吉田精肉店

第二話追跡
ここの話はクロニクルさんが書きました。

無界。最奥地・デビルズサンクチュアリ

「なるほど・・・では、すでに何人もの悪魔が、ヘヴンへと飛び立っていると?」

暗い空間に、声だけが響き渡る。姿はどこにもない・・・ザーゴンは膝を突き、その声と会話して
いた・・・

「はい、アジ・ダカーハも、匂いを追って、すでに外へ。私もヘヴンへ行く許可を」
「・・・良いだろう。ただし!」

突然、ザーゴンの背筋に寒気が走った。真後ろに・・・何かがいる。

「そう簡単にはいかんな。貴様に・・・友を殺す覚悟はあるか?」
「・・・・・・どういう意味でしょう?」

震える声で、ザーゴンは答えた。

「アンノーンゲートを最初に開けたものを見つけ出し殺す。それが貴様達の任務のはずだ。しか
し、お前の友人は、一体何のために外に出たのかな?」

冷たく響く声が暗い空間にこだまする・・・何もない空間。自分の背後の圧倒的な存在感を除い
ては。

「力を求めることは、間違ってはいない。むしろ正しいことだろう。しかし・・・しかしだ。身の程を
知らずに、ただ力だけを求める行為は、間違っているのではないか?」

背後の存在から、さっきまでとは違う感情が読み取れた・・・怒りか?それとも・・・

「私への反乱、大いに結構だ。お前の友人は、さぞ自らに自信があると見える。悪魔の中には、
私への反感を持っているものが数多く存在する・・・貴様の友もそのうちの一人だ」

ザーゴンはその一言一言が、自分に重くのしかかってくることを感じた。そして、次に言われる
であろう言葉を自分の中で想像し、恐怖した。

「より強い力で、より高い地位を手に入れる。ごく自然なことだ。だがそれは・・・無界の中に限っ
てのことだ。度を越えた欲望はいずれ、歪みを生むだろう・・・無界という囲いを越えてしまった
欲望は、消さなければならない」

「わ、私に何をしろと?」

背後の存在が、ふっと笑った・・・・・・

「初めにゲートを開いたものも、お前の友も、無界を超えて力を求めた・・・すでに無界には興味
がないという証拠だろう?ならば、外で何が起きても文句は言えん・・・初めにゲートを開いたも
のは、私が消そう・・・だが、あくまで標的は一つ」

「・・・・・・やはり・・・・・・」

「外へ出ることを許可しよう。ただし・・・・・・友の命と引き換えだ」

ゼヴァスを殺せ。友であるお前の手で、な。

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