、わかっているくせに。」
そういうとヴィシュヌは去っていった。

ヴィシュヌに流されたようだがノーフィスには作戦があった。
クリスと組んでヴィシュヌを倒す。


第三十一話苦痛

悪魔軍は原因不明の疫病にさいなまされアンノーンゲートの近くまで追いやられていた。
アシュタロンは副官のベリゼアルがいないことには多少の憤りを感じていたがそれを顔には出
さなかった。
もう遊びは終わりだと言うことだ。
師匠とあがめる男を殺さねば、自分に勝利はない。
自分より強い彼にあこがれを、
自分より賢い彼にうらやみを、
自分の部下を幾人も殺した彼に憎しみを持っていた。
アシュタロンはヘレバルスと雌雄を決せねばならぬ。
皮肉な宿命だが、成長とは現状を打破しなければあり得ない。
俺は勝利を選択する。
やつの血をすすろう。
汚れた肉体を清めよう。
俺は成長する。
成長しなければならない。
我が神の期待にそうために・・。
だがそれは自分のため?


戦える悪魔はほとんど残っていなかった。
白い肉体と翼を持つスカルトンはその中の一人であり、ヘレバルスに付き従っていた。
「ヘレちゃん、大丈夫かぁねえ。これじゃヴィッ様に首ちょんぱだょ。」
「そのしゃべり方どうにかならんのか?」
「もぅ緊張をほぐそうと。」
スカルトンが答える。
「緊張は必要だ、俺を認めてくれたやつとの最後の決戦だからな。
ゼヴァス、ザーゴン、・・・カイン。俺は俺の戦いを全うするよ。」
旋風が吹いた。
ヘレバルスの前には戦場の青き孔雀が立っていた。
「行こうか、戦友よ。我が宿敵よ。」


自分の理想はなんて青臭いのだ、とゼヴァスは思った。
ヘレバルスも、ヴィシュヌも戦う意志を持って戦っている。
我輩はそれを止めようというのだ。
彼らが傷つくのがみたくないから?
違う。
傷つけさせたくないから?
違う。
自分が傷つきたくないからだ。
自分のエゴを他人に振りまくという点で自分は憎んでいるヴィシュヌと何ら変わりがない。
悪魔は生まれたときから呪われている。
人は二度死ぬと呼ばれている。
肉体の死と、・・・・世界に忘却されることだ。
二度目の死を迎え、悪魔となった彼らに待ち受けるはエルンとの永劫の闘争。
戦いという名の呪いをほかの悪魔たちは喜んで受けている。
我輩がおかしいのだ。
事実誤認であってほしいという気持ちとは裏腹に現実はそれを証明し続ける。
友すらも殺そうとしたザーゴン、闇に生き憎しみを振りまくグレゴリュフ、戦いを心の底から楽し
むヘレバルス。
彼らが絶対悪とは言わない。
だからこそ自分の願いが正義というものであるかわからないのだ。
「どうしたんだ?」
ドリブが優しく声をかける。
殺人兵器として生まれてきた彼ら。
だがニーズヘグという男は責任感があふれていたと思う。
彼がエルンと出会ったら、どうするかなど知らないし、興味もない。
彼はラグナロクというロットがした過ちから同族を救おうとしている。
ヘレバルスが言っていた。
同族で争うのは間違っていると。
「いやなんでもない。ちょっと考え事さ。」
「こっちはなんでもなくないんだよな。」
ドリブの意外な答えにゼヴァスは顔をしかめた。
一人の小柄な悪魔がたっていた。
そいつは物腰柔らかに言った。
「これはこれはゼヴァスどの、どこへ行くのですか?」
我輩の名を知っている?
「だれだ?」
「おやおや、ちんけな、いや矮小な下級悪魔なぞ知ったことではない。
そうですか。そうですよね。
ワタクシの名はアモン、クリス様の配下”苦痛”のアモンです。
あなた様を止めるように申しつけられておりますので、どうぞお手柔らかに。」


 第三十二話絶望

ノーヴィスはザーゴンと一緒にロット軍との説得に足を運んでいた。
だがそれは建前だ。
クリスとロット軍の勢いを借りてヴィシュヌを抹殺し悪魔をヘヴンから放逐するのだ。
自分を動かしているのはもはや理性ではない憎しみだ。
自分たちをまだ利用できると思っているヴィシュヌにほえ面をかかせてやろうとしているのだ。
だがその計画は失敗する。
この男の襲来とともに。
「おい、爬虫類。」
「なんだ屑鉄?」
もはや二人にはおなじみになったアイサツで彼らは会話した。
「つけられている。」
「ロットか?悪魔か?」
「わからない。」
おまえのレーダーは屑鉄か?と返そうとしたとき。
目の前の岩が”破裂”した。
「もうばれてしまったか?」
悪魔?ロット?甲乙つけがたいものがそこにたっていた。
「ベリゼアルって言えば知ってるかな?」
「魔将ッ!」
感心したような顔でベリゼアルが答えた。
「よく知ってるね、ザーゴン君。
君が知らない情報をあげようか。
悪魔に嫌気がさした俺は悪魔を裏切り、グレゴンの機械化ボディでロット軍に入った。
そしてクリス様と出会い共感し、”絶望”のベリゼアルとなったのだ!!」


「下級ってね、実質最下層なんだよ。使い魔にすら馬鹿にされてるね、きっと。
でも今はね、中級とか眼じゃないよ。
カタストロフ様によって苦痛の力を授けられたからね。
ワタクシ、いやボクの腕みてごらん。
擦り傷、切り傷、刺し傷でいっぱいだよ。
痛いよ。
あれ、ゼヴァス様、腕どうしたの?」
ゼヴァスの腕は 擦り傷、切り傷、刺し傷でいっぱいだった。
「いた・・・。」
アモンはにやりと笑った。
「おっとゼヴァス様も眼精疲労かな?
地獄の眼って結構目を酷使するんだね。
あ?わかったでしょ。
ボクのチカラ。
ペイン・ワールド。
この領域に入ったものは体調を共有する。」
ドリブはそれを聞くとアモンのところへ走っていった。
思いっきり腕を振り上げアモンを殴った。
「ロットには効くか!!」
アモンは殴られた衝撃で吹っ飛んでいった。
「勝った!!この話終了。」
だがドリブは血を流して倒れているゼヴァスをみた。
「ゼヴァス君!!いったい誰にやられたんだ?」
あきれたようにゼヴァスは答えた。
「おまえだ・・・。」
「へ?」
ドリブはあまりのひどい答えに驚いた。
「その通り、痛みもダメージもすべてだ。
血も傷もな、だが、おまえはこう考えているだろう?
耐久力は俺の方が上とな?
だがその幻想を打ち砕いてやる。
はああ。」
アモンは自分に傷をつけた。
変則的な遠隔攻撃。
相打ちでもねらうのだろうか?
「やめろ、これ以上続けても。」
「だからなんだというの?
ボクは痛みを思い知らせたいんだ。
痛みこそ原初の破壊。
痛みこそ破壊の力の根源。
その力を持ってして思い知らす。
他人の痛みを知れば傷つけることをためらうだろう?」
「ならなぜ、おまえはその力を戦いを止めるために使わない?」
アモンさらに自分の胸をひっかいた。
「青二才が!!ボクは上級悪魔どもが後悔しながら死んでいく図が見たいんだ。
下級悪魔念願の復讐だ。
教えてやるよ!!
ペイン・ワールド2!!」
傷が増えるたび光を増していった5つのクリスタルが輝きを増した。
アモンが消えた。
気づくとゼヴァスは宙を舞っていた。
ゼヴァスは理解した。やつの自信の源。
やつは傷つくたびに強くなる。

 第三十三話悲哀

”アモン、おまえだけは生きるんだ。”
”大悪魔も俺たちのせいかを認めてくるはずだ、お褒めの言葉をおまえだけで生きてもらってく
れ。”
”ふん、役立たずのゴミどもめ、変わりなぞいくらでもいる。どうした俺が憎いのか・・?カス以下
のゴミ?”


