吉田精肉店

第二十一話脱出

ヴィシュヌがゴットに宣戦をたたきつけ、”悪魔戦争”が開始してから約一年がたつ。
私はここに開戦から今までのことを記そうと思う。
すべてのことについて詳細に記すことはできない。
だが、彼らとであったことで私の運命は大きく動き出した。


倒れている悪魔の周りに三人の男が立っていた。
フリートドリブ、ノーフィス、ザーゴンという名の男たちである。
目的も考え方も望みも違う彼らだがその心は一人の男への憎悪として統一されていた。
大悪魔ヘレバルスである。
私は、倒れている男が助かるのを知っていた。
否、助けれるのだ。
私は決意した。


懐かしい感じのする赤い塊がドリブの憎悪の心に割っていった。
永遠の渇望の象徴”アジ・ダカーハ”である。
「坊やたち・・・・・・・。」
ドリブ、否、その心のうちのデビルマグナスが反応した。
そして、その上に乗る男、私に気づいた。
「さあ、乗って一緒に逃げよう。」
だが彼は不審がっていた。
そうだろう、見知らぬ悪魔だからな。
「私の正体など、ヘレバルスから逃げた後で聞けばよい、ゼヴァスを助けたいのだろ?」
ドリブはその言葉に反応し、一匹のアジ・ダカーハにゼヴァスをつれて乗った。
彼の前ではアジ・ダカーハも子犬のようにおとなしかった。
後ろのノーフィスもそれに続いた。
ヘレバルスはというと、傍観していた。
かつての部下への自分の仕打ちや安否について思うところがあるのだろう。
しかし世の中には不思議なこともあるものだ。
ノーフィスが仇敵であるザーゴンと一緒に乗ったのである。
「何を考えている?」
「お前もゼヴァスの安否が気になるだろう?おまえの安否を気にするのはそれからだ。」
こうしてわれわれは逃げ帰った。
もっとも彼らは失敗し私は成功した。

私はグレゴン。
闇の化身グレゴリュフの父。
私はここで更なる闇を生み出すのだ。

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