1985年「木馬」年賀版画
 長女は元気のいい活発な子だった。髪の毛も薄かったので
よく男の子に間違えられた。
夜泣きなどほとんどしたこともなく長男がお腹にでき断乳するまで
母乳でよく育ってくれた。
義父が大工で職人長屋に住んでいたことから義父の死後、
義母と同居していた私達の子育ての現場は2軒長屋が4棟
真ん中に井戸を挟んで建っているその職人長屋だった。
まるで江戸時代さながらの一画。はじめてここを訪れた友人は
皆「一体ここはどこ?・・・・・何時代?・・・・・」と驚くような所だった。
新宿からたった一駅にもかかわらずタイムスリップしたような、
今思えば異次元空間だったのかも知れない・・・・・・・・。
朝「あれっ、長女がいない!」すると裏の左隣の家で知らぬ間に
朝ご飯をいただいていたりした。ちなみに我が家は外出する時、
誰も鍵をしめたことがない。そもそも鍵を持つ習慣がなかった。
7年くらい前に埼玉県に移り住み鍵文化のなかった我が家族は
慣れるまでの一時期、大変であった。
「お母さん、家に入れない・・・・・」と突然外出先の私に電話がかかってくる。
そんなことが度々あつた。
▲前のページに戻る ▲「木版画」トビラに戻る