ゆるさん、ぜったいにゆるさん。
力だ、復讐のためにはそれがいる。
ヘヴン、ボクの可能性がそこにあるならば命なぞ不要だ。

「ゼヴァス・・・、教えてやろう、ペインワールド2とは苦痛の破壊、脳内麻薬が痛みを消し、すべ
てのダメージを回復が上回る。
だがそれは共有されること無きことだ。
周りにいるものはいつもどおりくつうをたのしめるのさ。」
「おまえの苦痛は理解した。」
アモンは馬鹿にしたように言った。
「理解〜〜〜?
そんなものはいらないよ。弁解、慰め、同情 、反省。
そんなものでボクたちの苦痛は癒えるの?
必要なのは君たちの苦痛にもだえる悲鳴さ!!!
さあいい声で鳴いてよ。
ボクがかわいそうだって言うならさあ。」
「かわいそう?
おまえはただ単に自分のエゴを通そうとしているだけじゃないか、そんなやつの肩を持つ必要
がどこにある?」
ゼヴァスは声を荒げていった。
「ねえ、君本当に立場わかってる?」
ペインワールド怒りという感情すらも共有するのか?
「痛みだと、痛みを知っている?
そんなことがよく言えたな、そんな復讐をしたとしても憎悪の連鎖を作るだけだぞ。
関係ないものにもそれは及ぶんだぞ?」
「知らないよ、そんなこと。きれい事ではやっていけないことはよ〜くわかっているからね。自分
が気がすむようにやるさ。
どうやって死にたい、やっぱりショック死とかがいいかな?」
「やってみろ。」
アモンはポケットから五寸釘を出すと自分の足に打ち付けた。
血がしたたり落ち地面に池を作った。
手に垂れた血をしたでなめるとアモンは恍惚の表情を浮かべた。
「何本ほしい?」
そういってゼヴァスの方をみたアモンは仰天した。
ゼヴァスの足が石になっていたからだ。
「何をしやがる。」
「何もかも、わがまま坊やの思い通りにならないということだ。
おまえの言ってることはただの自分勝手だし、やがてそれで自滅するだろう。
だが知ったこっちゃ無いって訳じゃないから少しは優しいだろう。」
ゼヴァスは完全に石になった。
ドリブはそれを見計らうとアモンに近づいた。
ドリブがブレードを出し切りかかろうとしたとき、アモンが急に泣き出した。
「痛い・・・痛いよ。」
アモンの魔力が切れたのだ。
石化を解いたゼヴァスが近づいた。
「まだやるか?」
「でも・・みんなはみんなは奴らに使い捨てられて・・・。」
「いつか戦いは終わる・・・、それを引きずっていては新たな戦いを呼ぶだけだ。
真の苦痛の破壊とは苦痛を乗り越えることだと思うぞ。」
「ぜう゛ぁす・・・。」
アモンは泣き崩れた。


クリスは宙に浮かび、天上のものであることを誇示していた。
ほかには一人の覆面をかぶっているものがいるだけだった。
「”憎悪”よ、”苦痛”と”絶望”、”悲哀”の様子はどうだ。」
クリスが言った。
「はい、アモンの側にゼヴァスがいるようで、ベリゼアルたちがいるほうにはノーフィスが。私は
ノーフィスの側に行こうと思います。」
「四天王三人か、まあよかろう、俺はゼヴァスとやらに破壊というものが何かおしえてやりにいく
よ。
それにしてもノーフィス側にあいつが行くとはおもしろいな。」



ベリゼアルはザーゴンとノーフィスに囲まれていた。
「二対一だ、勝てる自信はあるかい?」
「仲のいいことで、その仲の良さを彼にも見せてやりなよ。」
黒いマントを羽織った男が近づいてくる。
その男が放った言葉はノーフィスに衝撃を与えた。
「兄さん、久しぶりだね。」
「・・まさか・・・ノーヴィス?」
ノーヴィスは答えた。
「そう、クリス四天王、”悲哀”のノーヴィス。」


第三十四話憎悪

ぼくはただただ憎かった。憎んでいれば後悔とか忘れられていられて気が楽だ。
誰が憎いのか。
それは自分に来てみれば明白だった。
自分自身だ。
この災厄のすべての原因となった剣をみながら自分にとって過ぎた力が破滅を招いたと言うこ
とを感じた。
目的を果たせず仲間に合わす顔のない自分にはこの剣と命しか残ったものはない。
憎むべき悪魔の仮面は過去を捨てた証、そして自分を憎んでいることの象徴。


「兄さん、何で?悪魔とつるんでいるの?
それにそいつ、ぼくを殺したやつじゃないの?
どうして?」
弟の質問にノーフィスは混乱した。
「どうして・・・?生きているんだ?」
ノーヴィスは答えた。
「聞いてるのはぼくだよ。
どうして今まで兄弟だと言うことを黙っていたの?
いいよ自分で考えるよ。ぼくは頭がいいからね。
何で生き返ったかって?ぼくのサブ頭脳はたくさんあるからね。
そこの悪魔、ああザーゴンねにやられたからってさ。
平気さ。」
「俺たちの邪魔をするんだというのなら、何度でも頭を踏みつぶしてやる!!」
ザーゴンが叫んだ。
黙って様子を見ていたベリゼアルがザーゴンのほうを向いていった。
「まあまあ、兄弟の再会を我々のような無粋な輩が邪魔をすることはないぜ。
遊びたいって言うなら俺が相手をしてやるぜ。」
ベリゼアルは刃のような羽をばたつかせとんだ。
「さあつかまんなよ、おっと剣には気をつけて。」
ベリゼアルは足を捕まれと言わんばかりにつきだした。
「もっとも風船になって空を飛んでいきたいというなら別だけど。」

