「向日葵」(1977年)
 いつも太陽に向かって咲く花「向日葵」。花のタイトルを持つ作品にしては、たくましすぎる木彫かもしれないが、何があっても
どんな困難にもめげず太陽の方を向いている、そんな姿に無意識にあこがれて彫ったような気がする。 
 そんな無意識の中には、やはり母の姿があったのかもしれないと思う。
 母の口癖のひとつにこんなのがある。
「蜂の巣と蜘蛛の巣以外は、やればできるよ・・・・・」と言うのである。
「どんなに頑張っても、あの蜂の巣とあの蜘蛛の巣は人間には出来ないがな・・・・」とも言っていた。
確かに、あの六角形の集合建築と黒と黄色の女郎蜘蛛の作る柔軟で強くて、しかも繊細な幾何学模様は人間にはまだ無理
かもしれない・・・・・でも「母流思考法」で言ったら、やがては、いつか人間にも、蜂の巣建築や蜘蛛の巣建築が可能かもしれ
ないと思う。昔は、あの女郎蜘蛛の巣を使って、良く蝉取りをした。
長い竹竿の先端の穴に細い篠竹を輪っかにして差し込み固定し、その輪っか女郎蜘蛛の巣をいくつも、いくつも巻きつけて
いく。すると、粘り気のある糸が幾重にも重なり強力で大きな透き通った丸い両面粘着テープのようなものができた。
それ使って蝉を採るのだ。大きな欅の幹には良く油蝉がとまってミーンミーン鳴いている。その声をたよりに居場所を突き止め
ると、抜き足、差し足、そーっと近づいていって蝉の背中に例の輪っかを素早く、くっ付ける。
すると蝉の羽はくっつきバタバタしても飛べないのだ。その位、強力な蝉取り道具になった。
向日葵からいつのまにか蝉取りの話になってしまったが、母つながりである。
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