吉田精肉店

第八話
クルの再誕

敵はマトランの軍人だらけだが、数が多い。こちらはグリン隊とトーアが三人、相手の数の優
位をどう克服するかだ。とエウドウは考えていた。
『おい、あのラヒ、オウルじゃねえか?』
『君の追っかけだね。』
『てめえ、人事だと思って。あいつの毒であんな姿にされたんだぞ、俺は。』
レキはいまだに話が呑めていなかった。この戦いは思ったより多くの陰謀をはらんでいる。だ
がひとつ確信していたことはここには自分のルーツがあるということだ。
『アハハハ、久しぶりねえエビルちゃん、元気なのが信じられないわ。ロード様がやられちゃっ
た後もおっかけっこしたわねえ。天国で先に待っててくれると思ったのにこんなとこにまだいる
なんて。まあいいわ、みんな仲良く天国へつれてってあげる。』
ラヒがしゃべった。
『おお、私を助けにきてくれたのか・・?』
そういうと急にラヒは泣き出した。
『かわいそうなレキちゃん。何も知らないのね、私はオウル暗殺部隊の隊長よ。指令はこう”レ
キ1とエウドウらの接触は危険だ、よってレキ1は廃棄処分、我が軍の対トーア兵器開発計画
レキプロジェクトの試験機はレキUに移行、旧タイプの破壊はオウルに一任する。”あなたはダ
ークにいいようにされていただけあのざまは私だって反吐が出るわ。だけど仕方ないのあなた
たちには消えてもらうわ。行きなさいオウル隊!』
『俺のせがれには手を出させない、ドッグファイトだ!いくぞ!』
エビルもまた姿を変えたのだ飛行型ラヒに。
『雑魚たちは私たちでかたずけましょう。』
ヘヴンは剣を抜き二本の剣でてきをちらしていった。
『伝説のトーアをなめるな!!』
エウドウは杖を振りてきをなぎたおしていった。ツラガなのにこの強さは反則ではとレキは思っ
た。
しかしレキにとっての心の問題とはどちらにつくかということである。もはや政府軍には捨てら
れた。こちらからも自分を兵器としてしか見ていないものに従うのは願い下げだ。だが反乱軍
につくというのも考え物だ。あのヘイトになんかに従いたくは無い。
そんなことを考えているから隙を突かれた。
このことはレキの運命を決め付けた。
エビルはレキをみて
『クルーーーーーー。きをつけろー!』
そのせつなをオウルは見逃さなかった。かつてエビルを刺したヴェノム・クロウを再び彼に突き
刺したのだ。
エビルは無残にも墜落した。その姿はレキの心の中のあるものを刺激した。
『とうさーん!』
その時だってレキは先刻エビルの言っていたこと信じていたわけでは無いのに。
レキはエビルに駆け寄っていた。そうそれは失われた彼の記憶”クル”がなしたことなのだ。
『お前がもう一度、そういってくれるとは思わなかった。俺は一度お前を見捨てたのに。俺はお
前のためにしてやらなくてはいけないことがある。』
それはすなわち、トーアの力の継承。すでに遺伝としてトーアの力を持つレキにトーアの力を与
えることが何を意味するのか?
『人工的に作られたその力は真にお前のものではない、俺のトーアとしての魂をお前に預け
る。クルよトーアの先へ行け!』
この行為は何も今に限ったことでは無い。何千年もの間この行為は繰り返されてきた。闇を倒
すためにトーアの力を集める。同じ属性をもつトーアの中で力をためて。いつの日かこの戦い
が伝説となるときのために。
だがレキの場合では決定的な違いがあった、それはすなわち長い間の凝縮によってト−アの
エネルギーが無限になったこと、アブソリュートはツラガにならない。そのことにより圧縮はより
濃密になり異種族間の継承もおこった。その事実はレキを岩石のアブソリュートではなく光のト
ーア・アブソリュートにしたのだった。
光が消えると銀の羽と鎧を持ち”グレイテスト・エンペラー”という名の剣を掲げたトーアが立っ
ていた。
『ここにすべてのトーアの誇りにかけて闇を滅ぼすことを誓う。我が名はクル、この世界を救い
栄光に導くものなり。』
もはやレキという兵器はここには存在しなかった。残ったのは信念をもったクルと言う勇者だっ
た。彼は記憶とともにまた使命を手に入れた。


雑感

クルがあっちいっちゃったーーーーw
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