「ノーヴィス、ザーゴンが憎くないのか?」
ノーヴィスのカメラ・アイはノーフィスのカメラ・アイを見つめていた。
真意を探るかのように。
「過ぎたことはもういいさ、かれも言ったと思うよ、戦争では殺人は肯定されるみたいなこと。」
「そうだが・・。」
「憎いっていったら、にいさんだよ。なぜだまっていたの、兄弟であることを黙って、敵とつるん
で。
でもねえ、一番許せないのは・・。」
ノーヴィスの熱弁にノーフィスが聞き返した。
「許せないのは?」
「サードフォースなんて言う、ふざけたぬるま湯のような正義漢ぶった組織に入ってるって事
さ。」
ノーヴィスに対する負い目もあってか、黙って聞いていたノーフィスもさすがにとさかに来た。
時々ロットという機械でありながら来る感情の発露、これはいったい何を目的にしたものであろ
うか。
「クリス様はねえ、本当に兄さんたちが気に入ってるんだ。
クリス様は自分たちのことなんて言ってると思う?
ネオ・サードフォースだって。
ハハハ。兄さんたちを本気でおちょくってるのさ。」
ノーフィスがノーヴィスを本気で殴ろうとしたとき別の誰かがノーヴィスを殴り飛ばした。
殴り飛ばした誰かの方をみると、黒いマントに悪魔の仮面をかぶった男がいた。
正体を知られたくないのか。
「”憎悪”、何をするのさあ。」
「ノーヴィス、あまりぺちゃくちゃ、しゃべるな。
ノーフィスはどれだけやっかいな男か知らないのか?」
憎悪と呼ばれた男は名前を仲間ですら知らないようで彼の正体を知る方法はないように見え
た。
しかしノーフィスはそのヒントをめざとく見つけた。
マントの切れ目からきらきら光る得物。
それはレーヴァティンだった。
「ニーズヘグ?」
ノーフィスが思わず口にすると憎悪は答えた。
「この剣を持っていた男、そんな名前だったなあ。
だがそいつはもういない。
俺が憎いか?小僧?」


第三十五話魔将

泣きわめいていたアモンも幾分か落ち着きを取り戻していた。
「これからどうするの?ぼくのことも含めてさ?」
アモンは聞いた。
「どうしようか?」
その答えにアモンは面食らった。
こいつらは何も考えていないのか?
そもそも的である自分にとどめを刺さないのか?
「馬鹿じゃないの?本当に。何一度失敗してふぬけちゃったの?」
「我輩はな・・。」
ゼヴァスは答えた。
「友を捨て仲間を裏切り、力を求めてここへ来た。
力があれば、エルンとの戦争も終わり、誰も苦しまなくてすむと思っていた。
でも、ここで起きたのは新たな闘争。
でも力さえあれば止められると思っていた・・。
でも違った。」
「違った?」
アモンが聞いた。
「そう違ったのだ。大悪魔の上には邪神がおりその上に君臨するハウレスとアルミューレ、そし
て・・機械神ゴット。
大悪魔にすら勝てなかったのだ我輩は・・。
ヘヴンがくれた新たなパワーを持ってしても!」
ゼヴァスはアモンが泣きわめいていた仕返しとばかり内面をぶちまけた。
「だからこそだ、いかなる力を持ってしても戦いを止めることなどできない。
もうやめたかった。でもカタストロフは許さなかった。
戦いを止める戦いという矛盾を我輩に要求した。
さらなる力をくれたのだ・・。
だが我輩に残された時間は少ない。」
ゼヴァスは目から血を流した。
「アンノーンゲートを閉じる。
そうすれば奴をハウレスを・・・。無界から追放できる。」
「馬鹿な・・。」
「ゼヴァス君、大丈夫かい・・・。」
「ああ、ドリブ、おまえは強い・・。我輩より遙かに・・・。
門を閉じた後のことは任せた。
我輩はカインを探さねばならない・・。
奴ならきっと門を閉じれるはずだ。」
「はろう。」
「だれだ?」
いつのまに近づいたのか一人の悪魔がゼヴァスたちの近くにいたのだった。
「クリス・・様・・。」
「よう、アモン、貴様がどれくらいがんばってくれたのかどうかは知らないが、まあゼヴァスの場
所を教えてくれたのは感謝するぜ。」
アモンは自分の首筋を触った。
発信器だった。
「こんなものが?」
「はじめましてですか?ゼヴァス殿。
俺の名はクリス・・、てめえをぶち殺しに来た。
カタストロフの奴がな、自分で進路きめれねえつーから俺とてめえでやりあえていってんだよ。
どっちが強いかで決めようって事らしいが、明らかに明白だよねえ?」
クリスの自信に満ちあふれてこぼれそうな態度をゼヴァスは黙って聞いていた。
「ふ・・・、いやいや生まれたばかりの俺様が経験豊富な諸先輩方に勝てるわけないっすよ。
聞きましたよ、カイン、いやアルマゲドンはハウレスのところへ行きましたよ。
さあ行って早く門を閉じなさいよ。」
クリスの意外な言葉に困惑していたがゼヴァスは決心すると歩き出した。
「馬鹿め!引っかかりやがった。どっかーん。ファントム・イリュージョンだ。」
しかしクリスの口で言った、どっかーんと爆発音はかぶらなかった。
「さて、君の言うとおり結果は見えているが力比べをしようか?クリス?」


「それが魔将の力か?」
ベリゼアルは倒れていた。
「こっちの力も知らずにふれてくれていて助かったよ、このまま地面にキスしてな。」
「こっちの芸もみてほしいな・・。」
絶望、それは俺に力をくれる。
デッドエンド(行き詰まり)すら死の終わりへと変える。
「そうだねえ、このまま地面這いつくばったまま勝つってのも酔狂だねえ。
二人で絶望を味わおうか?」
ベリゼアルが銃を構えた。
「さあ、どうする逃げるか?かわし続けるか?
どっちでもいいぞ、ほうそうくるか。」
ザーゴンは近づいたとどめを刺すために・・。
「這い蹲るって言ったがありゃあ嘘だ這い蹲るのはてめえだああああああああ。」
ベリゼアルは剣で地面を切り裂いた。するとみるみるうちに亀裂が広がり地面からベリゼアル
は自由になった。
俺に気をとられている隙を突きザーゴンを蹴り倒した。
「ちょっとまだついて石ころがおもてえが、ちょうどいいハンデだろ、いやもう関係ないか?」
ザーゴンは踏みつけられていた。
「さてさて”絶望”のお味はっと。」


 第三十六話希望

地面にはいつくばるとわかると思うが体中泥だらけで口の中も泥だらけで最悪だった。
「泥の味しかしねえがこれが”絶望”の味なのかい?魔将さんよお?」
俺は憎々しげに悪態をついた。
磁力が戻るまでの時間稼ぎだ?
「泥の味、血の味、涙の味・・・、まあいろいろな感じ方があるだろうね、ザーゴン?」
ベリゼアルは悪態を気にせずに話を受けた。
「まあ絶望を味わうだけの余裕があって幸せだねえ、ハウレスに挑んだらそんな時間はない
ぜ。」
「だから俺たちの邪魔をしたのか?」
自分でも間抜けな返答だと思う。
そんなはずがない。
「そのとおりだ。」
意外な返答にとまどった。
「なに!」
「アルマゲドン、奴は結局のところ甘さを持っている。
ゼヴァスやおまえを殺したくないらしい。
だから少しでも死ぬ可能性が低い相手と戦わせたのだよ。
でも100パーセントと120パーセントじゃ違わないよなあ?」
ベリゼアルが剣を振り下ろしてくる。
やはり時間稼ぎに気づいていたか。
そのときだった、空に変化が起きた。
「オーロラ?」
突然の極光にあっけにとられているベリゼアルの隙を突きそのまま奴を倒した。
「おのれ!」
ベリゼアルが銃を寝ながら放った。
至近距離で放たれた破裂弾をかわす時間はなかった。
だがその瞬間嵐がザーゴンを包んで弾をはじいた。
「なにぃ。」
「進化したのはゼヴァスだけではないということだ。」
嵐の直撃を受けたベリゼアルのピストンは折れ、歯車はとんだ。
「貴様もまた、カタストロフの選別を生き抜いたのか・・。」
意味深な言葉を残しベリゼアルは気を失った。


