吉田精肉店

第三十八話天命

グレゴンはあるとき我輩を呼んだ。
「なんのようだ?博士?
助けた見返りがほしいのか?」
グレゴンはふっと笑ったような顔をすると答えた。
「そういうことになるな。」
「何をしてほしいんだ。」
「我が最愛の息子クリスを助けてくれ。」
「?」
「私は狂気にむしばまれている。」
「おいおい狂った奴はそんなこと言わないぜ。」
ゼヴァスは笑いながら言った。
「思えば息子たちを失ったときが契機だったかもしれない・・。
私はいにしえの魔神カタストロフと取引をし息子をよみがえらした。
そのときすでに精神を侵されていたのだ。」
「なんだって。」
「奴は私が目覚めさせたのだ。
君の友人カインをそそのかし悪魔戦争を引き起こし、レーヴァティンをこのヘヴンにおいたのも
奴の何らかの策略に違いない。
その計画に私も利用されていた。
クリスをもう不要になったレーヴァティンや邪魔なロットファイナルシリーズなどの不安要素を取り
除くために利用しようとしているのだ。」
「でもなぜ・・?」
「アルミューレだ、奴の精神支配をアルミューレの強大な魔力が中和して、少し正気を取り戻し
た。」
その後グレゴンは正気のうちに死にたいと言って消えた。

元からカタストロフに悪魔やロットを助けたり勝たせたりする目的はない。
カインの野望を達成させてやるわけでもない。
感情や意識を超えた上位命令に奴は従っている。

「君はまだ汚れていない・・。」
ゼヴァスはクリスに言った。
「この俺が汚れてないだと?」
「そうだ。この戦いでもっとも優しくアマちゃんなのはあんただ。」
てめえの方がアマちゃんだろと言うような奴に言われたクリスは憤慨した。
「なんだと。」
そのことばしかでなかった。
「君は最後に優しいクリスを取り戻すよう作られた。
我輩のように幾百のエルンを殺してきたわけではない。
今までの戦いだってファントムイリュージョンでごまかしてきたのだろう?
我輩たちの世界におまえは来るな。
グレゴンはクリスのことを思って。」
「黙れ!!!ああそうさ、俺は今まで貴様の言うとおり誰も殺しちゃいない。
それがそんな呪いのせいだったとはな。俺は克服する、貴様を殺して殺しの味を味わってなァ
ァァァッ!!」
「やれよ、おまえはどちらが本当に呪いなのか気づいていない。
いいだろう我輩の限界も近い、これがおまえの最後の殺しであると願ってるよ。
さあ!!!」
クリスは爪ひきりたてゼヴァスの心臓めがけ指した。
「くそ・・なぜだ、なんだこの屈辱は、なぜほんのちょっぴり体を動かすだけなのにできないんだ
よッ!!
どうしてゼヴァス!!!」
「おまえで考えろよ。」
クリスはほほに液体が流れるのを感じていた。
俺にもこんなものが・・。
クリスは救われたような気さえした。
心地よい気分でもあった。
生まれたときからのどうしようもない怒りが消えた。
だがそれはもう一つの怒りを呼んだ。

「いい加減にしろよ・・下っ端のカス悪魔がァ。」
それはクリスのものではなかった。
クリスの手は停止地点から進みゼヴァスの心臓を貫いた。
「あ・・アルミューレ・・。」
「とんだ欠陥品を渡されたようだなこの俺様も。
こんなカスの甘言に惑わされとは・・。」
アルミューレはゼヴァスをほうり投げた。
「まて!!」
ドリブとアモンだった。
ドリブは落ちてくるゼヴァスをキャッチした。
「ほうポンコツとウジ虫で俺とやろうってのか、だが俺様はあいにく忙しい。」
ゼヴァスの方をにらむと言った。
「ハウレスが俺に気づいた。
俺はおとなしく奴を奇襲できればよかったんだがね。
どうしてもって言うならやってやるよ。
無界最強の実力を披露して差し上げよう。」
やめろ・・。
これ以上ぼくの体を殺しに使うな。
「おっと、欠陥品が俺に忠告しているようだ。
まあ俺もこの体で殺すべき目標は一人しかいないがね。」
「は・・ウレスを・・・。」
「そうだ、ゼヴァス、俺はそれだけが満足感よ。
無界で俺より優れているものはこれでいなくなる。
ヴィシュヌのボディを手に入れたらもうおまえらには興味はない。
クリスも帰してやるよ。
お休みゼヴァス。」
アルミューレは向かっていった。
ハウレスの元へ。
全員がそこへ集まっていく。



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