吉田精肉店

第三十話提案


あの工場の北。ヘヴンウッドのうっとうしい木々が生い茂ってる中。
アジ・ダカーハの襲来でつぶされた廃工場があった。

工場の中には未だ数匹のアジ・ダカーハがうろついていた。
迷っているわけではない。
飼い主がそこにいるからだ。
ある意味原始的な悪魔である彼らは知性は低い。
だが本能は優れていた。知性による阻害がないからだ。
だからこそ、そこに差し迫った災難をいち早く察知していた。

飼い主たちはというと話し合っていた。
ノーフィスはしばらく思案した後言った。
「確かに脱出は成功した。けどこれからどうする。
私たちは修学旅行で勝手に抜け出したようなものだよ。
このままでは大きなプログラムには逆らえない。」
ゴホン、ザーゴンは咳をしていた。
どうやら熱っぽいようだ。
ドリブは自分は考えることは苦手であるから議論に参加しなくていいですね、と主張するように、
天井のはげかかっている塗装を見ていた。
頼りにならない友人たちを見ていていてもたってもいられなくなったように、ゼヴァスがしゃべり出
した。
「ヴィシュヌをぶっ倒して無界へお帰り願うしかないのか。」
ゼヴァスのオー!グッドアイディアに、
ドリブは感心したように見ている。
ザーゴンは聞いていない。
ノーフィスはあきれた。
「それはパーがチョキに勝つより難しいとおもうよゼヴァス。君ねえ、師匠の悪いとこうつった?」
ドリブはそのアイディアの欠点がまだ見いだせない。
ザーゴンがくしゃみ混じりに言った。
「もっと戦争反対なやつを集めれば・・。」
ゴホ。
「ヘレバルスさんとかかい?」
「隊長、元隊長はどこ言ったのですか?」
ドリブがふと思い出したように言った。
「ニーズヘグさん・・・。」
「私のことはどうでもいいてのか皆、意外と冷たいな。」
冷たい声がした。
そしてそれ同じくらいひどい寒気が。
その寒気が肌が感じたものなのか鎧魔が感じさせる戦慄によるものなのかはどうでもよかった。
「何のようだ・・・ヴィシュヌ・・・。」
ふるえ、意識していないのに・・恐怖。
強さが戦っていないのに手に取るようにわかる。
ありがアリクイや蟻地獄と対したような絶望感。
捕食者に被捕食者がとる行動しかとる道はない。
だが逃げることはできないだろう。

「坊やたちふるえているようだが、寒いのかい?それともおむつがご入り用かな。」
「さっさと用件を話せ!!」
ゼヴァスはにらみつけるように言った。
自分の恐怖をごまかしながら。
「よかったねえ、仲直りできて。」
「言いたいことはそれだけか?我輩たちを始末しに来たのか?」
「ヘレバルスはいい上司だ。仕事のほかに君らの面倒も見ていたとはね。
私はそれを見逃してたのだよ。」
「何が言いたい。」
「おまえらのようなゴミは、始末することがたやすい。
だが何とかリサイクルしてやりたいって言う親心が働いてね。」
ふざけやがってリサイクルしたい親心って何だよ。
「さて頼みといっちゃうなんだがね、消してもらいたいゴミがある。
まあ、私がやってもいいのだがね、ゴットとやる前に気を揉みたくないのでな。
もちろん断ってもいいよ。
だがおすすめはしない。私の仕事と死体が増える。」
ノーとは言わせないといった感じだ。
「いいだろう。」
ノーフィスが言った。
「いいのか?」
ザーゴンが聞いた。
我輩は隊長の決定に従うつもりだと伝えた。

「それはよかった。消してもらいたいゴミの名はクリス。
後いいことを教えてやろう。やつを追えばもう一度あえるぞ。」
「だれに?」
「おいおいとぼけて、わかっているくせに。」
そういうとヴィシュヌは去っていった。

ヴィシュヌに流されたようだがノーフィスには作戦があった。
クリスと組んでヴィシュヌを倒す。


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