第三十七話幻影


「行くぞ、ドリブ、援護してくれ。」
だがドリブはゼヴァスの言うことに気づいていないようだった。
「どうした?」
「無駄だ、俺を怒らせやがって、貴様からなぶり殺してやるッ。
冥土のみやげに教えてやるッ!
ファントムイリュージョンは透明にする能力ではない!!
認識を消す能力だッ!!
つまり!おまえの声は奴らには届かないし姿も音もにおいすら感じ取ることはできない。」
「いいだろう、一対一だ!
それで決着をつける!!」
風が吹いた。
ゼヴァスは振り返ることなく空をかけた。
これが最後だった。
そうこれから先ゼヴァスが生きて地上に足をつけることはない。
これが彼の最終決戦である。
「どちらかが勝ったかで運命を決めるだとうぬぼれるなよ、カタストロフ。
貴様が何を考えているか我輩は知らん!!
だがこれだけはいえる。
そいつをめちゃくちゃにしてやる!!
まずはおまえからだクリス!!」
だがほえた相手は見つからなかった。
ファントムイリュージョン・・・認識破壊か。
ゼヴァスはデビルキラーを下に向かって投げた。
「どうしたあ?俺はそこじゃないぞお、もうすぐもう少ししたら俺がいたって事すら忘れて間抜け
面のまま即死しちまうぜッ。」

空か・・・、風が少し強いかな。
このままこの世界へ逃げてしまえばよかった。
エルンとか悪魔とかロットとか関係ない世界で・・。
力なんていらないずっと空にいれれば。
地獄の眼で石になるものは空にはない。
平和な世界だ。
「空にいたい・・。」
「空に君臨するのはクリス様だあ!!」
見えない13→0(サーティーンゼロ)が迫ってくる。
クリスは正面からは撃たなかった。
ファントムイリュージョンは認識破壊であり事実破壊ではない。
ゼヴァスはみていてだがそれを忘れている。
みていると言うことは石になるということだ。
つまり地獄の透視眼がみえてるものみてないことにする能力ならばファントムイリュージョンは
みているものをみえていないことにする能力である。
「空は誰のものでもない・・・。」
ゼヴァスと13→0の弾丸とクリスを無数の弾丸が貫いた。
「なんだ・・・。」
クリスは想定外の攻撃に驚愕した。
「我輩は三つ嘘を言った。」
ゼヴァスは言う。
「一対一、まずそれから嘘だ。」
「なんだと。」
「最初の外した一撃、あれはドリブに空に敵がいると思わせ、実際いるんだが力任せの攻撃を
してもらうためだ。」
「クソヤロウめ!!」
「二つめは、空にいたいって奴だ。
我輩は逃げん、敵は追ってくるならばたたくまで!!
そして・・・」
ゼヴァスはクリスをつかみ、ささやいた。
「嘘が三つってのも嘘だ。君は暴君って割にはえらいおとなしく話を聞くね。」
「貴様・・。」
「・・・もうやめないか。」
「何を言っている?」
「君の父グレゴンはこんな事を望んでなどいない・・。」

第三十八話天命

グレゴンはあるとき我輩を呼んだ。
「なんのようだ?博士?
助けた見返りがほしいのか?」
グレゴンはふっと笑ったような顔をすると答えた。
「そういうことになるな。」
「何をしてほしいんだ。」
「我が最愛の息子クリスを助けてくれ。」
「?」
「私は狂気にむしばまれている。」
「おいおい狂った奴はそんなこと言わないぜ。」
ゼヴァスは笑いながら言った。
「思えば息子たちを失ったときが契機だったかもしれない・・。
私はいにしえの魔神カタストロフと取引をし息子をよみがえらした。
そのときすでに精神を侵されていたのだ。」
「なんだって。」
「奴は私が目覚めさせたのだ。
君の友人カインをそそのかし悪魔戦争を引き起こし、レーヴァティンをこのヘヴンにおいたのも
奴の何らかの策略に違いない。
その計画に私も利用されていた。
クリスをもう不要になったレーヴァティンや邪魔なロットファイナルシリーズなどの不安要素を取
り除くために利用しようとしているのだ。」
「でもなぜ・・?」
「アルミューレだ、奴の精神支配をアルミューレの強大な魔力が中和して、少し正気を取り戻し
た。」
その後グレゴンは正気のうちに死にたいと言って消えた。

元からカタストロフに悪魔やロットを助けたり勝たせたりする目的はない。
カインの野望を達成させてやるわけでもない。
感情や意識を超えた上位命令に奴は従っている。

「君はまだ汚れていない・・。」
ゼヴァスはクリスに言った。
「この俺が汚れてないだと?」
「そうだ。この戦いでもっとも優しくアマちゃんなのはあんただ。」
てめえの方がアマちゃんだろと言うような奴に言われたクリスは憤慨した。
「なんだと。」
そのことばしかでなかった。
「君は最後に優しいクリスを取り戻すよう作られた。
我輩のように幾百のエルンを殺してきたわけではない。
今までの戦いだってファントムイリュージョンでごまかしてきたのだろう?
我輩たちの世界におまえは来るな。
グレゴンはクリスのことを思って。」
「黙れ!!!ああそうさ、俺は今まで貴様の言うとおり誰も殺しちゃいない。
それがそんな呪いのせいだったとはな。俺は克服する、貴様を殺して殺しの味を味わってなァ
ァァァッ!!」
「やれよ、おまえはどちらが本当に呪いなのか気づいていない。
いいだろう我輩の限界も近い、これがおまえの最後の殺しであると願ってるよ。
さあ!!!」
クリスは爪ひきりたてゼヴァスの心臓めがけ指した。
「くそ・・なぜだ、なんだこの屈辱は、なぜほんのちょっぴり体を動かすだけなのにできないんだ
よッ!!
どうしてゼヴァス!!!」
「おまえで考えろよ。」
クリスはほほに液体が流れるのを感じていた。
俺にもこんなものが・・。
クリスは救われたような気さえした。
心地よい気分でもあった。
生まれたときからのどうしようもない怒りが消えた。
だがそれはもう一つの怒りを呼んだ。

