吉田精肉店

第二部


ペノーヴァレンス・・・出身地出生日ともに不明、知られていることは彼の愛称”ペノーヴァ””ペノ
ン”とかいったことだけである。
かれは光皇暦(アフター・タカヌーバ)4300年においてボリオとグルタという二人のマトランに
出会った。
それは世にいうトーアの乱の五年後であった。

海の上を”ドライブ”する帝国の斥候は最後の定期連絡を行っていた。
『ゲシュタルト少佐、ついにあの島が見えてきました。急に現れたなぞの島、帝国の主権が及
ばない”唯一”の場所』
それを聞いていたその場にいない男すなわちゲシュタルトはネイ=ボウと言う帝国の領土の中
で最も辺境であり最も新しい場所にいた。そこはその例の島すなわち旧称無限平原プレーン
島に一番近いのだった。
『よしそのまま作戦を実行しろ。』
これで通信は終わりなるはずだった。だがバカな斥候は余分なことまで聞いてきたのだった。
『少佐はこの辺の出なんですってね?』
『それがどうかしたのかね?』
ゲシュタルトは気にくわなそうに聞いた。
『それがわたしのたった一つの懸念なんです。少佐は実はやつらと組んでるんじゃないかって
ことです。誰しも愛国心とか郷土愛と言ったものがあるでしょう。』
斥候の運がよかったのはこれが通信だったことだ。もし彼の目の前でこれを言ったら、顔の赤
くなった自分の上官を見ることになるだろう、そしてそれは彼の見る最後の風景になるだろうか
ら。
『ばかばかしいにもほどがあるは、このクソチキン野郎。俺が夢にも奴らに手を貸すと思うか。
俺は確かにヒポ=クリテのでだがそんなことは夢にも思わん。
奴等のおれに対する裏切りは万死に値するのだ。おれは復讐のためにこの群島帝国でのしあ
がったんだ。
こうすれば治安維持の名のもとに奴等を根絶やしにすることができる。』
最初は怒り狂いながら最後は狂い笑っていた。もはや部下は通信を切ったようだ。もちろん自
分の上司の出身地がすでになく根絶やしの対象はその島民ではなくもはや世界の実権をトー
アに奪われたマトランの数少ない生き残りの淘汰にあることなど知る由もなかった。


プレーン島、そこが最後のマトランの楽園であることは当の本人たちは気づいてすらいなかっ
た。
あの野蛮なトーアたちが島を奪うことに失敗して消えたとき以来。
トーアは敵と言うのが彼らの共通認識であった。

そして島民の一人が五年ぶりにその不倶戴天の敵を見つけた。
『しまった。見つかってしまった。』
斥候は言った
マトランは思った。ころされる。トーアはマトランの生き血をすするって聞いたことがある・・。
しかし恐怖は奇跡を起こしたのだ。

彼の体は変化を起こしたのだ。トーアに対する憎悪によって。

彼がトーアになるはずがない。彼はヴァキの形をとった。
ヴァキとなったマトランは斥候をころし、まだ戦いは終わってないことを感じた。



出ました新しい物語
この話はプレーン島とアルキペゴラ帝国とマリスの二人の兄
彼らが新しい時代へと進んでいく物語です。
トーアは敵と思うマトラン
マトランを憎むトーア
そして・・・・・

トーアの乱はなにを残したのか
そして外の世界はどんな変化が?
登場人物
登場人物
第一章ペノンとグルタとボリオと・・・・・・
第一章ペノンとグルタとボリオと・・・・・・
第二章義務と運命
第二章義務と運命
第三章時の終わりをささやくもの
第三章時の終わりをささやくもの
第四章黄昏のトーア帝国
第四章黄昏のトーア帝国
最終章神の玉座にて・・・・・・・
最終章神の玉座にて・・・・・・・


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