吉田精肉店

第四十三話終末



「こうして勝負するのはいつ以来だハウレス」
俺は語りかける。
奴は黙っている。
やりにくい奴だ。
ただでさえ不利だというものだ。神が作りしものと人の作りしものどちらが優れているかは明白
だ。
だが奴にはみえてはいない。
みえざる十三本の矢。
これが俺の勝利を決定づける。だが俺はその矢が奴を貫くのを待っていない。
俺は奴に近くにいる。
決定打は自らの手で。
着弾より早く俺は奴の胸元へ。
だが俺の体を貫くものがあった。
エッジオブメギド。地獄の炎が紡ぐその剣の一撃は俺への致命傷にはならない……。
生身ならともかくこの借り物のからだ。いくら傷ついてもかまわない。
俺はかまわず右手のスプレッドガンをハウレスの胸元に突きつけた。
その刹那、ハウレスのもう片方の腕は俺の右手を切断した。
奴の速度について行けない。
だがそれでいい。
奴は一動作したその隙をサーティーンゼロが襲う。
むろん俺も巻き込まれるがどうでもいい。
一発一発が着弾し鈍い音を立てて行く。

煙が晴れていく。
ハウレスは無事だった。
想定の範囲だ。
すかさずブルーネイルでねらう。
十四発目はよけれまい。
だがハウレスがヴィシュヌであることを忘れていた。
いつもとは違うのだ。
さらなる反撃。
想定外だ。

ハウレスは腕の動きを止めていた。
乱入者がいった。
「鎧魔、ぼくは自分が憎くて仕方なかった。
無力な自分がな。でももっと憎い奴が一人だけいた。
おまえだ!ヴィシュヌ!!!」
ハウレスは怒りをあらわにした。
「きさま!」
俺はその隙を突いた。
ブルーネイルはペンダントを貫いた。


「ありがとう」
ヴィシュヌはいった。アルミューレの声だった。
俺は腹に刺さっているレーヴァティンをニーズヘグごと引っこ抜いた。
投げられるロットを二人のロットがささえた。
「これでいいのだろう?ゴットさあ決着をつけよう。」
そのときだった。
黒い空間がゴットとヴィシュヌを包み込んだ。」

地面にあの異形の怪物がいた。
それはつぶやいた。
「カタストロフ・ディバイド」



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