「いい加減にしろよ・・下っ端のカス悪魔がァ。」
それはクリスのものではなかった。
クリスの手は停止地点から進みゼヴァスの心臓を貫いた。
「あ・・アルミューレ・・。」
「とんだ欠陥品を渡されたようだなこの俺様も。
こんなカスの甘言に惑わされとは・・。」
アルミューレはゼヴァスをほうり投げた。
「まて!!」
ドリブとアモンだった。
ドリブは落ちてくるゼヴァスをキャッチした。
「ほうポンコツとウジ虫で俺とやろうってのか、だが俺様はあいにく忙しい。」
ゼヴァスの方をにらむと言った。
「ハウレスが俺に気づいた。
俺はおとなしく奴を奇襲できればよかったんだがね。
どうしてもって言うならやってやるよ。
無界最強の実力を披露して差し上げよう。」
やめろ・・。
これ以上ぼくの体を殺しに使うな。
「おっと、欠陥品が俺に忠告しているようだ。
まあ俺もこの体で殺すべき目標は一人しかいないがね。」
「は・・ウレスを・・・。」
「そうだ、ゼヴァス、俺はそれだけが満足感よ。
無界で俺より優れているものはこれでいなくなる。
ヴィシュヌのボディを手に入れたらもうおまえらには興味はない。
クリスも帰してやるよ。
お休みゼヴァス。」
アルミューレは向かっていった。
ハウレスの元へ。
全員がそこへ集まっていく。


第三十九話運命

アシュタロンは師匠が急に手を止めたので面食らった。
「どうしたんだプテ?」
「死んだ・・・。」
「?」
「あいつが、・・・ゼヴァスが・・・死んだ。」
ヘレバルスは消沈して膝を地面につけた。

こういうとき戦場では真っ先に殺されるだろうし殺すべきだろう。
しかしアシュタロンはそうしなかった。
部下を思う気持ちは自分にだってわかるし、こんな形で決着をつけたくない。

沈みかけた太陽の傍らで爆発が起こった。
とっさにアシュタロンはヘレバルスをかばった。
これは明らかな無差別攻撃だ。
これを仕掛けたのは悪魔ではないだろう。
彼はこの爆発がなんであるか知っていた。
”超原子弾”だ。

また爆発。
間違いない、あれを連発できるのはただ一人、ラグナロクだ。
そこへ金色の影が来た。

「おまえはそこにいろ、奴は私が始末する。」
神はそういうと爆発へ向かっていった。

暗闇の奥の奥、ヘヴンズサンクチュアリの最奥部。
そこにもまた神がいた。

「アルミューレめ、何を考えている。」
階段の上のもう一つの影が答えた。
「あなた以外の悪魔は皆、あなたを倒したいと思っています。」
「そういえば、貴様は私が始末するのだったな。」
「神よ、光栄です、私はあなたの玉座へ次に座るものとなる。」
カインは両手を広げた。
「みていろ、ゼヴァス、君は死んだがその遺志はこのアルマゲドンが継ぐ。
みていたまえ、神が死ぬ様を。」
カインのほおにはうっすら涙の流れた後があった。
「さあ、こい!!」
ハウレスはエッジオブメギドを構えた。
「来いですか?
図に乗るなよハウレス、私もまた神となった。
見よ、我がダークネス・サンダー・アンリミテッドを!!」
カインの両腕に電流が流れ空中に放電した。
稲妻の光は蛇のようにハウレスに向かった。
光は熱となりエッジオブメギドを焼いた。
「雷に打たれたとき金属類は持たなきゃいいって言うよな。
あれはうそだ。持っていれば電気はそっちに行って体は無事だ。
運がよかったなハウレス。だがそのなまくらはもうつかえねーぜ。
神成は神の持つ力、俺はあなたと同じ世界まで来たのだ!!」
ハウレスはちっと舌打ちした後、にらむと言った。
「言いたいことはいっぱいあるが、貴様は所詮私がゴットと戦いのまえの路傍の石に過ぎな
い。
対等だと笑わせるな、カスが!!!
神の力とはこういうものだ!!
エッジオブメギド再精錬!!!」
エッジオブメギドが炎に包まれた。
「見せてやる本当の神というものをな、ゼヴァスに教えてやれ自分たちがいかに無力だったか
を。」

第四十話宿命

彼は急いでいた。
暗闇のなかを階段をしたにしたへ。
ろうそくの小さな明かりすらない奈落の深淵へ。
彼がついたとき、その決着はついているようにみえた。

ハウレスの剣がカインを貫いている。
ハウレスは自分と同じくらいのがたいのカインを串刺しにしながら持ち上げていた。
「その様子だと、知らなかったようだな。」
ハウレスは剣を振りその勢いでカインを放り投げた。
カインは石造りの壁にぶつかりどさっと痛ましい音を立てた。
「このあほを始末した今、私がここに来た目的は終わった。
これからは私用だけだ。
ザーゴン、もうおまえに興味はない。」
「まってください、やめることはできないのですか?」
「やめるってなにをかね?」
「この戦いをです、ゼヴァスと一緒に説得する気でできました。
カイン、ゼヴァス、グレゴリュフ、ベリゼアル。
皆力を求めて傷ついていった。」
「皆、私に刃向かった愚か者だ。」
ハウレスは言い捨てた。
それにハウレスは諭すようにいった。
「もう私ですら、悪魔どもを止めることはできぬ。
いや実際にはできよう力や恐怖でな。
だがそれすらわからぬ愚か者が君の友人だよ。
奴らのもっとも愚かなところが私を力で屈服させようとしていたことだ。
奴らは自分たちこそルーラーにふさわしいと疑わなかった。
悪魔を自分のルールで支配しようとしていた。
現に私がしてるようね。
禁を犯しアンノーンゲートを開いたの私ではない。
そんなことは私にたのまないでほしいな。

私はゴットとの決着がつければそれでいい。
君が止めたいというのなら止めてみたまえ。
もう私は妨害はしない。
彼との約束の時が来た。」
ゴットが近づいている。
「・・まだ・・、おわっちゃいない。」
カインがつぶやいた。
「ほうまだ息があったのか。」
カインの首飾りの赤い宝石が輝いた。
何かが光っている。
光がハウレスから漏れているものだとザーゴンは気づいた。
そして自分からもハウレスほどではないが光が漏れている。
力が抜けていく。
やがてザーゴンはこの光が”自分の魔力”だと気づいた。
「貴様の・・無限の魔力も・・、我が”ダークネス・サンダー・アンリミテッド”のまえでは電池のよう
なものだ。たとえその剣が永遠に燃え続け万物を切り裂けようとも、我が神成も炎と死を永遠
にばらまけるのだ。」
カインの傷が癒えていく。
「ゼヴァス、見ていろ、俺はおまえとの競争に勝ったのだ。」

第四十一話胎動

ゴットはラグナロクを一瞥するといった。
「君は何をするつもりだね。」
ラグナロクは長い間の無表情をといて笑った。
爆笑した。
不気味な機械的な笑い。
「世界の終わりにあなたと戦えるなんて光栄です。
私たち究極のロットはそのために生まれたのです。」
風が吹く。
眼下にはいくつもの爆撃の後。
その隙間を縫うように散在する黒い点。
一つ一つ、己の欲望、願望、もって戦っている。
「愚かだな・・・。」
ゴッドがつぶやいた。
「誰がです?」
ゴットはラグナロクをまっすぐ見据えた。
「もちろん・・・。」
赤い天体が地平の彼方に沈む。
「おまえだ!!」
その瞬間ラグナロクの銃口が火を噴いた。
ゴットの動きよりそれは速かった。
ロットのもっとも弱い部分。
カメラ・アイをねらった弾丸が近づいているのをゴットの目は見つめていた。
神に恐怖はない。
カメラ・アイから発せられたレーザーは弾丸を焼き尽くしその軌道上にある銃口すら貫通した。
「すこしはできるようだな。」
「私は神の時代を終わらせるもの。」
ラグナロクはつぶやいた。
ゴットは体に違和感を感じた。
体中の銃器が誤作動を起こしている。
「ウイルスか・・・。」
「とどめ!食らえ!超原子弾!!!」
ラグナロクはゴットに向かって打った。
最後の最大の武器。
「ハハハハハハ!神は死んだ!」
煙がはれた。
おかしい・・・。
何か違和感が・・。

「たのしかったかい坊や。」
ゴットがいた。
空にいたはずなのにここは地面。
そうか暴発か。
「勝てるはず・・・なかったのだ。」
「そのとおり。」
「悔しかった・・・、負けたことがじゃない・・・。」
ハウレスに役割をとられたことが・・・、ああ。
「さあ、主賓がお待ちかねだ、もたもたしてるとまたあいつがくるからな。
この戦いの勝敗などどうでもいいが見届けてやれ、ブラックセフィラム・・・。」
ゴット様・・・、私の真の名を・・・。
あなたの勝利をお祈りしています・・・。


日が沈んでいく。
黄昏れるラグナロクのまえに人影が・・・。
「やあ・・・、まけてしまったよ。
すまない・・・、すべて私が悪かった。許してもらうつもりはない・・。」
”憎悪”は黙って聞いていた。
兄弟は静かに見守る。
「レーヴァティンだ。」
ラグナロクはいった。
「閉門の時が来る。」


ゴットは気づいていた。
ハウレスのところにもう一つ強大なオーラが、そしてじぶんのところにも。
「なんのようだね?」
夕日を背にしそれはいった。
「俺はアルミューレ、あんたを喰ってみてえ。」



「アルミューレめ!」
もうこんな奴を相手にしてるヒマはない。
そしてすでに・・・、もうこいつは悪魔ではない。

「ザーゴン!!死にたくなかったら上へ飛べ!!」
アルマゲドンがいった。
地面が揺れる。
地下にあるこの建造物は沈む。
瓦礫の海に。
思わずザーゴンはいうとおりにしてしまった。
ハウレスと心中するつもりか。
階段を飛ぶザーゴンの後ろに稲光が・・。


「最大電力!ダークネス!!!サンダああああ!
アンリミテッドッ!!!」
発光。
ホワイトアウト。

戻ろうとしたザーゴンを巨大な影を追い返した。
なぜかザーゴンにはゼヴァスのイメージが・・。

ドクン・・ドクン・・ドクン。


 第四十二話到着


「ほう、無界にはこんなに骨のある奴が二人もいるのか少し悪魔になりたくなってきたぞ。」
ゴットはカメラ・アイをサーチライトに変えていった。
光に照らされたクリスの顔はアルミューレの邪悪なほほえみを映し出した。
「残念だがあんたのことは忘れられそうにねえ。」
「残念だが前菜はすべて残して下げようか、メインディッシュの到着だ。」
わずかに光の残る地平線の彼方から・・・・来る。
ハウレス!!
さあこの地獄の饗宴のメインステージ。
ついに始まる。

火花が散る。
チャーリー(デクストでいた奴)は思った。
似ているものは同じものっていいますね。
まるでそれは花火だった。

火花を散らしたのはゴットではない。
ハウレスとアルミューレだった。
「どういうつもりだ?」
ハウレスは尋ねた。
「不完全な状態では申し訳がつかないと思わないか?」
アルミューレは答えた。

なるほど。
完全なヴィシュヌ。
ただし・・・。

『主導権は・・・』
「俺だ。」「私だ。」

ほくそ笑むというのはこういう感じなのだろうか。
こんなにもうまくいくなんて。
滅んでいく。
一つの時代が終わる。すべての時代が終わる。
広がっていったおもちゃ箱はきれいに整頓される。
ああ。達成感が感じられる。
少し気が早いかな。
達成感というのは達成する前から少し潜んでいるものだ。
ちょっと矛盾しているが。

瓦礫が崩れる。
破滅を包んでいた殻は割れて中身が露出する。
白かった肌は赤く染まり異形ともいうべき姿に変化していた。
その異形を最初に見たのはザーゴンだった。

「カイン・・・?」
親友が変わってしまった。
いや目の前にいるのは本当にその親友なのか?
「さ・・・れ、急ぐことは・・・ない。アルマゲドンも悲しむ。」
異質な声。嫌な音だった。超音波が聞こえるとしたらこんな感じか。
「誰だ・・・。」
それは一番上にある首らしきものをこちらに向けた。
よく見ると白い生首の集合体がしたにあるではないか。
目を背けたい。
でもからだが動かない。
「七日目の代行者、カタストロフ・・。」
それは答えた。



第四十三話終末


「こうして勝負するのはいつ以来だハウレス」
俺は語りかける。
奴は黙っている。
やりにくい奴だ。
ただでさえ不利だというものだ。神が作りしものと人の作りしものどちらが優れているかは明白
だ。
だが奴にはみえてはいない。
みえざる十三本の矢。
これが俺の勝利を決定づける。だが俺はその矢が奴を貫くのを待っていない。
俺は奴に近くにいる。
決定打は自らの手で。
着弾より早く俺は奴の胸元へ。
だが俺の体を貫くものがあった。
エッジオブメギド。地獄の炎が紡ぐその剣の一撃は俺への致命傷にはならない……。
生身ならともかくこの借り物のからだ。いくら傷ついてもかまわない。
俺はかまわず右手のスプレッドガンをハウレスの胸元に突きつけた。
その刹那、ハウレスのもう片方の腕は俺の右手を切断した。
奴の速度について行けない。
だがそれでいい。
奴は一動作したその隙をサーティーンゼロが襲う。
むろん俺も巻き込まれるがどうでもいい。
一発一発が着弾し鈍い音を立てて行く。

煙が晴れていく。
ハウレスは無事だった。
想定の範囲だ。
すかさずブルーネイルでねらう。
十四発目はよけれまい。
だがハウレスがヴィシュヌであることを忘れていた。
いつもとは違うのだ。
さらなる反撃。
想定外だ。

ハウレスは腕の動きを止めていた。
乱入者がいった。
「鎧魔、ぼくは自分が憎くて仕方なかった。
無力な自分がな。でももっと憎い奴が一人だけいた。
おまえだ!ヴィシュヌ!!!」
ハウレスは怒りをあらわにした。
「きさま!」
俺はその隙を突いた。
ブルーネイルはペンダントを貫いた。


「ありがとう」
ヴィシュヌはいった。アルミューレの声だった。
俺は腹に刺さっているレーヴァティンをニーズヘグごと引っこ抜いた。
投げられるロットを二人のロットがささえた。
「これでいいのだろう?ゴットさあ決着をつけよう。」
そのときだった。
黒い空間がゴットとヴィシュヌを包み込んだ。」

地面にあの異形の怪物がいた。
それはつぶやいた。
「カタストロフ・ディバイド」


第四十四話悲劇


周りには何もない。
地面のような立っている感覚は存在している。
ゴットもいるようだ……。
ならば……問題はない。
出る方法など後で探せばいい。
俺様はアルミューレだからな。
だが一応聞いていこう。
「何のつもりだ?」
それは答えた。
「気にしないでいただきたい、私はあなた方の邪魔をするつもりはない。」
「答えになってないぜ」
「すべてを破壊するのです」
「すべてだと……?」
「もう苦しまなくていいでしょう」
それは淡々と語り出した。
ゴットは押し黙っている。
「すべては神の生み出した幻想だった。苦痛も悲哀も絶望も憎悪もすべて破壊しましょう。
すべてを無に帰してこの悲劇の大団円を迎えるのです」
それに俺らが邪魔だというのか。
「残念ながら苦痛も悲哀も絶望も憎悪も大好きなんでなあ。」
声のする方を探した、余分なことをしやがる邪魔な野郎を消さなければならない。
「ここにはいません、あなた方はここで思う存分戦ったらいいでしょう。おあつらえ向きの戦場で
すよ。せいぜいかわいい部下たちががんばるのを祈ってください」
声は消えた。
「どうするんだ?」
斬撃がアルミューレのほほを切った。
「いい答えだ」

突然現れたそれをノーフィスは見ていた。
「あれはいったい、悪魔なのかあれも」
「ぼくがおそれていた事態が起きてしまった。破壊精神カタストロフが肉を得てしまった」
ニーズヘグが答えた。
「カタストロフ……あのときの?」
あのときゼヴァスが寝込んでいたとき自分をあざ笑ったあの……。
「ラグナロクは語った。自分たちが何に仕えているのかを。
そのときしったのだ真の敵を」

 第四十五話真相


「どういうつもりだ?ラグナロク?ぼくを引き入れてよかったのか」
ニーズヘグは仮面をかぶりながら聞いた。
「後始末を頼みたくてね、兄弟に」
ラグナロクは言った。
「後始末?」
「そうだ、私はゴット様との直接対決さえできればアルミューレやカタストロフ、アルマゲドンがど
うしようと関係ない。ハウレスと同じだ、戦いたいのだ。
でも君にはすまないと思っている。
私は突っ走りすぎた。
とんでもない禁忌を引っ張り出してしまったんだ」
「都合のいい奴め今ここで機能停止させてやろうか」
ニーズヘグはにらめつけた。
「いいだろう、でも兄弟、できれば私の願いを叶えさせてくれ。その願いが叶えば私は死ぬだろ
う、どうしてもというならここで死んでもいい」
「なぜだ、なぜそこまで思い詰める?ゼヴァスもノーフィスもそうだった」
「あなたも同じですよ兄さん、自分を責めないで、あなたがその剣を使えるのはまだ希望があ
るからなんですよ。その希望を力に変えてください。
今ここで私の知っていることをすべて話しましょう。
まず赤い宝石を見つけたことから始まります……」


奴はおそらくこの世界が存在する以前から存在している・・・・・・。
グレゴリュフに力を与えた闇とも同一の存在だ。
奴は力を与えて悪魔にチャンスを与えたのではない。
より破滅を推し進めるために・・・利用したに過ぎない。

この剣”レーヴァンティン”だがこれは世界に破滅を呼び寄せるため悪魔を誘うために奴が作
り出した。
そのあと力を特に欲した二人ラグナロクとカインを利用して意思と肉体を手に入れた。
後は簡単だ。
二つの強大なパワーの衝突による反作用によって奴に課せられた命令を完遂する。

「・・・・・・・命令?」
「すでに奴の名前が示してるではないか。」

カタストロフ、悲劇の終わり、大団円、破滅、終末。

「ノーヴィス、奴の力がわかるか?」
「わかりません、ですがあり得ないレベルの戦闘値を感じます。」
カタストロフは微動だにしない。
ほかのものも気にはしてないようだ。

そこへだったそこに一人の悪魔が近づいた。
カタストロフをねらってではない。
戦闘で負傷を負い逃げてきたのだ。
その悪魔が倒れた。
悪魔は立ち上がろうと腕を出す、だがまた滑る。
それ追ってきたロットもとどめを刺そうと地面に降りたって滑る。
なにをやっているんだ。と集まってどんどん倒れていく。
起き上がろうとしても誰も起き上がれない。

「師匠おかしいですよ、あそこ」
「師匠って言うなよ、ハウレス様たちも消えてしまってもなにをやっているんだ我が軍は。」
「決着つけますか?ヘレバルスさん」
アシュタロンが言い方を改めた。
カメラの光がヘレバルスの顔を写す。
「そうだな・・・・・・、でも先にやることができた馬鹿弟子の尻ぬぐいだ。
おいスカルトン!!様子はどうだ」
どこへ行ってきたのだろうか白い吸血悪魔がかえってきた。
「変な奴がいるよ、みんなそこで倒れている」
「ついてこいアシュタロン!!!スカルトン!!!」
「ラジャープテ!!」


第四十六話無敵

異様な光景が広がっていた。
たくさんの悪魔やロットが倒れてカタストロフの周りに輪を作っていた。
「どういう事だ。これはいったい」
それを見てニーズヘグがつぶやいた。
「近寄られたくないのでしょう。近づかれたら攻撃を与えられてしまう。それを防御してるので
は?」
どうすればいいかはそれを聞いた瞬間全員が理解した。
「ノーフィ、ノーヴィス、一斉射撃だ!」
ほかのロットも聞いていたようで。
皆銃口を向けていた。
悪魔はそれを見守っていた。
「おや、私が出てきても気にせず遊んでいらっしゃっていたのにどうしたのですか?」
カタストロフが馬鹿にしたように言った。
「うるさい熊の好物でも量産してろ!!」
すべての銃口が同時に火を噴いた。
あらゆる種類の弾丸が一つの獲物に向かって集まっていく。
だがそれは期待を感じさせる煙幕さえ作らずに燃え尽きた。

「まるで大気圏突入のようだ。すべてのものが燃え尽きてしまう」
プテロットの通信を見ていたアシュタロンが言った。
「後どれくらいでつくアッシュ?」
名前を急に略されてアシュタロンは面食らった。
「そうプテね、あと五分ヘヴン標準時プテ。もうすぐみえてくるプテ」
「急げおまえの話を聞いていて奴の無敵さの秘密がわかった」

「さて君たちにお礼をしよう、ヘヴンティアーズとアースヒューリー。どっちがいい?
そうだな、悪魔君たちは”ここ”が大好きらしいし、こっちだな。」
しばらくは何も起こらなかった。
急に地面に穴が開いた。
「傷ついたこの星の涙、味わうといい。」
「よけてください隊長!」
とっさにニーズヘグは身をかわした。
さっきいた場所には穴が開いていた。
「この技はいったい何なのだ?」
「隕石です」
「隕石!?」
「奴のその……
魔力で作り出したものか?」
「違います、自然界に存在するもののようです」
「どういうことだ?」

「説明しよう」
「アシュタロン!それにヘレバルス!」
「もうドンパチやってる余裕はないみたいだからな」
ヘレバルスが答えた。
「師匠と戦えるなんて感動プテ」
とりあえずその危険な発言についてはスルーした。

「どういうことなんです」
「奴の能力、それは摩擦操作だ。
地面に摩擦が無くなればたてなくなり、摩擦が最大限になればあらゆる物質は通過できない。
まさに無敵能力だ」

それだけでなかった。
カタストロフの一部が青くなって分裂しようとしていた。


第四十七話七日

わたし(ぼく)は世界を見てきた。
いろいろなせかい。
ふたつのちからがぶつかるとつぜんへんいしゅがあふれるせかい。
やみにしはいされたしま。
こうはいしいぜんのえいこうをうしなったしま。
こだいのやくさいがねむるしま。
いじゅうをくりかえすじゅうにんたちのしま。
ちをちであらうきょうだい。
かつてのえいゆうにはんらんするせかい。
ぶんかつされたせかい。

そして・・・・・・
創造物に見放された世界ロットに裏切られ滅亡した。
記憶から消されたものたちの無界。

世界は何を目指しているのか?
理想?栄光?完全性?幸福?
そのいずれも定命で一部の独占物に過ぎず枯渇している。

完全な神が作ったはずのこの世界は不完全。
世界は成長する。
完全なものに向かって。
だが
そこで現れたのは、苦痛、絶望、悲哀、憎悪。
それは水のように砕いても砕いても、なくならない。
成長は無意味。
ならばどうすれば完全か?

答えはわかった。
初期状態。

神は七日で世界を作ったという。
だが神は七日目を休んだ。
完全にするための最期の作業。
それは・・・・・・
カタストロフ。
つまり有が完全でないことを証明するのだ。


「役者がそろってきたぜ」
ヘレバルスが言った。
ニーズヘグ、ノーフィス、ノーヴィス、アシュタロン、ヘレバルス、スカルトン。
六人だ。
「終幕の演者としてはなかなかのできだな」
カタストロフが笑った。
ヘレバルスが前に出た。
「おい考えがあるのか?」
ニーズヘグが言った。
「この中にアンノーンゲートを閉じられる奴がいるか?」
「そうか、まかせろ!」
ニーズヘグは気づいた。
奴のいや悪魔全体の魔力の供給源はアンノーンゲートだ。
それをレーヴァティンで閉じれば。
「おい、まつプテ、やつは変な空間を開いたプテ、そうやってその何チャラを開けるんじゃない
プテ?」
「心配ない」
ノーヴィスが答えた。
「奴は門を開く能力はない、でなければアルマゲドンやレーヴァティンを利用する必要はない」

「そうはさせるか」
「ウギャアアアアアブッシャアアアアァァァァ」
不気味な叫び声が聞こえた。
ヘレバルスが倒れた。
青い影が一瞬見えた。
「止められなかった・・・・・・・、逃げろおおお」
銀色のしっぽがニーズヘグの足を打った。
ニーズヘグは倒れた。

「これが世界の目指した完全戦闘生物カタストロフ
悪魔やロットなど目ではないわ
さあやっかいなものから片付けてやるぞ」


第四十八話対決

無・・・・・・
何もない空間。
遙かなたにほしぞらがみえる

必要なものはあった。
敵!

強きもの・・・・・・。
生まれてきたときから求めてきたものがそこにある。
さあ全力を出そうか。
身を隠すところなどありはしない。
バーニアをふかして近づく。

間合いを見て止まる。
隙を探している。

無限とも思える時間がたつ。
そして隙はヴィシュヌの方に生じた。
どちらかといえば大柄なヴィシュヌ、先手を打てば隙が生まれるのは当然。
エナジーセイバーはヴィシュヌの心臓を貫いた。

だがおわりではない。
「選手交代だアルミューレ」
「ハウレス・・・・・・」
「特別におまえにも奴の強さをわからせてやった、
どうやら我らが組まねば勝てんらしい」

まだ終わらない


第四十九話意思


「もうおわりか?」
カタストロフが冷たく言い放つ。
ニーズヘグが立とうとする。
たてない、足の関節をやられているようだ。
青い怪物が追撃をする。
もう終わりか・・・・・・。


もう終わりかそう思ったとき、誰かがニーズヘグを負ぶって走り出した。
ザーゴンだ。
「大丈夫か?」
「アンノーンゲートを目指してくれ、頼む」
「わかった」
青い怪物がものすごい速度で追撃してくる。
いやその表現は正しくない。
飛んですぐに追いついた。
だがそれで終わりだった。
怪物が爆発した。


クリスだった。
「さあ、いけ。奴の思い通りにもうさせん」
「すまない」
ザーゴンはかけだした。
「ゼヴァス、これで借りを返したぞ」

「師匠まだ終わってないプテ」
ヘレバルスが見ると青い怪物が何体も産み落とされている。
「おあつらえ向きの地獄の使者だぜ・・・・・・・」

みえる時空間のゆがみ。
アンノーンゲートだ。

「もうすぐだ、これから一人で歩いていってくれ、奴らが数匹が来ている」
後ろに数匹青い怪物がいる。
勝てるか。
数匹の青い怪物が飛びかかった。
ザーゴンは目をつむった。


最終話閉門


ザーゴンは目を開けた。
カタストロフの怪物は石になっていた。

「ゼヴァス?」
そこに一体のロットが立っていた。
「ゼヴァスはここに生きている。」
ドリブの目が地獄の眼になっていた。


「馬鹿な
魔力の供給が・・・・・・
この私がこの私が・・・・・・」
上からの一人の悪魔が振ってくるアモンだ。
アモンは剣でカタストロフを串刺しにした。


アジ・ダカーハの群れが迫ってくる。
数の優位に怪物たちもどうしようもなかった。

ヘレバルスは丘の上から様子を眺めていた。
「終わったか」
いつの間にか日が昇りはじめている。
少し寝るか彼は思った。

「終わりましたね隊長」
スカルトンが言った。
「そうだな、門が閉まったと言うことは・・・・・・。」

ゴットの首をヴィシュヌがとらえた同時にゴットもヴィシュヌの心臓をとらえた。
だがその瞬間大きなパワーがヴィシュヌを引き寄せた。
「楽しかったよ」
ヴィシュヌは言った。
「私もだ」
ゴットは答えた。

悪魔達が無界へ帰って行く。
悪魔をヘヴンにつなぎ止めていた存在が消えたからだ。




ザーゴンは思っていた。
この戦いで失ったものについて。
一部の悪魔はヘヴンに残った。
理由はわからない。
慈悲?
ゼヴァスと一緒にいれるって事か。

わからないな。
まあいいや。
終わったいや一区切りついたってことさ。
ここで新しいものを見つけよう。
だってここは楽園なんだろ。


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